お笑いのネタの作り方|初心者が1本目を書き上げるまでの手順

マイクを置いた机で、2人が話しながらネタをメモしている

お笑いのネタは、「設定→フリ→ボケ→オチ→練習」の5つの段階に分けて作ると、初めてでも1本書き上げられます。最初は長いネタを目指さず、2人で1分ほどの短いネタを1本仕上げるのが近道です。

この記事では、「目覚まし時計を買いに来た客」という1つの例を使って、段階ごとにやることを順番に見ていきます。それぞれの段階のくわしいやり方は、別の記事に案内しています。

目次目次を閉じる目次を開く
  1. ネタ作りは5つの段階で進める
  2. 段階1 設定を決める|誰が・どこで・何をする話か
  3. 段階2 フリを作る|「普通はこうなる」を先に見せる
  4. 段階3 ボケを考える|候補を10個出して3つに絞る
  5. 段階4 オチをつける|最後にいちばん大きなずれを置く
  6. できあがった1分のネタ「目覚まし時計売り場」
  7. 段階5 声に出して練習する|読みながら台本を直す
  8. よくある質問
  9. まとめ

ネタ作りは5つの段階で進める

ネタ作りで手が止まるのは、設定もボケもオチも、一度に考えようとしているときです。段階を分けて、1つ終えてから次へ進むようにすると、そのとき考えることが1つだけになります。

段階やることできあがるもの
1. 設定誰が、どこで、何をする話かを決める1行の設定文
2. フリ「普通はこうなる」とお客さんに思わせる前置きのセリフ2〜3行
3. ボケ普通からずれたことを言う・するボケの候補10個
4. オチいちばん大きなずれを最後に置いて終わる終わりの2〜3行
5. 練習声に出して読み、言いにくい所を直す人前で演じられる台本

1本目は、2人の掛け合いで作るのがおすすめです。わざと普通からずれたことを言う役を「ボケ」、そのずれを指摘して笑いどころを示す役を「ツッコミ」といいます。役が分かれていると、セリフを書く順番がはっきりします。

1本目はここまで絞る

時間は1分前後、登場人物は2人、場面は1つ。これだけに絞ると、最後まで書き上げやすくなります。出来ばえより、オチまで書き切ることを目標にしましょう。

段階1 設定を決める|誰が・どこで・何をする話か

設定とは、「誰が・どこで・何をする話か」を1行にまとめたものです。ここがあいまいだと、ボケを考えるときに話があちこちへ飛んでしまいます。

選ぶ場面は、お客さんの誰もが見たことのある場所にしましょう。お店、駅、会社、学校などです。「普通はこうなる」とみんなが知っている場面ほど、そこからのずれが伝わりやすくなります。

例文1行で書いた設定の例

朝が苦手な客が、家電売り場に目覚まし時計を買いに来る。
引っ越してきた人が、となりの家にあいさつに行く。
新しく入ったアルバイトが、初めてレジに立つ。

反対に、「面白い店員の話」のような設定は、どこで何が起きるのかが決まっていないので、ボケが考えにくくなります。この記事では、1つ目の「目覚まし時計」で続きを作ります。設定の種になる場面の見つけ方は、「ネタの素材の集め方」で、日常の観察メモの取り方と一緒に紹介しています。

段階2 フリを作る|「普通はこうなる」を先に見せる

フリとは、お客さんに「この先はこうなるはず」と思わせる前置きのことです。笑いは、その予想が外れたときに起きます。フリがないままボケても、何がずれているのかが伝わりません。目覚まし時計の例なら、店員がまずは普通に接客を始めるところがフリになります。

台本フリの部分

(家電売り場。客が棚の前で迷っている)

店員いらっしゃいませ。目覚まし時計をお探しですか。

客はい。朝がとにかく苦手で。

店員それでしたら、とっておきの時計がございます。

ここまでは、どこのお店でもありそうなやりとりです。この「ありそう」がしっかり伝わるほど、次のボケとの差が大きくなります。フリは短く、ありふれた言葉で書くのがコツです。予想が外れるとなぜ笑いになるのかは、「笑いが起きる仕組み」で、ずれと緊張と緩和の考え方を例文つきで説明しています。

段階3 ボケを考える|候補を10個出して3つに絞る

ボケは、フリで見せた「普通」からずれたことです。いきなり1つの正解を探そうとすると手が止まるので、まずは数を出します。

  1. 設定の中の「普通」を書き出す(例:目覚まし時計は、大きな音で起こしてくれる)
  2. その「普通」を、大げさにする・逆にする・人のようにふるまわせる、などでずらす
  3. 面白くなさそうでも、とにかく10個書く
  4. 声に出して読み、聞いた瞬間に場面が浮かぶものを3つ選ぶ
例文目覚まし時計で出したボケの候補(10個のうち6個)

起きるまで、ずっとほめてくれる時計
鳴る前に「そろそろ鳴りますよ」と教えてくれる時計
持ち主より先に二度寝する時計
止めるには、早口言葉を3回言わないといけない時計
鳴るかわりに、そっと毛布をかけてくれる時計
「あと5分」と言うと、本当に5分待ってくれる時計

選んだ3つは、ずれの小さいものから順に並べます。ここでは「ほめる時計」→「予告する時計」→「先に二度寝する時計」の順です。だんだん時計として役に立たなくなっていくので、後ろに行くほど笑いが大きくなります。ずらし方の型をもっと知りたいときは、「ボケの種類一覧」で12の型を例文つきで紹介しています。

人を傷つけるボケは使わない

容姿・年齢・性別・出身・病気をからかうボケや下ネタは、その場にいる誰かを笑えなくさせます。ずらす相手は人ではなく、物や状況にすると安心です。

段階4 オチをつける|最後にいちばん大きなずれを置く

オチは、ネタの最後に置くいちばん大きな笑いです。お客さんにとっては「ここで終わり」という合図にもなります。初めてのうちは、次の2つの型のどちらかで作ると決めやすくなります。

  • 立場の入れかえ:教える側と教わる側、店員と客などが、最後に逆になる
  • 言葉の再登場:前半に出てきた言葉やボケが、最後に別の意味で戻ってくる

目覚まし時計の例では、1つ目の「立場の入れかえ」を使います。時計をすすめていた店員が、最後に客へ起き方をたずねてしまう終わり方です。ツッコミの最後の一言のあとに、2人で頭を下げて終わります。いくつかのオチを比べながら決める方法は、「漫才のオチの作り方」で、弱いオチの直し方と一緒に紹介しています。

できあがった1分のネタ「目覚まし時計売り場」

段階1〜4で作ったものを、1本の台本につなげました。店員がボケ、客がツッコミです。

時間
約1分
人数
2人
準備物
なし(机を1つ置くと売り場らしく見えます)
難しさ
★

台本目覚まし時計売り場(約1分)

(家電売り場。客が棚の前で迷っている)

店員いらっしゃいませ。目覚まし時計をお探しですか。

客はい。朝がとにかく苦手で。

店員それでしたら、とっておきの時計がございます。起きるまで、ずっとほめてくれる時計です。

客ほめる?

(店員が、時計になったつもりで客の耳元に近づく)

店員「すごい、目が半分あいた。天才」

客気持ちよくなって、もう一回寝ますよ。

店員では、こちら。鳴る前に「そろそろ鳴りますよ」と教えてくれる時計です。

客教えてくれなくていいんです。いきなり鳴ってください。

店員いちばん人気は、こちら。持ち主より先に二度寝する時計です。

客時計が寝てどうするんですか。

店員「あと5分」とつぶやきながら、毎朝5分ずつ遅れていきます。

客それ、ただの壊れた時計です。

店員お客様、ひとつ伺ってもよろしいですか。

客はい。

店員朝すっきり起きるコツって、何かありますか。

客それを聞きに来たんです。もういいです。

(2人で一礼)

この台本の組み立て

「とっておきの時計がございます」までがフリ、ほめる・予告する・二度寝の3つがボケ、店員が起き方をたずねる所がオチです。自分で作るときも、この並びはそのままにして、設定とボケの中身を入れかえると形になります。

段階5 声に出して練習する|読みながら台本を直す

台本は、声に出して読んだときに初めて直す所が見つかります。書いた日にまず1人で音読し、次の日に2人で読み合わせをしましょう。読み合わせとは、座ったまま台本を見て、セリフを順番に読むことです。

  1. 2人で座ったまま、台本を通して読む
  2. 言いにくいセリフや、ひと息で言えない長いセリフに印をつけ、短く言いかえる
  3. スマホで録音しながら読み、かかった時間を測る
  4. 録音を聞き、笑いが起きそうな所の後ろに少しだけ間をあける(間は、セリフとセリフのあいだの短い沈黙です)
  5. 立ち上がって、本番と同じ向きで通して演じる

練習に入る前に、台本で確かめること

  • どのセリフも、ひと息で言える長さになっているか
  • フリのあと、すぐにボケが来ているか
  • 同じ形のボケが4回以上続いていないか
  • 最後の1行で、終わったことが分かるか

読み合わせから、本番どおりに通して演じる「通し稽古」までの進め方は、「漫才の練習方法」でくわしく説明しています。台本の文字数から、演じたときのおよその時間を出すこともできます。

よくある質問

1人でもネタは作れますか?

作れます。1人で話す漫談や、見えない相手と話す一人コントにすれば、1人で演じられます。書き方の5つの段階は、2人のネタと同じです。

書いたネタが面白いのか、自分では分かりません。

最初はそれが普通です。家族や友人に読んでもらうときは、「面白かったか」ではなく「意味が分からなかった所はあるか」を聞きましょう。伝わらない所を直すだけでも、笑いは起きやすくなります。

ネットで見たネタを使ってもいいですか?

人のネタをそのまま演じるのは避けましょう。参考にするのは「どんな型で作られているか」までにして、設定やセリフは自分で考えます。自分の身近な場面で作ったネタのほうが、話すときに言葉が自然に出てきます。

1本作るのに、どのくらい時間をかければいいですか?

1分ほどのネタなら、設定とボケ出しで1日、台本にまとめて1日、練習に数日と分けると無理がありません。段階ごとに日を変えると、前の日に書いたものを新しい目で見直せます。

まとめ

  • ネタは「設定→フリ→ボケ→オチ→練習」の順に、1段階ずつ作る
  • 設定は「誰が・どこで・何をするか」を1行で書き、誰もが知っている場面を選ぶ
  • ボケは10個出してから3つに絞り、ずれの小さい順に並べる
  • オチは「立場の入れかえ」か「言葉の再登場」で作ると決めやすい
  • 書いたら声に出して読み、言いにくい所と長い所を直す
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