ネタが書けないときは、面白いことを最初から考えようとせず、考える範囲をせまくしてから書き始めると手が動きます。お題を1つに決める、目の前の物から考える、最後の一言から先に決める、といった方法です。
手が止まるのは、才能が足りないからとは限りません。この記事では、書き出しで止まる原因と、今日から試せる5つの書き始め方を、例と一緒に紹介します。
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書き出しで手が止まる3つの原因
ネタが書けないときの頭の中は、だいたい次の3つのどれかになっています。自分がどれに近いかが分かると、試す方法を選びやすくなります。
| 原因 | 頭の中で起きていること | 効きやすい方法 |
|---|---|---|
| 範囲が広すぎる | 「何でもいい」と思うほど、何も浮かばない | 方法1、方法2 |
| 最初から採点している | 書く前に「これはつまらない」と消してしまう | 方法4、方法5 |
| 1行目から順に書こうとする | つかみの一言が決まらず、先へ進めない | 方法3、方法4 |
つかみとは、ネタの最初に置く短い笑いのことです。台本は1行目から書く必要はなく、思いついた所から書いてかまいません。
方法1 お題を先に1つ決める
「何でもいいから面白いこと」を探すと、頭の中の引き出しを全部開けることになり、かえって何も出てきません。先にお題(ネタの題材になる言葉)を1つ決めて、その言葉のことだけを考えます。
お題は、誰もが知っている物や場面がおすすめです。決めたら、そのお題で「よくあること」を5つ、面白さを気にせずに書き出します。
乗った瞬間に、全員が階数のランプを見つめる
1人で乗っているのに、なぜか端に立つ
「閉」を押そうとして、「開」を押してしまう
降りる階を押し忘れて、そのまま1階に戻る
知らない人と2人きりになると、急にスマホを見る
この5行の中に、ネタの種はもう入っています。たとえば「全員がランプを見つめる」なら、「ランプを見つめる時間を、どうにか楽しくしようとする人」という設定が作れます。そこから書き出すと、次のようになります。
台本1行から作った書き出し
(エレベーターの中。AとBは知らない者どうし。2人とも階数のランプを見上げている)
A(小声で)3階……4階……
B……。
A5階。さあ、6階は来るのか。
B来ますよ。エレベーターなので。
お題が思いつかないときは、「大喜利のお題一覧」から1つ選んで始めるのも手です。
方法2 目の前にある物から始める
お題も決められないときは、今、手の届く所にある物を1つ選びます。リモコン、消しゴム、傘、マグカップなど、何でもかまいません。物を見ながら、次の3つの問いに答えていきます。
- この物がしゃべれたら、持ち主に何と言うか
- この物のいちばん困るところはどこか
- この物を、本来とちがう使い方をしたらどうなるか
しゃべれたら:「ボタンを強く押しても、電池は増えません」
困るところ:使いたいときに限って、ソファのすき間にいる
ちがう使い方:会議でマイクのかわりに回して、話す順番を決める
1つ目の答えからは、「リモコンが家族に文句を言う」一人コントが作れます。書き出しは、たとえば次のような形です。
台本リモコンの一人コント(書き出し)
(ソファのすき間から顔を出したリモコン、という気持ちで客席を見る)
リモコンあの、ちょっといいですか。
リモコンさっきから、電源のボタンを親指でぐいぐい押してますよね。
リモコン強く押しても、電池は増えません。
物は目に見えるので、頭の中だけで考えるより言葉が出やすくなります。身の回りから素材を集める方法は、「ネタの素材の集め方」にまとめています。
方法3 最後の一言から先に決める
1行目が出ないときは、反対にネタの最後の一言、つまりオチから決めてしまいます。オチとは、ネタの終わりに置くいちばん大きな笑いのことです。終わり方が決まると、そこへ向かう道を逆にたどって考えられます。途中に入れるボケ(わざと普通からずれたことを言う所)も、オチに向かう方向で考えればよくなります。
先に決めたオチ:案内係「……すみません、ここってどこですか」
そこから決めた設定:駅の案内係に、客が出口への道をたずねる
間に入れるボケ:案内の目印が「さっきまでいた猫」「先週まであったパン屋」と、どんどん頼りなくなる
オチが先にあると、途中のボケをどちらへずらせばいいかが決まります。この例なら、案内係がだんだん迷っていく方向にボケを並べればよいわけです。
方法4 会話を1往復だけ書く
台本全体を考えると重く感じるときは、AとBの会話を1往復だけ書きます。片方が普通のことを聞き、もう片方が少しずれた答えを返す、というだけで十分です。
台本1往復から広げた例
A休みの日って、何してるの?
B休んでる。
Aそういうことじゃなくて。
B横になって、ちゃんと休んでる。
Aくわしく言っても同じなんだよ。
最初の2行が書けたら、「Bはなぜそう答えるのか」を考えます。ここでは「聞かれたことを、言葉どおりにしか受け取らない人」と決めると、次の質問もすぐに作れます。「趣味は?」と聞かれて「趣味は、趣味を探すこと」と答える、という具合です。
方法5 わざと制限をつけて書く
自由に書ける時間ほど、手が止まりがちです。わざと制限をつけると、考える方向が決まって書きやすくなります。
- 時間の制限:タイマーを10分にして、その間にボケを10個書く
- 長さの制限:セリフは全部で20行まで、と決めてから書く
- 形の制限:Bのセリフを全部「質問」にする
- 言葉の制限:関係のない3つの言葉を、全部入れて話を作る
最後の方法は、「三題噺(さんだいばなし)」と呼ばれる、昔からある話の作り方に近いものです。たとえば「自転車・図書館・誕生日」の3つなら、まず1行の設定にします。「誕生日の朝、図書館の返却期限に間に合わせようと、自転車で急ぐ人」といった形です。
制限の中で書いたものは、出来が悪くても「制限のせい」にできます。この気楽さが、頭の中の採点を止めてくれます。
10分でできる書き出し練習
時間の制限を使った、1人でできる練習です。書けない日が続いたら、ネタを書くかわりにこれを1回やってみてください。
- 時間
- 10分
- 人数
- 1人
- 準備物
- 紙とペン、タイマー(スマホで可)
- 難しさ
- ★
- 1分:目に入った物の名前を3つ書き、1つに丸をつける
- 3分:丸をつけた物の「よくあること」を5つ書く
- 3分:その中の1つを使って、AとBの会話を1往復書く
- 2分:Bの答えを、もっとずらした形に2回書き直す
- 1分:いちばん良かった1行に印をつける
10分たったら、途中でもそこで終わりにします。終わりの時間が決まっていると、「うまく書かなければ」という気持ちが軽くなります。
書けた1行を台本につなげるコツ
書き始められたら、次は止まらずに書き進めることが大切です。途中で手が止まりそうなときは、次のことを試してください。
- 書いた物は消さない。気に入らない行も、線を引くだけにして残す
- 続きが出ない所は「(ここにボケ)」と空けておき、先に進む
- いきなり台本の形にせず、メモ→箇条書き→台本の順に形を整える
- その日の最後に、いちばん良かった1行に印をつけて終える
最後に印をつけておくと、次に書くとき、どこから始めればいいかがすぐ分かります。書いたメモの残し方は「ネタ帳の作り方と使い方」で、設定からオチまでの流れは「お笑いのネタの作り方」で説明しています。
よくある質問
毎日書いたほうがいいですか?
毎日でなくても、書く日と時間を決めておくほうが続きます。毎日なら5分だけ、週に1回なら30分、のように短く区切ると、書けない日の重さが減ります。
どうしても何も浮かばない日は、どうすればいいですか?
その日は書くのをやめて、外を歩いたり、前に書いたメモを見返したりする日にしましょう。前に書いた1行が、今日の自分には別の形で使えると気づくことがあります。
人の面白いネタを見ると、自分には書けないと感じます。
見るのは、自分のネタを書き終えてからにしましょう。見るときは感心するだけでなく、笑った所の前にどんな前置き(フリ)があったかをメモします。そうすると、自分のネタに使える型が見つかります。
AIに書き出しを手伝ってもらってもいいですか?
きっかけ作りに使うのはかまいません。出てきた案をそのまま使わず、自分の言葉に直すことが大切です。頼み方と直し方は「AIで漫才の台本を作るときのコツ」で紹介しています。
まとめ
- 書けないときは、考える範囲をせまくしてから書き始める
- お題を1つ決めるか、目の前の物から考えると、最初の1行が出やすい
- 1行目にこだわらず、オチや会話の1往復から書いてもよい
- 時間や長さの制限をつけると、頭の中の採点が止まる
- 書いた物は消さずに残し、いちばん良い1行に印をつけて終える






