ネタの素材の集め方|日常の観察からボケを見つける方法

段ボール箱の扇子や靴下、じょうろ、眼鏡など、ネタの素材になる小物

ネタの素材は、特別な出来事より、毎日見ている場面の中にあります。見慣れた場面に「なぜ?」「もし〜だったら?」と問いをかけ、普通とずれている所をメモしていくと、ボケの種が自然に集まります。

この記事では、観察メモの取り方、違和感を見つけるための10の問い、集めた素材をボケに変える手順を、例と一緒に紹介します。特別な道具はいらないので、今日の帰り道から始められます。

目次目次を閉じる目次を開く
  1. ネタの素材は「みんなが知っている場面」にある
  2. 観察メモの取り方
  3. 違和感を見つける10の問い
  4. 集めた素材をボケに変える手順
  5. 素材からボケを作った例
  6. よくある質問
  7. まとめ

ネタの素材は「みんなが知っている場面」にある

笑いは、お客さんが知っている「普通」から、少しずれた所で起きます。このずれをわざと作って見せるのが、ボケです。だから素材にするのは、多くの人が見たことのある場面がいちばんです。

めずらしい体験談は、聞く人が「普通」を知らないので、どこがずれているのかが伝わりにくくなります。素材が見つかりやすい場所と、見る所の例は次のとおりです。

場所素材になりやすいもの
駅・電車アナウンスの言い回し、改札の前での立ち止まり方
スーパー・お店試食のすすめ方、値札の言葉、レジの列の並び方
職場会議の決まり文句、電話の受け答え、メールのあいさつ
家の中家電の音、リモコンの置き場所、朝の支度の順番
季節の行事大掃除、年賀状、運動会の場所取り

どれも、わざわざ出かけなくても毎日目にするものです。素材は探しに行くより、いつもの場所で気づくものと考えると、毎日少しずつ集まります。ずれが笑いになる理由は、「笑いが起きる仕組み」でくわしく説明しています。

観察メモの取り方

観察とは、いつもの場面を、少しだけ気をつけて見ることです。見たことはすぐに忘れてしまいやすいので、短くメモしておきます。

  1. 観察する時間を決める(通勤の電車の中、昼休みのお店など)
  2. 見たことを、感想を入れずに事実だけ1行で書く
  3. 気になった言葉は、聞こえたとおりに書く(言い回しがそのまま素材になる)
  4. その場で面白くしようとしない。ボケにするのはあとでよい
  5. 1日に3つ集めれば十分、と決めておく
例文1日の観察メモの例

朝:ビルの自動ドアの前で、全員が少し手前で止まってから進む
昼:小さなお店の入り口に「すぐ戻ります」の札。1時間後に通っても、まだかかっていた
夜:スーパーの試食。すすめる声は大きいのに、一切れはとても小さい

メモの書き方の型や、あとで見返す方法は「ネタ帳の作り方と使い方」にまとめています。

観察するときに守ること

人をじっと見つめたり、無断で写真を撮ったり、会話を録音したりするのはやめましょう。メモには名前や、誰のことか分かる書き方を残しません。見た目や年齢、話し方のくせなど、その人自身をからかう素材にもしないでください。

曜日ごとに観察のテーマを決める

何となく見ているだけでは、素材はなかなか残りません。曜日ごとに見るものを決めておくと、同じ景色の中でも目が止まる所が変わります。

曜日観察のテーマ見る所の例
月駅・電車アナウンス、乗りかえの案内、ホームでの並び方
火お店の言葉店員さんの決まり文句、値札や手書きの広告の言い回し
水張り紙・看板「〜しないでください」の注意書き、営業時間の札
木職場や学校の決まり事会議の始まり方、朝のあいさつ、メールの書き出し
金家の中の物家電の音、なくなりやすい物、使っていない物
土人が集まる場所公園、行列、イベントの受付
日見返し1週間のメモに問いをかけて、気になるものに印をつける

違和感を見つける10の問い

観察メモがたまったら、それぞれに問いをかけてみます。違和感とは、「なんだか変だな」と引っかかる感じのことです。問いをかけると、ただの出来事の中から、その引っかかりが見つかります。

問い見つかった素材の例
1. なぜ、みんな同じことをしているのか自動ドアの前で、全員が一度止まる
2. 言葉どおりに受け取ったらどうなるか「足元にご注意ください」で、足元だけを見て歩く
3. 言うこととやることがずれていないか「すぐ戻ります」の札が、1時間かかったまま
4. 大げさにしたらどうなるか試食の一切れが、つまようじの先くらいになる
5. 立場を逆にしたらどうなるか客のほうが店員に「何かお探しですか」と聞く
6. 人以外がそれをしたらどうなるか自動ドアが、入る人を見て開くか迷う
7. 何のためにあるのか分からない物はないか使い方の分からない、洗濯機のボタン
8. 時期をずらしたらどうなるか年賀状を、夏から書き始める人
9. 場所を変えたらどうなるか駅のアナウンスの言い方で、家族に晩ごはんを知らせる
10. 自分だけがやっていることはないか傘を持って出た日だけ、天気予報を何度も見る

全部の問いを使う必要はありません。1つのメモに2〜3個の問いをかけて、引っかかりが大きくなるものを選びましょう。問い2・5・9は、そのままボケの形にもなりやすい問いです。ずらし方の型は「ボケの種類一覧」でも確かめられます。

集めた素材をボケに変える手順

違和感が見つかったら、まずその素材を使うかどうかを確かめます。

素材として使うか迷ったときに確かめること

  • 多くの人が見たことのある場面か
  • 「〜なとき」と一言で説明できるか
  • 誰かをからかったり、傷つけたりしないか
  • 自分が話していて楽しい話題か

使うと決めたら、次の順番でボケにしていきます。

  1. 素材の「普通」を1行で書く(例:駅のアナウンスは、ていねいな決まった言い方をする)
  2. 10の問いから1つ選び、ずらし方を決める(例:場所を変える)
  3. ずらした結果を、セリフか動きにする(例:家で母が、アナウンスの言い方で晩ごはんを知らせる)
  4. 誰が言うと面白いかを決める(例:ふだんはおっとりした母)
  5. 受ける側の一言をつける(例:「普通に呼んでよ」)

5番目の一言は、ツッコミと呼ばれます。ボケのずれを指摘して、お客さんに笑いどころを知らせる役目です。4番目の「誰が言うか」を決めると、同じボケでも言い方や続きが考えやすくなります。

素材からボケを作った例

手順どおりに作った例を、表と短い台本で紹介します。表は、観察メモからボケにした4つの例です。

見たこと使った問いできたボケ
自動ドアの前で、全員が一度止まる6. 人以外がそれをしたら自動ドアのほうが人を見て、開くか迷う
「すぐ戻ります」の札が、1時間かかったまま3. 言うこととやることのずれ札の横に「もう少しで戻ります」「たぶん戻ります」と札が増えていく
試食の一切れがとても小さい4. 大げさにしたら試食の店員が、ようじだけを笑顔で配っている
傘を持って出た日だけ、天気予報を何度も見る10. 自分だけがやっていること雨が降らないと、傘に「ごめんね」と謝りながら帰る

次は、問い9「場所を変えたら」から作った、家族の短い掛け合いです。

時間
約30秒
人数
2人
準備物
おたま(マイクのかわり)
難しさ
★

台本駅のアナウンス風の晩ごはん(約30秒)

(家の台所。母がおたまをマイクのように持つ)

母まもなく、晩ごはんがまいります。食卓の前で、一列に並んでお待ちください。

子普通に呼んでよ。

母本日のからあげは、1人3個での運行となっております。

子からあげは運行しないでしょ。

母おかわりをご希望のお客様は、次のごはんをご利用ください。

子次っていつ。明日の朝?

素材が1つでも、言い回しを3回ずらすと短いネタになります。駅のアナウンスのように、誰もが聞いたことのある決まった言い方は、それだけで良い素材です。

よくある質問

素材は、自分が体験したことでないとだめですか?

そんなことはありません。見たこと、聞こえた言葉、季節の行事など、多くの人が知っている場面なら何でも素材になります。自分の体験を使う場合も、ほかの人が「分かる」と思える部分を中心にすると伝わりやすくなります。

ニュースや話題の出来事を素材にしてもいいですか?

実在の人をからかうものや、事件や災害など、つらい思いをした人がいる出来事は避けましょう。話題の出来事は、時間がたつとお客さんに伝わらなくなることもあります。長く使えるのは、毎日の暮らしの中の場面です。

素材は集まるのに、ボケが思いつきません。

ずらし方を先に1つ決めてから考えると、ボケが出やすくなります。まずは10の問いのうち、「言葉どおりに受け取ったら」と「場所を変えたら」の2つだけを、すべての素材にかけてみましょう。それでも出ないときは、言う人を変えると見え方が変わります。

集まった素材が、どれも小さな話ばかりです。

小さな話のほうが、ネタの素材には向いています。「それ、ある」と感じてもらえると、そこから笑いが起きやすくなるからです。共感で笑わせる作り方は「あるあるネタの作り方」で紹介しています。

まとめ

  • ネタの素材は、多くの人が知っている毎日の場面の中にある
  • 観察メモは、感想を入れずに見たことを1行で書き、1日3つを目安に集める
  • 集めたメモに「なぜ?」「逆にしたら?」などの問いをかけて、違和感を見つける
  • ボケにするときは、ずらし方・言う人・受ける一言の順に決める
  • 人をじっと見たり、その人自身をからかったりする素材にはしない
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