笑いが起きる仕組み|ずれ・緊張と緩和をネタ作りに使う方法

絵を描いた3枚のカードを机に並べ、ネタの流れを組み立てる人

笑いは、「普通はこうだ」と思っていたことから、少しずれたことが起きたときに生まれます。ネタ作りでは、このずれを「予想を裏切る」形で見せたり、「緊張と緩和」の流れにのせたりすると、笑いが起きやすくなります。

笑いの仕組みにはいろいろな説明がありますが、ここではネタ作りにそのまま使える3つに絞りました。それぞれを例文で説明し、最後にネタへ組み込む手順を紹介します。

目次目次を閉じる目次を開く
  1. 仕組み1 ずれ|「普通」と少しちがう
  2. 仕組み2 予想を裏切る|フリで期待させて外す
  3. 仕組み3 緊張と緩和|張りつめた空気をゆるめる
  4. 笑いになるずれ、ならないずれ
  5. 3つの仕組みをネタに組み込む手順
  6. ウケないときは仕組みから原因を探す
  7. よくある質問
  8. まとめ

仕組み1 ずれ|「普通」と少しちがう

笑いのいちばんの元は、ずれです。ずれとは、お客さんが知っている「普通」と、目の前で起きていることの違いのことです。普通を知っているからこそ、違いに気づいて笑えます。

例文ずれの例

毎朝ジョギングをしています。家の中で。
コーヒーは、ブラックしか飲みません。砂糖を5杯入れて。
人見知りはしないほうです。犬には。

どれも、前半で「普通」を思い浮かべさせ、後半でそれとずらしています。ずれ方には、大きく分けて次の3つがあります。

ずれ方内容例
言葉のずれ言いまちがい、意味の取りちがえ「お皿を下げて」と言われて、自分の頭を下げる
行動のずれ場違いなこと、大げさなこと図書館で、ささやき声のまま全力で応援する
立場のずれ役割や上下が入れかわる新人が、部長に仕事の心がまえを教える

ずれは、小さすぎると気づかれず、大きすぎると何の話か分からなくなります。最初は小さめのずれから始め、少しずつ大きくしていくと、お客さんがついてきやすくなります。ずれ方をもっと細かく分けた型は、「ボケの種類一覧」で例文つきで紹介しています。

仕組み2 予想を裏切る|フリで期待させて外す

ずれを笑いにするには、お客さんに「次はこうなるはず」と予想させてから外すのが近道です。予想させるための前置きを「フリ」、それを外すことを「ボケ」と呼びます。

よく使われるのが、3つ並べて3つ目で外す形です。2つ目までで「この流れか」と思わせ、3つ目で予想と違うものを出します。

例文3つ目で外す例

休みの日は、映画を見て、本を読んで、そのあと3時間かけて昼寝の準備をします。
得意料理は、カレーと、肉じゃがと、レンジで温めるごはんです。
部屋にあるのは、ベッドと、机と、まだ組み立てていない本棚です。

予想が強いほど、外れたときの笑いは大きくなります。そのため、フリはお客さんが迷わない、ありふれた言葉で作ります。前半に置いたフリを最後に効かせる作り方は、「ネタの伏線回収のやり方」でくわしく紹介しています。

予想どおりが笑いになることもある

反対に、お客さんの予想どおりのことが起きて笑いになる場合もあります。同じボケを何度もくり返す「天丼」がその代表です。

1回目はずれとして笑い、2回目で「また来た」と気づき、3回目は「来るぞ」と待ちかまえたところに来るので笑いになります。お客さんが自分の予想が当たったことを楽しむ形で、これも予想を使った笑いの1つです。

仕組み3 緊張と緩和|張りつめた空気をゆるめる

緊張と緩和は、笑いの説明としてよく知られた考え方です。まじめな空気や張りつめた空気が、ふっとゆるんだ瞬間に笑いが起きやすくなります。

たとえば、静まりかえった会議で深刻な話が始まりそうなのに、出てきたのがとても小さなことだったとします。張りつめていた分だけ、ゆるんだときの笑いが大きくなります。

例文緊張と緩和の例

(静まりかえった会議室で、部長が深刻な顔で立ち上がる)
部長「みんなに、伝えなければならないことがある」
部長「……給湯室の電気ポット、今日からボタンの位置が変わります」

緊張を作るには、声を落とす、ゆっくり話す、黙る時間を作る、といった方法があります。この黙る時間を「間(ま)」といい、間の取り方は「漫才の間とテンポの取り方」で練習できます。

この流れは、逆向きにも使えます。笑いが続いてゆるんだ空気のあとに、まじめな一言を置くと、その言葉がまっすぐ届きます。結婚式の余興で、笑わせたあとに最後だけまじめにお祝いを言う形は、この使い方です。

笑いになるずれ、ならないずれ

ずれがあれば、いつでも笑いになるわけではありません。お客さんが「心配」「痛そう」「かわいそう」と感じると、笑いは止まります。笑いになるのは、安心して見ていられるずれです。

笑いになりやすいずれ笑いになりにくいずれ
誰もが知っている場面でのずれ知らない人が多い、専門的な場面でのずれ
物や状況、言葉がずれている人の見た目や年齢、出身をからかっている
本人がちょっと困る、小さな失敗誰かが本当に傷ついたり、痛がったりする
ツッコミで「ずれている」と示されるずれたまま放っておかれ、お客さんが戸惑う

ツッコミとは、ボケのずれを指摘して、「ここが笑いどころです」とお客さんに知らせる役目です。ツッコミがあると、お客さんは安心して笑えます。

人を下げる笑いは使わない

人の見た目や年齢、性別、出身、病気をからかう笑いは、その場にいる誰かを傷つけます。ずれは、人ではなく物や状況、言葉で作りましょう。

3つの仕組みをネタに組み込む手順

ここまでの3つは、1本のネタの中で組み合わせて使えます。次の順番で考えると、仕組みを形にしやすくなります。

  1. 場面の「普通」を1行で書く(例:大事な発表は、重い内容のことが多い)
  2. お客さんに予想させるフリを作る(例:封筒、深刻な声、「1年隠してきた」という言葉)
  3. 緊張を作る所を1か所決める(例:封筒をゆっくり開ける)
  4. ずれを用意し、小さいものから順に並べる(例:スタンプがたまった→押してもらうのに3か月)
  5. ツッコミでずれを言葉にする(例:「隠すほどのこと?」)
  6. 最後にもう一度緊張を作り、いちばん大きなずれでゆるめて終わる

この手順で作った、2人の短いネタです。

時間
約40秒
人数
2人
準備物
封筒、ポイントカード(紙で作ったものでよい)
難しさ
★★

台本重大発表(約40秒)

(AとBが並んで立つ。Aが真剣な顔で封筒を取り出す)

A今日は、大事なお知らせがあります。

Bえ、急にどうしたの。

Aこの1年、ずっと隠してきたことです。

(Aが封筒をゆっくり開ける。Bが息をのむ)

A……ポイントカードのスタンプが、全部たまりました。

B隠すほどのこと?

A最後の1個を押してもらうのに、3か月かかりました。

Bもっと買い物に行けばよかったでしょ。

Aそして、もう1つ発表があります。

(Aがまた真剣な顔になる)

Aこのカード、きのうで期限が切れていました。

Bそれが今日いちばんの重大発表だよ。

封筒を開けるまでが緊張、スタンプの話がずれによる緩和です。「もう1つ発表があります」で、同じ形をもう一度使っています。最後は、ためたスタンプが無駄になるという、いちばん大きなずれでゆるめます。

ウケないときは仕組みから原因を探す

ネタを演じて思ったほど笑いが起きなかったときも、3つの仕組みに分けて考えると、直す所が見つけやすくなります。

お客さんの様子考えられる原因直し方
ボケのあと、きょとんとしている「普通」が伝わっていないフリを1行足すか、もっと身近な場面にする
笑いはあるが小さい予想が弱いか、ずれが小さいフリをはっきりさせ、ずれを大きくする
途中から笑いが減っていく同じずれ方が続き、先が読まれている言葉・行動・立場と、ずれ方を変える
最初から最後まで同じ調子緊張を作る所がない声を落とす所や、黙る間を1か所作る
笑わずに、ざわついている安心して見られないずれになっているずれの相手を、人から物や状況に変える

直すときは、一度に全部を変えずに、表の上から1つずつ試しましょう。録画を見ながら原因を探す順番は、「ネタがウケない原因と直し方」でくわしく紹介しています。

よくある質問

仕組みを知れば、面白いネタが書けますか?

仕組みは、ネタを考えたり直したりするときの道具です。知っているだけで笑いが取れるわけではないので、書いて、声に出して、人に見てもらって確かめることが欠かせません。ウケなかったときに、「フリが弱かったのか」「ずれが小さかったのか」と原因を考えるときに特に役立ちます。

人によって笑う所が違うのはなぜですか?

何を「普通」と思っているかが、人によって違うからです。年代や仕事、住んでいる地域によって、知っている「普通」は変わります。ネタを作るときは、誰の前で演じるかを先に決めておくと、ずれが伝わりやすくなります。

スピーチや挨拶にも使えますか?

使えます。まじめな話の途中に小さなずれを1つ入れるだけでも、会場の空気がやわらぎます。くわしい入れ方は「スピーチで笑いを取るコツ」で紹介しています。

まとめ

  • 笑いは、お客さんが知っている「普通」からのずれで生まれる
  • フリで予想させてから外すと、ずれが笑いになりやすい
  • 張りつめた空気をゆるめる「緊張と緩和」で、笑いを大きくできる
  • 安心して見られるずれだけが笑いになる。人をからかうずれは使わない
  • ネタでは、普通→フリ→緊張→ずれ→ツッコミの順に組み込む
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