物ボケは、身近な道具を手に取り、形・色・動きのどれかから別の物に見立てて、動きと一言で笑わせるボケです。見立てただけで終わらず、最後に「その道具らしさ」がばれる一言を足すと、笑いが大きくなります。
この記事では、見立ての3つの入口と、一言の作り方を順に説明します。ざるやしゃもじなど、家にある道具10個で作った物ボケの例と、ひとりでできる練習法も紹介します。
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物ボケは「見立て」と「ばれる一言」でできている
物ボケは、ボケの型の1つである「見立て」を、道具を使って見せる芸です。宴会の余興や、お笑いの練習のお題として、箱から道具を引いてその場で演じることもよくあります。ボケの型の全体は「ボケの種類一覧」で紹介しています。
1つの物ボケは、2つの部分でできています。
- 見立てる:道具を、別の物のように持って動く
- ばれる一言:その道具の本当の姿がのぞく一言で落とす
たとえば、ざるを顔の前に構えて剣道の面に見立て、「メン!」と打ちこむとします。ここまでは「似てる」と感心されるだけです。そのあと、ざるの中をのぞきこんで「……そうめんじゃありません」と言います。ざるは本来、麺の水切りに使う道具です。その正体が顔を出すことで、笑いになります。
見立てで「なるほど」と思わせ、一言で「やっぱりざるだ」と気づかせるのが、物ボケの基本の流れです。
見立ての3つの入口(形・色・動き)
道具を手に取ったら、次の3つの入口から順に見ていきます。1つの入口で思いつかなければ、次の入口に移りましょう。
| 入口 | 道具のここを見る | 見立ての例 |
|---|---|---|
| 形 | 丸い、細長い、くぼんでいる、穴があいている | 丸い→ハンドル、細長い→ゴルフクラブ、くぼみ→帽子 |
| 色 | 白、黄色、緑、赤など、目立つ色 | 白→白旗や雪、黄色→チーズ、赤→信号の「止まれ」 |
| 動き | かぶる、耳に当てる、振る、回す、持ち上げる | かぶる→ヘルメット、耳に当てる→電話、持ち上げる→ダンベル |
いちばん思いつきやすいのは、動きの入口です。「かぶる」「耳に当てる」「振る」の3つを、どんな道具でも順に試してみてください。動いてみると、手元の道具が何に見えるかが、自分でも分かってきます。
色の入口は、ほかの2つと組み合わせると強くなります。黄色いスポンジは、色だけでなく、穴のあいた形もチーズに似ているので、見た人にすぐ伝わります。
見立てを笑いに変える一言の作り方
見立てが伝わったら、最後の一言でずらします。一言には、主に2つの作り方があります。
| 一言の作り方 | 考え方 | 例 |
|---|---|---|
| 正体がばれる | 道具の本当の使い道や、性質が出てしまう | 紙皿のハンドルを回すと、ハンドルのほうが曲がる |
| 場面がずれる | 見立てた場面に、ありえない事情を足す | 白いタオルの白旗を振って「まだ何も始まってません」 |
正体がばれる一言を作るときは、「この道具は、ふだん何に使うか」「どんな性質があるか」を先に書き出します。ざるなら「水が抜ける」「麺をゆでる」、スポンジなら「泡が出る」「水を吸う」です。この性質が、見立てた場面で顔を出すようにします。
動き、間、一言の順に見せる
先に動きで見立てを見せ、ひと呼吸おいてから一言を言います。動きながら一言を言うと、見ている人が「何に見立てたか」を分かる前に、オチを聞くことになります。
身近な道具10個での物ボケの例
家にある道具で作った物ボケの例です。1つの道具につき、2つの見立てを紹介します。かっこの中は、使った入口です。
台所の道具(1〜5)
| 道具 | 見立て(入口) | 動きと一言 |
|---|---|---|
| 1 ざる | 剣道の面(形) | 顔の前に構えて「メン!」と打ちこみ、中をのぞいて「……そうめんじゃありません」 |
| 1 ざる | プラネタリウム(形) | 電気にかざして下からのぞき、「今夜は、星がよく見えますね」 |
| 2 おたま | 手鏡(形) | 顔を映して「鏡よ鏡……映ってるのは、ゆうべのカレー」 |
| 2 おたま | 虫めがね(形) | 床をのぞきこみながら歩き、「ふむ。犯人は、台所にいる人ですね」 |
| 3 しゃもじ | 卓球のラケット(形・動き) | 鋭く打ち返して「……ご飯つぶが、相手のコートに入りました」 |
| 3 しゃもじ | 打ち出の小づち(動き) | 振りながら「お金よ、出てこい」。手のひらを見て「……出てきたのは、おこげ」 |
| 4 紙皿 | 車のハンドル(動き) | 両手で回して「右に曲がります」。紙皿をふにゃっと曲げて「……ハンドルのほうが曲がりました」 |
| 4 紙皿 | ベレー帽(形) | 頭にななめにのせて「パリで買った帽子です。少しだけ、ソースの香り」 |
| 5 黄色いスポンジ | チーズ(色・形) | 香りをかいで「いい熟成です」。ぎゅっとにぎって「……泡が出てきました」 |
| 5 黄色いスポンジ | 消しゴム(形・動き) | 机をこすって「まちがいを、全部吸いこみます」 |
部屋の道具(6〜10)
| 道具 | 見立て(入口) | 動きと一言 |
|---|---|---|
| 6 傘 | ゴルフクラブ(動き) | 閉じたまま振って「ナイスショット」。空を見上げて開き「雨だ。ちょうどよかった」 |
| 6 傘 | パラボラアンテナ(形) | 開いて逆さに持ち、「宇宙からの電波を受信中……あ、雨水もたまってきた」 |
| 7 白いタオル | 白旗(色・動き) | 大きく振って「参りました」。少し間をおいて「……まだ何も始まってません」 |
| 7 白いタオル | 雪玉(色・形) | 丸めて投げるまねをして「雪合戦だ」。急いで拾いに行き「1個しかないので」 |
| 8 空のペットボトル | ダンベル(動き) | 力をこめて持ち上げ、「中身がないので、毎日続けられます」 |
| 8 空のペットボトル | 消火器(形・動き) | 「火事だ!」と振りかけるまねをして、「……空でした」 |
| 9 ハンガー | はてなマーク(形) | フックを上にして頭の横に持ち、首をかしげて黙る |
| 9 ハンガー | 干されたスーツ(動き) | 首の後ろにかけて、ぶら下がるように力を抜き、「スーツの気持ちが、少し分かりました」 |
| 10 段ボール箱 | テレビ(形) | 箱を顔の前に構え、窓のように開けた所から「ニュースをお伝えします。チャンネルは変えないでください」 |
| 10 段ボール箱 | ロボット(形) | 頭からかぶって「ワタシハ、ロボット」。箱が前にずれて「……前ガ、見エマセン」 |
9の「はてなマーク」のように、一言を言わずに動きだけで見せる物ボケもあります。セリフのない見せ方のコツは「セリフなしのコントの作り方」が参考になります。
物ボケの練習法
物ボケは、道具を手に取ってから見せるまでの速さが大切です。次の順番で練習すると、その場で思いつく力がついていきます。
- 家にある道具を1つ選び、1分で見立てを5つ出す
- 5つのうち2つに、正体がばれる一言を付ける
- 動き、間、一言の順に、声に出して演じる
- スマホで撮り、音を消して見て、何に見立てたか分かるか確かめる
- 慣れてきたら、箱から目をつぶって道具を引き、30秒以内に1つ見せる
1の段階では、面白いかどうかは考えなくてかまいません。物を別の物に見るのは、例えツッコミと同じ頭の使い方です。言葉で例える練習は「例えツッコミのコツ」で紹介しているので、あわせて取り組むと発想が広がります。
宴会でやる物ボケ大会
みんなで遊ぶときは、中が見えない箱に道具を入れておき、順番に引いて演じる形にすると盛り上がります。
- 時間
- 10〜15分
- 人数
- 3人〜(1人ずつ順番に)
- 準備物
- 道具8〜10個と、中が見えない箱か袋
- 難しさ
- ★★
道具は、ざる、紙皿、ハンガーのように、形がはっきりちがう物を混ぜておきます。似た形の物ばかりだと、見立ても似たものになりがちです。1人で前に出てやる一発芸として使うなら、「簡単でうける一発芸20選」も参考になります。
道具の選び方と気をつけること
物ボケの道具は、軽くて、持ちやすく、形に特徴がある物が向いています。台所の道具や文房具、日用品など、どの家にもある物を選ぶと、見ている人にも何の道具かがすぐ伝わります。
道具を用意するときに確かめること
- 刃物やとがった物は入れない(はさみ、包丁、フォークなど)
- 割れる物は使わない(ガラスのコップや陶器の皿は、紙コップや紙皿にかえる)
- 会場の備品や人の持ち物は、持ち主に断ってから使う
- 料理や飲み物など、食べ物では遊ばない
- 振る動きは、周りの人やテーブルとの距離をとってから
人の見た目に見立てない
「このモップ、〇〇さんの髪形に似てる」のように、その場にいる人の見た目に見立てるのはやめましょう。言われた人が笑っていても、からかいになります。見立てる先は、物や場面、自分自身にしましょう。
よくある質問
道具を見ても、何も思いつきません。
動きの入口から始めましょう。道具を「かぶる」「耳に当てる」「振る」の3つを順に試すだけで、帽子、電話、スポーツの道具など、何かしらの見立てが見つかります。思いつかないまま止まるより、まず体を動かすほうが早く浮かびます。
一言がなくても、物ボケになりますか?
なります。見立てがはっきり伝われば、「似てる」という笑いは起きます。ただ、もう一段笑いを大きくしたいなら、道具の本当の使い道を書き出して、それが見立てた場面で出てしまう一言を足してみてください。
落語の扇子のような見立てとは、ちがうものですか?
考え方は同じです。落語では、扇子を箸や筆に見立てて、物語の中の1つの道具として使います。物ボケは、見立てそのものを笑いにする点がちがいます。落語の見立てを知りたいときは「落語風の一人芝居の作り方」を見てください。
まとめ
- 物ボケは、道具を別の物に見立て、正体がばれる一言で落とす
- 見立ては、形・色・動きの3つの入口から考える
- 思いつかないときは、「かぶる」「耳に当てる」「振る」の動きから試す
- 動き、間、一言の順に見せると、見立てとオチの両方が伝わる
- 刃物や割れ物は使わず、人の見た目には見立てない





