AIで漫才の台本を作るときのコツは、AIを設定やボケの「候補出し」と「下書き」の係として使うことです。どれを選ぶか、2人の関係、間、オチは、自分たちで決めます。AIの下書きはボケの形が単調になりやすいので、2人で声に出して読みながら、自分たちの言葉に直して仕上げます。
この記事では、漫才の下書きを頼むときの例文4つと、AIの下書きにありがちなくせ、それを直す手順を、直す前と後の台本で紹介します。著作権や大会の決まりで気をつけることもまとめました。
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AIに任せる所と、自分たちで決める所
ここでいうAIは、文章で頼みごとを送ると、文章で返してくれるチャット形式のAIのことです。漫才の台本づくりでは、工程ごとに向き不向きがはっきりしています。
| 台本づくりの工程 | AIに頼めること | 自分たちで決めること |
|---|---|---|
| 設定 | 案を10個、20個と数多く出す | どの案なら2人が自然に演じられるか |
| 2人の性格と関係 | ほとんど頼めない | 本当の2人の関係や、くせをもとに決める |
| ボケ | 候補をたくさん出す | どれを残し、どの順に並べるか |
| ツッコミ | 言い回しの候補を出す | 自分の口から自然に出る言葉か |
| 間とテンポ | 頼めない | 読み合わせで決める |
| オチ | 案を出す | 最後に何を残して終わるか |
漫才は、2人がその場で会話しているように見せる芸です。選ぶこと、2人らしさを足すこと、間を決めることは、人にしかできない仕事と考えておきましょう。動画の台本でAIを使うときのコツは、「YouTubeの台本をAIで作るコツ」で紹介しています。
漫才の下書きを頼むときの例文4つ
AIへの頼み方は、短いと、どこかで見たような下書きが返ってきます。2人の性格、ボケの形、長さ、避けたいことを具体的に書きましょう。ここでは「スマホの機種変更」をテーマにした例で紹介します。
漫才の設定の案を10個出してください。
・テーマ:スマホの機種変更
・2人は高校からの友人。ボケは物を大事にしすぎる性格、ツッコミはさっぱりした性格
・「〜したら、〜でした」と出来事を報告するだけの案は入れない
・1案は1行で、「誰が、何をしようとして、どうずれるか」が分かるように書く
・実在の芸人さんのネタや、テレビ番組に似せない
次の設定で、2分ほどの漫才の下書きを書いてください。
設定:機種変更に来たのに、前のスマホの欠点まで新しいスマホに移したがる客と、店員
・ボケが「機種変更の練習をさせて」と言い、ツッコミが店員の役をする形で始める
・セリフは全部で600字くらい。ボケは8〜10個
・同じ形のボケが続かないようにし、「〜も移して」は3回までにする
・ツッコミは1回20字以内で、理由の説明をしない
・最後は、最初の「機種変更」に戻るオチにする
・人の見た目や年齢、性別をからかうボケは入れない
2分の漫才のセリフは、600字前後がひとつの目安です。話す速さはコンビによってちがうので、下書きが出たら一度読んで時間を測り、字数を調整してください。
次のボケに対するツッコミを、10通り考えてください。
ボケ:「写真と、連絡先と、それから、この画面のひびも」
・1つ15字以内
・「なんでだよ」「いや」で始めない
・例えを使ったものを3つ以上入れる
次の漫才の台本を読んで、笑いが弱くなりそうな所を3つ、理由と一緒に挙げてください。
直した台本は書かずに、指摘だけにしてください。
(ここに、自分たちで直した台本を貼る)
頼み方4で「直した台本は書かずに」と付けるのが大事です。AIに書き直してもらうと、せっかく自分たちの言葉にした部分が、またAIの言い回しに戻ってしまいます。指摘だけをもらい、直すのは自分たちで行いましょう。
AIの下書きにありがちな5つのくせ
AIの下書きには、漫才としては弱くなりやすい、決まったくせがあります。次の台本は、そうしたくせを分かりやすくまとめた例です。
台本下書きの例(AIにありがちな形)
Aどうも、よろしくお願いします。最近、スマホを新しくしたんですよ。
Bへえ、いいですね。
Aお店に行ったら、店員さんがとても親切で、3時間も説明してくれました。
Bいや、長すぎるでしょう。そんなに説明することはないですよ。
A新しいスマホは画面が大きくて、大きすぎて部屋が全部うつりました。
Bなんでですか。それはもう鏡じゃないですか。
Aカメラもすごくて、撮った写真が本物より本物みたいでした。
B意味が分からないですよ。本物はどっちなんですか。
Aとても満足しています。
Bもういいですよ。
一つひとつのボケは成り立っていても、漫才としては笑いが積み上がりません。どこが弱いのかを、表で整理します。
| ありがちなくせ | 下書きのどこに出ているか | 直し方 |
|---|---|---|
| ボケが同じ形のくり返し | 「〜したら、〜でした」の報告が3回続く | ボケの型を変える(勘違い、言葉どおり、くり返しなど) |
| ツッコミが説明になる | 「長すぎるでしょう。そんなに説明することはないですよ」 | 短く言い切るか、例えにする |
| 2人の関係が見えない | Bが聞き役だけで、性格がない | 2人の性格と、言い合う理由を決める |
| ボケどうしがつながらない | 店員、画面、カメラの話がばらばら | 設定を1つにしぼり、だんだん大きくする |
| オチがない | 「とても満足しています」で終わる | 最初の話題に戻るなどして締める |
ボケの型が同じものばかりになっていないかは、「ボケの種類一覧」の12の型に当てはめて見ると分かります。
下書きを自分たちのネタに直す手順
AIの下書きは、次の順番で直していきます。全部を一度に直そうとせず、1つずつ進めるのがコツです。
- 2人で声に出して読み合わせ、言いにくい所に印をつける
- いちばん広がりそうなボケを1つ選び、それを設定にする
- ボケを書き出し、型がかたよっていないか見る
- ツッコミを、1回20字以内に縮める
- 2人の性格や、自分たちの体験を足す
- オチを決めて、最初の話題とつなげる
- 時間を測り、持ち時間に合わせて削る
上の下書きを、この手順で直した例です。「機種変更に来たのに、前のスマホと同じがいい客」という設定にしぼり、2人で役を演じる形にしました。
- 時間
- 約1分
- 人数
- 2人
- 準備物
- なし(Aがスマホを1台持つと、場面が伝わりやすい)
- 難しさ
- ★★
台本自分たちのネタに直した例(約1分)
A機種変更の練習をさせて。お店で、うまく言えるか不安で。
Bいいよ。ぼくが店員をやるね。……いらっしゃいませ。今日はどうされましたか。
A機種変更をお願いします。
Bかしこまりました。データは、新しいスマホに移しますか。
Aはい。写真と、連絡先と、それから、この画面のひびも。
Bひびは移せません。
Aじゃあ、電池がすぐ減るところも。
Bそれも移せません。新しいほうは、電池が長持ちします。
Aじゃあ、せめて、この重さだけでも。
B新しいほうが、軽くなっております。
Aひびも、電池も、重さも、ないんですか。
Bはい。全部、よくなっております。
A(前のスマホをじっと見て)……それ、もう、ぼくのスマホじゃない気がする。
Bお客さま、なぜ機種変更に来られたんですか。
A……ケースが、古くなったので。
B(店員をやめて)それ、機種変更じゃなくて、ケース変更だよ。
直したところ
「〜も移して」を3回くり返し、ひび、電池、重さと少しずつ大きくしています。ツッコミは店員の口調で短く受け、最後の1回だけ、役をやめて言い切りました。オチは、最初の「機種変更」という言葉に戻して締めています。
オチの作り方や、弱いオチの直し方は「漫才のオチの作り方」で詳しく紹介しています。
オリジナルのネタにするための工夫
AIは、同じような頼み方をすると、似た案を返しやすいものです。ほかの人のネタと似てしまわないように、自分たちにしかない材料を、頼む前に用意しておきましょう。
いちばん効くのは、ネタの「核」になる1行を、自分で先に書いておくことです。核とは、「誰が、何をしようとして、どうずれるか」を1行にしたものです。日常で見かけたことや、相方の本当のくせから作ると、AIには出せない1行になります。
「静かな店が好き」と言いながら、店でいちばん大きな声で注文する人
「一口ちょうだい」と言って、毎回、半分食べてしまう友人
道に迷わないよう地図を3種類持ってきて、どれを見るかで迷う人
核の1行を決めてからAIに渡せば、AIの役目は「広げる手伝い」になります。ネタの中心は、自分たちのものとして残ります。
著作権と大会の決まりで気をつけること
AIを使っても、ほかの人のネタをまねしてよいことにはなりません。次のような頼み方や使い方は避けましょう。
- 実在の芸人さんの名前を出して、「〇〇風に書いて」と頼む
- ほかの人のネタや番組の書き起こしを貼って、言いかえさせる
- 出てきたボケやフレーズに見覚えがあるのに、そのまま使う
AIの下書きには、有名なネタやギャグに似た言い回しが混ざることがあります。どこかで聞いた気がする所は、自分たちの言葉に置きかえましょう。ネタのまねがどこから問題になるかは「漫才のネタに著作権はある?」で説明しています。
自分で手を入れるほど、自分のネタになる
AIが作っただけの文章は、人の創作として扱われず、著作権で守られないことがあると考えられています。設定の核を自分で決め、セリフを大きく直していくことが、ネタを自分たちのものにする近道です。
AIで作ったネタを人前で演じる前に確かめること
- 実在の人や芸人さんのネタに似ている所がないか
- 大会やコンクールなら、応募の決まりにAIの使い方の項目がないか
- 使ったAIの利用規約で、作った文章を発表してよいか
- 未発表のネタを入力するとき、入力した内容がどう扱われる設定になっているか
- 人の見た目や年齢、性別をからかうボケが残っていないか
よくある質問
AIを使ったネタで、大会やコンクールに出てもいいですか?
大会ごとに決まりがちがいます。応募要項にAIの使い方についての項目がないか、必ず確かめましょう。分からないときは、主催者に問い合わせるのが確実です。台本のコンクールに応募するときの準備は「漫才・コントの台本コンクールに応募するには?」を見てください。
「もっと面白くして」と頼んでも、面白くなりません。
どこを、どの型で直すかを指定しましょう。「3つ目のボケを、言葉どおりに受け取る型で5案」のように、場所と形を決めて頼むと、使える案が出やすくなります。
相方が、AIを使うことに反対しています。
使う場面を2人で決めておくと、話がまとまりやすくなります。たとえば「設定の候補出しと、台本の弱い所の指摘だけに使う」と決め、セリフは2人で書くようにします。最初は、頼み方4の「指摘だけもらう」使い方から試すのがおすすめです。
まとめ
- AIには設定やボケの候補出しを任せ、選ぶことと間とオチは自分たちで決める
- 頼むときは、2人の性格、ボケの形、長さ、避けたいことを具体的に書く
- 下書きは、報告型のボケ、説明するツッコミ、オチがない所を直す
- ネタの核になる1行を自分で書いてから頼むと、自分たちのネタになる
- 芸人さんの名前で頼まず、大会の決まりと利用規約を確かめる






