サイレントコントは、セリフを使わず、動きと表情だけで場面を伝えて笑わせるコントです。作るときは、見えない物の「形・重さ・位置」を決め、ふだんより大きく、1つずつ区切って動くと、客席に伝わります。
この記事では、パントマイムとのちがい、見えない物を見せる決まり、動きの大きさ、話の組み立て方を説明します。そのまま演じられる約2分の構成例も紹介します。
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サイレントコントとパントマイムのちがい
パントマイムは、見えない物を、動きだけで「そこにある」ように見せる表現です。サイレントコントは、その表現も使いながら、セリフなしで笑いの話を見せるコントのことです。
| くらべること | パントマイム | サイレントコント |
|---|---|---|
| 目的 | 見えない物があるように見せる | 話の流れで笑わせる |
| 見どころ | 動きの正確さ | ずれていく展開とオチ |
| 音 | 使わないことが多い | 効果音を使うこともある |
| 長さの目安 | 数十秒の短いものも多い | 1〜3分 |
言葉を使わないので、子どもや、日本語が分からない人にも伝わるのが強みです。宴会のようにざわついた会場でも、目で見て分かるので、笑いが届きやすくなります。見えない「人」と話す形にしたいときは、「一人コントの作り方」も参考になります。
見えない物を「ある」ように見せる3つの決まり
見えない物を見せるときは、動き出す前に、次の3つを決めておきます。
- 形:手の形を、その物の形に合わせて固める(ドアノブなら丸くにぎる)
- 重さ:持ち上げる前に体に力を入れ、置いたあとは体をふっとゆるめる
- 位置:一度置いた物には、次も同じ場所、同じ高さに手を伸ばす
一度決めた形と位置は、最後まで変えないことがいちばん大切です。ドアを開けたのに、帰りに別の場所から出ていくと、客席は「ドアがなかった」と感じてしまいます。
| 見えない物 | 手と体の形 | 気をつけること |
|---|---|---|
| ドア | ノブを丸くにぎり、手首ごと回す | 開けた場所を覚え、閉めるまで位置を変えない |
| 重い段ボール | 両手を箱の幅に広げ、腰を落として持ち上げる | 下ろした瞬間に、体を少し浮かせる |
| 綱 | こぶしを前後に2つ並べ、体を後ろに傾ける | 両手のこぶしの間かくを変えない |
| 壁 | 手のひらを平らにして、ぴたりと止める | 手のひらは動かさず、体のほうを動かす |
| びんのふた | 片手でびんを、もう片方の手でふたを包む | ふたを回すたびに、びんを持つ手も力ませる |
| 傘 | 柄をにぎり、もう片方の手を柄にそって押し上げて開く | 開いたあとは、頭の上の高さを変えない |
動きの大きさは会場の広さで決める
サイレントコントの動きは、ふだんの動きより大きくします。客席のいちばん後ろの人に届くかを基準にしましょう。
| 会場 | 動きの大きさの目安 | 表情 |
|---|---|---|
| 10人ほどの部屋 | ふだんの1.5倍ほど | 細かく変えても見える |
| 宴会場や教室 | ふだんの2倍ほど | 眉と口を大きく動かす |
| 体育館やホール | ふだんの3倍ほど | 表情より、体全体の形で気持ちを見せる |
| スマホの動画 | ふだんどおり〜1.5倍ほど | 顔が大きく映るので、表情で見せる |
動きを1つずつ区切って見せる
動きと動きのあいだで、一瞬止まります。止まることで、客席は「今、何をしたか」を受け取れます。
- 物を見てから、手を伸ばす(目線が先、体があと)
- 驚いたときは、物を見て止まり、それから客席を見る
- 大事な動きの前ほど、止まる時間を長くする
気持ちは体の形で見せる
セリフがないので、気持ちは体の形で伝えます。次の形を基本にして、会場の広さに合わせて大きさを変えましょう。
| 気持ち | 体の形 |
|---|---|
| 困った | 肩を上げ、両手のひらを少し上に向けて広げる |
| がっかり | 肩を落とし、首を前に倒す |
| うれしい | 背すじをのばし、両手を高く上げる |
| 迷っている | 片手をあごに当て、体を左右に少しゆらす |
| 決心した | こぶしをにぎり、一度大きくうなずく |
セリフなしで笑わせる話の組み立て
サイレントコントの話は、「設定→小さなずれ→大きなずれ→オチ」の順に組み立てます。2分のコントなら、設定に20秒、ずれに1分20秒、オチに20秒ほどが目安です。
- 設定:どこで、何をしようとしているかを、最初の20秒で見せる
- 小さなずれ:思いどおりにいかない、小さなことが起きる
- 大きなずれ:解決しようとするほど、動きが大きくなっていく
- オチ:意外な結末を見せ、最後のポーズで止まる
3の「だんだん大きくする」流れは、言葉のコントと同じ考え方です。段階のつけ方は「エスカレートするコントの作り方」でくわしく紹介しています。
設定は、場所がすぐ分かる動きから始めると伝わりやすくなります。
| 場所 | 伝わりやすい動き |
|---|---|
| 駅 | 改札にカードをかざして、通り抜ける |
| 台所 | まな板の上で、野菜を切る |
| 会社 | パソコンのキーを打ち、画面をのぞきこむ |
| 映画館 | 暗い中で、座席の番号を探しながら進む |
| 海 | 熱い砂の上を、つま先立ちで歩く |
| 図書館 | 本だなから1冊抜いて、静かにページをめくる |
構成例「朝ごはんのジャム」(約2分)
1人で演じるサイレントコントの構成例です。台所で朝ごはんを用意しようとして、ジャムのびんのふたが開かない話です。
- 時間
- 約2分
- 人数
- 1人
- 準備物
- なし(効果音を使うなら、トースターの「チン」の音)
- 難しさ
- ★★
| 時間 | 動き | 見せるポイント |
|---|---|---|
| 0:00〜0:20 | 大きく伸びをして、見えないトースターにパンを2枚入れ、レバーを下げる | 台所の朝だと伝わるよう、1つずつ区切る |
| 0:20〜0:40 | 見えない冷蔵庫を開け、ジャムのびんを出して台に置く | 冷蔵庫とびんを置いた位置を覚えておく |
| 0:40〜1:00 | ふたを回す。開かない。手をふいて、もう一度回す。やはり開かない | 1回目は軽く、2回目は顔まで力を入れる |
| 1:00〜1:30 | 布巾でつかむ。びんをひざにはさむ。最後は綱引きのように全身で引っぱる | 方法を変えるたびに、動きを大きくする |
| 1:30〜1:40 | ふたが急に開き、後ろによろける。びんを高く上げて喜ぶ | 開いた瞬間に一度止まり、客席を見る |
| 1:40〜1:50 | 「チン」の音で振り向く。パンを取り出すと、まっ黒。煙を手であおぐ | 直前まで、トースターを忘れているように見せる |
| 1:50〜2:00 | 客席を見て肩を落とす。こげたパンにジャムをたっぷりぬってかじり、親指を立てる | 親指を立てたまま3秒止まり、おじぎをする |
このコントの組み立て
最初にパンを入れた動きが、最後のオチにつながっています。パンを入れてレバーを下げる所を、少していねいに見せておくと、「チン」で振り向いたときの笑いが大きくなります。最後は落ちこんだままで終わらず、親指で前向きに締めています。
音と小道具の使い方
効果音は、ふたが開く瞬間や「チン」など、大事な所に1〜2個だけ使います。自分の口で音を言うと、セリフなしの形がくずれるので、流す人を別に頼みましょう。音を入れるタイミングと音量は、「効果音の使い方」が参考になります。
音楽を流すなら、既存の曲は避け、利用規約で使ってよいと書かれた素材を選びます。小道具は、本物と見えない物を混ぜないのが決まりです。本物のびんを使うなら、ふたも本物にします。台や机は本物を使ってかまいません。
練習のしかた
サイレントコントは、鏡より録画で練習するのがおすすめです。鏡を見ながらだと、目線が鏡に向いたままになりがちだからです。
- 見えない物を1つ選び、30秒扱う練習を毎日する(壁、段ボール、ドアの順に)
- 構成表を見ながら、区切りごとに動きを決める
- スマホで録画し、見えない物の位置や大きさが途中で変わっていないかを見る
- 家族や友人に見てもらい、「何をしているか」を言葉で言ってもらう
- 伝わらなかった所は、動きを大きくするか、止まる時間をのばす
本番の前に確かめること
- 最初の20秒で、場所とやりたいことが伝わるか
- 見えない物の位置と大きさが、最後まで変わらないか
- 大事な動きの前で、一瞬止まっているか
- 会場の広さに合わせて、動きの大きさを決めたか
- 効果音を使うなら、流す人ときっかけを決めたか
よくある質問
パントマイムを習ったことがなくても、できますか?
できます。形・重さ・位置の3つを決めて、最後まで変えないことを守れば、見えない物はちゃんと見えてきます。最初は、ドアや段ボールなど、誰もがさわったことのある物から始めましょう。
何分くらいのコントにすればいいですか?
初めてなら、1〜2分がおすすめです。セリフがない分、客席はずっと目をこらして見ているので、長いと疲れてしまいます。3分以上にするなら、途中に効果音や、大きく止まる場面をはさみましょう。
2人で演じることもできますか?
できます。見えない物を受け渡す場面を入れると、2人ならではの笑いが作れます。渡す物の大きさと重さを、2人でそろえておくことが大切です。2人で息を合わせる芸は、「2人でできる一発芸」でも紹介しています。
まとめ
- サイレントコントは、セリフを使わず、動きと表情だけで笑わせるコント
- 見えない物は、形・重さ・位置を決め、最後まで変えない
- 動きは会場の広さに合わせて大きくし、1つずつ区切って見せる
- 話は「設定→小さなずれ→大きなずれ→オチ」で組み立てる
- 鏡より録画で練習し、「何をしているか」が伝わるかを確かめる






