一発芸が思いつかないときは、ゼロから考えるのをやめて、「身近な物を1つ選ぶ→別の物に見立てる→一言をそえる」の3つの手順で作ります。見立てとは、ある物を、別の物に見えたことにして扱うことです。考える材料が目の前にあるので、ひらめきを待たなくても、5分ほどで1つ形になります。
この記事では、5分で1つ作る手順と、その手順で作った例を3つ紹介します。作った一発芸を本番までに仕上げる、3日間の練習のしかたもまとめました。
一発芸が思いつかないのは、ゼロから考えているから
一発芸が思いつかないときは、たいてい次の3つのどれかが起きています。
| 思いつかない理由 | 頭の中で起きていること | この記事での解き方 |
|---|---|---|
| 何もないところから考えている | 手がかりがなく、考えが同じ所を回る | 目の前の物から始める |
| 1回で面白いものを出そうとする | 浮かんだ案を、すぐに「つまらない」と消してしまう | 見立てを10個書き出してから選ぶ |
| 自分にしか分からない題材を選ぶ | 見る人に、何をしているかが伝わらない | 誰でも知っている物や場面に見立てる |
とくにつまずきやすいのは、2つ目です。最初に出る案はありきたりでも、書き出すうちに、だんだん面白い見立てが出てきます。まず数を出し、選ぶのは最後と決めておきましょう。
5分で1つできる3つの手順
手順は次の3つです。スマホのタイマーで時間を区切ると、迷う時間が減ります。
- 身近な物を1つ選ぶ(1分)
- 体の7か所に当てて、見立てを10個書き出す(2分)
- いちばん伝わる見立てを選び、一言をそえる(2分)
手順1:身近な物を1つ選ぶ(1分)
本番の会場で手に取れる物から選ぶと、当日そのまま使えます。
| 場所 | 選びやすい物 |
|---|---|
| 居酒屋やレストラン | おしぼり、割りばし、箸袋、紙ナプキン |
| 座敷や旅館 | 座布団、スリッパ、手ぬぐい |
| 会社の会議室 | クリアファイル、紙コップ、付箋 |
| 何もないとき | 自分のハンカチ、ネクタイ、上着 |
軽くて、割れない、とがっていない物を選びます。料理や飲み物は使いません。
手順2:体の7か所に当てて、見立てを探す(2分)
選んだ物を持ったら、体の7か所に順に当ててみます。当てる場所が変わると、同じ物でも別の物に見えてきます。
| 当てる場所 | 見えてきやすい物 |
|---|---|
| 頭 | 帽子、ヘルメット、ハチマキ、頭巾 |
| 顔の前 | お面、本、新聞 |
| 口元 | マイク、笛、ハーモニカ |
| 首・肩 | タオル、マフラー、ネクタイ |
| 胸 | 名札、メダル、ポケットチーフ |
| 背中 | ランドセル、リュック、マント |
| 両手 | 振る・回す・打ち合わせる道具や楽器 |
書き出すときは、面白いかどうかを考えず、10個出すことだけを目標にします。変だと思った見立ても、消さずに書いておきましょう。たくさん出してから選ぶ考え方は、大喜利の答えを考えるときと同じです。「大喜利のコツ」も参考になります。
手順3:一言をそえて30秒にまとめる(2分)
10個の中から、「見た瞬間に何か分かる」「動きが大きく遠くからも見える」「その場の話題につなげられる」の3つに当てはまるものを選びます。選んだら、最後に言う一言を決めます。
| 一言の型 | やり方 | 例(おしぼりをボクサーのタオルに見立てた場合) |
|---|---|---|
| 名乗る | 見立てた物の名前を言う | 「ボクサーです」 |
| なりきる | 見立てた人や物になって、セリフを言う | 「まだ戦えます」 |
| その場につなげる | 宴会の出来事や会の話題につなげる | 「次のラウンドは、デザートです」 |
いちばん簡単なのは「名乗る」型、笑いが大きくなりやすいのは「その場につなげる」型です。迷ったら、名乗る型で十分に形になります。道具の正体がばれる一言で落とす作り方は、「物ボケのやり方」で詳しく紹介しています。
最後に、「タイトルを言う→見立てを見せる→間をおく→一言→おじぎ」の順に並べれば完成です。間(ま)とは、一言の前に置く短い沈黙のことです。見立てが伝わるのを待ってから一言を言うと、笑いが起きやすくなります。
この手順で作った例3つ
ここからは、3つの物で手順どおりに作った例です。手順2のメモと、完成した一発芸の流れを並べています。
例1:おしぼり→ボクサーのタオル
頭に巻く → ハチマキ
口元に当てる → マイク
首にかける → ボクサーのタオル
首に巻く → マフラー
胸ポケットにさす → ポケットチーフ
手首に巻く → テニス選手のリストバンド
手のひらで丸める → ハムスター
背中にかける → ヒーローのマント
三つ折りにして読む → 手紙
小さくたたむ → 財布
選んだのは「ボクサーのタオル」です。首にかけた瞬間に分かり、パンチの動きで遠くからも見えるうえ、「次の料理」という宴会の話題につなげやすいからです。
台本おしぼりボクサー(約20秒)
(使う前のおしぼりを首にかけ、ファイティングポーズで前に出る)
自分〇〇部の〇〇です。「おしぼりボクサー」をやります。
(見えない相手に、シュッ、シュッとパンチを出す)
(自分のコーナーに戻るように下がってしゃがみ、おしぼりで汗をふいて肩で息をする)
自分……次のラウンドは、デザートです。
(立ち上がり、ファイティングポーズのまま一礼)
- 時間
- 20秒
- 人数
- 1人
- 準備物
- 使う前のおしぼり1本
- 難しさ
- ★
例2:割りばし→拍子木
頭の上に2本立てる → 宇宙人のアンテナ
横にして口元に当てる → ハーモニカ
胸の前で交差させる → バツ印
両手に1本ずつ持つ → ドラムのスティック
2本を打ち合わせる → 拍子木
1本を前に構える → フェンシングの剣
1本で前を指す → 先生の指し棒
2本を並べて置く → 線路
箸袋をふくらませる → 紙風船
箸袋を細く折って首元に当てる → ちょうネクタイ
選んだのは「拍子木」です。打ち合わせると本物の拍子木に近い音が出ます。「火の用心」という誰でも知っている決まり文句があり、冬の宴会なら季節感も出せます。
台本割りばしの夜回り(約20秒)
(割ったばかりの割りばしを両手に1本ずつ持ち、ゆっくり歩いて前に出る)
自分火の用心。
(割りばしを2回打ち合わせる)
自分唐揚げ1個、食べすぎのもと。
(割りばしを2回打ち合わせる)
自分……みなさん、食べすぎにご用心。
(一礼)
- 時間
- 20秒
- 人数
- 1人
- 準備物
- 使う前の割りばし1膳
- 難しさ
- ★
例3:座布団→ランドセル
頭にのせる → 防災頭巾
背負う → ランドセル
胸の前に抱える → 盾
両手で回す → ピザの生地
二つ折りにする → ハンバーガー
下に敷いて体を揺らす → 魔法のじゅうたん
下に敷いて前に傾く → 雪山のそり
抱きしめる → 抱き枕
両手で持ってあおぐ → 大きなうちわ
両手で高く掲げる → 応援のプラカード
選んだのは「ランドセル」です。背負った瞬間に分かり、「1年生」という言葉で、歓迎会や新年度の話題につなげられます。座敷の宴会なら、どの席にもある物で作れるのも利点です。
台本座布団ランドセル(約20秒)
(座布団を背中に当て、両手で肩ひもを持つしぐさをして立ち上がる)
自分行ってきまーす。
(元気よく手を振り、その場で足踏みして歩く)
(ふと立ち止まり、会場のほうを向く)
自分……今日から、〇〇部の1年生です。よろしくお願いします。
(座布団を背負ったまま深く一礼し、ずり落ちそうになるのを押さえる)
- 時間
- 20秒
- 人数
- 1人
- 準備物
- 座布団1枚
- 難しさ
- ★
3日でできる練習のしかた
作った一発芸は、1日5分の練習を3日続ければ、人前で見せられる形になります。
- 1日目:声に出して3回通し、「タイトル→見立て→間→一言→おじぎ」の順番を体に入れる
- 2日目:スマホで撮って見て、何に見立てたか分かるか、一言が聞こえるか、一言の前に間があるかを確かめる
- 3日目:家族や同僚1〜2人に見せて、「何に見えた?」と聞く。答えが違ったら、見立ての動きを大きくする
- 本番の日:会場に使う物があるかを確かめ、なければ自分の持ち物で作った2つ目のネタに切りかえる
20〜30秒に収まっているかは、スマホのストップウォッチを押してから、タイトルからおじぎまでを通して演じて測ります。一発芸は動きの時間が長いので、セリフを読むだけでは本番の長さが分かりません。30秒を超えたら、見立てを見せる動きを1つ減らしましょう。
作った一発芸や、選ばなかった見立ては、メモに残しておくと次の機会に使えます。ためておく書き方は、「ネタ帳の作り方と使い方」で紹介しています。
本番で気をつけること
身近な物を使う一発芸は、お店や旅館の物を借りることが多くなります。見ている人が安心して笑えるよう、次のことを確かめておきましょう。
使う物について確かめること
- おしぼりや割りばしは、使う前の新しいものを使う
- お店や旅館の物は、汚したり壊したりしない使い方にする
- グラスや陶器の皿など、割れる物は使わない
- 料理や飲み物では遊ばない
- 割りばしなど細長い物は、人に向けて振らない
- 人の持ち物を使うときは、先に一言断る
見立てる先は、物や場面、自分自身にします。その場にいる人の見た目に見立てると、からかいになってしまうので避けましょう。
よくある質問
見立てが10個も出てきません。
手順2の表の「当てる場所」を、上から順に試してみてください。頭、顔の前、口元と当てていくうちに、何かしらの物に見えてきます。2分で5つしか出なくても、その中から選んでかまいません。
作った一発芸が面白いか、自信がありません。
見立てが伝われば、「似てる」という笑いは起きます。一言は小さくても大丈夫です。3日目の練習で「何に見えた?」と聞いて、相手がすぐに答えられたら、その一発芸は十分に本番で使えます。
宴会の場で、急に振られたら?
同じ手順を1分でやります。手元の物を1つ取り、体のどこかに当てて、名乗る型の一言だけを言えば形になります。物を使わずにできるネタを持っておきたい人は、「簡単でうける一発芸20選」から1つ覚えておくと安心です。
まとめ
- 一発芸が思いつかないときは、目の前の物から始める
- 手順は「物を選ぶ(1分)→体の7か所に当てて見立てを10個(2分)→一言をそえる(2分)」
- 一言は「名乗る」「なりきる」「その場につなげる」の3つの型から選ぶ
- 練習は1日5分を3日。3日目は人に見せて「何に見えた?」と聞く
- 使う物は新しく、割れない物を選び、人の見た目には見立てない






