腹話術の台本の作り方|人形との掛け合いで笑わせるコツ

楽屋でコック帽の人形をひざにのせ、掛け合いを練習する男性

腹話術の台本は、人形を「ボケ」、自分を「ツッコミ」にして、人形に本音や勝手なことを言わせると作りやすくなります。人形のセリフは短くし、唇を閉じる音(ま行・ば行・ぱ行)をなるべく入れないのが、腹話術ならではの書き方のコツです。

この記事では、人形のキャラクターの決め方から、掛け合いの型、セリフの書き方までを順に説明します。後半には、見習いコックの人形と演じる約2分半の台本例と、練習の進め方を紹介します。

目次目次を閉じる目次を開く
  1. 腹話術の台本は「人形がボケ、自分がツッコミ」が基本
  2. 人形のキャラクターの決め方
  3. 掛け合いで笑わせる5つの型
  4. 腹話術ならではのセリフの書き方
  5. 約2分半の台本例「試食係のソースケ」
  6. 発声と練習の基本
  7. よくある質問
  8. まとめ

腹話術の台本は「人形がボケ、自分がツッコミ」が基本

腹話術は、演じる人が口をほとんど動かさずに人形の声を出し、人形と会話しているように見せる芸です。この記事では、演じる人のことを「術者」と呼びます。

台本では、人形におかしなことを言わせ、術者がそれを受けて正す形が基本です。人形は、人が言うと角が立つ本音やわがままを言っても、かわいげがあるので憎まれません。術者は、お客さんが思ったことを代わりに口にする役になります。

くらべる点人形術者
役割ボケ。本音、勘違い、わがままを言うツッコミ。人形の言葉を受けて正す
話し方短く、ぶっきらぼうふつうの長さで、ていねい
セリフの長さ1回20字以内長くてもよい
見せたいものかわいげと生意気さ人形に振り回される困り顔

ボケとツッコミの役割の分け方は、「ボケとツッコミの決め方」でも詳しく紹介しています。

人形のキャラクターの決め方

台本を書く前に、人形がどんな人物かを決めておきます。次の5つを決めると、セリフが自然に浮かぶようになります。

  1. 名前(術者が呼びやすく、人形も言いやすい名前)
  2. 子どもか大人か
  3. 性格(食いしん坊、心配性、知ったかぶりなど)
  4. 口ぐせ(同じ言葉をくり返すと、それだけで笑いになる)
  5. 術者との関係(相棒、弟分、ペットなど)

人形の見た目と性格を合わせると、お客さんにすぐ伝わります。コック帽をかぶった人形なら料理の話、鳥の人形なら空や木の話、というように、話題も見た目から選ぶと迷いません。

人形の例性格口ぐせ笑いの作り方
見習いコックの少年食いしん坊で、調子がいい「試食係だから」どんな話も、食べる話に持っていく
物知りのふりをする鳥知ったかぶり「それは、知ってた」まちがった知識を、自信たっぷりに言う
心配性の小さな犬何でも気にする「だいじょうぶ?」小さなことを、大げさに心配する
のんびりしたカメすぐ眠くなる「……ん?」大事なところで、寝ている

名前は、人形が自分で名乗る場面があるので、唇を閉じる音が入らないものにしておくと楽です。この記事の台本の「ソースケ」は、どの音も唇を動かさずに言えます。

人形にも言わせないこと

人形に言わせると、きつい言葉もかわいく聞こえることがあります。それでも、客席の人の見た目や年齢をからかう言葉は、人形が言っても笑えません。からかう相手は、術者自身にしぼりましょう。

掛け合いで笑わせる5つの型

人形と術者のやりとりは、次の5つの型に当てはめると作りやすくなります。1本の台本では、型を2〜3個にしぼると、話がまとまります。

型どんなやりとりか例
本音を言う術者が聞きにくいことを、人形がそのまま言う術者「ぼくの話、どうだった?」 人形「……寝てた」
答えがずれる質問の意味を、人形が取りちがえる術者「大きくなったら、何になりたい?」 人形「おとな」
術者をからかう人形が術者の失敗を見つけて言う術者「さあ、始めようか」 人形「台本、さかさだよ」
客席を巻きこむ人形が客席に直接話しかける人形「(客席に)ここ、笑うところ」 術者「自分で言わないの」
言うことを聞かない人形がすねたり、横を向いたりする術者「次は、歌ってみようか」 人形「(横を向いて)……やだ」

いちばん作りやすいのは「本音を言う」型です。術者が少し得意げに質問し、人形が短くばっさり答えるだけで、笑いが起きます。

腹話術ならではのセリフの書き方

腹話術の台本は、ふつうの漫才やコントの台本と書き方が少しちがいます。術者が口を動かさずに言えるか、お客さんが聞き取れるかを考えながら書きます。

人形のセリフは短く、1回20字以内に

腹話術の声は、口の動きを抑えるぶん、ふつうの声より聞き取りにくくなります。人形のセリフは、1回20字以内を目安に短く切りましょう。長い説明が必要なときは、術者のセリフに回します。

唇を閉じる音を、人形のセリフから外す

ま行・ば行・ぱ行は、唇を閉じないと出しにくい音です。人形のセリフには、この3つの行の音をなるべく入れないように書くと、口元が動いて見えにくくなります。言いたいことは、別の言葉に言いかえます。

唇を閉じる音が入る言葉人形に言わせるときの言いかえ
ありがとうございますありがとう
すみませんしつれい
もう一回あと一回
見てほら、あれ
ちょっと待ってちょっと、ちょっと
ママ、パパおかあさん、おとうさん

どうしても言いかえられない言葉は、術者が言うようにします。人形が「あれ、あれ」と指し、術者が「バナナね」と受ける形なら、自然な掛け合いにもなります。

人形の言葉を、術者がくり返す

人形のセリフのあとに、術者が同じ言葉をくり返すと、聞き取れなかったお客さんにも内容が届きます。人形「寝てた」、術者「寝てたの?」のように、くり返しがそのままツッコミになるので、台本にあらかじめ書きこんでおきましょう。

人形の動きと間も書いておく

人形が黙って横を向く、首をかしげる、術者の顔をじっと見る、といった動きは、セリフ以上に笑いを生みます。台本には、動きをかっこの中に書いておきます。黙っている時間(間)の取り方は「漫才の間とテンポの取り方」も参考になります。

約2分半の台本例「試食係のソースケ」

見習いコックの人形「ソースケ」との掛け合いです。ソースケのセリフには、ま行・ば行・ぱ行の音を入れていません。最後のあいさつも、「ありがとうございました」ではなく「ありがとう」にしています。

時間
約2分半
人数
1人(人形1体)
準備物
口が開け閉めできる人形(手を入れて動かすもの)、いす
難しさ
★★★

台本試食係のソースケ(約2分半)

(いすに座り、ソースケをひざの上にのせる。ソースケは客席を向いている)

術者みなさん、こんにちは。今日は、相棒を連れてきました。ソースケくんです。

ソースケこんにちは。ソースケです。

(ソースケ、ゆっくり客席を見回す)

ソースケ……人、多いね。

術者緊張してる?

ソースケしてない。(術者の顔を見て)そっちが、してる。

術者……ちょっとね。ソースケくんは、レストランでコックの修業をしてるんだよね。

ソースケそう。きょうで、四日。

術者まだ四日か。お店では、どんな仕事をしてるの?

ソースケ試食係。

術者試食係? そんな係、あるの?

ソースケある。おれが作った。

術者自分で作ったの?

ソースケ料理は作れないけど、係は作れる。

術者作るものが、ちがうでしょ。じゃあ、得意な料理は?

ソースケカレー。

術者すごいじゃない。どうやって作るの?

ソースケレンジで、チン。

術者それは、温めただけでしょ。

ソースケチンの音には、自信がある。

術者音を出してるのは、レンジだよ。……そういえば、きのう、ぼくが作ったカレーを食べたよね。どうだった?

(ソースケ、ゆっくり顔をそらす)

ソースケ……。

術者なんで黙るの。

ソースケ言っていいの?

術者いいよ。

ソースケ辛かった。

術者辛かった? ちょっとね。

ソースケ固かった。

術者じゃがいもがね。

ソースケこげてた。

術者もう、いいよ。

ソースケだけど、おかわりした。

術者(少し間をおいて)……おかわり、したんだ。

ソースケ試食係だから。

術者(客席に)こういうところがあるから、きらいになれないんです。じゃあ最後に、みなさんにひと言。

ソースケこんど、レストランに来てね。

術者おっ、いいね。

ソースケ試食係が、ひと口ずつ、のこしておくね。

術者ひと口しか残らないの? 全部のこしておいてよ。ありがとうございました。

ソースケありがとう。

(ソースケと一緒に、おじぎをする)

この台本の組み立て

「試食係」が3回出てくる、くり返しの笑いが軸です。1回目で自己紹介として見せ、2回目で「おかわりした理由」、3回目で最後のあいさつに使っています。真ん中の感想の場面が「本音を言う」型で、術者のくり返しがそのままツッコミになっています。

発声と練習の基本

腹話術の声は、唇を軽く開いたまま止め、舌の動きで言葉を作ります。最初は鏡の前で、口を少し開けた形のまま「あいうえお」「かきくけこ」と言う練習から始めましょう。人形の声は、自分の声より少し高くするか低くすると、2人の声が分かれて聞こえます。

声の出し方そのものは、「お笑いの発声練習」で紹介している練習が土台になります。台本ができたら、次の順番で仕上げていきます。

  1. 人形のセリフだけを、唇を動かさずに読む
  2. 声に合わせて人形の口を開け閉めし、言い終わったらしっかり閉じる
  3. 術者のセリフも入れて、台本を通す
  4. 人形の目線をつける(話している相手を見る)
  5. スマホで撮り、口元と人形の動きを確かめる

4の目線は、思っている以上に大切です。術者が話しているあいだも、人形が術者のほうを見てうなずいていると、本当に生きているように見えます。

本番の前に確かめること

  • 人形のセリフが、客席のいちばん後ろまで聞こえるか(マイクに近づける)
  • 人形の顔が、客席から見える角度になっているか
  • いすの高さで、人形をひざにのせやすいか
  • 人形の服や帽子が、動かしているうちにずれないか

よくある質問

どうしても口が動いてしまいます。

完全に止めなくても大丈夫です。人形の頭や口を大きめに動かすと、お客さんの目は人形のほうに向きます。唇を閉じる音を減らすだけでも、口元はかなり目立たなくなります。

人形は何を使えばいいですか?

口が開け閉めできて、手を入れて動かすタイプの人形が扱いやすいです。靴下や紙袋で手作りすることもできます。作り方は「余興の小道具を手作りするには?」の考え方が応用できます。

子ども向けと大人向けで、台本は変えたほうがいいですか?

変えると、より伝わります。子ども向けなら、人形が客席に質問して、答えてもらう場面を増やします。大人や年配の人が多い場では、人形が本音を言う型や、術者をからかう型がよく合います。施設で演じるときの進め方は「介護施設・デイサービスの出し物」でも紹介しています。

まとめ

  • 腹話術の台本は、人形がボケ、術者がツッコミの形が基本
  • 人形は、名前・性格・口ぐせ・術者との関係を先に決める
  • 人形のセリフは1回20字以内で、ま行・ば行・ぱ行をなるべく入れない
  • 人形の言葉を術者がくり返すと、聞き取りやすく、ツッコミにもなる
  • 練習は、人形のセリフ、口の動き、目線の順に足していく
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