一人コントの作り方|見えない相手を感じさせる台本と演技のコツ

台本を手に、誰も座っていないいすへ話しかける女性

一人コントは、見えない相手のセリフを、くり返しと間と視線で客席に想像させる芸です。作るときは、相手のセリフも入れた台本を先に書き、あとから相手の分を黙る時間に変えると、自然な一人コントになります。

この記事では、一人コントの型、台本の書き方、視線と間の取り方を順に説明します。後半では、そのまま演じられる約2分半の台本と、練習のしかたを紹介します。

目次目次を閉じる目次を開く
  1. 一人コントの4つの型
  2. 台本の書き方|相手のセリフも書いてから黙る時間に変える
  3. 見えない相手を感じさせる視線と間
  4. そのまま演じられる台本「大人の迷子」
  5. 練習のしかたと本番の準備
  6. よくある質問
  7. まとめ

一人コントの4つの型

一人コントは、見えない相手がどこにいるかで、4つの型に分けられます。初めてなら、相手が目の前にいない電話型か、正面にいる対面型から始めましょう。

型見えない相手向いている設定の例難しさ
電話型電話の向こう予約の受付、問い合わせ窓口★
対面型正面に立つか、座っているお店の客、窓口に来た人★★
客席を相手にする型客席全体授業の先生、ツアーのガイド★★
物や動物が相手の型机の上や足もとペットのしつけ、しゃべる家電★★★

電話型は、相手の姿を想像させなくてよいので、いちばん作りやすい型です。対面型は、相手の背の高さや立っている位置まで見せられるので、場面が豊かになります。客席を相手にする型は、客席を「生徒」や「ツアー客」に見立て、話しかけながら進めます。

一人コントでは、自分がツッコミ役、見えない相手がボケ役になる形が作りやすくなります。相手の変なところを、自分の驚きやツッコミで伝えられるからです。

台本の書き方|相手のセリフも書いてから黙る時間に変える

一人コントの台本は、いきなり自分のセリフだけで書くと、相手が何を言ったのか分からなくなります。まずは普通のコントと同じように、相手のセリフも入れて書きましょう。設定の決め方は「コントの台本の書き方」が参考になります。

台本2人分を書いた下書き(電話型)

相手もしもし、予約をお願いしたいんですが。

自分ありがとうございます。何名さまでしょう。

相手ひとりと、金魚が1匹です。

自分金魚……ですか。

相手はい。露天風呂にも一緒に入りたくて。

自分金魚鉢のままでお願いします。

次に、相手のセリフをかっこに入れ、その長さの分だけ黙る印にします。相手が何を言ったか伝わりにくい所には、くり返しを足します。

台本一人コントに直した台本(電話型)

自分はい、〇〇旅館でございます。

(相手:予約をお願いしたいんですが)

自分ご予約ですね。ありがとうございます。何名さまでしょう。

(相手:ひとりと、金魚が1匹です)

自分おひとりさまと……金魚が1匹。

(相手:露天風呂にも一緒に入りたくて)

自分金魚さんも、露天風呂に。……それは、金魚鉢のままでお願いします。

かっこの中のセリフは、本番では声に出しません。心の中で読み、読み終わるまで黙っておくと、相手が話している時間が自然に生まれます。

相手の言葉を伝える3つの方法

相手のセリフは、次の3つの方法で客席に伝えます。全部をくり返しにすると、くどくなります。3つを混ぜて使いましょう。

方法自分のセリフや動きの例客席に伝わる相手の言葉
くり返す「おひとりさまと……金魚が1匹」金魚と一緒に泊まりたい
答えで伝える「いえ、お布団は1組で足ります」金魚の分の布団もほしい
反応で伝える(受話器を耳から少し離す)大きな声でしゃべった

くり返しは、2〜3回に1回くらいが目安です。ほかの所は、答えや反応で伝えると、テンポが落ちません。

台本を書く手順

  1. 設定を1行で決める(誰が、どこで、どんな相手と話すか)
  2. 相手のセリフも入れて、2人分の台本として書く
  3. 相手のセリフをかっこに入れ、黙る時間の印にする
  4. 相手の言葉が伝わりにくい所に、くり返しか答えを足す
  5. 声に出して読み、家族や友人に「相手が何と言ったか」を当ててもらう

5で当ててもらえなかった所は、相手の言葉の伝え方を変えるか、相手のセリフを短くします。

見えない相手を感じさせる視線と間

台本ができたら、演技で相手を「そこにいる人」にします。大切なのは、視線、間、相手の位置の3つです。

視線は、相手の目の位置を1か所に決める

対面型では、見えない相手の目の位置を決め、話しかけるたびにそこを見ます。視線が毎回ずれると、相手が動き回っているように見えてしまいます。

相手視線を向ける所
正面に立っている大人自分の目と同じ高さの、腕1本分先
正面のいすに座っている人少し下
背の高い人や、台の上の人少し上
電話の向こうの人決めなくてよい。顔は客席に向ける

会場では、相手の目の位置の後ろにある物を目印にすると、毎回同じ所を見られます。

間は、相手のセリフを心の中で読む長さ

相手が話している時間は、かっこの中のセリフを心の中で全部読むまで黙ります。この間が短いと、相手の返事を待たずに話しているように見えます。相手のセリフが長いときは、途中で小さくうなずくと、聞いている様子が伝わります。

相手の位置は、最後まで動かさない

物を渡すしぐさをするなら、手は毎回、相手の胸の高さの同じ所に出します。相手が歩いて移動するときだけ、視線をゆっくり動かしてついていきます。

よくある失敗

相手の返事を待たずに話す、くり返しが多すぎる、相手の位置が少しずつずれる、の3つがよく起きます。スマホで録画して、相手がいるように見えるかを確かめましょう。

そのまま演じられる台本「大人の迷子」

ショッピングモールの迷子センターの係員が主人公の、対面型の一人コントです。「(相手:…)」の形のかっこは見えない相手のセリフなので、声には出さず、心の中で読む時間だけ間をあけてください。ほかのかっこは動きの説明です。途中で、2人目の見えない相手が右から来ます。

時間
約2分半
人数
1人
準備物
机(受付の台に見立てる)、マイクに見立てる物(なくても可)
難しさ
★★

台本大人の迷子(約2分半)

(机の前に立つ。見えない相手は、机をはさんだ正面にいる)

係員はい、迷子センターです。どうされましたか。

(相手:迷子になりました)

係員迷子に。お子さんですか。

(相手:いえ、私です)

係員あなたが。……大人の方の迷子は、初めてです。

係員では、お名前を教えてください。

(相手:〇〇です)

係員〇〇さま。どなたと来られましたか。

(相手:妻と)

係員奥さまと。最後に一緒にいたのは、どこですか。

(相手:入口の、くつ売り場です)

係員くつ売り場。それは何時ごろですか。

(相手:朝の10時です)

係員今、夕方の5時ですよ。7時間、どこにいたんですか。

(相手:おもちゃ売り場で、プラモデルを見ていました)

係員7時間も。……分かりました。奥さまを呼び出す放送をしますね。

(マイクを持つしぐさをして、背すじをのばす)

係員ご来店中のお客さまに、お呼び出しを申し上げます。

(相手が何か言う。マイクを口から離して、相手を見る)

係員え?「迷子は妻のほう」と言ってほしい?

係員放送では、本当のことだけをお伝えします。

(マイクに戻る)

係員〇〇さまの奥さま。ご主人さまが、迷子センターでお待ちです。

(マイクを置く。相手がまた何か言う)

係員名前のあとに「大好き」とつけてほしい? つけません。

(右のほうを見て、手をあげる)

係員あ、あちらの方、奥さまですか。こちらです。

(右から来た2人目の相手に、体を少し向ける)

係員ご主人さまは、こちらにいらっしゃいます。

(2人目の相手:あの人、また来たんですか)

係員また?

(2人目の相手:毎週ここで迷子になるんです)

係員毎週。……どうりで、さっきから机の上のアメを、慣れた手つきで取っていくと思いました。

(正面の相手を見る)

(相手:来週もよろしくお願いします)

係員来週は、奥さまと手をつないで来てください。

(2人に頭を下げて、見送る)

この台本の見せ場

放送の場面は、マイクに向かう声と、相手に向ける声を切りかえるところが笑いどころです。2人目の相手は右、1人目は正面と、位置をはっきり分けましょう。最後の一言は、2人を見送りながら、少しやさしい声で言うと締まります。

練習のしかたと本番の準備

一人コントは、最初から1人で練習すると、間の長さがつかみにくくなります。はじめは誰かに相手のセリフを読んでもらいましょう。

  1. 家族や友人に、かっこの中の相手のセリフを読んでもらって通す
  2. 相手のセリフを心の中で読むようにして、1人で通す
  3. スマホで録画し、相手の言葉が想像できるかを見る
  4. 視線が、相手の位置からずれていないかを確かめる
  5. 本番と同じ広さの場所で、相手の位置の目印を決めて通す

本番の前に確かめること

  • 見えない相手の位置と、その目印を決めたか
  • 相手のセリフの分だけ、黙って待てるか
  • 2人目の相手を出すなら、1人目と反対の方向に置いたか
  • 机や小道具を置く場所と、マイクの位置を確かめたか

一人コントの台本は、見えない相手のセリフまで考えるので、2人用の台本より時間がかかります。演じる練習に時間を使いたいときは、台本だけを頼む方法もあります。

よくある質問

一人コントと漫談は、何がちがいますか?

漫談は、自分自身として客席に話しかける芸です。一人コントは、役になりきって、見えない相手と場面を演じます。自分として話すほうが合いそうなら、「漫談の作り方」も見てみてください。

小道具は使ったほうがいいですか?

少ないほうが、見えない相手が引き立ちます。電話型ならスマホ、受付なら机のように、場所が分かる物を1つ用意すれば十分です。見えない物を手で扱う動きは、「サイレントコントの作り方」が参考になります。

見えない相手は、何人まで出せますか?

初めてなら1人、多くても2人までにしましょう。3人以上の人物を演じ分けたいときは、顔の向きで人物を切りかえる「落語風の一人芝居」の演じ方が向いています。

まとめ

  • 一人コントは、見えない相手のセリフを、くり返し・答え・反応で想像させる芸
  • 台本は相手のセリフも入れて書き、あとからかっこに入れて黙る時間に変える
  • 相手の目の位置を1か所に決め、最後まで動かさない
  • 相手のセリフを心の中で読む長さだけ、間をあける
  • 練習は、誰かに相手のセリフを読んでもらうところから始める
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