一人コントは、見えない相手のセリフを、くり返しと間と視線で客席に想像させる芸です。作るときは、相手のセリフも入れた台本を先に書き、あとから相手の分を黙る時間に変えると、自然な一人コントになります。
この記事では、一人コントの型、台本の書き方、視線と間の取り方を順に説明します。後半では、そのまま演じられる約2分半の台本と、練習のしかたを紹介します。
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一人コントの4つの型
一人コントは、見えない相手がどこにいるかで、4つの型に分けられます。初めてなら、相手が目の前にいない電話型か、正面にいる対面型から始めましょう。
| 型 | 見えない相手 | 向いている設定の例 | 難しさ |
|---|---|---|---|
| 電話型 | 電話の向こう | 予約の受付、問い合わせ窓口 | ★ |
| 対面型 | 正面に立つか、座っている | お店の客、窓口に来た人 | ★★ |
| 客席を相手にする型 | 客席全体 | 授業の先生、ツアーのガイド | ★★ |
| 物や動物が相手の型 | 机の上や足もと | ペットのしつけ、しゃべる家電 | ★★★ |
電話型は、相手の姿を想像させなくてよいので、いちばん作りやすい型です。対面型は、相手の背の高さや立っている位置まで見せられるので、場面が豊かになります。客席を相手にする型は、客席を「生徒」や「ツアー客」に見立て、話しかけながら進めます。
一人コントでは、自分がツッコミ役、見えない相手がボケ役になる形が作りやすくなります。相手の変なところを、自分の驚きやツッコミで伝えられるからです。
台本の書き方|相手のセリフも書いてから黙る時間に変える
一人コントの台本は、いきなり自分のセリフだけで書くと、相手が何を言ったのか分からなくなります。まずは普通のコントと同じように、相手のセリフも入れて書きましょう。設定の決め方は「コントの台本の書き方」が参考になります。
台本2人分を書いた下書き(電話型)
相手もしもし、予約をお願いしたいんですが。
自分ありがとうございます。何名さまでしょう。
相手ひとりと、金魚が1匹です。
自分金魚……ですか。
相手はい。露天風呂にも一緒に入りたくて。
自分金魚鉢のままでお願いします。
次に、相手のセリフをかっこに入れ、その長さの分だけ黙る印にします。相手が何を言ったか伝わりにくい所には、くり返しを足します。
台本一人コントに直した台本(電話型)
自分はい、〇〇旅館でございます。
(相手:予約をお願いしたいんですが)
自分ご予約ですね。ありがとうございます。何名さまでしょう。
(相手:ひとりと、金魚が1匹です)
自分おひとりさまと……金魚が1匹。
(相手:露天風呂にも一緒に入りたくて)
自分金魚さんも、露天風呂に。……それは、金魚鉢のままでお願いします。
かっこの中のセリフは、本番では声に出しません。心の中で読み、読み終わるまで黙っておくと、相手が話している時間が自然に生まれます。
相手の言葉を伝える3つの方法
相手のセリフは、次の3つの方法で客席に伝えます。全部をくり返しにすると、くどくなります。3つを混ぜて使いましょう。
| 方法 | 自分のセリフや動きの例 | 客席に伝わる相手の言葉 |
|---|---|---|
| くり返す | 「おひとりさまと……金魚が1匹」 | 金魚と一緒に泊まりたい |
| 答えで伝える | 「いえ、お布団は1組で足ります」 | 金魚の分の布団もほしい |
| 反応で伝える | (受話器を耳から少し離す) | 大きな声でしゃべった |
くり返しは、2〜3回に1回くらいが目安です。ほかの所は、答えや反応で伝えると、テンポが落ちません。
台本を書く手順
- 設定を1行で決める(誰が、どこで、どんな相手と話すか)
- 相手のセリフも入れて、2人分の台本として書く
- 相手のセリフをかっこに入れ、黙る時間の印にする
- 相手の言葉が伝わりにくい所に、くり返しか答えを足す
- 声に出して読み、家族や友人に「相手が何と言ったか」を当ててもらう
5で当ててもらえなかった所は、相手の言葉の伝え方を変えるか、相手のセリフを短くします。
見えない相手を感じさせる視線と間
台本ができたら、演技で相手を「そこにいる人」にします。大切なのは、視線、間、相手の位置の3つです。
視線は、相手の目の位置を1か所に決める
対面型では、見えない相手の目の位置を決め、話しかけるたびにそこを見ます。視線が毎回ずれると、相手が動き回っているように見えてしまいます。
| 相手 | 視線を向ける所 |
|---|---|
| 正面に立っている大人 | 自分の目と同じ高さの、腕1本分先 |
| 正面のいすに座っている人 | 少し下 |
| 背の高い人や、台の上の人 | 少し上 |
| 電話の向こうの人 | 決めなくてよい。顔は客席に向ける |
会場では、相手の目の位置の後ろにある物を目印にすると、毎回同じ所を見られます。
間は、相手のセリフを心の中で読む長さ
相手が話している時間は、かっこの中のセリフを心の中で全部読むまで黙ります。この間が短いと、相手の返事を待たずに話しているように見えます。相手のセリフが長いときは、途中で小さくうなずくと、聞いている様子が伝わります。
相手の位置は、最後まで動かさない
物を渡すしぐさをするなら、手は毎回、相手の胸の高さの同じ所に出します。相手が歩いて移動するときだけ、視線をゆっくり動かしてついていきます。
よくある失敗
相手の返事を待たずに話す、くり返しが多すぎる、相手の位置が少しずつずれる、の3つがよく起きます。スマホで録画して、相手がいるように見えるかを確かめましょう。
そのまま演じられる台本「大人の迷子」
ショッピングモールの迷子センターの係員が主人公の、対面型の一人コントです。「(相手:…)」の形のかっこは見えない相手のセリフなので、声には出さず、心の中で読む時間だけ間をあけてください。ほかのかっこは動きの説明です。途中で、2人目の見えない相手が右から来ます。
- 時間
- 約2分半
- 人数
- 1人
- 準備物
- 机(受付の台に見立てる)、マイクに見立てる物(なくても可)
- 難しさ
- ★★
台本大人の迷子(約2分半)
(机の前に立つ。見えない相手は、机をはさんだ正面にいる)
係員はい、迷子センターです。どうされましたか。
(相手:迷子になりました)
係員迷子に。お子さんですか。
(相手:いえ、私です)
係員あなたが。……大人の方の迷子は、初めてです。
係員では、お名前を教えてください。
(相手:〇〇です)
係員〇〇さま。どなたと来られましたか。
(相手:妻と)
係員奥さまと。最後に一緒にいたのは、どこですか。
(相手:入口の、くつ売り場です)
係員くつ売り場。それは何時ごろですか。
(相手:朝の10時です)
係員今、夕方の5時ですよ。7時間、どこにいたんですか。
(相手:おもちゃ売り場で、プラモデルを見ていました)
係員7時間も。……分かりました。奥さまを呼び出す放送をしますね。
(マイクを持つしぐさをして、背すじをのばす)
係員ご来店中のお客さまに、お呼び出しを申し上げます。
(相手が何か言う。マイクを口から離して、相手を見る)
係員え?「迷子は妻のほう」と言ってほしい?
係員放送では、本当のことだけをお伝えします。
(マイクに戻る)
係員〇〇さまの奥さま。ご主人さまが、迷子センターでお待ちです。
(マイクを置く。相手がまた何か言う)
係員名前のあとに「大好き」とつけてほしい? つけません。
(右のほうを見て、手をあげる)
係員あ、あちらの方、奥さまですか。こちらです。
(右から来た2人目の相手に、体を少し向ける)
係員ご主人さまは、こちらにいらっしゃいます。
(2人目の相手:あの人、また来たんですか)
係員また?
(2人目の相手:毎週ここで迷子になるんです)
係員毎週。……どうりで、さっきから机の上のアメを、慣れた手つきで取っていくと思いました。
(正面の相手を見る)
(相手:来週もよろしくお願いします)
係員来週は、奥さまと手をつないで来てください。
(2人に頭を下げて、見送る)
この台本の見せ場
放送の場面は、マイクに向かう声と、相手に向ける声を切りかえるところが笑いどころです。2人目の相手は右、1人目は正面と、位置をはっきり分けましょう。最後の一言は、2人を見送りながら、少しやさしい声で言うと締まります。
練習のしかたと本番の準備
一人コントは、最初から1人で練習すると、間の長さがつかみにくくなります。はじめは誰かに相手のセリフを読んでもらいましょう。
- 家族や友人に、かっこの中の相手のセリフを読んでもらって通す
- 相手のセリフを心の中で読むようにして、1人で通す
- スマホで録画し、相手の言葉が想像できるかを見る
- 視線が、相手の位置からずれていないかを確かめる
- 本番と同じ広さの場所で、相手の位置の目印を決めて通す
本番の前に確かめること
- 見えない相手の位置と、その目印を決めたか
- 相手のセリフの分だけ、黙って待てるか
- 2人目の相手を出すなら、1人目と反対の方向に置いたか
- 机や小道具を置く場所と、マイクの位置を確かめたか
一人コントの台本は、見えない相手のセリフまで考えるので、2人用の台本より時間がかかります。演じる練習に時間を使いたいときは、台本だけを頼む方法もあります。
よくある質問
一人コントと漫談は、何がちがいますか?
漫談は、自分自身として客席に話しかける芸です。一人コントは、役になりきって、見えない相手と場面を演じます。自分として話すほうが合いそうなら、「漫談の作り方」も見てみてください。
小道具は使ったほうがいいですか?
少ないほうが、見えない相手が引き立ちます。電話型ならスマホ、受付なら机のように、場所が分かる物を1つ用意すれば十分です。見えない物を手で扱う動きは、「サイレントコントの作り方」が参考になります。
見えない相手は、何人まで出せますか?
初めてなら1人、多くても2人までにしましょう。3人以上の人物を演じ分けたいときは、顔の向きで人物を切りかえる「落語風の一人芝居」の演じ方が向いています。
まとめ
- 一人コントは、見えない相手のセリフを、くり返し・答え・反応で想像させる芸
- 台本は相手のセリフも入れて書き、あとからかっこに入れて黙る時間に変える
- 相手の目の位置を1か所に決め、最後まで動かさない
- 相手のセリフを心の中で読む長さだけ、間をあける
- 練習は、誰かに相手のセリフを読んでもらうところから始める






