漫談は、一人で客席に話しかけ、身近な話題を笑いに変えていく芸です。原稿は「つかみ→本題→締め」の3部にし、本題には1つのテーマでつながる小さな話を3つ並べると、初めてでもまとまります。
この記事では、漫談の構成と話題の選び方を説明し、そのまま話せる約3分の原稿を紹介します。書いた原稿を話し言葉に直すコツと、練習のしかたもまとめました。
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漫談とは? 一人コントやエピソードトークとのちがい
漫談は、役になりきらず、自分自身として客席に話しかける芸です。「最近こんなことがありまして」と語りかけ、客席の反応を受けながら話を進めます。同じ1人で話す形でも、一人コントやエピソードトークとは次の点がちがいます。
| くらべること | 漫談 | 一人コント | エピソードトーク |
|---|---|---|---|
| 話す人 | 自分自身 | 店員や先生などの役 | 自分自身 |
| 話す相手 | 客席 | 見えない相手 | 会話の相手 |
| 話の数 | テーマでつないだ小さな話をいくつか | 1つの場面 | 1つの出来事 |
| 長さの目安 | 3〜5分 | 2〜3分 | 1分前後 |
役を演じるほうが合いそうなら、「一人コントの作り方」を見てみてください。1つの出来事を話す組み立ては、「エピソードトークの作り方」で紹介しています。
漫談の構成|つかみ・本題・締めの3部
漫談の原稿は、つかみ・本題・締めの3つの部分でできています。3分の漫談なら、次の配分が目安です。
| 部分 | すること | 3分の漫談での長さ |
|---|---|---|
| つかみ | あいさつと、今日のテーマを一言で言う | 約20秒 |
| 本題 | テーマでつながる小さな話を3つ | 約2分20秒(1つ40〜50秒) |
| 締め | 前半の言葉をもう一度使って、まとめる | 約20秒 |
つかみとは、最初に客席の気持ちをつかむ部分のことです。漫談では、笑いを取ることより「今日は何の話か」を伝えることを優先しましょう。テーマが分かると、客席は安心して次の話を待ってくれます。
1つの話は「ふり→ずれ→自分ツッコミ」で作る
本題の小さな話は、1つずつ次の3段で組み立てます。ふりは誰もが知っている状況、ずれは自分だけの見方、自分ツッコミは自分の話に自分でツッコむ一言です。
| 段 | すること | 下の原稿での例 |
|---|---|---|
| ふり | 誰もが知っている状況を言う | レシピの最後によく出てくる「適量」 |
| ずれ | 自分だけの見方を足す | ここまで細かかったのに、最後だけ急に任せてくる |
| 自分ツッコミ | 自分で一言ツッコむ | 分からないから、レシピを見ているんです |
話と話は、テーマでつなぐ
話が変わるたびに「話は変わりますが」と言うと、ネタが細切れに聞こえます。3つの話を1つのテーマでつなぎ、「次に」「そして、いちばんの難関が」のように並べて進めましょう。締めで前半の言葉をもう一度使うと、3つの話が1本にまとまります。
漫談の話題の選び方
漫談の話題は、次の3つがそろうものを選びます。
- 客席の誰もが知っている場面である(料理、通勤、買い物、家電など)
- 自分なりの「なぜ?」という引っかかりがある
- 小さな話を3つ以上に広げられる
1つのテーマから、小さな話を3つ出せるかを先に試すと、原稿にしやすいかどうかが分かります。
| テーマ | 広げた3つの話の例 |
|---|---|
| レシピの言葉 | 「少々」の量、「煮込むだけ」の「だけ」、最後の「適量」 |
| 季節の変わり目 | 朝の服が決まらない、去年しまった服のセンスに驚く、電車の中で夏服と冬服が並ぶ |
| 駅と電車 | 乗りかえ案内の速さ、ドアの横の場所取り、降りる駅でだけ目が覚める |
| スーパーの買い物 | 隣のレジが速く見える、試食の前で迷う、袋詰めの台で急いでしまう |
| 家の中の家電 | 洗濯機の残り時間が増える、掃除機のコードがあと少し届かない、電子レンジの「あたため」の加減 |
避けたい話題
人の見た目や年齢、病気、出身をからかう話は選びません。その場にいる人の秘密や、特定の人の悪口も入れないようにしましょう。自分をネタにする自虐は、言い方しだいで好かれも嫌われもします。使い方は「自虐ネタの例と使い方」を参考にしてください。
そのまま話せる漫談原稿「レシピの言葉」
レシピに出てくる言葉に振り回される話を3つつないだ、約3分の漫談です。〇〇には自分の名前を入れてください。かっこの中は、動きと間の目安です。
- 時間
- 約3分
- 人数
- 1人
- 準備物
- マイク(会場にあれば)
- 難しさ
- ★★
台本レシピの言葉(約3分)
(マイクの前に立ち、一礼する)
自分どうも、〇〇です。よろしくお願いします。
自分最近、家で料理をするようになりました。といっても、レシピを見ながらです。
自分レシピって、親切ですよね。材料も、切り方も、順番も、全部書いてある。
自分ただ、ときどき、急にこちらを試してくる言葉が出てきます。
(少し間をあける)
自分まずは「塩少々」。
自分少々って、どれくらいですか。
(客席を見回す)
自分調べたら、指2本でつまむくらいの量だそうです。ちなみに「ひとつまみ」は、指3本。
自分それを知ってから、塩をつまむたびに、指の本数を数えるようになりました。
自分1本、2本……あ、3本入った。
自分ここで料理が、レシピから外れます。
自分次に「あとは、30分煮込むだけ」。
自分この「だけ」が、くせものです。30分は「だけ」と言っていい長さじゃない。
自分その間に何をしていればいいかは、どこにも書いてありません。
自分なので私は、30分、鍋のふたから出る湯気を見ています。
自分湯気って、ずっと見ていると、ちょっとかわいいんです。
(少し照れる)
自分料理より、湯気に詳しくなりました。
自分そして、いちばんの難関が、最後に出てくる「適量」。
自分ここまで、水は200ミリリットル、火は中火と、細かく教えてくれたのに。
自分最後の最後で「適量」。急に手を放してきます。
自分分からないから、レシピを見ているんです。
自分自転車の練習で、ずっとうしろを持ってくれていた人が、坂道で急に手を放したような気持ちです。
自分先日、そんな料理を家族に出したら、ひと口食べて言われました。
(間をあける)
自分「うん。味が、ちょうど適量だね」
自分ほめられたのかどうか、今でも分かりません。
自分今日の私の話も、長さは適量だったでしょうか。ありがとうございました。
(一礼する)
この原稿の組み立て
つかみで「レシピに試される」というテーマを言い、「少々」「煮込むだけ」「適量」の3つの話をつないでいます。いちばん共感されやすい「適量」を3つ目に置き、締めで家族の一言と自分の話の長さにもう一度使っています。
書いた原稿を話し言葉に直すコツ
原稿を書くと、どうしても書き言葉になりがちです。そのまま読むと、客席に話しかけている感じが出ません。
直す前:レシピの最後には「適量」という言葉が記載されていることが多く、非常に不親切だと私は考えます。
直した後:レシピって、最後に「適量」って出てきますよね。……急に手を放してきます。
- 1文を短くし、「〜ですよね」で客席に問いかける
- 「私は〜と考えます」のような説明を、気持ちの言葉に変える
- 笑いどころの前に「……」を書き、間をあける場所を決めておく
- 言いにくい言葉や長い数字は、言いやすい言い方に変える
漫談の練習のしかた
漫談は、丸暗記するより、流れを覚えて自分の言葉で話すほうが自然に聞こえます。次の順番で練習しましょう。
- 原稿を声に出して読み、時間を測る
- 原稿を、話の順番とキーワードだけの箇条書きメモにする
- メモだけを見て話し、スマホで録音する
- 録音を聞いて、言いにくい所と、間が短い所を直す
- 家族や友人の前で、客席に話しかけるつもりで通す
- 最初の一言と締めの一言だけは、一字一句覚える
キーワードで覚えるやり方は、「ネタの覚え方」でくわしく紹介しています。原稿の長さが持ち時間に合うかは、無料のツールでも確かめられます。
本番の前に確かめること
- つかみで、今日のテーマを一言で言えているか
- 3つの話が、同じテーマでつながっているか
- 締めで、前半の言葉をもう一度使っているか
- 人を傷つける話題が入っていないか
- 持ち時間より、少し短く終わるか
よくある質問
本当にあった話でないと、だめですか?
漫談は、本当にあった小さな出来事を、少し大げさに話すのが基本です。作った話でも、誰もが「ありそう」と思える場面なら笑いになります。ただし、ほかの人の秘密や失敗を、本人にことわらずに話すのはやめましょう。
客席が静かなまま、笑いが起きません。
問いかけを1つ入れてみましょう。「ありますよね?」と聞いて、うなずく人がいれば、そこから空気がやわらぎます。笑いが起きないときも、早口にならず、決めた間を守ることが大切です。
何分くらいの漫談から始めればいいですか?
初めてなら、話を1つにした1分版から始めましょう。慣れてきたら、話を3つにした3分版にのばします。
まとめ
- 漫談は、自分自身として客席に話しかけ、身近な話題で笑わせる芸
- 構成は「つかみ→本題→締め」で、本題はテーマでつながる小さな話を3つ
- 1つの話は「ふり→ずれ→自分ツッコミ」で組み立てる
- 締めで前半の言葉をもう一度使うと、話が1本にまとまる
- 丸暗記せず、流れとキーワードを覚えて自分の言葉で話す






