漫才の間(ま)とは、セリフとセリフのあいだにあける時間のことです。同じボケでも、間の長さが変わるだけで、笑いの大きさが変わります。はじめは、次の3つだけ覚えておけば大きく外しません。「ボケの前に1拍ためる」「ツッコミはボケが伝わったらすぐ」「笑いが起きたら、笑い声が下がり始めるまで待つ」です。
この記事では、漫才で使う4つの間と長さの目安、笑い待ちの決め方、テンポを良くする練習法をまとめました。なお、ここでいう1拍は、心の中で「いち」と数えるくらいの長さです。
目次目次を閉じる目次を開く
漫才の「間」と「テンポ」とは
間は、話していない時間のことです。お客さんは、この時間にボケの意味を考えたり、次に何が来るかを待ったりしています。間があるから、ボケがお客さんに届くのです。
テンポは、会話全体が進む速さのことです。テンポが良いというのは、早口のことではありません。セリフの速さはふつうのまま、むだな間がないことを指します。早口でまくし立てると、かえって聞き取れず、笑いが減ってしまいます。
間が笑いを生む仕組みは、「緊張と緩和」という考え方で説明できます。黙っている時間が小さな緊張を作り、ボケやツッコミでそれがゆるむと、笑いが起きやすくなります。くわしくは「笑いが起きる仕組み」で紹介しています。
漫才で使う4つの間と長さの目安
漫才の間は、どこにあけるかで、長さもねらいも違います。まずは次の4つを区別しておきましょう。
| 間の種類 | あける場所 | 長さの目安 | ねらい |
|---|---|---|---|
| ためる間 | ボケを言う直前 | 半拍〜1拍 | 「何が来る?」と思わせる |
| ツッコミ前の間 | ボケのあと、ツッコミの直前 | ほとんどなし〜半拍 | ボケが伝わった瞬間にツッコむ |
| 笑い待ち | 笑いが起きたあと | 笑い声が下がり始めるまで | 次のセリフを笑い声に消されない |
| 場面の変わり目の間 | 話題や場面が変わる所 | 1〜2拍 | 話が変わったことを伝える |
ためる間:ボケの直前
ボケの前にほんの少し黙ると、お客さんは「次に何を言うんだろう」と身を乗り出します。この小さな緊張があると、ボケが来たときの笑いが大きくなります。ただし、長すぎると「もったいぶっている」と感じられるので、1拍までにとどめましょう。
ツッコミ前の間:ボケが伝わった瞬間
ツッコミは、早すぎても遅すぎても笑いが小さくなります。早すぎると、お客さんがボケを理解する前に話が進んでしまいます。遅すぎると、お客さんが笑い終わったあとにツッコむことになり、笑いが重なりません。
目安は、ボケの最後の言葉を聞き終えたらすぐです。少し考えないと分からないボケほど、半拍ほど待ってからツッコみます。
場面の変わり目の間
「ところで」「それより」のように話題を変える所では、1〜2拍あけると、お客さんの頭も切りかわります。ここで間をあけずに次の話に入ると、前の話とつながっているように聞こえて、お客さんを混乱させてしまいます。
間の印をつけた台本の例
下の台本は、間の場所に印をつけたものです。「/」は半拍、「//」は1拍の間を表します。(笑い待ち)の所では、笑い声が下がり始めるまで待ちます。
台本選手宣誓(約40秒)
A運動会の選手宣誓を、一回やってみたかったんだよね。
Bいいよ。じゃあ、僕が校長先生をやるから。……選手代表、前へ。
A(右手を挙げて)宣誓。//
Aわれわれ選手一同は、スポーツマンシップにのっとり、//お弁当を楽しみに、
Bお弁当の話はいいんだよ。
(笑い待ち)
A……正々堂々、戦うことを誓います。/ただし、雨の場合は、
B雨の話もいらない。
A体育館にて、//お弁当を食べることを誓います。
B結局お弁当じゃないか。
(笑い待ち)
「お弁当を楽しみに」の前の1拍が、ためる間です。まじめな宣誓の言葉が続いたあとで黙るので、お客さんは「次もまじめな言葉が来る」と思います。そこにずれた言葉が来るので、笑いになります。
ツッコミの「お弁当の話はいいんだよ」は、間をあけずに入ります。最後の「体育館にて」のあとの1拍は、もう一度お弁当が出てくるのを期待させるための間です。同じボケをくり返す天丼では、2回目以降のためる間を少し長めにすると、期待がふくらみます。くり返し方のコツは「天丼(くり返しのボケ)のやり方」で紹介しています。
笑い待ちの長さの決め方
笑い待ちは、笑い声がいちばん大きくなり、下がり始めた所で次のセリフに入るのが基本です。笑い声が完全に消えるまで待つと、会場がしんとして、テンポが落ちます。
| 笑いの大きさ | 待つ長さの目安 | 次のセリフの入り方 |
|---|---|---|
| くすっと小さな笑い | 待たない〜半拍 | ふつうの声で続ける |
| ふつうの笑い | 1〜2秒 | 下がり始めたら、少し大きめの声で入る |
| 大きな笑い・拍手 | 2〜4秒 | 拍手が落ち着くまで待ち、短い言葉から入る |
| 笑いが起きない | 待たない | すぐ次のセリフへ進む |
大きな笑いのあとは、「いや、」「で、」のような短い言葉から入ると、大事なセリフが笑い声に消されません。笑いが起きなかった所で待ってしまうと、沈黙が目立ちます。待つ所と待たない所は、練習のときから台本に書いておきましょう。
本番は、笑い待ちの分だけ練習より時間が延びます。持ち時間が決まっている場合は、練習では少し短めに収まるように仕上げておくと安心です。
会場の広さとお客さんの数で変える
お客さんが少ない会場では、笑い声が小さく、すぐにおさまります。待ちすぎると間延びするので、笑い待ちは短めにしましょう。反対に、広い会場やお客さんの多い会場では、笑いが後ろの席まで広がるのに時間がかかります。前の席の笑いだけで次に進まず、会場全体の笑いが下がり始めるのを待ちます。
結婚式の余興のように、年配の人や子どもも聞いている場では、全体の間を少し長めにとると、話についてきてもらいやすくなります。
テンポを良くする練習法
間は、頭で分かっていても、体が覚えるまでに時間がかかります。2人でする練習と、1人でできる練習を組み合わせましょう。
1. 手拍子に乗せて読む(2人)
相方に一定の速さで手をたたいてもらい、その拍に乗せてセリフを読みます。「/」の印の所では、手拍子1回分だけ黙ります。慣れたら手拍子をやめて、頭の中で拍を数えながら読みましょう。
2. ツッコミの入りだけを続ける(2人)
ボケ役がボケのセリフだけを言い、ツッコミ役が間をあけずに返す練習です。台本のボケを10個ほど続けて言ってもらい、返しが遅れた所に印をつけます。ツッコミの言い方の種類は「ツッコミの種類一覧」が参考になります。
3. 録画で「黙っている時間」を数える(2人)
通しを録画し、セリフとセリフのあいだが2秒以上あいている所を探します。笑い待ちでもためる間でもない沈黙は、セリフを思い出している時間であることがよくあります。そこは間ではなく「すき間」なので、詰めて練習し直します。
4. 間を声に出して数える(1人)
相方のセリフも自分で言いながら、1人で台本を読みます。間の印の所では、「いち」と小さく声に出して数えましょう。慣れたら、声に出さずに心の中で数えます。
5. 好きな漫才で笑い待ちを数える(1人)
好きな漫才を見ながら、笑いが起きてから次のセリフまでの秒数を数えてみましょう。ボケの前に黙る長さや、ツッコミの速さも、数えてみると感覚がつかめます。まねるのは間の取り方だけにして、セリフやネタはまねしないようにします。
間が悪いときによくある症状と直し方
録画を見て「なんとなくテンポが悪い」と感じたら、次の表で原因を探しましょう。
| 症状 | 考えられる原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| ボケの直後、笑いが起きる前に話が進む | ツッコミが早すぎる | ボケの最後の言葉を聞き終えてからツッコむ |
| ツッコミのあと、笑いが小さい | ツッコミが遅い | ツッコミの入りだけを続ける練習をする |
| 全体がのんびりして聞こえる | どこでも間をあけている | 4つの間以外のすき間を詰める |
| 早口で、言葉が聞き取れない | テンポを速さのことだと思っている | 文はふつうの速さで言い、すき間だけを詰める |
| 笑いが起きたのに、次のセリフが聞こえない | 笑い待ちをしていない | 笑い声が下がり始めるまで待つ |
言葉がはっきり聞こえないと、どれだけ間を整えても笑いにつながりません。声が届いていないと感じたら、「お笑いの発声練習」も試してみてください。
よくある質問
間は、台本に書いておいたほうがいいですか?
書いておくのがおすすめです。2人の感覚だけに頼ると、日によって間が変わり、練習のたびにずれてしまいます。「/」などの印を2人でそろえておけば、話し合いも早く済みます。
2人で間の感覚が合いません。
録画を見ながら、ずれた所で止めて「ここは何拍か」を決めてしまいましょう。感覚の話をすると平行線になりがちですが、拍の数で決めると合わせやすくなります。印をつけた台本で、手拍子の練習から始めるのもおすすめです。
本番で、笑ってほしい所で笑いが起きませんでした。
その場では待たずに、すぐ次のセリフへ進みましょう。笑いが起きなかった所で黙ると、お客さんも気まずくなります。終わってから録画を見て、ボケの前の間や、ツッコミの速さを見直します。
まとめ
- 間はセリフとセリフのあいだの時間で、テンポが良いとは「むだな間がないこと」
- ためる間・ツッコミ前の間・笑い待ち・場面の変わり目の間の4つを使い分ける
- 笑い待ちは、笑い声が下がり始めた所で、短い言葉から入る
- 笑いが起きなかった所では待たずに進み、待つ所は台本に印をつけておく
- 手拍子・ツッコミの入り・録画で数える練習で、間を体に覚えさせる






