ボケとツッコミは、性格のイメージで決めるより、同じ台本を役を入れ替えて読み、笑いが起きたほうに決めるのが確実です。目安としては、思いついたことを照れずに言える人がボケ、人の話を最後まで聞いて短く返せる人がツッコミに向いています。
この記事では、向き不向きを見分ける10の質問と、入れ替えて読む「試し読み」のやり方を紹介します。決めた役を途中で変える方法もまとめました。
ボケとツッコミの役目のちがい
ボケは、話の中に「ずれ」を出す役です。ずれとは、普通とは少しちがう言葉や行動のことです。ツッコミは、そのずれを客席に分かる言葉で指さして、笑いどころを知らせる役です。
| くらべること | ボケ | ツッコミ |
|---|---|---|
| 役目 | ずれを出す | ずれを指さして、笑いどころを知らせる |
| 台本での仕事 | 話を広げる、脱線する | 話を本題に戻し、テンポを作る |
| 求められる力 | 思いつく力、照れずに演じる力 | 最後まで聞く力、短く言い切る力 |
| 客席から見ると | ちょっと変わった人 | 客席の気持ちを代わりに言う人 |
どちらが上ということはありません。笑いは、ずれとツッコミの2つがそろって初めて起きます。漫才では、ツッコミが話の進み方や時間を気にかけることが多いので、進行役も兼ねると考えておくと準備がしやすくなります。
向いている役を見分ける10の質問
まずは2人それぞれが、次の10の質問に答えてみましょう。当てはまるものに印をつけ、ボケとツッコミのどちらに印が多いかを数えます。
| 番号 | 質問 | 当てはまったら |
|---|---|---|
| 1 | 思いついたことを、つい口に出してしまう | ボケ |
| 2 | 同じ話でも、毎回ちがう言い方をしたくなる | ボケ |
| 3 | 変な動きや表情をするのが、苦にならない | ボケ |
| 4 | 自分の失敗を、笑い話にして話せる | ボケ |
| 5 | ひとりで空想するのが好き | ボケ |
| 6 | 人の話のおかしな所に、すぐ気づく | ツッコミ |
| 7 | 人の話を最後まで聞くのが苦にならない | ツッコミ |
| 8 | 長い話を、短くまとめるのが得意 | ツッコミ |
| 9 | 会話が止まると、自分から話を進めたくなる | ツッコミ |
| 10 | 台本の流れや、残り時間が気になる | ツッコミ |
印の差が3つ以上あれば、多いほうが今のところ向いている役です。差が2つ以下なら、どちらの役にも向いています。この場合は、次の「試し読み」で決めましょう。
2人とも同じ役に印が多いこともあります。そのときの決め方は、後の「2人とも同じ役をやりたいときは」で紹介します。
見た目や立場で決めない
役を決めるときに、よくある思いこみがあります。次の表のように、実際に大切なことは別の所にあります。
| よくある思いこみ | 実際に大切なこと |
|---|---|
| 声が大きい人がツッコミ | 声の大きさより、言うタイミング |
| 面白い人がボケ | ツッコミのワードがいちばん笑いを取ることもある |
| 台本を書く人がボケ | 書く人と演じる役は、別に決めてよい |
| 先輩や上司がツッコミ | 立場が上の人がボケると、そのずれも笑いになる |
見た目の特徴で役を決めたり、見た目そのものをネタにしたりするのはやめましょう。役は、話し方と考え方で決めるものです。
入れ替えて読む「試し読み」のやり方
向き不向きは、実際に声に出すといちばんよく分かります。同じ台本を、役を入れ替えて読み、どちらの組み合わせが自然かをくらべます。
- 時間
- 30分
- 人数
- 2人(聞いてくれる人が1人いると、なおよい)
- 準備物
- 1分ほどの台本、録音できるスマホ
- 難しさ
- ★
- 1分ほどの短い台本を1本用意する(下の台本をそのまま使えます)
- Aがボケ、Bがツッコミで2回読み、2回目を録音する
- 役を入れ替えて同じように2回読み、2回目を録音する
- 2つの録音を聞きくらべ、下の表のサインを探す
- 聞いてくれた人がいれば、どちらの組み合わせが笑えたかを聞く
- 日をあけて、別の台本でもう一度試す
別の台本で試したいときは、「漫才の台本例」から選ぶと、すぐに読み始められます。
試し読み用の台本「写真館の記念撮影」
Aが客のボケ、Bがカメラマンのツッコミです。ト書き(かっこの中の動きの説明)は、座ったまま軽くまねするだけでかまいません。
台本写真館の記念撮影(約1分)
(Bは写真館のカメラマン。Aは記念写真を撮りに来た客)
Bいらっしゃいませ。本日は記念写真ですね。
Aはい。家に飾る、一生ものの1枚をお願いします。
Bかしこまりました。では、こちらのいすにどうぞ。
A(いすの上に立つ)
B座ってください。
A一生ものなので、少しでも高い所からと思って。
B高さは関係ありません。
A(座って、こぶしを高く突き上げる)
Bそのポーズは何ですか。
A一生ものなので、勝った感じを出したくて。
B何にも勝ってないです。自然にお願いします。
A(両手をひざに置き、目をつぶる)
B目は開けてください。
A自然にしていたら、眠くなってきました。
B自然すぎます。……では撮ります。3、2、1。
A(シャッターの瞬間に、大きなくしゃみをするしぐさ)
B今の、一生ものになりましたよ。
録音で聞きくらべるサイン
| 役 | 向いているサイン | 向いていないサイン |
|---|---|---|
| ボケ | 変なセリフを、まじめな顔で言える | 言う前に照れ笑いが出る |
| ボケ | 自分から言い方を変えてみたくなる | 早口になって、ボケを流してしまう |
| ツッコミ | ボケを最後まで聞いてから、すぐ返せる | ボケのセリフにかぶせてしまう |
| ツッコミ | 「座ってください」を短く言い切れる | 語尾が弱くなる、説明が長くなる |
「やりたい役」と「笑いが起きた役」が同じとは限りません。録音を聞いて意外な結果が出たら、まずは笑いが起きたほうで3本ほど演じてみましょう。
役を決める前に確かめること
- 両方の組み合わせで、2回以上読んだか
- 録音を聞きくらべたか
- 1回で決めず、別の台本でも試したか
- 2人とも、決めた役に納得しているか
2人とも同じ役をやりたいときは
希望がぶつかったときは、どちらかががまんする形にしないことが大切です。ネタの形を工夫すれば、2人の希望を両方生かせます。
| 状況 | 決め方の例 |
|---|---|
| 2人ともボケをやりたい | ネタごとに交代する。または2人ともボケて、最後だけどちらかが止める形にする |
| 2人ともツッコミをやりたい | 考え方のちがう2人が、互いの言い分にツッコみ合う会話のネタにする |
| どちらも自信がない | 試し読みで、聞いた人が笑ったほうに決める |
| 3人で組んでいる | 2人がボケ、1人がツッコミにすると、まとめ役がはっきりする |
役は、一度決めたら変えられないものではありません。まずは仮に決めて、人前で3回ほど演じてから見直すくらいの気持ちで始めましょう。
役割を途中で変える方法
役を変える方法は2つあります。1本のネタの中で入れかわる方法と、コンビの役そのものを変える方法です。
ネタの途中で入れかわる
ネタの後半だけ役を入れかえると、流れが変わって、最後まで飽きられにくくなります。入れかわる場面では、「今から役が変わる」と分かるセリフを入れましょう。次の台本では、ふだんのボケ役がツッコミに回ろうとして、うまくいかない様子を笑いにしています。
台本たまには交代(約30秒)
Aねえ、今日は役を交代しない?
Bいいよ。じゃあ僕がボケるから、ツッコんで。
B昨日、家から駅まで歩いたら、3時間かかった。
A……そうなんだ。大変だったね。
Bツッコんでよ。
Aごめん、心配のほうが先に出た。
Bやさしさが邪魔をしてる。
A(せきばらいをして)もう一回お願いします。
B家から駅まで、3時間かかった。
Aどこに住んでるの。
Bそう、それ。
入れかわったあとは、2〜3回のやりとりで元の役に戻るのが目安です。長く続けると、客席がどちらをボケとして見ればいいか分からなくなります。
コンビの役を変えるときの手順
演じているうちに「役が合っていないかも」と感じたら、次の順番で役を変えてみましょう。
- 今の役で困っていることを、2人で1つずつ書き出す(例:ツッコミが毎回遅れる)
- 今あるネタを1本選び、役を入れかえて3回通して演じる
- 録画して、セリフが止まる所や照れている所に印をつける
- 新しい役に合わせて、語尾や口ぐせを書き直す
- 人前では、まず1分ほどの短いネタから試す
台本は、役を入れかえただけではうまくいかないことがよくあります。同じツッコミでも、言う人によって言いやすい語尾がちがうからです。新しくツッコミになった人は、「ツッコミのワード一覧」から自分の口に合う言い回しを探すと、早くなじめます。通し稽古までの練習の順番は、「漫才の練習方法」を参考にしてください。
よくある質問
余興や忘年会で1回だけやる場合も、試し読みは必要ですか?
1回だけなら、人前で話すのに慣れているほうがツッコミ(進行役)になると、まとまりやすくなります。時間があれば、本番の台本を役を入れ替えて1回ずつ読むだけでも、合う役が見えてきます。
1人でネタをするときは、ボケとツッコミはどうなりますか?
1人のときは、自分でボケて自分でツッコむか、客席の反応にツッコミを任せる形になります。一人でできる芸の種類は、「ピン芸の種類と作り方」で紹介しています。
ツッコミがうまくできないので、ボケに変わりたいです。
変える前に、ワードと間の練習を試してみましょう。ツッコミが遅れる、長くなるといった悩みは、練習で直せることがよくあります。それでも合わないと感じたら、試し読みで入れ替えをくらべてから決めてください。
まとめ
- ボケはずれを出す役、ツッコミはずれを指さして笑いどころを知らせる役
- 10の質問で今の向き不向きをつかみ、差が小さければ試し読みで決める
- 同じ台本を入れ替えて読み、録音で「笑いが起きたほう」をくらべる
- 見た目や立場ではなく、話し方と考え方で役を決める
- 役は途中で変えてよい。変えたら語尾や口ぐせも書き直す





