ピン芸には、役を演じる一人コント、自分として話す漫談、紙をめくるフリップ芸など、いくつもの種類があります。話すのが好きか、作るのが好きか、体を動かすのが好きかで選ぶと、自分に合う芸が見つかります。
この記事では、ものまね以外のピン芸を9種類、準備物と難しさつきで紹介します。向いている人の見分け方と、種類ごとの作り方の入口もまとめました。
ピン芸とは? 一人で笑いを生むしかけ
ピン芸とは、1人で演じるお笑いの芸のことです。「ピン」は1人を表す言葉で、コンビやトリオに対して使われます。
2人の漫才では、ツッコミが「ここが笑いどころです」と知らせてくれます。ピン芸ではその役を、自分の一言や、めくった紙、リズムの外し方、客席の想像などに任せます。種類を選ぶときは、どのしかけで笑いどころを知らせる芸なのかを見ると、自分に合うかどうかが分かります。
なお、ものまねも1人でできる芸ですが、この記事では、自分で台本やネタを一から作れる芸にしぼって紹介します。
ピン芸の種類一覧(ものまね以外の9種類)
難しさは★1〜3で、★が少ないほど、初めてでも形にしやすい芸です。
| 種類 | どんな芸か | 主な準備物 | 難しさ |
|---|---|---|---|
| 一人コント | 役になりきり、見えない相手と場面を演じる | 机やいすなど、場所が分かる物 | ★★ |
| 漫談 | 自分として、客席に話しかけて笑わせる | マイク(あれば) | ★★ |
| フリップ芸 | めくった紙の文字や絵で笑わせる | スケッチブック、太いペン | ★ |
| リズムネタ | 拍に乗せた言葉と動きをくり返す | 手拍子か、自分で作った簡単な音 | ★★ |
| サイレントコント | セリフを使わず、動きと表情だけで見せる | なし | ★★★ |
| 一人二役 | 帽子などの小物を替えて、2人の人物を交互に演じる | 帽子やエプロンなどの小物 | ★★ |
| 落語風の一人芝居 | 座ったまま、顔の向きで何人もの人物を演じ分ける | 座布団か、いす | ★★★ |
| 腹話術 | 人形と掛け合いをして、人形にボケさせる | 人形 | ★★★ |
| 物ボケ・一発ネタ | 身近な物を別の物に見立てるなど、30秒ほどの短い芸 | 身近な物 | ★ |
初めての1本なら、★1つのフリップ芸か、★2つの一人コントか漫談から選ぶのがおすすめです。どれも台本や紙に書いて準備できるので、本番で頭が真っ白になりにくい芸です。
自分に向いているピン芸の選び方
得意なことで選ぶ
次の表で、自分に当てはまる行を探してみてください。2つ以上当てはまるときは、★の少ない芸から試しましょう。
| 当てはまること | 向いているピン芸 |
|---|---|
| 人と話すのが好きで、日常の小さな出来事によく気づく | 漫談 |
| 何かになりきって演じるのが好き | 一人コント、一人二役 |
| 人前で長く話すのは苦手 | フリップ芸、サイレントコント |
| 体を動かすのが好きで、リズム感に自信がある | リズムネタ、サイレントコント |
| 絵や工作など、道具を作るのが好き | フリップ芸、腹話術 |
| 声や口調を変えて演じ分けるのが得意 | 落語風の一人芝居、腹話術 |
| とにかく短く、すぐ覚えられる芸がいい | 物ボケ・一発ネタ |
演じる場面で選ぶ
同じ芸でも、場面によって向き不向きがあります。出る場所が決まっているなら、こちらの表から選ぶのも方法です。
| 場面 | 選びやすいピン芸 | 理由 |
|---|---|---|
| 結婚式の余興 | フリップ芸、一人二役 | 紙や小物が話を進めてくれ、お祝いの言葉にもつなげやすい |
| 職場の忘年会 | 漫談、フリップ芸、リズムネタ | 職場のあるあるを入れやすく、短くまとめられる |
| お笑いライブや大会 | 一人コント、漫談 | 台本の工夫で勝負できる |
| ショート動画 | リズムネタ、サイレントコント | 短く、音や動きだけで伝わる |
| 子ども向けの会 | 腹話術、サイレントコント | 言葉が分からなくても楽しめる |
種類別・作り方の入口
種類が決まったら、最初の1本は、それぞれ次の形から作り始めると迷いません。
一人コント:電話の場面から始める
最初は、相手の姿を見せなくてよい電話の場面がおすすめです。相手のセリフも入れた台本を書き、あとから相手の分を黙る時間に変えます。くわしい手順は「一人コントの作り方」で紹介しています。
漫談:テーマ1つに、小さな話を3つ
「最近、〇〇が気になっています」とテーマを1つ決め、それにつながる小さな話を3つ並べます。原稿の例と練習のしかたは「漫談の作り方」にまとめました。
フリップ芸:標識や辞書の形を借りて8枚
標識や辞書など、決まった形をまねて紙を作ると、絵が苦手でも何の芸か一目で伝わります。めくる順番とテンポは「フリップ芸の作り方」で説明しています。
リズムネタ:4拍のフレーズをくり返す
手拍子4回分に言葉を乗せたフレーズを作り、3回くり返して4回目で外すのが基本の形です。拍の数え方と例は「リズムネタの作り方」を見てください。
サイレントコント:見えない物を1つ扱う
重い荷物、開かないびんなど、見えない物を1つ決めて、それを扱う動きだけで短い場面を作ります。動きの大きさのコツは「サイレントコントの作り方」で紹介しています。
一人二役:小物1つで人物を切りかえる
帽子をかぶっている間は人物A、外すと人物B、のように、切りかえの合図を1つに決めます。体の向きも、人物ごとに左右に分けると、客席が迷いません。
台本パン屋の店長と新人(約30秒)
(エプロンをつけて立つ。帽子をかぶっている間は店長、外すと新人)
(帽子をかぶり、右を向く)
店長今日から入った新人さんだね。まずは、元気なあいさつから。
(帽子を外し、左を向く)
新人いらっしゃいませ。
(帽子をかぶり、右を向く)
店長いいね。じゃあ、パンを袋に入れてみよう。
(帽子を外し、左を向く。パンを両手でそっと袋に入れるしぐさ)
新人……いってらっしゃい。
(帽子をかぶり、右を向く)
店長見送らなくていい。お客さんに渡すの。
落語風の一人芝居と腹話術は、人物の演じ分けに慣れが必要なので、ほかの種類で1本作ってから挑戦すると安心です。物ボケや一発ネタは、30秒ほどで終わるので、ほかの芸の最後に1つ足す使い方もできます。
はじめての1本を仕上げる手順
どの種類を選んでも、1本目は次の順番で進めると、途中で止まりにくくなります。
- 選び方の表から、種類を1つ選ぶ
- 持ち時間を1〜2分に決める
- テーマを1つ決め、その種類の形に当てはめて台本や紙を作る
- 声に出して通し、時間を測る
- スマホで録画し、笑いどころのあとに間があいているかを見る
- 家族や友人の前で1回演じてから、本番に出す
1人で演じる芸は、録画がいちばんの相方になります。自分では気づかない早口や、目線の迷いが、映像で見るとよく分かります。
1本目のネタ案
3のテーマに迷ったら、次の案から選んで、自分の言葉に直して使ってください。
| 種類 | 1本目のネタ案 | 笑いどころ |
|---|---|---|
| 一人コント | 観光案内所の係員と、質問が少しずれている旅行客 | 係員のくり返しで、客の質問の変さが伝わる |
| 漫談 | 季節の変わり目に、着る服が決まらない話 | 朝と昼で、季節が2つあるような毎日 |
| フリップ芸 | 電車の路線図の形で見せる「わたしの休日」 | 駅名が「起床」「二度寝」「もう夕方」と進む |
| リズムネタ | 出かける前の確認を、4拍の数え歌にする | 3回目まで順調で、4回目に大事な物を忘れる |
| サイレントコント | 開かないびんのふたと、1分間戦う | 力を入れるほど、動きが大きくなっていく |
| 一人二役 | メガネをかけると先生、外すと宿題を忘れた生徒 | 生徒の言いわけが、だんだん苦しくなる |
| 落語風の一人芝居 | 道を聞く旅の人と、説明がとても長い町の人 | 道順より、町の思い出話のほうが長い |
| 腹話術 | 人形が「今日は休みたい」とごねる朝 | 人形の言いわけに、つい納得しかける |
| 物ボケ・一発ネタ | ハンガー1本を、3つの物に見立てる | 3つ目だけ、少し無理のある見立てにする |
人前で演じる前に確かめること
- 始めの一言と、締めの一言が決まっているか
- 笑いどころのあとに、笑いを待つ間があるか
- 人の見た目や年齢などをからかう内容が入っていないか
- 道具や衣装を置く場所と、マイクの位置を確かめたか
よくある質問
ピン芸は、コンビの芸より難しいですか?
難しい点と楽な点の両方があります。ツッコミ役がいないので、笑いどころを自分で知らせる工夫が必要です。その代わり、練習の日程を誰かと合わせる必要がなく、思いついた日にすぐ試せます。
2つの種類を組み合わせてもいいですか?
組み合わせてかまいません。漫談の途中でフリップを1枚見せる、一人コントの最後をリズムネタで締める、といった形です。ただ、最初の1本は1つの種類にしぼったほうが、何が笑いにつながったかを見直しやすくなります。
衣装はそろえたほうがいいですか?
一人二役のように、衣装そのものが笑いのしかけになる芸でなければ、ふだん着で十分です。衣装を使うなら、帽子やエプロンなど、すぐに着けはずしできる物を1つ選びましょう。
まとめ
- ピン芸は、ずれを出すことと笑いどころを知らせることを、1人でこなす芸
- ものまね以外にも、一人コント、漫談、フリップ芸、リズムネタなど9つの種類がある
- 話すのが好きか、作るのが好きか、動くのが好きかで種類を選ぶ
- 初めてなら、フリップ芸か、一人コントか漫談から始める
- 最初の1本は、1つの種類にしぼって1〜2分で作り、録画で見直す






