フリップ芸は、「お題を言う→めくって見せる→一言足す」の3拍を、1枚ずつくり返して笑いを重ねる芸です。紙に書くのは笑いの半分だけにして、残りの半分をめくった後の一言で取ると、ネタが締まります。
この記事では、フリップ芸の構成と5つの型、めくるテンポのつけ方を説明します。そのまま使える約2分のネタと、フリップの作り方も紹介します。
フリップ芸は「お題→めくり→一言」の3拍でできている
フリップとは、文字や絵をかいた大きな紙のことです。フリップ芸では、1枚ごとに次の3拍をくり返します。
| 拍 | すること | 長さの目安 |
|---|---|---|
| お題 | これから何を見せるかを言い、客席に予想させる | 2〜3秒 |
| めくり | 紙をめくり、だまって答えや絵を見せる | 3秒ほど |
| 一言 | めくった紙に、もう一つ笑いを足す | 2〜3秒 |
お題は、お笑いでいう「フリ」です。フリとは、客席に「次はこうなるだろう」と予想させる前置きのことです。めくった紙が予想からずれるほど、笑いが大きくなります。
いちばん大切なのは、一言で紙の文字を読み上げないことです。客席はもう文字を読んでいるので、読み上げると笑いが止まります。一言では、紙に書いていない理由や続きを足しましょう。
| 紙に書くこと | 弱い一言(読み上げ) | 強い一言(足す) |
|---|---|---|
| ボタン連打 禁止 | 「ボタンの連打は禁止です」 | 「何回押しても、来る速さは同じです」 |
| 夜11時以降 立ち止まり禁止 | 「夜11時からは止まれません」 | 「ここで止まると、プリンが1個消えます」 |
フリップ芸の5つの型
フリップ芸のネタは、めくった紙に何を書くかで、次の5つの型に分けられます。1本のネタでは、型を1つにしぼると、客席が笑い方をつかみやすくなります。
| 型 | めくった紙に書くこと | 例(お題→めくった紙) |
|---|---|---|
| 形式まね型 | 標識や辞書など、決まった形式をまねた絵や文字 | 「朝の玄関の標識」→「この先 忘れ物多発」 |
| あるある型 | 誰もが知っている場面の一言 | 「一日でいちばん長い5分」→「目覚ましが鳴ってからの5分」 |
| 意外な答え型 | クイズの答えが、予想から少しずれている | 「仲間はずれはどれ? りんご・バナナ・みかん」→「いません。みんな仲よし」 |
| 図解型 | 円グラフや図で、気持ちや時間の中身を見せる | 「休日の過ごし方」→「9割が『何をするか考える』」の円グラフ |
| 続き物型 | めくるたびに、話が1歩ずつ進む | 「早起き生活の1週間」→「月:5時起き」…「日:昼」 |
初めてなら、形式まね型か、あるある型がおすすめです。形式まね型は、標識や辞書の形を借りるだけで「何のパロディか」が一目で伝わります。あるある型は、お題を1つ決めて、同じ場面のあるあるを3枚ほど続けると形になります。
お題「月曜日の朝、いちばん重いもの」→ めくった紙「玄関のドア」→ 一言「金曜日は、あんなに軽かったのに」
お題「月曜日の朝、いちばん長い道」→ めくった紙「布団から洗面所まで」→ 一言「距離は3メートルです」
お題「月曜日のお昼休みに考えること」→ めくった紙「金曜日の夜ごはん」→ 一言「まだ4日あります」
3枚とも、一言で紙の文字をくり返さず、「金曜日」との差や本当の距離を足しています。あるあるの見つけ方は、「あるあるネタの作り方」でくわしく紹介しています。
そのまま使えるネタ「身の回りの標識」
形式まね型のネタです。道路の標識の形を借りて、暮らしの中にあったら便利な標識を見せていきます。かっこの中は、めくる動きと、フリップに書く内容です。
- 時間
- 約2分
- 人数
- 1人
- 準備物
- スケッチブック(A3以上)か画用紙9枚、太い黒のペン、赤・黄・青のペン、フリップを立てる台
- 難しさ
- ★
台本身の回りの標識(約2分)
(台の横に立つ。表紙は「暮らしに役立つ標識を作りました」)
自分道路には、いろいろな標識がありますよね。今日は、暮らしの中にもあったら便利な標識を作ってきました。
自分まずは、朝の玄関に置く標識です。
(1拍おいてめくる。黄色い三角の標識に「この先 忘れ物多発」)
(2秒だまって見せる)
自分鍵、スマホ、お弁当。3つ確かめてから通過してください。
自分続いて、夜の冷蔵庫の前です。
(めくる。赤い丸の標識に「夜11時以降 立ち止まり禁止」)
自分ここで止まると、だいたいプリンが1個消えます。
自分会議室の入口には、これです。
(めくる。赤い丸の標識に「話の長さ 制限5分」)
自分守られたところは、まだ見たことがありません。
自分休みの日のソファには、これ。
(めくる。黄色い三角の標識に「この先 動けなくなります」)
自分座ったが最後、気づくと夕方です。
自分エレベーターの前には、これを。
(めくる。青い四角の標識に「ボタン連打 禁止」)
自分何回押しても、来る速さは同じです。
自分お菓子売り場には、これです。
(めくる。黄色い三角の標識に、走る人の絵と「飛び出し注意」)
自分子どもかと思ったら、新作を見つけた大人です。
(めくりかけて、手を止める)
自分次は……少しこわい場所です。
(ゆっくりめくる。赤い丸の標識に「通行止め 朝7時まで」、下に小さく「布団の中」)
自分この標識だけは、ぜひ守ってください。
自分最後に、この会場の標識です。
(めくる。青い丸の標識に「この先 拍手 ご自由に」)
(両手で客席をさす)
自分どうぞ、ご自由に。
(おじぎをする)
このネタの組み立て
最初の「忘れ物多発」で、標識の形を借りたネタだと伝えています。7枚目の「布団の中」は、めくりかけて止めてから見せる、いちばんの山場です。最後の1枚で客席に拍手をお願いし、そのまま締めにつなげています。
標識は、色と形をそろえると、絵が苦手でも本物らしく見えます。黄色い三角は「注意」、赤い丸は「禁止」、青い四角や丸は「案内」と決めておきましょう。
フリップの作り方
フリップ芸の紙は、きれいさより「一目で読めるか」が大切です。次の手順で作りましょう。
- お題を1つ決め、めくる紙の候補を15個ほど書き出す
- 笑いが大きそうなものを8つ選ぶ
- いちばん強いものを最後から2枚目に、2番目に強いものを最初に置く
- 1枚ずつ、めくる前に言うお題と、めくった後の一言を決める
- コピー用紙に下書きし、5歩下がって読めるか確かめる
- 清書して、裏の右下に番号と、次のお題のセリフを小さく書く
- 声に出して通し、全体の時間を測る
いちばん強いネタを最後ではなく、最後から2枚目に置くのは、最後の1枚を「締め」に使うためです。締めの1枚は、ネタ全体をまとめる言葉や、客席へのお礼にすると終わりがはっきりします。
1枚の紙の中では、見せたい言葉を真ん中に大きく書き、説明はその下に小さく添えます。文字は1枚15字以内、色は3色までにすると、読む時間が短くなります。紙や文字の大きさの目安は、「余興のフリップ芸のやり方」の表が参考になります。
めくるテンポのつけ方
フリップ芸の笑いは、何を書くかと同じくらい、めくる速さで決まります。まずは1枚を、次の流れで約12秒かけて見せるのを基本にしましょう。
| 時間 | すること |
|---|---|
| 0〜3秒 | お題を言う |
| 3〜4秒 | 1拍ためる(客席が紙を見るのを待つ) |
| 4〜5秒 | めくる |
| 5〜7秒 | だまって見せる |
| 7〜10秒 | 一言を言う |
| 10〜12秒 | 笑いを待ってから、次のお題へ |
同じ速さが続くと、中盤で客席が慣れてきます。8枚のネタなら、次の4つの技を1〜2回ずつ混ぜて、テンポに変化をつけましょう。
| 技 | やり方 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 速めくり | 短い紙を2〜3枚、続けてめくる | 中盤、同じ形が続いて飽きられそうなとき |
| めくり止め | 半分めくって止め、一言はさんでから見せる | いちばん強いネタの前 |
| 戻しめくり | 前の紙に戻って、もう一度見せる | 前の紙を、後で別の意味に使うとき |
| だまりめくり | お題を言わずに、だまってめくる | 紙だけで伝わる絵のネタ |
戻しめくりは、同じものをくり返して笑いを大きくする「天丼」の一つです。くり返しの回数や間隔は、「天丼のやり方」で説明しています。
めくる練習のしかた
めくる動きは、セリフとは別に練習すると早く身につきます。
- 紙を使わずに、お題と一言だけを声に出して通す
- 次に、セリフを言わずに、めくる動きだけを8枚通す
- セリフとめくりを合わせ、1枚ずつ12秒を目安に通す
- スマホで録画し、めくる前の「ため」があるか、顔が隠れていないかを見る
本番の前に確かめること
- めくる順番と、裏の番号がそろっているか
- めくるとき、紙で自分の顔が隠れないか
- 一言で、紙の文字を読み上げていないか
- 1枚ごとの時間を測り、持ち時間に収まっているか
- 最後の1枚で、締めの言葉とおじぎまで決めてあるか
よくある質問
絵が苦手でもできますか?
できます。形式まね型やあるある型なら、文字だけでもネタになります。標識のように、形と色で伝わる絵を選ぶのもよい方法です。絵を描くなら、上手さより「何の絵か一目で分かるか」を大切にしましょう。
紙ではなく、スクリーンにスライドで映してもいいですか?
大きな会場では、スライドのほうが後ろの席まで見やすくなります。ただ、ボタン1つで切りかわるので、ためを忘れがちです。切りかえる前に1拍おくことを、台本に書きこんでおきましょう。
8枚分のネタが思いつきません。
1つのお題で、ずらし方を変えて考えてみましょう。「この場所にあったら便利」「この場所で起きがちなこと」のように、問いを変えると候補が増えます。答えの考え方は、「大喜利のコツ」が参考になります。
まとめ
- フリップ芸は「お題→めくり→一言」の3拍を、1枚ずつくり返す
- 一言では紙の文字を読み上げず、理由や続きを足す
- 初めてなら、形式まね型かあるある型で、型を1つにしぼる
- いちばん強いネタは最後から2枚目に置き、最後の1枚で締める
- 1枚約12秒を基本に、速めくりやめくり止めでテンポを変える






