介護施設やデイサービスの新年会では、昔なつかしい題材と、座ったまま参加できるゲームを組み合わせると、多くの方が楽しめます。題材は、利用者さんが若いころに親しんだお正月の暮らしから選びましょう。職員が演じる出し物は、ゆっくり、短く、何度も参加の声をかける形にします。
この記事では、職員が演じやすい演目を7つと、そのまま使える寸劇の台本を紹介します。聞こえやすい話し方と、安全のために前もって確かめることもまとめました。敬老会やクリスマス会など、ほかの季節の行事にも応用できます。
目次目次を閉じる目次を開く
高齢者向けの出し物で大切にしたい3つのこと
人生の先輩として迎える
出し物は、職員が利用者さんを笑わせるものではなく、一緒に笑うものです。呼びかけは「おじいちゃん」「おばあちゃん」ではなく、名前に「さん」をつけます。昔の暮らしの話題なら、利用者さんが職員に教える側に回れるのもよいところです。
「見る」と「参加する」を交互に入れる
見ているだけの時間が長いと、疲れたり、眠くなったりする方が出てきます。5分見たら5分参加する、というように、見る時間と声や手を出す時間を交互に入れましょう。
参加しない自由も守る
大きな声を出すのが苦手な方や、見ているほうが好きな方もいます。参加を無理にすすめず、拍手や「よっ」の掛け声で加わってもらえれば十分です。年齢や物忘れを笑いの種にする冗談は、軽いものでも入れません。
新年会で楽しめる演目7選
職員の人数と準備の時間に合わせて選んでください。難しさは★の数で表し、★1つがいちばん簡単です。
1. 寸劇「昭和の初売り商店街」
お正月の商店街を、職員が八百屋・魚屋・豆腐屋になって演じます。お店ごとに、縁起物の意味や昔の物売りの音を利用者さんに聞きながら進むので、見る人も答える人も楽しめます。台本は下で紹介しています。
- 時間
- 約5分
- 人数
- 職員3〜4人
- 準備物
- 前かけ、はちまき、れんこん(実物か絵)、くわいの絵、小さな鯛の絵、買い物かご
- 難しさ
- ★★
2. なつかし道具クイズ
洗濯板、湯たんぽ、火鉢、そろばん、足踏みミシンなど、昔の道具を見せて「何に使う道具でしょう」と聞きます。職員がわざと「おしゃれなまな板ですか」と見当違いの答えを言うと、利用者さんが笑いながら正しい使い方を教えてくれるでしょう。「使ったことのある方」に、思い出を1つずつ話してもらいましょう。
- 時間
- 約10分
- 人数
- 職員1〜2人と利用者さん全員
- 準備物
- 道具の実物か、A3以上に大きく印刷した写真5〜6枚
- 難しさ
- ★
実物を手で回して見てもらうときは、重さや角に気をつけ、職員が手を添えます。
3. ことわざの続き当て
職員がことわざの前半を読み、利用者さんに続きを答えてもらいます。ときどき職員がわざと間違えると、すぐに「違う違う」と声が上がり、笑いが起きやすくなります。
| 職員が読む前半 | 正しい続き | わざと間違える例 |
|---|---|---|
| 一年の計は | 元旦にあり | 大みそかにあり |
| 笑う門には | 福来たる | 福袋 |
| 早起きは | 三文の徳 | 二度寝のもと |
| 石の上にも | 三年 | 座布団 |
| 急がば | 回れ | 走れ |
- 時間
- 約10分
- 人数
- 職員1〜2人
- 準備物
- ことわざの前半を大きく書いた紙
- 難しさ
- ★
4. 昔の仕事ジェスチャー当て
紙芝居屋さん、金魚売り、駅で切符を切る駅員さん、石焼きいも屋さんなど、昔の町で見かけた仕事を職員が身ぶりで演じます。当たったら「どこの町で見かけましたか」と聞くと、思い出話が広がります。拍子木の音や呼び声を入れると、当てやすくなります。
- 時間
- 約10分
- 人数
- 職員2〜3人
- 準備物
- 拍子木など音の出る物(なくても可)
- 難しさ
- ★★
5. 職員の正月芸(こま回し・けん玉・皿回し)
お正月らしい芸を、職員が1人2〜3分ずつ見せます。2回失敗して3回目に成功する流れにすると、利用者さんの応援が自然に集まります。こま回しの得意な利用者さんがいれば、ひもの巻き方を教えてもらうのもおすすめです。
- 時間
- 1人2〜3分
- 人数
- 職員1〜3人
- 準備物
- こま、けん玉、割れない皿回しの道具
- 難しさ
- ★★
6. 座ったままの紅白玉入れ
利用者さんは紅白の2チームに分かれて座り、かごを持った職員が席の近くを回ります。1分たったら、玉の数を全員で「ひとーつ、ふたーつ」と声に出して数えましょう。かごは低めに持ち、体を大きく乗り出さなくても入る位置に近づけます。
- 時間
- 約10分
- 人数
- 利用者さん全員と、かごを持つ職員2人以上
- 準備物
- 布の玉やお手玉、かご2つ
- 難しさ
- ★
7. 利用者さんが先生の「お手玉・あやとり教室」
お手玉やあやとりの得意な利用者さんに先生になってもらい、職員が生徒として教わります。職員がなかなか上手にできない姿に、会場から自然に笑いと声援が起きやすくなります。先生役をお願いする方には、前もって声をかけておきましょう。
- 時間
- 約10分
- 人数
- 先生役の利用者さん数人と、職員
- 準備物
- お手玉、あやとりのひも
- 難しさ
- ★
寸劇の台本「昭和の初売り商店街」
1の台本です。司会はお客さん役として、商店街を歩きながら利用者さんに話しかけます。ト書きの「答えを待つ」ところでは、急がずに、出てきた答えを1つずつ受け止めてください。
台本昭和の初売り商店街(約5分)
(司会が買い物かごを持って、ゆっくり前に出る)
司会皆さん、あけましておめでとうございます。
(利用者さんの「おめでとうございます」を待つ)
司会今日は1月2日。商店街の初売りに、一緒に出かけましょう。最初のお店は、八百屋さんです。
(はちまきをした八百屋が、手をたたきながら登場)
八百屋いらっしゃい、いらっしゃい。初売りだよ。おせちの野菜がそろってるよ。
司会八百屋さん、今年のおすすめは何ですか。
八百屋これだ。(れんこんを高く上げる)穴があいてるから、先がよく見える。縁起がいいんだ。
司会皆さんは、れんこんの穴から何が見えますか。
(利用者さんの答えを待ち、1つずつ「いいですね」と受ける)
八百屋おれには、今年の売り上げが見える。
司会見えすぎです。
八百屋じゃあ、これは何だか分かるかい。(くわいの絵を見せる)
司会皆さん、ご存じですか。
(答えが出たら、八百屋が「さすが」と大きくうなずく)
八百屋くわいは大きな芽が出るから、出世するんだよ。
司会では、くわいを1つください。
八百屋まいど。おまけに、大根もつけとくよ。
司会おまけのほうが大きいです。
(司会が次のお店へ歩く。魚屋が登場)
魚屋らっしゃい。鯛だよ、めでたいよ。
司会魚屋さん、その鯛、ずいぶん小さくありませんか。
魚屋小さくても、めでたさは一人前だ。
司会なるほど。
魚屋数の子もあるよ。数の子は、何の縁起だったかな。
(利用者さんの答えを待つ)
魚屋そうそう、子どもや孫に恵まれるように。よく知ってるね。
(司会が次へ歩く。奥から、口でまねたラッパの音「パープー」)
司会皆さん、この音を聞いたことのある方、いらっしゃいますか。
(利用者さんの答えを待つ)
豆腐屋とうふー。とうふは、いらんかね。
司会お正月から、お豆腐屋さんですか。
豆腐屋初売りだから、今日は特別に、ラッパを3回吹くよ。
司会回数が増えるだけですか。
豆腐屋パープー、パープー、パープー。……息が切れた。
司会無理しないでください。
(3人の店主が横に並ぶ)
司会商店街の皆さん、今年もよろしくお願いします。
八百屋・魚屋・豆腐屋よろしくお願いします。
司会では最後に、皆さんもご一緒に。せーの。
全員今年も、よろしくお願いします。
(全員で一礼し、利用者さんに拍手をお願いする)
演じるときのコツ
1つのお店の場面は1分ほどにして、次のお店へ移りましょう。利用者さんの答えが台本と違っても、「そういう言い方もありましたね」と受けると、安心して答えてもらえます。店主役は、セリフを短く、動きを大きくすると伝わりやすくなります。
聞こえやすく、見えやすく伝えるコツ
年齢とともに、高い音が聞き取りにくくなる方は少なくありません。職員の出し物は、内容より先に「聞こえるか」「見えるか」で楽しさが決まります。
| 気をつけること | やり方 |
|---|---|
| 声の高さと速さ | 少し低めの声で、ふだんよりゆっくり話す |
| 文の長さ | 1文を短く切り、大事な言葉は2回言う |
| 顔の向き | 利用者さんの正面に立ち、口元が見えるようにする |
| まわりの音 | 話す間は音楽を止め、テレビも消しておく |
| マイク | 音量を上げすぎない。大きすぎる音は割れて聞き取りにくい |
| 文字 | 白い紙に黒く太い字で、遠くの席からも読める大きさにする |
聞こえにくい方や見えにくい方には、前のほうの席に座ってもらいましょう。はっきり話す練習には「滑舌の練習文」も使えます。
安全のために確かめること
楽しい新年会にするために、準備の段階で次のことを職員全員で確かめておきます。
前日までに確かめること
- 床に電気コードや小道具を置かない(つまずきやすい)
- 食べ物を使う出し物はしない(お餅などは、のどに詰まるおそれがある)
- クラッカーや大きな音、急に照明を消す演出は使わない
- 玉入れの玉は、終わったらすぐに拾い集める
- 演じる職員とは別に、見守り役の職員を決めておく
- 車いすの方の位置と、通路の広さを確かめる
- 体調に気になる点がある方のことを、看護職員と共有しておく
小さな道具は、口に入れたり持ち帰ったりしないよう、手元に気を配りましょう。全体の時間は30〜40分ほどにして、途中で水分をとる時間を入れます。
40分の新年会の進め方の例
演目をすべて入れる必要はありません。職員の人数に合わせて、3〜4つ選んで組み合わせましょう。
| 時間 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 0〜5分 | 開会と、新年のあいさつ | 「あけましておめでとうございます」を全員で言う |
| 5〜12分 | 寸劇「昭和の初売り商店街」 | 答えを待つ時間を長めにとる |
| 12〜20分 | なつかし道具クイズ | 思い出話は1人1つずつ |
| 20〜23分 | 水分補給と休憩 | トイレに行きたい方の声を拾う |
| 23〜33分 | 座ったままの紅白玉入れ | 玉の数は全員で声に出して数える |
| 33〜40分 | 職員の正月芸と、締めのあいさつ | 最後は拍手で終える |
デイサービスでは、送迎の時間に合わせて終わりの時間を必ず守りましょう。ほかの新春らしい出し物は「新年会の出し物」でも紹介しています。
よくある質問
物忘れのある方が多くても楽しめますか?
工夫すれば、一緒に楽しめます。答えが出なくても困らないよう、少し待ったら職員が答えを言い、「そうでしたね」と一緒にうなずきましょう。道具や音のように、目や耳で分かる題材を選ぶと、参加しやすくなります。
職員が少なく、寸劇まで手が回りません。
職員1〜2人でできる「なつかし道具クイズ」や「ことわざの続き当て」がおすすめです。道具の写真やことわざの紙は、次の行事でもくり返し使えます。
家族や地域の方も来る新年会では?
玉入れのかご係や、道具クイズのヒント係をお願いすると、一緒に楽しめます。地域の方と一緒に演じる寸劇は「町内会・地域の集まりの出し物」で紹介しています。
まとめ
- 高齢者向けの新年会は、昔なつかしい題材と、座って参加できる遊びを組み合わせる
- 利用者さんを子ども扱いせず、教える側に回れる場面を作る
- 声は少し低めに、ゆっくり短く。大事な言葉は大きな字で見せる
- 食べ物や大きな音は使わず、床と時間の安全を確かめておく






