漫才やコントの台本は、セリフの言い回しのように、作った人の工夫が表れた部分が著作物として守られることがあります。一方で、「同じボケを3回くり返す」といった型や、設定のアイデアそのものは、一般に著作権では守られないと考えられています。
人のネタをセリフごと写して演じたり、その動画をネットにのせたりするのは避け、型だけを借りて中身は自分で作るのが安心です。ここで紹介するのは一般的な考え方で、法律の助言ではありません。問題になるかどうかは事情によって変わるので、迷ったときは公的な情報や専門家に確かめてください。
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ネタのどこが著作権で守られるのか
著作権法では、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定めています。漫才やコントの台本は言葉で書かれた作品なので、小説や脚本と同じ「言語の著作物」にあたることがあります。
ただし、ネタの中のすべてが守られるわけではありません。一般には、具体的な言い回しは守られやすく、アイデアや型は守られにくいと考えられています。
| ネタの部分 | 一般的な考え方 | 例 |
|---|---|---|
| セリフの言い回し、台本の文章 | 守られることがある | やりとりを、そのまま書き写したもの |
| ボケの中身と順番がそろった流れ | 守られることがある | ボケも順番も言葉もそっくりな構成 |
| 設定のアイデア | 守られにくい | 「コンビニの店員と客」「ホテルのフロント」 |
| 笑いの型や技法 | 守られにくい | 天丼、ノリツッコミ、3つ目で外す形 |
| 短い言葉、ありふれた言い回し | 守られにくいことが多い | 「なんでやねん」「もういいよ」 |
天丼は同じボケをくり返す型、ノリツッコミはボケに一度乗ってから止める型のことです。こうした型は昔から多くの人が使ってきた技法で、誰か1人のものではありません。
演じた人や放送にも、別の権利がある
テレビや動画で見たネタには、台本を書いた人の権利のほかに、演じた人の権利や、番組を放送した局の権利もあります。番組を録画して会場で流したり、保存した動画をネットにのせ直したりすると、こうした権利にも関わってきます。
この記事は一般的な考え方です
著作権の判断は、作品の中身や使い方によって変わります。具体的な使い方で迷ったときは、文化庁の著作権のページや、e-Gov法令検索の著作権法を確かめてください。必要に応じて、弁護士などの専門家に相談しましょう。
問題になりやすい場面、なりにくい場面
同じネタでも、どこで、どう使うかによって考え方が変わります。目安を表にまとめました。
| 使う場面 | 考え方の目安 |
|---|---|
| 家で友人と練習する、まねして遊ぶ | 身内だけの限られた使い方で、問題になりにくい |
| お金を取らない発表会や余興で演じる | 条件がそろえば認められる場合がある |
| 演じた様子を撮って、SNSや動画サイトにのせる | 権利を持つ人の許可が要ると考えておく |
| 入場料を取るライブや、出演料が出る場で演じる | 許可が要ると考えておく |
| 人のネタを、自分の作品として大会に出す | 権利の面でも、応募の決まりの面でも避ける |
お金を取らない上演についての決まり
著作権法には、公表された作品を、一定の条件のもとで上演できるという決まりがあります(第38条第1項)。条件は、営利を目的としないこと、観客から料金を取らないこと、演じる人に報酬が出ないことの3つです。お金を取らない学校の発表会などは、これに当てはまる場合があります。
ただし、結婚式場のような場所では、会場や集まりの性格によって判断が分かれることもあります。また、この決まりはその場で演じることについてのものです。撮った動画をネットにのせることまでは含まれないので、分けて考えましょう。
法律の問題にならなくても、まねは好まれない
お笑いでは、人のネタをまねることは好まれません。アマチュアのライブや大会でも、「あのネタと同じだ」と気づかれると、見る人の信頼を失ってしまいます。法律の線引きとは別に、ネタは自分で作るものと考えておくと安心です。
余興や文化祭で既存のネタを使うときの注意
結婚式の余興や文化祭で、好きな芸人さんのネタをやってみたくなることもあるでしょう。そのまま使う前に、次の点を確かめてください。
既存のネタを使う前に確かめること
- セリフを丸ごと写して演じようとしていないか
- 演じた動画を、SNSや動画サイトにのせる予定がないか
- 入場料や出演料など、お金が動く場ではないか
- 大会やライブの募集要項で、オリジナル作品と決められていないか
- 曲を流す場合、会場で使ってよいかを確かめたか
「〇〇さんのネタをやります」と前置きしても、許可を取ったことにはなりません。出どころを言うのは礼儀として大切ですが、それで権利の問題がなくなるわけではない点に気をつけましょう。
余興の会場では、ゲストがスマホで撮影するのを止めきれません。新郎新婦や幹事と相談して、司会から「動画はネットにのせないでください」と一言お願いしてもらう方法もあります。曲を使うときの考え方は「余興ムービーの曲の選び方と著作権」にまとめています。
既存のネタをオリジナルに直す手順
好きなネタがあるなら、その「型」だけを借りて、中身は自分たちで作り直しましょう。次の手順で進めると、元のネタから自然に離れられます。
- 好きなネタの面白い所を、1行の型にして書き出す(例:答えるたびに、話が少しずつ大きくなる)
- 元のネタの台本や動画を閉じ、設定・人物・言葉をいったん忘れる
- 自分たちが話せる題材を選ぶ(自分の趣味、職場の行事、学校の毎日など)
- 型に合わせて、ボケを自分で10個ほど出し、3〜4個に絞る
- できた台本を元のネタと並べ、同じ言い回しやボケの順番が残っていないか確かめる
大切なのは2です。元の台本を見ながら書くと、どうしても言い回しが似てしまいます。型を書いた1行のメモだけを手元に置いて書きましょう。
型だけを借りて作り直した例
「答えるたびに、話が少しずつ大きくなる」という型を借りて、キャンプの話で作り直した例です。
借りる型:普通の質問 → 少し大げさな答え → もっと大きな答え → ツッコミで止める
題材:Aの趣味のキャンプ
ボケの候補:荷物が多すぎる/家具まで持っていく/自然を楽しむ気がない
- 時間
- 約40秒
- 人数
- 2人
- 準備物
- なし
- 難しさ
- ★
台本キャンプの荷物(約40秒)
Bキャンプが好きなんだってね。荷物は何を持っていくの?
Aテントと、寝袋と、折りたたみのいすです。
B普通だね。
Aあとは、ホットプレートと、扇風機と、炊飯器。
B家電が増えてきたな。
Aそれから、こたつと、本棚と、観葉植物。
B引っ越しじゃないか。
A自然の中でも、いつもの部屋みたいにくつろぎたいので。
Bだったら家にいなさいよ。
設定も人物も言葉も、元のネタとは別のものです。借りたのは「答えが少しずつ大きくなる」という流れだけです。少しずつ大きくする展開の作り方は「エスカレートするコントの作り方」でくわしく紹介しています。
似すぎていないかの見直し方
書き終えたら、次の表で見直しましょう。当てはまる所があれば、その部分を作り直します。
| 似すぎのサイン | 直し方 |
|---|---|
| 決めぜりふやツッコミの言葉が同じ | 自分たちがふだん使う言葉に言いかえる |
| ボケの中身と並び順がそっくり | ボケを出し直し、並べる順番も変える |
| 設定と人物の組み合わせが同じ | 場所か人物のどちらかを、身近なものに替える |
| 読んだ人に「あのネタだね」と言われた | 型以外の部分を、もう一度作り直す |
自分のネタを守りたいとき、まねされたとき
アマチュアでも、自分のネタがまねされることはあります。ふだんから次のことをしておくと、自分が先に作ったことを示しやすくなります。
- ネタ帳や台本のデータに、書いた日付を残す
- 書き直した台本も、古いものを消さずに残しておく
- ライブや大会で演じた日と場所を記録しておく
ネタ帳のつけ方は「ネタ帳の作り方と使い方」で紹介しています。
まねされたと感じたときは、まず相手やライブの主催者に、落ち着いて事情を伝えるのが一般的です。動画サイトにのせられている場合は、そのサイトの権利侵害を申し立てる窓口を使う方法もあります。話がこじれそうなら、早めに専門家に相談しましょう。
反対に、元のネタを知らずに作ったものが、たまたま似てしまうこともあります。知らずに似た場合は、一般に著作権の侵害にはならないと考えられています。それでも、似ていると気づいたら、言い回しを変えておくと誤解を防げます。
よくある質問
文化祭で、芸人さんのネタをそのまま演じてもいいですか?
お金を取らない文化祭なら、上演そのものは著作権法の決まりに当てはまる場合があります。ただし、学校がオリジナルのネタを求めていることもあり、録画して配信するなら別の話になります。同じ学校の人に伝わる話題を入れられるので、自分たちで作るのがおすすめです。台本の例は「文化祭の漫才ネタ」で紹介しています。
決めぜりふを1つだけまねするのはどうですか?
短い言葉やありふれた言い回しは、著作物と認められにくいことが多いです。ただし、決めぜりふを中心にネタの流れまでまねると、話が変わってきます。また、言葉が商標として登録されていて、グッズなどに使うと問題になる場合もあります。
コンビを解散したら、2人で作ったネタはどうなりますか?
2人で一緒に作ったネタは、2人の共同の作品として扱われることがあります。その場合、片方だけで自由に使うと、もめる原因になりかねません。解散するときに、どのネタを誰が使うかを話し合い、メモに残しておくと安心です。
昔話や古典落語を元にしてもいいですか?
作られてから長い年月がたった話は、著作権の守られる期間(原則として作者の死後70年)が過ぎていることが多いです。ただし、最近の人が書き直した本や台本の文章には、その人の権利があります。元の話の筋だけを使い、言葉は自分で書きましょう。
まとめ
- ネタの台本は、言い回しなどの具体的な表現が著作物として守られることがある
- 型や設定のアイデアは一般に守られないので、型だけ借りて中身は自分で作る
- お金を取らない場で演じることと、動画をネットにのせることは分けて考える
- 出どころを言っても許可にはならない。迷ったら公的な情報や専門家に確かめる
- 自分のネタは、書いた日付つきで残しておく






