しゃべくり漫才は、役を演じずに、2人が自分のままの会話で笑わせる漫才です。台本は、1つの話題についてボケが独特の言い分を重ね、ツッコミが常識で受け止める形で書くと、会話だけでも笑いが続きます。
この記事では、コント漫才との違いを整理したうえで、しゃべくり漫才の4つの型と書く手順を、オリジナルの台本を例に説明します。動きの少ない漫才なので、話題と言葉の選び方が中心になります。
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しゃべくり漫才とコント漫才の違い
漫才には、大きく分けて2つの形があります。2人が自分として話し続ける「しゃべくり漫才」と、途中で「〜やってみよう」と役を演じる「コント漫才」です。
| 比べること | しゃべくり漫才 | コント漫才 |
|---|---|---|
| 2人の立場 | 最後まで自分自身として話す | 途中から店員と客などの役を演じる |
| 笑いの元 | 言い分のずれ、言葉のやりとり | 演じる場面の中での行動のずれ |
| 台本に多いもの | 会話のセリフ | 役のセリフと、動きを書いたト書き |
| 向いている人 | 話すのが好きで、言葉で考えるのが得意 | 演じるのが好きで、動きで見せたい |
| 難しい所 | 動きが少ないぶん、話題と言葉の選び方で差が出る | 役に入る所と、戻る所のつなぎ |
ト書きとは、セリフ以外の動きや場面の説明のことです。しゃべくり漫才はト書きが少なく、台本のほとんどが会話になります。
どちらにするか迷ったら、2人の得意なことで選びましょう。話しているだけで楽しい2人ならしゃべくり漫才、何かになりきるのが好きな2人ならコント漫才から始めると続けやすくなります。演じる形の書き方は「コント漫才の書き方」で紹介しています。
しゃべくり漫才の4つの型
しゃべくり漫才の会話には、よく使われる型がいくつかあります。ここでは4つを、短い例と一緒に紹介します。ボケは普通からずれたことを言う役、ツッコミはそのずれを指摘する役です。
1. 言い分型|ボケが独特の主張を通す
ボケが、ちょっと変わった考えを堂々と言い、ツッコミが常識で返す型です。しゃべくり漫才のいちばん基本の形です。
台本言い分型の例
B傘は、持って出ない派なんですよ。
A降ったらどうするの。
B降ってから考える。
A考えてるあいだに、ぬれてるのよ。
2. 質問ずらし型|普通の質問に、ずれた答えを返す
ツッコミが普通の質問をして、ボケの答えがそのたびにずれていく型です。質問がそのままフリ(笑いの前置き)になるので、組み立てやすい型です。
台本質問ずらし型の例
A子どものころの夢は何だったの?
B大人になること。
Aもうかなってるじゃない。
Bだから今、次の夢を探してるところ。
3. 脱線型|話がどんどんそれていく
ボケの話が本題からそれていき、ツッコミが元に戻そうとする型です。それ方が少しずつ大きくなるほど、笑いも大きくなります。
台本脱線型の例
Bきのう、駅前で道を聞かれたんですよ。
Aうん。
Bその人の帽子が、すごくいい色で。
Aうん。
Bあの色、何て名前なんだろうって考えてたら、家に着いてた。
A道はどうしたのよ。
4. 入れかわり型|ツッコミがボケにのせられる
途中でツッコミがボケの話にのせられて、立場が入れかわる型です。ネタの後半に入れると流れが変わり、最後まで飽きられにくくなります。
台本入れかわり型の例
Aもし宝くじが当たったら、どうする?
B半分は貯金かな。
Aまじめだな。俺なら、まず島を買うね。
B……島は、管理が大変だよ。
話題の選び方
しゃべくり漫才は、話題がそのまま笑いの土台になります。選ぶときは、お客さんの誰もが自分のこととして分かる、身近な話題にしましょう。ボケの言い分が「ちょっと分かる」と思えるくらいの話題だと、ずれが伝わりやすくなります。
| 話題 | ボケの言い分の例 |
|---|---|
| 旅行の荷物 | 1泊でも、念のためにかばんは3つ |
| 部屋の片づけ | 片づけると物の場所が分からなくなるから、片づけない |
| 冷蔵庫の中 | 奥にある物は、見なかったことにする |
| 誕生日のプレゼント | 相手が欲しい物より、自分が欲しい物をあげる |
| 朝ごはん | 朝は時間がないので、前の日の夜に食べておく |
反対に、人の悪口や、見た目・年齢・出身をからかう話題、意見が強く分かれる政治や宗教の話は避けましょう。会場の誰かが笑えなくなると、ほかのお客さんも笑いにくくなります。
しゃべくり漫才の台本を書く手順
しゃべくり漫才では、ボケの「言い分」がネタの背骨になります。次の順番で書くと、会話が途中でばらばらになりません。
- 話題と、ボケの言い分を1行で決める(例:1泊の旅行でも、念のため荷物は多いほうがいい)
- 言い分を支える理由を3〜5個考える(例:着がえ、傘、枕)
- ツッコミの「常識」を決める(例:1泊ならリュック1つで足りる)
- 理由を現実に近いものから順に並べ、それぞれにツッコミの返しをつける
- 後半で一度、ボケが質問する側に回る所を作り、ツッコミをゆさぶる
- 前半の言葉をもう一度使って、オチ(最後のいちばん大きな笑い)をつける
- 声に出して読み、会話のテンポを確かめる
ボケの言い分は、最後までぶらさないのがコツです。言い分が途中で変わると、お客さんはどこで笑えばいいのか分からなくなります。漫才全体の構成や、つかみ(最初の短い笑い)の考え方は、「漫才の台本の書き方」で説明しています。
例:2分のしゃべくり漫才「旅行の荷物」
手順どおりに書いた台本です。Aがツッコミ、Bがボケです。ト書きは最初だけで、あとは会話だけで進みます。
- 時間
- 約2分
- 人数
- 2人
- 準備物
- センターマイク(なければ立ち位置の目印)
- 難しさ
- ★★
台本旅行の荷物(約2分)
(2人でセンターマイクの前に出る)
Aどうも、よろしくお願いします。
Bお願いします。いや、来週ね、1泊2日で旅行に行くんですよ。
Aいいじゃない。どこに行くの。
B温泉。もう荷物もまとめてあって。
A早いね。何を持っていくの。
Bかばん3つ。
A多いよ。1泊でしょ。
B1泊だからこそ、念のためが大事なの。
A念のためって、何が入ってるのよ。
Bまず、着がえが7日分。
A6日分は何のためよ。
Bもし、帰りたくなくなったときのため。
A帰りなさいよ。仕事があるんだから。
Bあと、傘が3本。
A3本もいらないでしょ。
B晴れの日用、雨の日用、それから、くもりの日用。
Aくもりの日は使わないのよ。
Bくもりの日の傘は、持ってるだけで安心するの。
Aお守りじゃないんだから。
Bそれから、枕も持っていく。
Aああ、枕が変わると眠れない人ね。
Bいや、旅館の枕に、うちの枕を紹介したくて。
A枕どうしを会わせてどうするのよ。
B……でもさ、そう言うあなたは、何を持っていくの。
A財布とスマホと、着がえ1日分。リュック1つ。
Bえ、それで足りる?
A足りるよ。
Bもし、宿に着いて、急に将棋がしたくなったら?
Aならないよ。
Bもし、夜中に急に、カレーを作りたくなったら?
Aならないって。
Bもし、帰りの電車で、急に帰りたくなくなったら?
A……着がえ、7日分いるな。
Bでしょ。
Aいや、いらないよ。帰るのよ。もういいよ。
A・Bどうも、ありがとうございました。
この台本では、Bの言い分「1泊だからこそ念のため」が最後まで変わりません。理由は着がえ→傘→枕と、だんだん現実から離れていきます。後半はBが質問する側に回り、Aが言いくるめられかけることで、会話だけでも流れが変わります。最後は、前半の「7日分」をもう一度使って締めています。
会話だけで笑わせるコツ
しゃべくり漫才は動きが少ないぶん、言葉の選び方と言い方で笑いが決まります。書き終えたら、次の点を確かめましょう。
しゃべくり漫才の台本で確かめること
- ボケの言い分が、最初から最後まで同じか
- ツッコミが、お客さんの思っていることを代わりに言えているか
- 「〜なんですけど」のような前置きのセリフが長すぎないか
- 同じ形のくり返しが、3回を超えていないか
- 笑いを待つ所で、次のセリフをすぐに言わないようになっているか
最後の項目の「笑いを待つ時間」を、間(ま)といいます。しゃべくり漫才では、この間がいちばんの見せ所です。練習のしかたは「漫才の間とテンポの取り方」で、ツッコミの言い方の種類は「ツッコミの種類一覧」で紹介しています。
よくある質問
しゃべくり漫才は、初心者には難しいですか?
動きや役の切りかえを覚えなくていいぶん、始めやすい面もあります。最初は、4つの型のうち「言い分型」か「質問ずらし型」で1本作ってみましょう。
2人の普段の会話を、そのままネタにしてもいいですか?
素材としてはとても良いものです。ただ、2人にしか分からない話は、お客さんに伝わりません。誰でも分かる話題に置きかえて、言い分と理由の形に整えてから台本にしましょう。
身ぶりや手ぶりも使わないほうがいいですか?
使ってかまいません。しゃべくり漫才は役を演じないというだけで、動いてはいけないわけではありません。枕や傘を持つしぐさのように、話を分かりやすくする身ぶりは入れてみてください。
まとめ
- しゃべくり漫才は、役を演じずに、2人が自分のまま会話で笑わせる漫才
- 型は「言い分型」「質問ずらし型」「脱線型」「入れかわり型」の4つ
- 話題は、誰もが自分のこととして分かる身近なものを選ぶ
- ボケの言い分は最後までぶらさず、理由を現実に近い順に並べる
- 動きが少ないぶん、言葉の選び方と間で笑いを作る






