しゃべくり漫才の書き方|会話だけで笑わせる台本の作り方

大きなスプーンを持つ人と台本を持つ人が、マイクの前で掛け合いを練習する

しゃべくり漫才は、役を演じずに、2人が自分のままの会話で笑わせる漫才です。台本は、1つの話題についてボケが独特の言い分を重ね、ツッコミが常識で受け止める形で書くと、会話だけでも笑いが続きます。

この記事では、コント漫才との違いを整理したうえで、しゃべくり漫才の4つの型と書く手順を、オリジナルの台本を例に説明します。動きの少ない漫才なので、話題と言葉の選び方が中心になります。

目次目次を閉じる目次を開く
  1. しゃべくり漫才とコント漫才の違い
  2. しゃべくり漫才の4つの型
  3. 話題の選び方
  4. しゃべくり漫才の台本を書く手順
  5. 例:2分のしゃべくり漫才「旅行の荷物」
  6. 会話だけで笑わせるコツ
  7. よくある質問
  8. まとめ

しゃべくり漫才とコント漫才の違い

漫才には、大きく分けて2つの形があります。2人が自分として話し続ける「しゃべくり漫才」と、途中で「〜やってみよう」と役を演じる「コント漫才」です。

比べることしゃべくり漫才コント漫才
2人の立場最後まで自分自身として話す途中から店員と客などの役を演じる
笑いの元言い分のずれ、言葉のやりとり演じる場面の中での行動のずれ
台本に多いもの会話のセリフ役のセリフと、動きを書いたト書き
向いている人話すのが好きで、言葉で考えるのが得意演じるのが好きで、動きで見せたい
難しい所動きが少ないぶん、話題と言葉の選び方で差が出る役に入る所と、戻る所のつなぎ

ト書きとは、セリフ以外の動きや場面の説明のことです。しゃべくり漫才はト書きが少なく、台本のほとんどが会話になります。

どちらにするか迷ったら、2人の得意なことで選びましょう。話しているだけで楽しい2人ならしゃべくり漫才、何かになりきるのが好きな2人ならコント漫才から始めると続けやすくなります。演じる形の書き方は「コント漫才の書き方」で紹介しています。

しゃべくり漫才の4つの型

しゃべくり漫才の会話には、よく使われる型がいくつかあります。ここでは4つを、短い例と一緒に紹介します。ボケは普通からずれたことを言う役、ツッコミはそのずれを指摘する役です。

1. 言い分型|ボケが独特の主張を通す

ボケが、ちょっと変わった考えを堂々と言い、ツッコミが常識で返す型です。しゃべくり漫才のいちばん基本の形です。

台本言い分型の例

B傘は、持って出ない派なんですよ。

A降ったらどうするの。

B降ってから考える。

A考えてるあいだに、ぬれてるのよ。

2. 質問ずらし型|普通の質問に、ずれた答えを返す

ツッコミが普通の質問をして、ボケの答えがそのたびにずれていく型です。質問がそのままフリ(笑いの前置き)になるので、組み立てやすい型です。

台本質問ずらし型の例

A子どものころの夢は何だったの?

B大人になること。

Aもうかなってるじゃない。

Bだから今、次の夢を探してるところ。

3. 脱線型|話がどんどんそれていく

ボケの話が本題からそれていき、ツッコミが元に戻そうとする型です。それ方が少しずつ大きくなるほど、笑いも大きくなります。

台本脱線型の例

Bきのう、駅前で道を聞かれたんですよ。

Aうん。

Bその人の帽子が、すごくいい色で。

Aうん。

Bあの色、何て名前なんだろうって考えてたら、家に着いてた。

A道はどうしたのよ。

4. 入れかわり型|ツッコミがボケにのせられる

途中でツッコミがボケの話にのせられて、立場が入れかわる型です。ネタの後半に入れると流れが変わり、最後まで飽きられにくくなります。

台本入れかわり型の例

Aもし宝くじが当たったら、どうする?

B半分は貯金かな。

Aまじめだな。俺なら、まず島を買うね。

B……島は、管理が大変だよ。

話題の選び方

しゃべくり漫才は、話題がそのまま笑いの土台になります。選ぶときは、お客さんの誰もが自分のこととして分かる、身近な話題にしましょう。ボケの言い分が「ちょっと分かる」と思えるくらいの話題だと、ずれが伝わりやすくなります。

話題ボケの言い分の例
旅行の荷物1泊でも、念のためにかばんは3つ
部屋の片づけ片づけると物の場所が分からなくなるから、片づけない
冷蔵庫の中奥にある物は、見なかったことにする
誕生日のプレゼント相手が欲しい物より、自分が欲しい物をあげる
朝ごはん朝は時間がないので、前の日の夜に食べておく

反対に、人の悪口や、見た目・年齢・出身をからかう話題、意見が強く分かれる政治や宗教の話は避けましょう。会場の誰かが笑えなくなると、ほかのお客さんも笑いにくくなります。

しゃべくり漫才の台本を書く手順

しゃべくり漫才では、ボケの「言い分」がネタの背骨になります。次の順番で書くと、会話が途中でばらばらになりません。

  1. 話題と、ボケの言い分を1行で決める(例:1泊の旅行でも、念のため荷物は多いほうがいい)
  2. 言い分を支える理由を3〜5個考える(例:着がえ、傘、枕)
  3. ツッコミの「常識」を決める(例:1泊ならリュック1つで足りる)
  4. 理由を現実に近いものから順に並べ、それぞれにツッコミの返しをつける
  5. 後半で一度、ボケが質問する側に回る所を作り、ツッコミをゆさぶる
  6. 前半の言葉をもう一度使って、オチ(最後のいちばん大きな笑い)をつける
  7. 声に出して読み、会話のテンポを確かめる

ボケの言い分は、最後までぶらさないのがコツです。言い分が途中で変わると、お客さんはどこで笑えばいいのか分からなくなります。漫才全体の構成や、つかみ(最初の短い笑い)の考え方は、「漫才の台本の書き方」で説明しています。

例:2分のしゃべくり漫才「旅行の荷物」

手順どおりに書いた台本です。Aがツッコミ、Bがボケです。ト書きは最初だけで、あとは会話だけで進みます。

時間
約2分
人数
2人
準備物
センターマイク(なければ立ち位置の目印)
難しさ
★★

台本旅行の荷物(約2分)

(2人でセンターマイクの前に出る)

Aどうも、よろしくお願いします。

Bお願いします。いや、来週ね、1泊2日で旅行に行くんですよ。

Aいいじゃない。どこに行くの。

B温泉。もう荷物もまとめてあって。

A早いね。何を持っていくの。

Bかばん3つ。

A多いよ。1泊でしょ。

B1泊だからこそ、念のためが大事なの。

A念のためって、何が入ってるのよ。

Bまず、着がえが7日分。

A6日分は何のためよ。

Bもし、帰りたくなくなったときのため。

A帰りなさいよ。仕事があるんだから。

Bあと、傘が3本。

A3本もいらないでしょ。

B晴れの日用、雨の日用、それから、くもりの日用。

Aくもりの日は使わないのよ。

Bくもりの日の傘は、持ってるだけで安心するの。

Aお守りじゃないんだから。

Bそれから、枕も持っていく。

Aああ、枕が変わると眠れない人ね。

Bいや、旅館の枕に、うちの枕を紹介したくて。

A枕どうしを会わせてどうするのよ。

B……でもさ、そう言うあなたは、何を持っていくの。

A財布とスマホと、着がえ1日分。リュック1つ。

Bえ、それで足りる?

A足りるよ。

Bもし、宿に着いて、急に将棋がしたくなったら?

Aならないよ。

Bもし、夜中に急に、カレーを作りたくなったら?

Aならないって。

Bもし、帰りの電車で、急に帰りたくなくなったら?

A……着がえ、7日分いるな。

Bでしょ。

Aいや、いらないよ。帰るのよ。もういいよ。

A・Bどうも、ありがとうございました。

この台本では、Bの言い分「1泊だからこそ念のため」が最後まで変わりません。理由は着がえ→傘→枕と、だんだん現実から離れていきます。後半はBが質問する側に回り、Aが言いくるめられかけることで、会話だけでも流れが変わります。最後は、前半の「7日分」をもう一度使って締めています。

会話だけで笑わせるコツ

しゃべくり漫才は動きが少ないぶん、言葉の選び方と言い方で笑いが決まります。書き終えたら、次の点を確かめましょう。

しゃべくり漫才の台本で確かめること

  • ボケの言い分が、最初から最後まで同じか
  • ツッコミが、お客さんの思っていることを代わりに言えているか
  • 「〜なんですけど」のような前置きのセリフが長すぎないか
  • 同じ形のくり返しが、3回を超えていないか
  • 笑いを待つ所で、次のセリフをすぐに言わないようになっているか

最後の項目の「笑いを待つ時間」を、間(ま)といいます。しゃべくり漫才では、この間がいちばんの見せ所です。練習のしかたは「漫才の間とテンポの取り方」で、ツッコミの言い方の種類は「ツッコミの種類一覧」で紹介しています。

よくある質問

しゃべくり漫才は、初心者には難しいですか?

動きや役の切りかえを覚えなくていいぶん、始めやすい面もあります。最初は、4つの型のうち「言い分型」か「質問ずらし型」で1本作ってみましょう。

2人の普段の会話を、そのままネタにしてもいいですか?

素材としてはとても良いものです。ただ、2人にしか分からない話は、お客さんに伝わりません。誰でも分かる話題に置きかえて、言い分と理由の形に整えてから台本にしましょう。

身ぶりや手ぶりも使わないほうがいいですか?

使ってかまいません。しゃべくり漫才は役を演じないというだけで、動いてはいけないわけではありません。枕や傘を持つしぐさのように、話を分かりやすくする身ぶりは入れてみてください。

まとめ

  • しゃべくり漫才は、役を演じずに、2人が自分のまま会話で笑わせる漫才
  • 型は「言い分型」「質問ずらし型」「脱線型」「入れかわり型」の4つ
  • 話題は、誰もが自分のこととして分かる身近なものを選ぶ
  • ボケの言い分は最後までぶらさず、理由を現実に近い順に並べる
  • 動きが少ないぶん、言葉の選び方と間で笑いを作る
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