コント漫才は、「〇〇をやってみたいから、お客さんの役をやって」と1人が場面を提案し、2人で役を演じて進める漫才です。台本は「設定の提案→演じる→ずれ→ツッコミ」の流れで書き、ずれとツッコミを3〜4回くり返すと形になります。
この記事では、型の中身と、場面への入り方・戻り方のセリフ例、約2分の台本を順番に紹介します。漫才全体の組み立て方は「漫才の台本の書き方」で説明しているので、ここではコント漫才ならではの書き方に絞ります。
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コント漫才とは?コントとの違い
コント漫才とは、漫才の途中で2人が役を演じ、短いコントのような場面を作る形です。場面の中でおかしなことが起きると、ツッコミ役が役のまま、あるいは役をやめて止めます。役をやめて本人どうしの会話に戻ることを「素(す)に戻る」といいます。
コントとの違いは、演じているのが最後まで「漫才をしている2人」だという点です。衣装やセットがなくても、セリフだけで場面に入ったり出たりできます。
| くらべる点 | コント漫才 | コント |
|---|---|---|
| 演じる人 | 漫才の2人が、途中で役に入る | 最初から最後まで役の人物 |
| 場面の伝え方 | 「ここはホテルね」とセリフで言う | 衣装・小道具・セットで見せる |
| 役をやめること | できる(素に戻って止める) | ふつうはしない |
| 向いている題材 | やってみたい仕事、練習したい場面 | 人物や場所そのものが面白い話 |
会話だけで進める「しゃべくり漫才」との違いや、どちらを選ぶかの考え方は「しゃべくり漫才の書き方」でくらべています。
基本の型は「提案→演じる→ずれ→ツッコミ」
コント漫才は、次の4つの流れでできています。ホテルのフロントを例に、それぞれのセリフを並べました。
| 流れ | やること | セリフの例 |
|---|---|---|
| 1. 設定の提案 | 誰が何の役をするかを決める | A:ホテルのフロント、やってみたいんだよ。お客さんやって。 |
| 2. 演じる | 最初は普通に進める | A:いらっしゃいませ。ご予約のお名前をうかがえますか。 |
| 3. ずれ | 役の中で、普通からずれたことをする | A:お部屋は305号室です。私の部屋のとなりです。 |
| 4. ツッコミ | 役のまま、または素に戻って止める | B:なんでフロントの人が泊まってるんだよ。 |
2の「演じる」は、ネタの中のフリにあたります。フリとは、お客さんに「この先はこうなるはず」と思わせる前置きのことです。最初の1〜2行をわざと普通に演じておくと、3のずれがはっきり伝わります。
1つの場面で、3と4を3〜4回くり返します。ずれは、小さいものから順に並べるのが基本です。後ろにいくほど普通から遠くなるように並べると、笑いがだんだん大きくなります。
提案のセリフは4つの形から選ぶ
提案のセリフは、「これから演じます」という合図であり、2人の役を決める場所でもあります。次のどれかの形にすると、自然に場面へ入れます。
憧れ型:「一回、ホテルのフロントをやってみたいんだよ」
練習型:「今度、町内会で司会をするから、練習させて」
相談型:「レストランで注文するのが苦手で。ちょっと店員やってくれる?」
再現型:「この前の引っ越しの業者さんが変わっててさ。再現するね」
どの形でも、誰が何の役をするかをセリフの中で言い切ることが大切です。「じゃあ俺が店員やるから、お前はお客さんね」と、2人の役を声に出して確かめておくと、お客さんが迷いません。
場面への入り方|「ここから役」と伝える合図
提案が終わったら、場面に入ります。このとき、お客さんに「ここからは役だ」と分かる合図を入れましょう。合図がないと、どこからが演技なのかが伝わらず、最初のずれで笑いが起きにくくなります。
- 決まり文句から始める:「いらっしゃいませ」「お電話ありがとうございます」
- 音を口で言う:自動ドアの「ウィーン」、電話の「プルルル」、チャイムの「ピンポーン」
- 動きを入れる:ドアを開ける、ハンドルを握る、席に座る、などのしぐさ
- 立ち位置を変える:半歩下がってから入ってくる、相手のほうへ体を向ける
いくつか組み合わせてもかまいません。たとえば「ウィーン」と言いながら一歩前に出て、「いらっしゃいませ」と続けると、どこの場面かがすぐに伝わります。
入るまでは短く
提案から最初のずれまでは、セリフ6行ほどに収めると間延びしません。場面の説明が長くなりそうなときは、説明を削って、決まり文句で場所を伝えましょう。
場面からの戻り方|素に戻る4つのタイミング
コント漫才の書きやすさは、途中で素に戻れることにあります。戻る場所を決めておくと、場面の区切りがはっきりして、台本にリズムが出ます。
| 戻り方 | セリフの例 | そのあとの流れ |
|---|---|---|
| 止める | 「ちょっと待って。いったん止めて」 | ボケのおかしな所を、本人どうしで話す |
| やり直す | 「もう一回、最初からやろう」 | 同じ場面を、少しちがう形でくり返す |
| 交代する | 「じゃあ俺がやるから見てて」 | 役を入れかえて、もう一度演じる |
| 終わる | 「もういいよ」 | 2人で頭を下げて、ネタを終える |
「やり直す」を2〜3回続けると、同じボケをくり返して笑いを取る「天丼」にもつなげられます。くり返し方のコツは「天丼(くり返しのボケ)のやり方」で説明しています。
ツッコミは、役のままでも、素に戻ってからでも入れられます。役のままのツッコミは場面を続けたいとき、素に戻るツッコミは区切りをつけたいときに使います。2つを混ぜて使うと、同じ調子が続かず、聞いている人が飽きにくくなります。
約2分の台本「理想のカーナビ」
型と入り方・戻り方を使った台本です。Aがボケ、Bがツッコミで、途中で役を交代します。
- 時間
- 約2分
- 人数
- 2人
- 準備物
- なし(ハンドルを握るしぐさだけ)
- 難しさ
- ★★
台本理想のカーナビ(約2分)
(2人でマイクの前に出る)
A・Bどうも、よろしくお願いします。
A最近、車の免許を取ったんですよ。
Bおめでとう。
Aでも、カーナビの声が冷たくて。
B冷たい?
A「300メートル先、右です」って、それだけなんです。
Bそれで十分だよ。
Aもっと寄りそってほしいんです。理想のカーナビをやってみるので、運転してもらえますか。
Bいいよ。じゃあ俺が運転手ね。
(Bがハンドルを握るしぐさ。Aはその横に立つ)
A(声を変えて)目的地を設定しました。今日も運転、おつかれさまです。
Bお、やさしい。
A300メートル先、右方向です。……右、いけそうですか。
Bいけるよ。
A無理しなくていいですからね。
B右に曲がるだけだから。
Aまもなく右です。……曲がれた。えらい。
Bほめるほどのことじゃないよ。
Aこの先、しばらく道なりです。……道なりって、人生みたいですね。
B急に深い話をするな。
A500メートル先、左にラーメン屋さんがあります。わたしは塩がおすすめです。
Bナビが味を決めるな。
Aルートを外れました。……あなたじゃなくて、わたしが。
Bナビが迷うなよ。(ハンドルから手をはなして)ちょっと止めて。
Aどうでした?
Bカーナビはね、正しい道を教えてくれたら、それでいいの。
Aじゃあ、手本を見せてくださいよ。
Bいいよ。今度はお前が運転して。
(2人が位置を入れかえる。Aがハンドルを握る)
B(落ち着いた声で)300メートル先、右方向です。
Aはい、左に曲がります。
B右です。……ルートを再探索します。次の角を右です。
Aまっすぐ行きます。
B右です。
A今日は、まっすぐな気分なんです。
B気分で走るな。(素に戻って)なんで言うことを聞かないんだよ。
Aだって、冷たい声で言われると、聞きたくなくなるんです。
B最初の話に戻ってきたな。
Aだから、寄りそってほしいんです。
B寄りそいすぎて、ラーメン屋さんをすすめてきたけどな。
A塩、おすすめですよ。
Bまだ言うか。もういいよ。
A・Bどうも、ありがとうございました。
この台本の組み立て
提案は「理想のカーナビをやってみる」、場面に入る合図は「目的地を設定しました」です。ずれは、やさしすぎる→関係のない話→ナビが迷う、の順に大きくしています。Bの「ちょっと止めて」で素に戻り、役を交代したあと、最初の「声が冷たい」の話に戻して締めています。
コント漫才の台本を書く手順
自分で書くときは、次の順番で進めると、場面選びで迷いません。
- やってみたい仕事や、練習したい場面を10個書き出す(誰でも知っている場面を選ぶ)
- 選んだ場面の「決まり文句」を5つ書く(例:いらっしゃいませ、300メートル先)
- 決まり文句1つにつき、ずれを1〜2個考える
- ずれを小さい順に3〜4個並べ、素に戻る場所を1〜2か所決める
- 最後は、役の交代か、最初の話に戻る一言で終わるようにする
- 提案のセリフと、場面に入る合図を書き足し、声に出して読む
2の決まり文句は、そのままフリになります。場面を選ぶときは、決まり文句がすぐに5つ出てくるかどうかを目安にするとよいでしょう。
仕事:ホテルのフロント、美術館の案内係、引っ越し業者、遊園地の係員、料理教室の先生
練習したい場面:面接、道をたずねられたとき、町内会の司会、電話の取り次ぎ
行事:運動会の実況、入学式の司会、ラジオ体操の号令
書き終えたら確かめること
- 提案のセリフで、誰が何の役をするかが分かるか
- 場面に入るとき、決まり文句や動きの合図があるか
- 役のままのツッコミと、素に戻るツッコミの両方があるか
- 素に戻ったあと、場面に戻るのか終わるのかがはっきりしているか
- 1つの場面で、ずれが5回以上続いていないか
よくある質問
初心者は、コント漫才とコントのどちらが書きやすいですか?
はじめのうちは、コント漫才のほうが書きやすいことが多いです。セットや衣装が要らず、場面の説明もセリフでできます。演技がぎこちなくても、素に戻ってツッコめば笑いに変えられるのも、心強いところです。
途中で素に戻ると、話が切れてしまいませんか?
戻る回数を決めておけば大丈夫です。2分のネタなら、素に戻るのは1〜2回が目安です。戻ったら「じゃあ、もう一回」「替わって」のように、次の場面へつなぐ一言を入れると流れが切れません。
役に入るのは、ボケとツッコミのどちらですか?
両方です。ボケが「やってみたい役」、ツッコミがその相手役になるのが基本です。交代の場面では、ツッコミが手本の役を演じます。どちらがどの役に向いているかは「ボケとツッコミの決め方」を参考にしてください。
まとめ
- コント漫才は「提案→演じる→ずれ→ツッコミ」の流れで書く
- 提案のセリフで、誰が何の役をするかを言い切る
- 場面に入るときは、決まり文句・音・動きで合図をする
- 素に戻るのは「止める・やり直す・交代する・終わる」の4つの場面
- 最後は役の交代か、最初の話に戻る一言で締めるとまとまる






