エスカレートするコントの作り方|少しずつ大きくする展開の型

男性の頭に、帽子を1つずつ積み重ねていく女性

エスカレートするコントは、最初は「ちょっと変だな」くらいのずれから始めて、同じ方向のずれを段階ごとに大きくしていく展開です。何を大きくするかを1つ決め、3〜5段階に分けて並べると、後半に向かって笑いが大きくなっていきます。

この記事では、大きくするものの選び方、段階の付け方、終わらせ方を順番に紹介します。はしご表で組み立てた約2分の台本と、うまくいかないときの直し方もあります。

目次目次を閉じる目次を開く
  1. エスカレート型とは? くり返しや脱線との違い
  2. 何を大きくするか|5つのものさし
  3. 段階の付け方|1段目は「ありそう」から始める
  4. エスカレートの終わらせ方
  5. 台本例「帽子の試着」
  6. 段階が上がらないときの直し方
  7. よくある質問
  8. まとめ

エスカレート型とは? くり返しや脱線との違い

エスカレート型は、ずれの「方向」を変えずに、「大きさ」だけを変えていく展開です。似た展開に、くり返し(天丼)や脱線がありますが、進み方が違います。

展開の型進み方例
エスカレート同じ方向のずれが、だんだん大きくなるすすめられる帽子が、1つ、2つ、5つと重なっていく
くり返し(天丼)同じずれを、同じ形で何度か出す何を聞かれても、同じ答えを返す
脱線ずれの方向が、次々に変わっていく道案内のはずが、昔話や料理の話にそれていく

エスカレート型のよいところは、お客さんが「次はもっと大きくなるはず」と予想しながら見られることです。先が読まれても、「どこまで行くのか」という期待で笑いが続きます。

同じ言葉をくり返しながら規模を大きくすれば、天丼と組み合わせることもできます。天丼のくわしいやり方は「天丼(くり返しのボケ)のやり方」で紹介しています。

何を大きくするか|5つのものさし

エスカレートさせる前に、何を大きくするかを決めます。ここでは、大きくするものを「ものさし」と呼びます。誕生日会の準備を手伝いに来た友人を例に、5つのものさしを並べました。

ものさし大きくなるもの例:誕生日会の準備を手伝う友人
量数や回数風船を1個→30個→部屋が風船で埋まる
大きさ規模や広さケーキを焼く→3段のケーキ→天井に届くケーキ
範囲関わる人や場所家族で祝う→近所の人を呼ぶ→町内放送でお知らせする
時間長さや期間5分のスピーチ→1時間のスピーチ→毎年続ける約束
本気度気持ちの強さや真剣さ少し手伝う→全部仕切る→泣きながら開会の挨拶をする

ものさしは、1本のコントで1つにしぼるのが基本です。途中でものさしが変わると、お客さんは何が大きくなっているのか分からなくなります。慣れてきたら、量と本気度のように、2つを同時に大きくする方法もあります。

段階の付け方|1段目は「ありそう」から始める

ものさしが決まったら、ずれを段階に分けて並べます。次の手順で作ると、段階の差がそろいます。

  1. いちばん大きな段階(最後のずれ)を先に決める
  2. 1段目は、現実にありそうな小さなずれにする
  3. 1段目と最後のあいだを、差が同じくらいになるように埋める
  4. 段階ごとに、ずれの理由を言うセリフを1つ用意する
  5. ツッコミの言い方を、段階ごとに少しずつ強くする

4の「ずれの理由」は、変な人が大まじめに言う理屈のことです。「上の帽子が、下の帽子の日よけになります」のように理由があると、ありえないずれでも、お客さんがついてきてくれます。

段階の数は、時間に合わせて決めます。1分なら3段階、2分なら4〜5段階、3分なら5〜6段階が目安です。3分以上になるときは、途中で一度ずれを小さく戻し、そこからもう一度大きくしていくと、流れに波が出ます。

はしご表で段階を並べる

段階は、下から上へ登るはしごのように書き出すと、差が見えやすくなります。下の台本は、このはしご表から書きました。

例文エスカレートのはしご表(記入例)

ものさし:量(重ねる帽子の数)
1段目(ありそう):日よけの帽子を1つすすめる
2段目(ちょっと変):上にもう1つ重ね、「上の帽子が日よけになる」と言う
3段目(変):3つ目を重ね、「雨の日は上だけ濡れれば済む」と言う
4段目(ありえない):5つまで重ね、「背が高くなり、人ごみではぐれない」と言う
最後(いちばん大きい):6つ目を重ね、「季節ごとに上から外せば1年使える」と言う
オチ:1つでいいと言われて外していくと、残ったのは客が最初にかぶってきた帽子

ツッコミも、段階に合わせて温度を上げます。最初はていねいに受け、後半ほど短く、強くしていきます。

段階ツッコミの例
1段目「あ、いいですね」(まだ普通に受ける)
2段目「重ねるんですか」
3段目「雨の話はしてないです」
4段目「目印はいりません」
最後「重い重い。前が見えない」

エスカレートの終わらせ方

大きくし続けたずれは、どこかで終わらせる必要があります。よく使われる終わらせ方は、次の3つです。

終わらせ方中身例:誕生日会の準備
限界で崩れる積み上げたものが崩れる、続けられなくなる風船が増えすぎて、主役が部屋に入れない
一気に元に戻るいちばん小さな状態に急に戻る「やっぱり1個でいいか」と、小さなケーキを1つ出す
立場が入れかわる止めていた人が、いちばん乗り気になる止めていた主役が「来年はもっと大きくしよう」と言い出す

どの終わらせ方でも、最後は短い一言で締めます。長く説明すると、せっかくの大きな笑いが小さくなってしまいます。締め方の型は「漫才のオチの作り方」も参考になります。

台本例「帽子の試着」

ものさしを「量」にして、はしご表から書いた台本です。終わらせ方は「一気に元に戻る」を使っています。

時間
約2分
人数
2人(店員、客)
準備物
店の帽子6つ(紙で作った帽子でもよい)、客が最初からかぶる帽子1つ
難しさ
★★

台本帽子の試着(約2分)

(帽子の店。棚に帽子が並んでいる。客が自分の帽子をかぶったまま入ってくる)

店員いらっしゃいませ。

客夏の日差しをよけられる帽子を探していて。

店員それでしたら、こちらはいかがでしょう。つばが広くて人気です。

(店員が、客の帽子の上から帽子をのせる。客は気づかずに鏡を見る)

客あ、いいですね。

店員さらに、こちらを重ねますと。

(店員が、2つ目の帽子を上に重ねる)

客重ねるんですか。

店員上の帽子が、下の帽子の日よけになります。

客帽子に日よけは要らないです。

店員そして3つ目。雨の日は、いちばん上だけが濡れれば済みます。

(3つ目を重ねる)

客雨の話はしてないです。

店員続いて、4つ目と5つ目。

(2つ続けて重ねる。客がよろけるふりをする)

店員背が高くなりますので、人ごみでもはぐれません。

客目印はいりません。

店員最後に、こちら。

(6つ目を重ねる)

店員季節が変わるたびに、上から1つずつ外していけば、1年中お使いいただけます。

客重い重い。前が見えない。1つでいいんです、1つで。

店員かしこまりました。では、いちばんお似合いのものだけを残しましょう。

(店員が、上から1つずつ帽子を外していく。外すたびに、首をかしげる)

(最後に、客が最初からかぶってきた帽子だけが残る)

店員こちらです。

客ああ、これです。いちばん落ち着きます。これをください。

店員お客さま、そちらは売り物ではございません。

客え?

店員お客さまが、かぶってこられた帽子です。

客(帽子にさわって)……どうりで、しっくりくると思った。

(2人でお客さんのほうを向き、一礼する)

この台本では、店員が段階ごとに必ず理由を言います。理由がもっともらしいほど、重なっていく帽子のおかしさが目立ちます。最初の帽子を客の帽子の上にのせる場面は、お客さんにだけ見えるようにゆっくり行うと、最後の一言が伏線の回収になります。

帽子は、紙皿の真ん中に紙コップをはり付けると、軽くて重ねやすいものが作れます。客が最初にかぶる帽子だけは、色や形を変えて、ひと目で区別がつくようにしておきましょう。

段階が上がらないときの直し方

演じてみて、思ったように笑いが大きくならないときは、次の表で原因を探しましょう。

よくある悩み原因直し方
2段目から笑いが減る1段目と2段目の差が小さい2段目を思い切って大きくする
最初から笑いが起きない1段目が大きすぎて、ありえない1段目を「ありそう」なずれに戻す
何の話か分からなくなる途中でものさしが変わっているものさしを1つにそろえる
後半で笑いが減るツッコミの強さがずっと同じ段階ごとに、ツッコミを短く強くする
長くなりすぎる同じくらいの段階が続いている差の小さい段階をまとめて削る

設定そのものから見直したいときは、「コントの台本の書き方」の設計シートに戻って、変な人のルールを確かめてみてください。

よくある質問

話が現実離れしすぎて、ついてきてもらえない気がします。

段階ごとの理由のセリフを見直しましょう。変な人が大まじめに理由を言っていれば、ありえない状況でも、お客さんはその人のルールとして受け入れてくれます。1段目を、誰でも「ありそう」と思える小さなずれにしておくことも大切です。

漫才でも、エスカレート型は使えますか?

使えます。ボケの話がだんだん大きくなっていく形にすれば、会話だけの漫才でもエスカレートさせられます。会話だけで笑わせる台本の作り方は「しゃべくり漫才の書き方」で紹介しています。

段階は、いくつまで増やしてもいいですか?

時間しだいですが、1つの流れで6段階を超えると、お客さんが先を読んで飽きてしまうことが多いです。段階を増やしたいときは、途中で一度ずれを小さく戻すか、ものさしを2つ目に切りかえて、新しい流れを始めましょう。

まとめ

  • エスカレート型は、同じ方向のずれを段階ごとに大きくしていく展開
  • 何を大きくするか(ものさし)を1つ決めてから、段階を作る
  • 1段目は「ありそう」なずれにし、段階ごとに理由のセリフを用意する
  • ツッコミも、段階ごとに短く強くしていく
  • 最後は、崩れる・元に戻る・立場が入れかわるのどれかで締める
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