エスカレートするコントは、最初は「ちょっと変だな」くらいのずれから始めて、同じ方向のずれを段階ごとに大きくしていく展開です。何を大きくするかを1つ決め、3〜5段階に分けて並べると、後半に向かって笑いが大きくなっていきます。
この記事では、大きくするものの選び方、段階の付け方、終わらせ方を順番に紹介します。はしご表で組み立てた約2分の台本と、うまくいかないときの直し方もあります。
目次目次を閉じる目次を開く
エスカレート型とは? くり返しや脱線との違い
エスカレート型は、ずれの「方向」を変えずに、「大きさ」だけを変えていく展開です。似た展開に、くり返し(天丼)や脱線がありますが、進み方が違います。
| 展開の型 | 進み方 | 例 |
|---|---|---|
| エスカレート | 同じ方向のずれが、だんだん大きくなる | すすめられる帽子が、1つ、2つ、5つと重なっていく |
| くり返し(天丼) | 同じずれを、同じ形で何度か出す | 何を聞かれても、同じ答えを返す |
| 脱線 | ずれの方向が、次々に変わっていく | 道案内のはずが、昔話や料理の話にそれていく |
エスカレート型のよいところは、お客さんが「次はもっと大きくなるはず」と予想しながら見られることです。先が読まれても、「どこまで行くのか」という期待で笑いが続きます。
同じ言葉をくり返しながら規模を大きくすれば、天丼と組み合わせることもできます。天丼のくわしいやり方は「天丼(くり返しのボケ)のやり方」で紹介しています。
何を大きくするか|5つのものさし
エスカレートさせる前に、何を大きくするかを決めます。ここでは、大きくするものを「ものさし」と呼びます。誕生日会の準備を手伝いに来た友人を例に、5つのものさしを並べました。
| ものさし | 大きくなるもの | 例:誕生日会の準備を手伝う友人 |
|---|---|---|
| 量 | 数や回数 | 風船を1個→30個→部屋が風船で埋まる |
| 大きさ | 規模や広さ | ケーキを焼く→3段のケーキ→天井に届くケーキ |
| 範囲 | 関わる人や場所 | 家族で祝う→近所の人を呼ぶ→町内放送でお知らせする |
| 時間 | 長さや期間 | 5分のスピーチ→1時間のスピーチ→毎年続ける約束 |
| 本気度 | 気持ちの強さや真剣さ | 少し手伝う→全部仕切る→泣きながら開会の挨拶をする |
ものさしは、1本のコントで1つにしぼるのが基本です。途中でものさしが変わると、お客さんは何が大きくなっているのか分からなくなります。慣れてきたら、量と本気度のように、2つを同時に大きくする方法もあります。
段階の付け方|1段目は「ありそう」から始める
ものさしが決まったら、ずれを段階に分けて並べます。次の手順で作ると、段階の差がそろいます。
- いちばん大きな段階(最後のずれ)を先に決める
- 1段目は、現実にありそうな小さなずれにする
- 1段目と最後のあいだを、差が同じくらいになるように埋める
- 段階ごとに、ずれの理由を言うセリフを1つ用意する
- ツッコミの言い方を、段階ごとに少しずつ強くする
4の「ずれの理由」は、変な人が大まじめに言う理屈のことです。「上の帽子が、下の帽子の日よけになります」のように理由があると、ありえないずれでも、お客さんがついてきてくれます。
段階の数は、時間に合わせて決めます。1分なら3段階、2分なら4〜5段階、3分なら5〜6段階が目安です。3分以上になるときは、途中で一度ずれを小さく戻し、そこからもう一度大きくしていくと、流れに波が出ます。
はしご表で段階を並べる
段階は、下から上へ登るはしごのように書き出すと、差が見えやすくなります。下の台本は、このはしご表から書きました。
ものさし:量(重ねる帽子の数)
1段目(ありそう):日よけの帽子を1つすすめる
2段目(ちょっと変):上にもう1つ重ね、「上の帽子が日よけになる」と言う
3段目(変):3つ目を重ね、「雨の日は上だけ濡れれば済む」と言う
4段目(ありえない):5つまで重ね、「背が高くなり、人ごみではぐれない」と言う
最後(いちばん大きい):6つ目を重ね、「季節ごとに上から外せば1年使える」と言う
オチ:1つでいいと言われて外していくと、残ったのは客が最初にかぶってきた帽子
ツッコミも、段階に合わせて温度を上げます。最初はていねいに受け、後半ほど短く、強くしていきます。
| 段階 | ツッコミの例 |
|---|---|
| 1段目 | 「あ、いいですね」(まだ普通に受ける) |
| 2段目 | 「重ねるんですか」 |
| 3段目 | 「雨の話はしてないです」 |
| 4段目 | 「目印はいりません」 |
| 最後 | 「重い重い。前が見えない」 |
エスカレートの終わらせ方
大きくし続けたずれは、どこかで終わらせる必要があります。よく使われる終わらせ方は、次の3つです。
| 終わらせ方 | 中身 | 例:誕生日会の準備 |
|---|---|---|
| 限界で崩れる | 積み上げたものが崩れる、続けられなくなる | 風船が増えすぎて、主役が部屋に入れない |
| 一気に元に戻る | いちばん小さな状態に急に戻る | 「やっぱり1個でいいか」と、小さなケーキを1つ出す |
| 立場が入れかわる | 止めていた人が、いちばん乗り気になる | 止めていた主役が「来年はもっと大きくしよう」と言い出す |
どの終わらせ方でも、最後は短い一言で締めます。長く説明すると、せっかくの大きな笑いが小さくなってしまいます。締め方の型は「漫才のオチの作り方」も参考になります。
台本例「帽子の試着」
ものさしを「量」にして、はしご表から書いた台本です。終わらせ方は「一気に元に戻る」を使っています。
- 時間
- 約2分
- 人数
- 2人(店員、客)
- 準備物
- 店の帽子6つ(紙で作った帽子でもよい)、客が最初からかぶる帽子1つ
- 難しさ
- ★★
台本帽子の試着(約2分)
(帽子の店。棚に帽子が並んでいる。客が自分の帽子をかぶったまま入ってくる)
店員いらっしゃいませ。
客夏の日差しをよけられる帽子を探していて。
店員それでしたら、こちらはいかがでしょう。つばが広くて人気です。
(店員が、客の帽子の上から帽子をのせる。客は気づかずに鏡を見る)
客あ、いいですね。
店員さらに、こちらを重ねますと。
(店員が、2つ目の帽子を上に重ねる)
客重ねるんですか。
店員上の帽子が、下の帽子の日よけになります。
客帽子に日よけは要らないです。
店員そして3つ目。雨の日は、いちばん上だけが濡れれば済みます。
(3つ目を重ねる)
客雨の話はしてないです。
店員続いて、4つ目と5つ目。
(2つ続けて重ねる。客がよろけるふりをする)
店員背が高くなりますので、人ごみでもはぐれません。
客目印はいりません。
店員最後に、こちら。
(6つ目を重ねる)
店員季節が変わるたびに、上から1つずつ外していけば、1年中お使いいただけます。
客重い重い。前が見えない。1つでいいんです、1つで。
店員かしこまりました。では、いちばんお似合いのものだけを残しましょう。
(店員が、上から1つずつ帽子を外していく。外すたびに、首をかしげる)
(最後に、客が最初からかぶってきた帽子だけが残る)
店員こちらです。
客ああ、これです。いちばん落ち着きます。これをください。
店員お客さま、そちらは売り物ではございません。
客え?
店員お客さまが、かぶってこられた帽子です。
客(帽子にさわって)……どうりで、しっくりくると思った。
(2人でお客さんのほうを向き、一礼する)
この台本では、店員が段階ごとに必ず理由を言います。理由がもっともらしいほど、重なっていく帽子のおかしさが目立ちます。最初の帽子を客の帽子の上にのせる場面は、お客さんにだけ見えるようにゆっくり行うと、最後の一言が伏線の回収になります。
帽子は、紙皿の真ん中に紙コップをはり付けると、軽くて重ねやすいものが作れます。客が最初にかぶる帽子だけは、色や形を変えて、ひと目で区別がつくようにしておきましょう。
段階が上がらないときの直し方
演じてみて、思ったように笑いが大きくならないときは、次の表で原因を探しましょう。
| よくある悩み | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 2段目から笑いが減る | 1段目と2段目の差が小さい | 2段目を思い切って大きくする |
| 最初から笑いが起きない | 1段目が大きすぎて、ありえない | 1段目を「ありそう」なずれに戻す |
| 何の話か分からなくなる | 途中でものさしが変わっている | ものさしを1つにそろえる |
| 後半で笑いが減る | ツッコミの強さがずっと同じ | 段階ごとに、ツッコミを短く強くする |
| 長くなりすぎる | 同じくらいの段階が続いている | 差の小さい段階をまとめて削る |
設定そのものから見直したいときは、「コントの台本の書き方」の設計シートに戻って、変な人のルールを確かめてみてください。
よくある質問
話が現実離れしすぎて、ついてきてもらえない気がします。
段階ごとの理由のセリフを見直しましょう。変な人が大まじめに理由を言っていれば、ありえない状況でも、お客さんはその人のルールとして受け入れてくれます。1段目を、誰でも「ありそう」と思える小さなずれにしておくことも大切です。
漫才でも、エスカレート型は使えますか?
使えます。ボケの話がだんだん大きくなっていく形にすれば、会話だけの漫才でもエスカレートさせられます。会話だけで笑わせる台本の作り方は「しゃべくり漫才の書き方」で紹介しています。
段階は、いくつまで増やしてもいいですか?
時間しだいですが、1つの流れで6段階を超えると、お客さんが先を読んで飽きてしまうことが多いです。段階を増やしたいときは、途中で一度ずれを小さく戻すか、ものさしを2つ目に切りかえて、新しい流れを始めましょう。
まとめ
- エスカレート型は、同じ方向のずれを段階ごとに大きくしていく展開
- 何を大きくするか(ものさし)を1つ決めてから、段階を作る
- 1段目は「ありそう」なずれにし、段階ごとに理由のセリフを用意する
- ツッコミも、段階ごとに短く強くしていく
- 最後は、崩れる・元に戻る・立場が入れかわるのどれかで締める






