漫才の台本は、「つかみ→本題の入り→ボケの連続→展開→オチ」の順に組み立てると、初めてでも形になります。ただし、書く順番は演じる順番と同じでなくてかまいません。本題とボケを先に作り、つかみとオチはあとから決めるほうが、全体がまとまりやすくなります。
この記事では、漫才の構成とボケの並べ方を、オリジナルの2分の台本を例に、書く順番どおりに説明します。例の台本は、そのまま練習に使うこともできます。
漫才の台本は5つの部分でできている
漫才は、2人がセンターマイクの前で話して笑わせる芸です。台本は、次の5つの部分に分けて考えると組み立てやすくなります。
| 部分 | 役割 | 2分のネタでの長さの目安 |
|---|---|---|
| つかみ | 最初の短い笑いで、お客さんの気持ちをこちらに向ける | 10秒ほど |
| 本題の入り | 今日は何の話をするのかを伝える | 10〜15秒 |
| ボケの連続 | ボケとツッコミをくり返して、笑いを重ねる | 60秒ほど |
| 展開 | 話す形から演じる形にするなど、流れを変える | 20〜30秒 |
| オチ | いちばん大きな笑いで終わり、「もういいよ」で締める | 10秒ほど |
ボケは、わざと普通からずれたことを言う役です。ツッコミは、そのずれを指摘して、お客さんに笑いどころを示す役です。オチのあとは、2人で「どうも、ありがとうございました」と頭を下げて終わる形が一般的です。
書く順番は「本題→ボケ→オチ→つかみ」
台本を1行目のつかみから書こうとすると、そこで止まりやすくなります。つかみは「本題につながる一言」にするのが理想なので、本題が決まってから作るほうが楽です。
- 本題を1行で決める(例:Bが「ちゃんとした大人になりたい」と言い出す)
- 本題にそったボケを、10個以上書き出す
- ボケを選んで並べる(並べ方はこのあと説明します)
- 途中で流れを変える「展開」を1つ決める
- オチを決める
- 最後に、本題につながるつかみを作る
- 頭から通して書き、ボケとボケのあいだのつなぎのセリフを整える
つかみとオチは、本題とボケが決まってからのほうが作りやすい部分です。つかみの型や例は「漫才のつかみの作り方」に、オチの型は「漫才のオチの作り方」にまとめています。
本題は「〜したい」「〜を始めた」で決める
本題は、Bが「〜したい」「〜を始めた」と言い出す形にすると、Aが質問するだけで話が進みます。その質問への答えをずらせば、それがそのままボケになります。
B「最近、料理を始めたんだけど」
B「引っ越しのあいさつを、ちゃんとやりたいんだよね」
B「休みの日に、何か新しいことを始めたくて」
B「町内会の役員を、引き受けることになって」
本題が決まったら、Aの質問を先に5つ書き出してみましょう。「何から始めたの?」「どれくらい続いてるの?」のような普通の質問ほど、ずれた答えとの差がはっきりします。
ボケを並べる5つの決まり
同じボケでも、並べる順番で笑いの大きさが変わります。次の5つを目安に並べましょう。
- 最初のボケは分かりやすいものにする。お客さんに「この2人はこういうずれ方をする」と覚えてもらう
- 後ろへ行くほど、ずれを大きくする
- 同じずれ方が3回続いたら、次は型を変える(言葉のずれ→数字のずれ→行動のずれなど)
- 真ん中あたりで一度、形を変える。話すだけの流れから、演じる流れにするなど
- 前半に出した言葉を1つ、オチのために取っておく
5番目は、前に出たボケをもう一度使って笑いを取る方法です。くり返しのボケ「天丼」と同じ考え方で、くわしくは「天丼(くり返しのボケ)のやり方」で紹介しています。
○ 名刺を作った。肩書きは「大人(見習い)」→ 分かりやすいので1番目に
○ 夜9時に寝て、朝9時に起きる → 数字のずれで2番目に
○ 貯金箱を買うための貯金をしている → 理屈がねじれていて3番目に
○ 自動販売機にも「恐れ入ります」と言う → 行動のずれ。演じる流れへの入り口に
× 新聞はテレビ欄だけ読む → よく聞く形なので外した
× 上司の口ぐせをまねして大人ぶる → 実在の人をからかう形になるので外した
外したボケにも理由をメモしておくと、ほかのネタを書くときに同じ迷い方をしなくて済みます。「よく聞く形」や「人をからかう形」のボケは、候補の段階で外しておきましょう。
例:2分の漫才台本「ちゃんとした大人」
ここまでの手順で書いた台本です。Aがツッコミ、Bがボケです。コンビ名の所(〇〇〇〇)は、自分たちの名前に変えて使ってください。
- 時間
- 約2分
- 人数
- 2人
- 準備物
- センターマイク(なければ立ち位置の目印)
- 難しさ
- ★★
台本ちゃんとした大人(約2分)
(2人でセンターマイクの前に出る)
Aどうも、Aです。
BBです。2人あわせて「〇〇〇〇」です。よろしくお願いいたします。
(Bが深々と頭を下げたまま、なかなか上げない)
A長い長い。もう始まってるから。
Bいや、最近ね、ちゃんとした大人になりたいと思ってて。
Aいいじゃない。何か始めたの?
Bまず、名刺を作りました。
Aおお、大人っぽい。見せて。
B(名刺を渡すしぐさ)どうぞ。
A肩書きが「大人(見習い)」。
Bまだ見習いなので。
A正直なのはいいけど、渡された人が困るよ。
Bそれから、早寝早起きを始めました。
Aそれは大事。何時に寝てるの?
B夜の9時。
Aえらい。起きるのは?
B朝の9時。
A12時間寝てるじゃない。それは早寝遅起き。
Bあと、貯金も始めました。
Aいいね。いくらたまった?
Bまだ0円。いま、貯金箱を買うためのお金をためてるところ。
Aその貯金は、どこに入れてるの。
Bそれから、大人は言葉づかいが大事でしょ。自動販売機にも「恐れ入ります」って言ってます。
A言わなくていい。向こうは何も思ってない。
B電話の出方も練習してるから、ちょっとかけてみて。
Aじゃあ、かけるよ。(耳に手を当てて)プルルル。
Bお電話ありがとうございます。ちゃんとした大人の、Bでございます。
A名乗り方が変なんだよ。
Bただいま大人になる途中のため、電話に出ることができません。
A出てるじゃない。しかも留守番電話になってる。
B……どうかな。ちょっとは大人に見えてきた?
Aうーん。お前を見てたら、こっちまでちゃんとしようって気になったわ。
Bじゃあ、名刺どうぞ。
Aえ、俺の分?
B肩書きは「見習いの見習い」。
Aいらないよ。もういいよ。
A・Bどうも、ありがとうございました。
台本の各部分と、そのねらいは次のとおりです。
| 部分 | 台本の場所 | ねらい |
|---|---|---|
| つかみ | 深々としたおじぎ | 本題の「ちゃんとした大人」を先に少し見せる |
| 本題の入り | 「ちゃんとした大人になりたい」 | 何の話かを1行で伝える |
| ボケの連続 | 名刺→早寝早起き→貯金→恐れ入ります | ずれ方を変えながら、少しずつ大きくする |
| 展開 | 電話の練習 | 話す流れから、演じる流れに変える |
| オチ | 「見習いの見習い」 | 最初の名刺をもう一度使って締める |
電話の練習のように、漫才の中で役を演じる形は「コント漫才」と呼ばれます。役への入り方と戻り方は、「コント漫才の書き方」で紹介しています。
書き終えたら直す所
台本ができたら、2人で声に出して読み、次の点を確かめます。
読み合わせで確かめること
- つかみから本題に入るまでが、長すぎないか
- ボケとボケのあいだのつなぎのセリフが、2行以上続いていないか
- ツッコミの言葉が、毎回同じになっていないか
- 声に出して読んで、持ち時間に収まるか
- オチのあとに、締めのあいさつまで書いてあるか
ツッコミのセリフは、短く言い切るのが基本です。「いらないよ」「出てるじゃない」のように、ボケの内容をそのまま否定したり言い直したりするだけで、笑いどころがはっきりします。
話し手やト書き(動きの説明)の書き方など、台本の書式は「お笑いの台本の書き方」で紹介しています。台本の文字数から、演じたときのおよその時間を確かめることもできます。
よくある質問
ボケとツッコミ、どちらが台本を書けばいいですか?
どちらが書いてもかまいません。ボケの候補出しは2人で、台本にまとめるのは1人、と分けると進めやすくなります。書いた人は、もう1人に声に出して読んでもらい、言いにくい所を直しましょう。
2分のネタに、ボケはいくつ入れればいいですか?
例の台本では、つかみとオチを入れて8か所ほどです。数を増やすより、1つ1つのボケのあとに、ツッコミと笑いを待つ時間が取れているかを大事にしてください。
台本どおりに言えなくてもいいですか?
練習の中で、言いやすい言葉に変えるのはかまいません。変えたら台本にも書き直して、2人が同じ台本を持つようにしておきましょう。
まとめ
- 漫才は「つかみ→本題の入り→ボケの連続→展開→オチ」で組み立てる
- 書く順番は、本題とボケを先に、つかみは最後に作る
- ボケは分かりやすいものから並べ、ずれ方を変えながら大きくする
- 真ん中で一度、話す形から演じる形に変えると、後半もだれない
- オチは前半の言葉をもう一度使うと、締まりやすい






