還暦祝いのスピーチを面白くするなら、年齢ではなく、本人の口ぐせや趣味といった「その人らしさ」で笑いを取るのがいちばんです。本人も周りも気持ちよく笑えて、そのあとの感謝の言葉も温かく届きます。全体は、お祝い、その人らしい思い出を1つ、これからへの願いの順に、1〜3分にまとめます。
この記事では、子どもから親へ、部下から上司へ、友人への笑い入りの例文と、乾杯の挨拶を紹介します。年齢をからかいすぎない言い方や、長寿のお祝いで避けたい言葉もまとめました。
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還暦祝いのスピーチの組み立て方
還暦は、数え年で61歳、満年齢で60歳を迎えるお祝いです。生まれた年の干支が60年でひとめぐりし、暦が還ることから、こう呼ばれます。赤いちゃんちゃんこを贈るのは、赤ちゃんに還って生まれ直すという意味や、赤い色に魔よけの意味があると言われているためです。
スピーチは、次の順番で組み立てると、どの立場でもまとまります。笑いは、2の「思い出」に1つ入れるのが基本です。
| パート | 話すこと | 長さの目安 | 笑いを入れるなら |
|---|---|---|---|
| 1. お祝いと名乗り | 「還暦おめでとうございます」、本人との関係 | 1〜2文 | 入れない |
| 2. 思い出 | その人らしさが伝わる出来事を1つ | 3〜5文 | ここに1つ。口ぐせや趣味で |
| 3. 感謝や尊敬 | 思い出から感じたこと | 2〜3文 | 入れない(まじめに言う) |
| 4. これからへの願い | 新しい節目に向けた言葉 | 1〜2文 | 思い出の笑いをもう一度出してもよい |
| 5. 結び | もう一度お祝いを言う | 1文 | 入れない |
思い出で笑ったあとに感謝を言うと、照れくさい言葉も言いやすくなります。4で思い出の笑いをもう一度出すと、話の最初と終わりがつながり、もう一度笑いが起きます。
長さは、家族の食事会なら1〜2分、職場や友人が集まる会なら2〜3分が目安です。話す速さは1分あたり250〜300字ほどなので、2分なら500〜600字ほどの原稿になります。書いた原稿は、スピーチ時間の計算ツールで長さを確かめられます。
子どもから親へのスピーチ例文
家族の食事会では、かしこまりすぎず、ふだんの呼び方で話してかまいません。照れくさいときは、思い出の部分で小さく笑いを取ってから、感謝の言葉に移ると話しやすくなります。
長女から父へ(約1分半)
お父さん、還暦おめでとうございます。
家族を代表して、長女の〇〇から、ひとことお祝いを言わせてください。
お父さんといえば、日曜大工です。
私が小学生のころに作ってくれた本棚は、今も実家の私の部屋にあります。
少しだけ斜めなので、本を入れるときは左に寄せるのが、わが家の決まりでした。
お父さんは今でも、あの傾きを「味」と呼んでいます。
それでも、あの本棚にはたくさんの思い出が詰まっています。
夏休みの宿題も、受験の参考書も、全部あの本棚に並んでいました。
社会人になって、毎朝決まった時間に家を出て働くことの大変さが、少しずつ分かるようになりました。
お父さんは、それを何十年も続けてくれていたんですね。
本当にありがとうございます。
還暦は、暦がひとめぐりして、新しく始まる節目だそうです。
これからは、自分の好きなことに、もっと時間を使ってください。
次は、まっすぐな本棚を、一緒に作りましょう。
お父さん、本当におめでとうございます。
笑いは「左に寄せるのが、わが家の決まり」と「傾きを『味』と呼んでいます」です。結びの「まっすぐな本棚を、一緒に作りましょう」で同じ本棚の話をもう一度出しているので、最後にもう一度、温かい笑いが起きます。
次男から母へ(約1分)
お母さん、還暦おめでとう。
次男の〇〇です。今日は、兄に代わって、ひとこと言わせてください。
お母さんの口ぐせは、「あと5分で行くよ」です。
この「5分」が、本当に5分だったことは、ぼくの記憶では一度もありません。
でも、その5分の間に、お母さんはいつも、家族全員のお弁当と水筒を用意してくれていました。
あのころは、待たされているとばかり思っていました。
今は、あの5分が、ぼくたちのための時間だったと分かります。
本当にありがとう。
これからは、自分のための時間を、5分と言わずたっぷり使ってください。
お母さん、おめでとう。
母の口ぐせを笑いにしたあと、「その5分の間に」と本当の姿を明かす形です。笑いがそのまま感謝に変わるので、照れずに「ありがとう」が言えます。料理や家庭菜園など、本人がよくしていることに置きかえても使えます。両親そろってのお祝いなら、「お父さんの〇〇と、お母さんの〇〇」と1つずつ話すと、どちらも主役になれます。
部下から上司へのスピーチ例文
職場のお祝いの会では、仕事ぶりを1つ具体的に話すと、ほかの部署の人にも人柄が伝わります。笑いは、上司の口ぐせや仕事のくせのように、本人が日ごろから笑い話にしていることに限ります。
〇〇部長、還暦おめでとうございます。
部を代表しまして、〇〇課の△△から、ひとことお祝いを申し上げます。
部長の口ぐせといえば、「まずは、やってみよう」です。
新しい仕事を前に私たちが迷っていると、いつもこの言葉で背中を押してくださいました。
入社3年目、私が初めて任された提案が、うまくいかなかったときのことです。
がっかりしている私に、部長は「よし、次はどうする」とだけ言って、その日のうちに一緒に作戦を立て直してくださいました。
あの日の一言があったから、今も新しい仕事に手を挙げられています。
ただ、この「まずは、やってみよう」は、月曜日の朝に出ることが多く、週末に思いつかれたらしい新しい企画が、毎週のように届きます。
おかげで、私たちの月曜日は、いつもにぎやかです。
還暦という節目を迎えられても、部長は誰よりも新しいことに前向きです。
その姿に、私たちはいつも励まされています。
私たちも、部長のように、新しいことを楽しめる人でありたいと思います。
これからもお体を大切に、私たちに「まずは、やってみよう」と声をかけ続けてください。
ただ、月曜日の朝だけは、少しお手やわらかにお願いいたします。
本日は、誠におめでとうございます。
笑いは「月曜日の朝の新しい企画」と、結びの前の「月曜日の朝だけは、少しお手やわらかに」の2つです。どちらも部長の前向きさをほめる話の中に置いているので、目上の人への失礼になりません。
還暦が定年退職と重なる職場では、お祝いと送別の両方の気持ちを込めることになります。送別の言葉の入れ方は「送別会の挨拶(送る側)例文」を参考にしてください。
友人へのスピーチ例文
同年代の友人なら、一緒に年を重ねてきた目線で話せます。年齢の話をするなら、相手だけでなく自分も含めて笑う形にすると、からかっているようには聞こえません。
〇〇、還暦おめでとう。
高校の野球部で一緒だった、△△です。
〇〇とは、高校のころからの長い付き合いになります。
当時は練習のあと、どちらがおにぎりを多く食べられるか、毎日競争していました。
今日は、どちらが多くお祝いの言葉を言えるか、競争するつもりで来ました。
〇〇は昔から、困っている人を見ると、すぐに体が動く人です。
部活の道具の片づけを、いちばん遅くまで手伝っていたのも〇〇でした。
社会人になってからも、私の引っ越しのたびに、段ボールを運びに来てくれました。
お礼に出したお茶を飲む前に、もう次の箱を持ち上げていたのを覚えています。
私も同い年なので、年の話をすると、全部自分に返ってきます。
なので今日は、年齢の話はこのくらいにしておきます。
次は70歳の古希で、また集まろう。
そのときも、今日みたいに笑って会えるように、お互い元気でいよう。
〇〇、本当におめでとう。
笑いは3つあります。1つ目は「おにぎり競争からお祝いの言葉の競争へ」の言いかえ、2つ目は「お茶を飲む前に次の箱」という人柄の描写です。3つ目の「全部自分に返ってきます」は、自分を含めて年齢を笑う言い方です。友人どうしなら、このくらいの数でもにぎやかに聞こえます。
還暦祝いの乾杯の挨拶
乾杯の挨拶は、長くても1分ほどで短く済ませます。グラスを持って待っている人がいるので、思い出話は入れず、お祝いと願いの言葉に、軽い笑いを1つ添える程度にしましょう。
それでは、乾杯の音頭をとらせていただきます。
お父さんは乾杯の前の話が長くなるので、今日は私が先に言ってしまいます。
皆さん、グラスをお持ちください。
お父さんの還暦と、これからの毎日が、ますます楽しいものになることを願って、乾杯。
ただいまご紹介いただきました、〇〇部の△△です。
〇〇部長、還暦おめでとうございます。
部長には、私が入社したときから、仕事の進め方を一から教えていただきました。
今日は、部長を慕う皆さんがこれだけ集まりました。会議の招集より、ずっと早く集まりました。
それでは皆さま、グラスをお持ちください。
〇〇部長のますますのご健康とご活躍を祈念いたしまして、乾杯。
家族の乾杯は本人の口ぐせ、職場の乾杯は集まった人の多さを笑いにしています。「音頭をとる」は、みんなの先に立って声をかけることです。お酒を飲まない人がいても、「グラスをお持ちください」とだけ言えば、中身を問わず一緒に乾杯できます。もう少しくだけた乾杯の一言は「乾杯の挨拶の面白い例文」で紹介しています。
年齢をからかわずに笑いを取る言い方
還暦祝いは年齢のお祝いなので、つい年齢をネタにした冗談を言いたくなります。けれども、今の60歳は仕事も趣味も現役の人が多く、「年寄り扱い」をされると、笑いながらも少し寂しく感じる人がいます。
からかいすぎに聞こえる言い方を言いかえる
| からかいすぎに聞こえる言い方 | 言いかえの例 |
|---|---|
| もう立派なおじいちゃんですね | 60年分の経験を、これからも分けてください |
| 最近は物忘れが増えたそうで | 最近はスマホを使いこなして、私より返信が早いです |
| 老眼鏡が手放せない父ですが | 毎朝、新聞を隅から隅まで読む父ですが |
| 赤いちゃんちゃんこが似合う年になりました | 赤いちゃんちゃんこより、いつものジャケットのほうが似合っています |
| あと何年元気でいられるか分かりませんが | これからも、まだまだ一緒に出かけましょう |
言いかえの例は、どれも年齢ではなく、本人の今の姿をほめています。笑いは「年齢」ではなく「その人らしさ」で取ると決めておくと、言葉選びに迷いません。見た目(白髪やしわ)や、本人が気にしている体のことには触れないようにしましょう。
その人らしさで笑いを取る一言
年齢のかわりに使える題材は、次のようなものです。自分の家族や上司に合わせて、1つ選んでください。
| 題材 | 一言の例 |
|---|---|
| 口ぐせ | 父の「ちょっとそこまで」は、たいてい隣の町まで行くことを意味します |
| 趣味 | 母の家庭菜園のトマトは、スーパーのものより高くつくと、家族で計算しています |
| 仕事のくせ | 部長の机のメモは、色ペンで5色に分かれていますが、何色が何なのかは誰も知りません |
| 還暦の品 | 赤いちゃんちゃんこを選ぶのに、家族で1時間かかりました。本人がいちばん気に入ったのは頭巾でした |
| これから | 還暦は人生の2周目のスタートだそうです。2周目は道を覚えているので、景色を楽しむ余裕があります |
笑いの一言を入れたら、すぐあとに感謝や尊敬の言葉をつなげます。笑いのあとのまじめな一言は、本人の心によく届きます。笑いの入れ方全体のこつは「スピーチで笑いを取るコツ」でも紹介しています。
長寿のお祝いで避けたい言葉
還暦をはじめとする長寿のお祝いでは、体の弱りや区切りを思わせる言葉を避けるのが一般的です。原稿を書いたら、次の言葉が入っていないか読み直してください。
| 避けたい言葉 | 言いかえの例 |
|---|---|
| 最後に | 結びに |
| 終わる、終わり | 締めくくる、お開き |
| 衰える、老いる | (使わない) |
| 倒れる、寝込む | (使わない) |
| 切れる、途切れる | 続く、つながる |
数字の4と9は、「死」と「苦」を連想させるとして、贈り物の数などで避ける人もいます。スピーチでも、気になる場合は「40年」を「長い間」のように言いかえると安心です。
改まった席で失敗したくないときは
還暦祝いは、家族だけの食事会から、職場や同級生が集まる大きな会まで、形がさまざまです。親族や目上の人が集まる席で、笑いの量や言葉選びに迷う人もいるでしょう。
よくある質問
還暦祝いは、60歳の誕生日に行うものですか?
満60歳の誕生日の前後に祝うことが多いですが、決まりはありません。お正月やお盆など、家族が集まりやすい時期にお祝いの席を設けることもよくあります。本人の予定と、集まる人の都合を優先して決めましょう。
赤いちゃんちゃんこは、着てもらったほうがいいですか?
本人が嫌がるなら、無理に着てもらう必要はありません。赤いネクタイやストール、赤い花など、赤い色の小物を贈る形でもお祝いの気持ちは伝わります。写真を撮るときだけ羽織ってもらう、という方法もあります。
本人が「年を感じるから祝わなくていい」と言っています。
「還暦祝い」と強調せず、いつもより少しにぎやかな誕生日のお祝いとして集まるのも一つの方法です。スピーチでも年齢には触れず、口ぐせや趣味の笑いと、日ごろの感謝を中心に話しましょう。
まとめ
- 還暦祝いのスピーチは「お祝い→思い出1つ→感謝→これからへの願い→結び」で1〜3分にまとめる
- 笑いは、年齢ではなく本人の口ぐせや趣味など「その人らしさ」で取る
- 思い出の笑いを結びでもう一度出すと、話がまとまり、もう一度笑いが起きる
- 乾杯の挨拶は長くても1分。笑いは軽く1つだけにする
- 「最後に」「終わる」「衰える」など、体の弱りや区切りを思わせる言葉は言いかえる






