スピーチで笑いを取るコツは、笑いを「冒頭」と「中盤」にしぼって置き、結びはまじめに締めることです。笑いの型は3つ覚えておけば十分です。自分を少し下げる「自虐」、期待と中身の差で笑わせる「ギャップ」、場面が目に浮かぶ「具体的な描写」です。
この記事では、笑いを入れる場所と3つの型を、そのまま使える言い回しと一緒に紹介します。表彰の受賞挨拶とPTA会長の就任挨拶の例文、笑いが起きなかったときの一言もまとめました。
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スピーチの笑いは、話を聞いてもらうために入れる
スピーチの笑いは、会場を爆笑させるためのものではありません。聞く人の肩の力をぬき、そのあとの本題を聞いてもらうための「味付け」です。笑いが1つも起きなくても、伝えたいことが伝われば、スピーチとしては成功です。
そのため、笑いの数は少なめにします。長さごとの目安は次のとおりです。
| スピーチの長さ | 笑いの数 | 置く場所 |
|---|---|---|
| 1分 | 1か所 | 冒頭か中盤のどちらか |
| 3分 | 2〜3か所 | 冒頭に1つ、中盤に1〜2つ |
| 5分 | 3〜4か所 | 冒頭に1つ、中盤のエピソードごとに1つ |
1分間スピーチに笑いを入れるなら、「1分間スピーチで笑いを取るには?」が参考になります。結婚式の友人代表スピーチは、「面白い友人代表スピーチの作り方」で例文と一緒に紹介しています。
笑いを入れる場所は「冒頭」と「中盤」
笑いを置く場所によって、向いている型とねらいが変わります。
| 場所 | 向いている型 | ねらい |
|---|---|---|
| 冒頭(名乗りの直後) | 自虐 | 会場と自分の緊張をほぐす |
| 中盤(エピソードの中) | 具体的な描写、ギャップ | 人柄や出来事を印象に残す |
| 結び | 入れない | まじめな言葉で、話全体を引き締める |
冒頭は、お祝いやお礼を言ってから
冒頭の笑いは、お笑いでいう「ツカミ」(最初に聞き手の心をつかむ一言)です。ただし、いきなり冗談から入るのは避けます。お祝いやお礼、名乗りを先に済ませ、そのすぐあとに一言入れると、きちんとした印象と親しみやすさの両方が伝わります。
中盤は、笑いのあとに本当に伝えたいことを続ける
中盤の笑いは、エピソードの中に置きます。笑いのすぐあとに、その人のいいところや、伝えたい気持ちを続けるのがコツです。笑いで気持ちがほどけた聞き手には、次のまじめな一文がよく届きます。
反対に、結びに冗談を入れると、聞く人の印象に冗談だけが残り、お祝いやお礼の言葉が薄れてしまいます。結びの2〜3文は、まじめな言葉だけで話しましょう。
笑いの3つの型:自虐・ギャップ・具体的な描写
型1 自虐:自分の小さな弱点を、先に言う
自虐は、自分を少し下げて笑いを取る型です。誰も傷つけないので、冒頭のツカミにいちばん向いています。材料は、苦手なことや小さな失敗にし、見た目や年齢、仕事の大きな失敗は使いません。
| 場面 | 冒頭に使える自虐の一言 |
|---|---|
| 表彰の受賞挨拶 | 「名前を呼ばれたとき、別の人のことだと思って、拍手をしていました」 |
| 役員の就任挨拶 | 「人前で話すのが苦手なので、今日の原稿は、家族全員に聞いてもらってから来ました」 |
| 送別会(送る側) | 「〇〇さんへの言葉を考えたら、原稿が5枚になりました。今日は、1枚にしぼってきました」 |
| 結婚式の主賓 | 「主賓のご挨拶をお引き受けするのは初めてで、うれしくて、原稿を3回書き直しました」 |
自虐は、1つのスピーチで1回までにします。何度も重ねると、聞く人が笑っていいのか迷ってしまいます。好かれる自虐の条件は「自虐ネタの例と使い方」でも紹介しています。
型2 ギャップ:期待させてから、少し外す
ギャップは、聞き手が予想する流れと、実際の中身の差で笑いを取る型です。前半で「立派な話が来そうだ」と思わせる前置きを、お笑いでは「フリ」と呼びます。
| 前半(フリ) | 後半(外す) |
|---|---|
| 「〇〇さんの功績を3つ申し上げます。1つ目は新人の育成、2つ目は売上の記録の更新」 | 「3つ目は、給湯室のポットを、毎朝いちばんに満たしてくれたことです」 |
| 「新郎の〇〇くんは、大学で、学部いちばんの有名人でした」 | 「学食の日替わり定食を、4年間一度も逃さなかったからです」 |
| 「私には、座右の銘があります」 | 「『とりあえず、やってみる』です。このスピーチも、とりあえず引き受けました」 |
外したあとは、まじめな話につなげます。1つ目なら、「誰も気づかない仕事を、誰よりも先にやってくれる人でした」と続けると、笑いがそのままほめ言葉に変わります。ギャップで笑いが起きるわけは「笑いが起きる仕組み」で説明しています。
型3 具体的な描写:ほめ言葉を、目に浮かぶ場面に置きかえる
「几帳面」「やさしい」のようなほめ言葉は、そのまま言っても笑いにはなりません。その人らしさが出る場面を、物や数字を入れて描くと、聞く人の頭に絵が浮かび、くすっと笑いが起きます。
| ふつうの言い方 | 目に浮かぶ言い方 |
|---|---|
| 〇〇さんは几帳面です | 〇〇さんの机の上では、ペンが長さの順に並んでいます |
| 〇〇さんは面倒見がいいです | 〇〇さんの引き出しには、誰かのためのばんそうこうと、予備の傘がいつも入っていました |
| 新郎はやさしい人です | 新郎は、自動ドアにも、通るときに小さく会釈をする人です |
| 課長はいつも忙しそうでした | 課長の湯のみのお茶は、いつも半分残ったまま、すっかりぬるくなっていました |
この型は、送別会や結婚式など、人をほめるスピーチでとくに使いやすい型です。描く場面は、本人が聞いて笑える、ほほえましいくせにかぎります。
例文:笑いを入れたスピーチ2本
〇〇や□□には相手の名前、△△には自分の名前を入れてください。どちらも、冒頭と中盤に1つずつ笑いを置いています。
社内表彰の受賞挨拶(約1分)
このたびは、このような賞をいただき、本当にありがとうございます。営業2課の△△です。
表彰していただくのは、小学校の書き初めで銅賞をいただいて以来です。
あのときと同じくらい、手が震えています。
今回の受賞は、私一人の力ではありません。
この1年、課のみんなで、お客さまへの提案を何度も練り直しました。
課のホワイトボードは、この半年、白い面が見えた日がありません。
□□課長は、提案書を見ていただくたびに、「お客さまの顔を思い浮かべて」と言ってくださいました。
その一言で、提案書の言葉が、少しずつ変わっていきました。
この賞は、課の全員でいただいたものだと思っています。
来年も、ホワイトボードが文字でいっぱいになるくらい、みんなで知恵を出し合います。
ありがとうございました。
冒頭の「書き初めの銅賞」が自虐、中盤の「ホワイトボード」が具体的な描写です。描写のすぐあとに課長へのお礼を続けているので、笑いが自慢話に聞こえません。
PTA会長の就任挨拶(約1分)
皆さん、こんにちは。今年度、PTA会長を務めることになりました、5年生の保護者の△△です。
役員決めのくじ引きで、人生で初めて当たりを引きました。会長の当たりでした。
正直に申し上げますと、PTAの仕事は、これまで運動会のテント運びくらいしかしてきませんでした。
しかも去年は、テントの脚を1本、体育倉庫ではなく、自分の車に積んでしまいました。気づいたのは、家の駐車場でした。
そんな私ですが、前の会長の〇〇さんから、引き継ぎのノートを3冊いただきました。
1ページ目には、「困ったら、まず人に聞く」と書いてありました。
この1年は、その言葉どおり、皆さんにたくさん聞きながら進めてまいります。
せっかく引いた当たりですので、楽しみながら務めます。どうぞよろしくお願いいたします。
冒頭の「会長の当たり」は、「当たり=うれしいもの」という期待を外すギャップです。中盤の「テントの脚」は、自虐を具体的な描写で言っています。町内会や自治会の役員になったときも、同じ形で使えます。
笑いを生かす話し方と、スベったときの一言
同じ言葉でも、言い方で笑いの大きさは変わります。話し方は、次の3つだけ守れば十分です。
- 笑わせる一言の前に、半拍だまる
- 自分から先に笑わない
- 笑いが起きたら、静かになるまで待ってから次へ進む
笑いが起きなかった(スベった)ときは、場に合わせて対応を変えます。結婚式や式典、お礼の挨拶のような改まった場では、何も言わずに次の文へ進むのがいちばんです。送別会や忘年会のようなくだけた場なら、軽い一言で受けてから進むと、場がなごむことがあります。
「……ここは、笑っていただく予定の場所でした。先に進みます」
「今の話は、あとで思い出して、こっそり笑ってください」
「皆さんの真剣なお顔を見て、ここからは、まじめにいきます」
一言を言ったら、すぐに次の文へ進みます。ほかの立て直し方は「滑ったときの返し方」にまとめています。
入れてはいけない笑い
スピーチの会場には、年齢も立場もちがう人が集まっています。次のような笑いは、どんなにウケそうでも入れません。
| 入れない笑い | 理由 |
|---|---|
| 見た目・年齢・性別・出身をからかう話 | 本人だけでなく、同じ特徴の人も傷つける |
| 本人が隠したい失敗や、昔の恋愛の話 | 暴露になり、本人や家族が気まずくなる |
| 下ネタや、お酒の失敗の話 | 子どもや年配の人も聞いている |
| 一部の人しか知らない内輪の話 | 多くの人が置いてきぼりになる |
| 会社やほかの部署の悪口に聞こえる話 | 冗談でも、立場のある人が笑えない |
迷ったときは、「本人と、本人の家族が笑って聞けるか」を基準にしましょう。気になる話は、前もって本人に「この話をしてもいい?」と聞いておくと安心です。
よくある質問
笑いを入れるのが苦手です。入れなくてもいいですか?
入れなくても、スピーチは十分に成り立ちます。少しだけ入れたいなら、型3の具体的な描写がおすすめです。冗談を考えるのではなく、本当にあった場面をくわしく話すだけなので、まじめな人でも自然に使えます。
目上の人がたくさんいる場でも、笑いを入れていいですか?
自分のことを笑いにする自虐なら、目上の人の前でも使いやすいです。目上の人をネタにした冗談は、本人が笑っていても周りが気をつかうので避けましょう。
笑いどころで、自分が先に笑ってしまいそうです。
練習で何度も声に出し、言い慣れておくのがいちばんです。本番では、笑いどころの一文だけ原稿に目を落とし、淡々と読むと、つられ笑いをおさえやすくなります。淡々と言うほうが、聞く人も笑いやすくなります。
まとめ
- スピーチの笑いは、本題を聞いてもらうための味付けにとどめる
- 笑いは冒頭(名乗りの直後)と中盤(エピソードの中)に置き、結びには入れない
- 型は「自虐」「ギャップ」「具体的な描写」の3つで、笑いのあとは伝えたいことを続ける
- 改まった場でスベったら、何も言わずに次の文へ進む
- 見た目・年齢・暴露・内輪の話は、どんなにウケそうでも入れない






