宴会芸の定番は、「かくし芸」「なりきり芸」「体を使う芸」「ゲーム・お座敷遊び」の4つに分かれます。皿回しや手品のようなかくし芸は、今でもそのまま楽しめます。脱ぐ・飲ませる・誰かをいじる要素がある芸も、その部分を抜いて形を変えれば、今の職場で使えるものが多くあります。
この記事では、定番の宴会芸20種類を、今の職場で「そのまま使える」「直せば使える」「やめたほうがいい」に分けて紹介します。昔ながらの芸を今どきに直すコツと、直し方の例も3つまとめました。
宴会芸の定番一覧
昔から宴会で親しまれてきた芸を、4つの種類に分けました。「今の職場では」の列は、一般的な目安です。会社の雰囲気や参加する人に合わせて判断してください。
かくし芸(練習して見せる芸)
かくし芸とは、ふだんは見せない特技を、宴会の場で披露する芸のことです。人をいじる要素がないので、ほとんどがそのまま使えます。
| 芸 | どんな芸か | 今の職場では | 今どきに見せるなら |
|---|---|---|---|
| 皿回し | 棒の先で皿を回し続ける | そのまま使える | 割れない練習用の皿と棒を使う |
| 南京玉すだれ | 竹のすだれを伸ばして、橋や釣りざおの形を作る | そのまま使える | 形を作るたびに、職場の物に見立てる一言を足す |
| 手品 | トランプや輪ゴムで不思議を見せる | そのまま使える | 刃物や火を使うものは避ける |
| けん玉・こま回し | 技を決めて見せる | そのまま使える | 技の前に「成功したら拍手を」と会場を巻きこむ |
| 腹話術 | 人形と会話をして見せる | そのまま使える | 人形に、人の悪口を言わせない |
| 詩吟・民謡 | 声を張って吟じたり歌ったりする | そのまま使える | 短めにして、意味を一言そえる |
なりきり芸(まねて笑わせる芸)
なりきり芸は、まねる相手や題材しだいで、人を傷つける笑いになりがちです。誰をまねるか、何を笑いにするかを直せば、今でも十分に盛り上がります。
| 芸 | どんな芸か | 今の職場では | 今どきに直すなら |
|---|---|---|---|
| ものまね | 有名人や身近な人のまねをする | 直せば使える | 同僚や上司ではなく、動物・物・職業のまねにする |
| 寸劇(時代劇・昔話) | 決まった筋の話を、役に分かれて演じる | そのまま使える | 職場のあるあるを話に混ぜる |
| 女装・男装 | 別の性別の格好をして、そのおかしさで笑いを取る | やめたほうがいい | 性別を笑いの種にせず、職業や季節の仮装に変える |
| 替え歌 | 知っている歌の歌詞を、職場の話に変える | 直せば使える | 人をからかう歌詞にしない。動画で公開しない |
職業や季節の仮装は「忘年会の仮装のアイデア」に、歌を使わずにリズムで笑わせる方法は「リズムネタの作り方」にまとめています。
体を使う芸
体を使う芸は、脱ぐ芸や危ない芸と、今でも楽しめる踊りに、はっきり分かれます。
| 芸 | どんな芸か | 今の職場では | 今どきに直すなら |
|---|---|---|---|
| 腹芸・腹踊り | お腹に顔を描き、お腹を動かして表情を見せる | 直せば使える | 服の上から、顔を描いた画用紙を当てる(下で紹介) |
| 裸踊り | 服を脱いで踊る | やめたほうがいい | 衣装を着た踊りに変える |
| どじょうすくい | 民謡に合わせ、ざるでどじょうをすくうしぐさで踊る | そのまま使える | 衣装は手ぬぐいとざるで十分。ふざけすぎず、楽しんで踊る |
| 人間ピラミッド・組体操 | 何人かで体を組んで、形を作る | やめたほうがいい | 立ったまま並んで、体で文字を作る形にする |
ゲーム・お座敷遊び
宴会のゲームやお座敷遊びは、罰としてお酒を飲ませたり、服を脱がせたりする決まりがついていることがあります。罰の部分を外すと、遊びそのものは楽しく続けられます。
| 芸 | どんな遊びか | 今の職場では | 今どきに直すなら |
|---|---|---|---|
| 野球拳 | じゃんけんで負けた人が、服を脱いでいく | 直せば使える | 脱ぐのではなく、小物を「着ていく」(下で紹介) |
| 王様ゲーム | くじで王様になった人が、ほかの人に命令する | 直せば使える | 命令ではなく質問を引く形にし、答えたくなければパスできる |
| 二人羽織 | 1枚の羽織に2人で入り、後ろの人の手で食べさせる | 直せば使える | 食べ物を使わず、名刺交換などにする(下で紹介) |
| 一気飲み・飲み比べ | お酒を一度に飲み干したり、量を競ったりする | やめたほうがいい | お酒を使わない遊びに変える |
| 負けたら飲むお座敷遊び | 勝負に負けた人が、お酒を飲む | 直せば使える | 勝負はそのままに、「飲む」罰をなくす |
| 早食い・大食い | 食べる速さや量を競う | やめたほうがいい | のどに詰まらせる危険があるので、行わない |
今の職場で避けたい5つの要素
一覧で「やめたほうがいい」「直せば使える」とした芸には、次の5つの要素のどれかが入っています。新しく芸を考えるときも、この5つが入っていないかを確かめましょう。
- 脱ぐ:見たくない人がいるうえ、セクハラになることがある。写真や動画に残る心配もある
- 飲ませる:命にかかわる危険があり、断りにくい人に無理をさせてしまう
- いじる:見た目・年齢・性別・出身・失敗をからかうと、言われた人も周りも笑えない
- 断れない:「新人だから」「若手の仕事だから」と押しつける。命令や罰に、いやでも従わせる
- 危ない:火・刃物・割れ物を使う、体を組む、熱い物や食べ物を急いで口に入れる
「昔はみんなやっていた」は理由にならない
昔は当たり前だった芸でも、今は見ている人の受け取り方が変わっています。とくに脱ぐ・飲ませる芸は、頼んだ側の責任を問われることもあります。強く求められて困っているときは、「新入社員の出し物はパワハラ?」の考え方と相談先を参考にしてください。
昔ながらの芸を今どきに直す4つのコツ
昔ながらの芸は、骨組みを残して、困る部分だけを入れかえると、今どきの芸に生まれ変わります。
「脱ぐ」を「着る」「描く」に変える
脱ぐ芸の笑いは、「だんだん姿が変わっていく」おかしさにあります。この骨組みは、脱ぐかわりに「着ていく」「紙に描いて当てる」でも作れます。服を着たままなので、見ている人も安心して笑えます。
「飲ませる」を「当てる」「選ぶ」に変える
飲ませる遊びの楽しさは、勝ち負けのどきどき感です。罰でお酒を飲むかわりに、勝った人が景品を選べる、負けた人が次のお題を決める、といった決まりにすると、盛り上がりはそのまま残ります。
「人をまねる」を「物・職業・動物をまねる」に変える
ものまねの面白さは、特徴をつかんで大げさに見せるところにあります。題材を、その場にいる人から、自動ドアやペンギン、寿司職人などに変えれば、誰も傷つけずに同じ笑いが取れます。
「1人にやらせる」を「やりたい人と全員で」に変える
誰かに押しつけた芸は、どんなに面白くても、見ている人が心から笑えません。出る人は手を挙げた人だけにして、会場の全員が手拍子や掛け声で参加できる形にすると、場が温かくなります。
直し方の例3つ
ここからは、一覧で「直せば使える」とした芸の中から、3つを今どきの形に直した例を紹介します。
例1:腹芸を「画用紙の腹芸」に
昔の腹芸は、お腹に顔を描いて見せる芸です。今どきの形では、画用紙に顔を描き、服の上からお腹に当てます。画用紙を半分に折って口にすると、腹話術のように「お腹の顔」と会話ができます。
台本画用紙の腹芸(約30秒)
(顔を描いた画用紙をお腹に当てて、前に出る)
自分今年1年、よく働きました。
お腹の顔(画用紙の口をぱくぱく動かし、低い声で)うむ。よくがんばった。
自分……お腹にほめられました。
お腹の顔ただし、お昼ごはんを抜いた日が多かった。
自分……すみません。来年は、お腹の声をちゃんと聞きます。
(画用紙の顔と一緒に、深くおじぎをする)
- 時間
- 30秒
- 人数
- 1人
- 準備物
- 画用紙1枚、太いペン
- 難しさ
- ★
例2:野球拳を「着ていくじゃんけん」に
宴会で知られる野球拳は、じゃんけんで負けた人が服を脱いでいく遊びです。今どきの形では、負けた人が、用意した小物を1つずつ「着ていき」ます。出る人は全員で司会とじゃんけんをし、負けた人が小物を1つ着て、誰か1人が4つすべてを着たら終わりです。帽子、マフラー、手袋、はんてん、と重ねるうちに、だんだん着ぶくれていく姿に笑いが起きます。
最後に、いちばん着こんだ人に「あったかいで賞」として景品を渡すと、負けた人がいちばん得をする、楽しい終わり方になります。出る人は希望者だけにし、着る物は、帽子やマフラーのように、着ても恥ずかしくない物を選びましょう。
- 時間
- 5分
- 人数
- 希望者2〜4人と司会1人
- 準備物
- 帽子・マフラー・手袋・はんてんなどの小物を、出る人の数×4つ
- 難しさ
- ★
例3:二人羽織を「二人羽織の名刺交換」に
昔の二人羽織は、後ろの人の手で、前の人にうどんなどを食べさせる芸です。熱い物や汁物は、やけどや服の汚れが心配です。今どきの形では食べ物を使わず、名刺交換をします。
前の人がていねいに挨拶し、後ろの人の手が名刺を出します。名刺を逆さに出す、相手の名刺を受け取りそこねる、受け取った名刺で自分の顔をあおぐ、とずれていくところが笑いどころです。最後は前の人が「……今後とも、よろしくお願いいたします」と深く頭を下げ、後ろの人の手がなぜか拍手をして終わります。
- 時間
- 1〜2分
- 人数
- 3人(二人羽織の2人と、名刺を受け取る相手)
- 準備物
- 大きめの上着1枚、名刺数枚
- 難しさ
- ★★
二人羽織で、フリップをめくりながら来年の目標を発表する形は、「忘年会の出し物を2人でやるなら」で紹介しています。
定番の芸をするときの確認
昔ながらの芸を今どきに直したら、本番の前に、幹事と一緒に次のことを確かめておきましょう。
前もって確かめること
- 出る人が、自分からやりたいと言っているか
- 中身に、脱ぐ・飲ませる・いじる要素が入っていないか
- 会場で使ってよい物か(火、水、紙吹雪、大きな音など)
- 写真や動画の決まり(出る人の了解を取る、SNSに上げない)を共有しているか
- 衣装や道具の費用を、出る人だけに払わせていないか
よくある質問
上司に「昔は裸踊りくらいやったものだ」と言われたら?
笑顔で「今日は、こちらでいきます」と答え、服を着たままできる芸を出してしまうのがいちばんです。腹芸を画用紙の腹芸に直すように、昔の芸の「今どき版」を見せると、上司も一緒に楽しんでくれることが多いものです。それでも脱ぐ芸を求められたら、はっきり断ってかまいません。
どじょうすくいのような伝統の踊りは、今やっても大丈夫ですか?
大丈夫です。地域で大切に受けつがれてきた踊りなので、ふざけすぎず、楽しんで踊るのがいちばんの礼儀です。踊りの手順を覚えるのが大変なら、最初の1分だけを覚えて、残りは会場の手拍子にまかせる形でも十分に盛り上がります。
宴会芸そのものが、時代に合わない気がします。
そう感じる人も増えています。芸をやめて、全員で遊ぶゲームや表彰に切りかえる職場もあります。余興の代わりになる企画と、変更を提案するときの文例は、「忘年会の余興は時代遅れ?」にまとめています。
まとめ
- 宴会芸の定番は、かくし芸・なりきり芸・体を使う芸・ゲームとお座敷遊びの4つ
- 皿回しや手品などのかくし芸は、今でもそのまま使える
- 脱ぐ・飲ませる・いじる・押しつける・危ない、の5つの要素は抜く
- 骨組みを残して「脱ぐ→着る」「飲ませる→選ぶ」と入れかえると、今どきの芸になる
- 出る人は希望者だけにし、幹事と中身を前もって確かめる






