忘年会の余興そのものが、時代遅れなわけではありません。合わなくなったのは、新人に押しつける、長い、一部の人しか笑えない、という昔ながらの形です。今どきウケるのは、出る人が自分で選べて、短く、会場の全員が笑える出し物です。
この記事では、今どきウケる出し物の3つの条件と、条件を満たす出し物8つを紹介します。余興をやめたい・変えたいときに、上司や参加する人へ伝える文例もまとめました。
目次目次を閉じる目次を開く
余興が「時代遅れ」と言われる理由
昔ながらの余興には、今の職場では負担になりやすい点があります。どこを変えればよいかを、表にまとめました。
| 昔ながらの形 | 負担になりやすい点 | 今どきの変え方 |
|---|---|---|
| 新人や若手が毎年やる決まり | 断りにくく、負担が一部の人に集まる | 出たい人だけのエントリー制にする |
| 脱ぐ・飲む・体を張る芸 | ハラスメントや、けがの心配がある | 言葉やクイズで笑いを取る |
| 仕事のあとに何日も練習する | 勤務時間の外の負担が大きい | 練習なしか、1回で済む出し物にする |
| 衣装や小道具を自腹でそろえる | お金の負担が出る人がいる | 会の予算から出すか、衣装なしにする |
| 内輪の話や、昔の出来事のネタ | 中途入社やパートの人が置いていかれる | 全員が知っている今年の話題にする |
| 誰か1人をいじって笑う | 言われた人も、見ている人も気まずい | 人ではなく、出来事で笑いを取る |
問題は「余興」ではなく「やらされること」
見る人も出る人も楽しめているなら、余興を続けるのは悪いことではありません。変えるべきなのは、出る人が自分で選べない形です。
一方で、余興には、新人の顔と名前を覚えてもらえるといった良さもあります。やめるときは、その良さを別の形で残すと、反対されにくくなります。
今どきウケる出し物の3つの条件
時代遅れと言われない出し物には、共通する条件が3つあります。今の余興を続けるか迷うときも、この3つに当てはめてみてください。
1. 強制しない:出る人が自分で選ぶ
笑いは、見ている人が安心しているときに起きやすくなります。前に出た人が「本当はやりたくなさそう」に見えると、会場は笑うより先に気をつかってしまいます。
出る人は、手を挙げた人だけにします。出たくない人には、問題を読む係や景品を渡す係など、前に出ない役を用意しましょう。
2. 短い:1組3分まで
お酒の席では、人の話を集中して聞ける時間が短くなります。10分の寸劇よりも、3分の中に笑いどころが3つある出し物のほうが、最後まで楽しんでもらえます。
中身は、時間ではなく「笑いの数」で決めると作りやすくなります。10秒の一発芸(短く見せる芸)を何人かでつなぐ、フリップ(言葉を書いた大きな紙)を5枚めくって終わる、といった形です。短いネタは練習も少なく済み、出る人の負担も軽くなります。
3. 全員が笑える:内輪といじりを使わない
一部の人しか知らない昔話や、誰か1人をからかう笑いは、知らない人とからかわれた人を置いていきます。今どきの忘年会でウケやすいのは、その場の全員が「あるある」とうなずける今年の出来事です。
コツは、笑いの種を「人」から「出来事」に移すことです。同じ話題でも、言い方を変えるだけで、誰も傷つかない笑いになります。
〇〇さんは今年、電話の転送に失敗して、お客さまの電話を2回切ってしまいました。来年は気をつけてください。
今年、電話を転送しようとして、うっかり切ってしまったことがある人、手を挙げてください。
……ありがとうございます。思ったより多いですね。
電話機のボタンの多さに、部署の全員で負けた1年でした。
直したあとの言い方では、誰の名前も出ていません。手を挙げた人どうしが顔を見合わせるので、会場のあちこちで笑いが起きます。
今の余興を続けたいときも、3つの条件のどれに引っかかるかを見て、そこだけを直せば十分です。脱ぐ・飲ませる部分を抜いて、昔ながらの宴会芸を今どきに直す例は「宴会芸の定番一覧」で紹介しています。
今どきウケる出し物8つ
どれも3つの条件を満たす出し物です。難しさは★の数で表し、★1つがいちばん簡単です。
1. 全員参加のチーム対抗ゲーム
テーブルごとのチームで、クイズやゲームの点数を競います。全員が選手なので、誰か1人が前で恥ずかしい思いをすることがありません。
笑いを増やすなら、答えのあとに司会が一言そえられる問題を混ぜます。たとえば「共有フォルダにいちばん多いファイル名は?」の答えは「最新版」。続けて「2位は『最新版(2)』でした」と言うと、全員が思い当たって笑えます。遊び方は「忘年会で盛り上がるゲーム15選」にまとめています。
- 時間
- 15〜20分
- 人数
- 全員(司会1人)
- 準備物
- お題や問題を書いた紙、点数を書くホワイトボード
- 難しさ
- ★
2. ほめる社内表彰
今年がんばった人や、周りを助けてくれた人に、少し面白い名前の賞を贈ります。前に出るのは、ほめられる人だけなので、負担になりにくい出し物です。
笑いどころは、賞の名前です。ほめる中身はそのままに、名前だけを大げさにします。冬のあいだ毎朝、加湿器に水を足してくれた人に「加湿器の給水係・永年勤続賞」を贈る、といった形です。賞の名前は「面白い社内表彰の賞の名前一覧」から選べます。
- 時間
- 10〜15分
- 人数
- 司会1人と、賞状を渡す人1人
- 準備物
- 賞状、小さな景品
- 難しさ
- ★
3. 1年の振り返りムービー
行事や仕事中の写真をつないで、今年の出来事を3〜5分の動画にします。作る人は前に出なくてよく、顔を出したくない人は写さないように選べます。
笑いは、写真に付ける短い字幕で取れます。春の引っ越しで積み上がった段ボールの写真に「この中のどれかに、私たちの机があります」と付けるように、出来事を少し大げさに言う一言が向いています。
- 時間
- 3〜5分
- 人数
- 作る人1〜2人
- 準備物
- 写真、スマホかパソコン、会場で動画を流す機材
- 難しさ
- ★★
4. 「今年のありがとう」カード
受付で小さなカードを配り、今年お世話になった人へのお礼を一言書いてもらいます。会の後半に、司会が書いた人の名前を伏せて何枚か読み上げ、最後に宛名の人へ渡します。読み上げるのは、書いた人が「読んでよい」に丸をつけたカードだけにしましょう。
〇〇さんへ。6月の忙しい時期に、何も言わずに資料の確認を手伝ってくれてありがとうございました。おかげで、あの日は定時に帰れました。
まじめなお礼の最後に、ちょっとした本音が入ったカードほど笑いが起きます。司会は、最後の一文の前で少し間をあけて読むと、笑いが取りやすくなります。
- 時間
- 10分(読み上げ)
- 人数
- 全員(司会1人)
- 準備物
- 名刺くらいの大きさのカード、ペン、集める箱
- 難しさ
- ★
5. 部署の「今年の年表」づくり
大きな紙に1月から12月までの線を引いて壁に貼り、歓談中に付箋で今年の出来事を書き足してもらいます。締めの前に、司会がいくつかを読み上げると、自然に1年の振り返りになります。
読み上げるときは、付箋の出来事に司会が一言足すと笑いになります。その場で思いつく一言で十分です。
付箋「9月 会議の資料が紙からタブレットになった」
司会:9月、資料がタブレットになりました。……なのに、印刷して持ってくる人が、まだ3人います。
付箋「12月 忘年会の幹事が決まった」
司会:12月、幹事が決まりました。決まった本人が、いちばん驚いていました。……私です。
- 時間
- 歓談中に書いてもらい、読み上げは5分
- 人数
- 全員
- 準備物
- 模造紙、付箋、ペン、壁に貼るテープ(貼ってよいか、お店に確かめる)
- 難しさ
- ★
6. 番号札の抽選会
受付で番号札を配っておき、会の終盤にくじで当たりを決めます。運だけで決まるので、景品が誰に当たっても角が立ちません。
笑いを入れるなら、目玉の景品の前に、ネタ景品(笑いを取るための景品)を1〜2個はさみます。「高級食材」と書いた封筒から、もやし1袋の引換券が出てくる、のように期待をずらすのがコツです。目玉の景品を最後に残すと、締めの直前まで盛り上がります。
- 時間
- 10〜15分
- 人数
- 司会1人、くじを引く人1人
- 準備物
- 番号札、くじ、景品
- 難しさ
- ★
7. 出たい人だけのミニステージ
余興を楽しみにしている人がいるなら、「出たい人だけ」のエントリー制で残します。「1組3分まで」「脱ぐ・飲む出し物はなし」などの決まりを先に伝えておくと、見る人も安心して楽しめます。
手を挙げる人を増やすには、案内に1分でできるネタの例をつけておくと効きます。「これくらいでいいのか」と分かるからです。次は、全員が経験した日程調整の苦労を話す漫談(1人で話して笑わせる芸)の例です。
台本日程が決まらない(約1分)
(マイクの前に立って一礼)
話す人今日の忘年会、日程が決まるまでに3週間かかりました。
話す人候補日を5つ出したら、ほぼ全員の答えが「いつでも大丈夫です」。
話す人……いちばん決まらない答えです。
話す人じゃあ一番早い日に、となったら「その日だけは難しいです」。
話す人いつでも大丈夫じゃなかったんです。
話す人次の日にしたら、別の人が「その日だけは」。その次の日も「その日だけは」。
話す人5つの候補が全部消えて、6つ目に出てきたのが、今日です。
話す人つまり今日は、全員の「その日だけは」をくぐり抜けた、奇跡の1日です。
話す人幹事さん、本当にありがとうございました。
(幹事のほうを手で示し、拍手をうながして一礼)
- 時間
- 1組3分まで(2〜3組まで)
- 人数
- 出たい人だけ
- 準備物
- 組によって違う
- 難しさ
- ★〜★★★
8. 席替えタイム
会の途中で、くじを引いて席を入れかえます。ふだん話さない部署の人と話すきっかけになり、余興がなくても会の空気が変わります。
くじの裏に小さなお題を書いておくと、移った先の会話が笑いから始まります。お題は「隣の人の、今年いちばん小さな事件を聞いてくる」のようなものです。あとで司会が2〜3人に発表してもらうと、もう一度笑いが起きます。
- 時間
- 席を移るのに5分、発表に3分
- 人数
- 全員
- 準備物
- 席の番号とお題を書いたくじ
- 難しさ
- ★
8つ全部を入れる必要はなく、2〜3個を組み合わせれば十分です。笑いの山が前半と後半に1つずつあると、会が間延びしません。
やめる・変える・続けるの決め方
余興をどうするかは、参加する人の声を聞いてから決めると、あとで不満が出にくくなります。次の順番で進めましょう。
- 上司に「今年の忘年会の形を見直したい」と相談し、方向を確かめる
- 参加する人に、短いアンケートで希望を聞く
- 結果をもとに「やめる」「出たい人だけで続ける」「全員参加の出し物に変える」から選ぶ
- 決まった形を、案内を出すときに全員へ伝える
質問1 今年の忘年会で、楽しみたいことは何ですか(いくつでも)
ゲーム/クイズ/表彰/抽選会/ゆっくり話す/出し物を見る
質問2 前に出る出し物に、出てみたいですか
出たい/裏方なら手伝える/出たくない
質問3 今年の職場で起きた「小さな事件」があれば教えてください(名前を出さずに、会で紹介することがあります)
質問4 忘年会への希望があれば、自由に書いてください
アンケートは、名前を書かずに答えられる形にすると、本音が集まりやすくなります。「出たくない」が多ければ、上司にも説明しやすくなります。
質問3の答えは、年表やクイズの笑いの材料にそのまま使えます。日程や会場など、幹事の準備全体の流れは「忘年会の幹事がやること」にまとめています。
幹事が提案するときの文例
余興を変える提案は、「やめたい」より「こう変えたい」と、代わりの案をセットで伝えると通りやすくなります。理由は誰かを責める形にせず、「全員で楽しめるように」という目的で話しましょう。
〇〇部長、お疲れさまです。忘年会の幹事の△△です。
今年の忘年会の内容について、ご相談させてください。
例年は新人が余興をしていますが、今年は全員が参加できる形にしてみたいと考えています。
たとえば、チーム対抗のクイズと、今年がんばった人の表彰を予定しています。
余興をしたい人がいれば、出たい人だけのステージも残すつもりです。
今年はこの形で試してみて、来年また考える、という進め方でよろしいでしょうか。
「今年は試しに」と伝えると、見直しに慎重な人も受け入れやすくなります。参加する人への案内には軽い笑いを1つ入れておくと、「今年は楽しそう」と受け取ってもらえます。
今年の忘年会は、出し物の担当を決めません。新人の皆さん、練習の予定は入れなくて大丈夫です。
そのかわり、全員参加のクイズと表彰を用意しています。答えを考えるのは、部長も課長も同じです。
前に出て何かをしたい方は、〇日までに幹事にお知らせください(1組3分まで)。
変えた年は、開会のひと言で笑いに変える
余興をやめた年や、形を変えた年は、そのこと自体を開会のつかみ(最初に笑いを取る一言)にできます。変更を笑いとして伝えると、会場の空気が一気にやわらぎます。
台本余興を変えた年の開会(約40秒)
(乾杯の前、幹事がマイクを持って前に出る)
幹事皆さん、1年間お疲れさまでした。幹事の△△です。
幹事はじめにお知らせです。今年の忘年会は、新人による余興はありません。
(新人の席から拍手が起きる)
幹事……今、いちばん大きな拍手が、新人の席から聞こえました。
幹事そのかわり今年は、ここにいる全員に、クイズの解答者になっていただきます。
幹事部長も課長も、例外はありません。
幹事それでは、乾杯の音頭を〇〇部長にお願いします。
拍手が起きなかったときは、「……新人の皆さん、喜んでいいんですよ」と続ければ、それも笑いになります。
よくある質問
余興を楽しみにしている人もいます。
出たい人だけのミニステージを残し、楽しみにしている人に「ぜひ出てみませんか」と声をかけましょう。出る人が自分で決めた余興なら、見る人も気がねなく笑えます。
上司が「余興は新人の仕事だ」と言って、聞いてくれません。
新人の負担を、準備にかかる時間などで具体的に伝え、代わりの案を一緒に出します。断れない形で出し物を求められて困っている人がいるなら、考え方と相談先を「新入社員の出し物はパワハラ?」にまとめています。
余興がなくなると、新人を知ってもらう場もなくなりませんか?
乾杯のあとに、新人に1人15秒ほどの自己紹介をしてもらう時間を作れば十分です。話すことを「名前・部署・入社していちばん驚いたこと」のように決めておくと、人前が苦手な人でも話しやすく、小さな笑いも起きます。
まとめ
- 時代遅れなのは余興ではなく、押しつける・長い・一部の人しか笑えない形
- 今どきウケる出し物の条件は、強制しない・1組3分まで・全員が笑える
- 笑いの種は「人」ではなく、今年の出来事や職場のあるあるにする
- 代わりの出し物は、ゲーム・表彰・年表・抽選会など、全員が少しずつ関われるもの
- 提案は「やめたい」より「こう変えたい」と、代わりの案をセットで伝える






