新入社員に出し物を頼むこと自体が、すぐにパワハラになるとは限りません。ただ、断りにくい立場の新人に無理強いをしたり、断った人を不利に扱ったりすると、ハラスメントにあたる場合があります。迷ったときは1人で抱えずに、社内の相談窓口や、国の「総合労働相談コーナー」に相談できます。
この記事では、ハラスメントになりうる場面の一般的な考え方と、断り方の例文、相談先を紹介します。実際にあたるかどうかは、言動の中身や状況から個別に判断されるので、ここでは「考えるときの目安」として読んでください。
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職場のパワハラは「3つの要素」で考える
法律にもとづく国の指針では、職場のパワーハラスメントを、次の3つをすべて満たすものとしています。
- 立場の強さなど、断りにくい関係を背景にした言動であること
- 仕事に必要で、ふさわしい範囲を超えていること
- それによって、働く環境が害されること
1の「関係」は、上司と部下だけではありません。先輩や同僚が集団で迫る場合なども、含まれることがあります。反対に、仕事に必要な指示や指導は、厳しく感じても、それだけではパワハラにあたりません。
忘年会や歓迎会も「職場」にあたることがある
宴会は、勤務時間の外に開かれることが多いものです。それでも国の資料では、実質的に仕事の延長と考えられる場は「職場」にあたるとされています。仕事との関係、参加する人、参加が強制か自由かなどを見て、場面ごとに判断されます。会社の行事として開かれ、上司も出る会での出来事なら、職場の問題として相談してかまいません。
ハラスメントになりうる出し物の場面
国の指針では、パワハラの代表的な形を6つに分けています。身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害です。出し物にまつわる場面に当てはめると、次のようなものが問題になりうると考えられます。
| 場面の例 | 近いと考えられる形 |
|---|---|
| 「新人なんだからやって当然」と、断っても何度も迫られる | 過大な要求、精神的な攻撃 |
| 「やらないなら評価に響くぞ」と言われる | 精神的な攻撃 |
| 出し物の出来を、大勢の前で人格まで否定される | 精神的な攻撃 |
| 練習のために、仕事のあとや休日に何度も集められる | 過大な要求 |
| 断った人だけ、会の連絡や仕事の話から外される | 人間関係からの切り離し |
| 恋愛や家族のことを、ネタとして話すよう求められる | 個の侵害 |
| 罰ゲームとして、たたかれたり押されたりする | 身体的な攻撃 |
表のどれかに当てはまっても、それだけでパワハラと決まるわけではありません。ただ、「おかしいな」と感じたこと自体は、相談してよい理由になります。
パワハラとは別に、問題になりやすいもの
- 服を脱ぐ、体にふれる、性的な冗談を言わせるといった出し物は、セクハラにあたる場合があります。
- お酒の一気飲みをさせることは、急性アルコール中毒など、命にかかわる危険があります。
- 衣装代などの費用を新人だけに払わせることも、トラブルのもとになります。
問題になりにくい頼み方と、注意したい頼み方
同じ「出し物をお願いする」でも、頼み方によって受け取られ方は大きく変わります。違いを並べると、次のようになります。
| 問題になりにくい頼み方の例 | 注意したい頼み方の例 |
|---|---|
| 「やってみない? 無理なら断って大丈夫」と聞く | 「新人は全員やる決まりだから」と押しつける |
| 何をするかを、本人たちと相談して決める | 脱ぐ・飲む・からかう中身を、一方的に決める |
| 準備は短く、出たい人だけで集まる | 仕事のあとや休日の練習を、全員に求める |
| 費用は会の予算から出すか、全員で分ける | 衣装代などを、新人だけに払わせる |
| 断っても、態度が変わらない | 断った人を責めたり、無視したりする |
左のような頼み方でも、本人がつらいと感じているなら、遠慮なく断ってかまいません。
強要されたときの断り方
強く迫られると、その場で「分かりました」と言ってしまいがちです。次の順番を覚えておくと、落ち着いて対応できます。
- その場で返事をせず、「少し考えさせてください」と時間をもらう
- 全部を断るのか、中身だけを断るのかを決めて伝える
- 断った内容と、相手の反応をメモしておく
- それでも迫られたら、別の上司や相談窓口に話す
声をかけていただき、ありがとうございます。
同期と一緒に何かをすることはできますが、服を脱ぐ芸はできません。
ほかの形でしたら、同期と相談して考えます。
出し物は、仕事の評価に関わるものなのでしょうか。
もしそうでしたら、どう関わるのか、〇〇課長にも確かめさせてください。
私としては、出し物は辞退して、会の準備でお手伝いしたいと考えています。
練習の件で、ご相談です。
平日の夜の練習が週に3回続いていて、仕事と体調の両立が難しくなっています。
練習は週に1回、30分までにしていただけないでしょうか。
断るときは、相手を責める言葉を入れず、「できないこと」と「できること」だけを伝えます。言った言わないにならないよう、大事なやりとりは、チャットやメールなど文字で残る形でも伝えておきましょう。
相談する前に残しておくメモ
相談するときは、何があったかを具体的に伝えられると、話が早く進みます。記憶が新しいうちに、次のことをメモに残しておきましょう。
残しておきたい記録
- いつ、どこで、誰に、何を言われたか(言われた言葉は、できるだけそのまま)
- そのとき、近くにいた人
- 自分がどう答えたか、そのあと相手がどうしたか
- チャットやメールのやりとり(画面を保存しておく)
- 眠れない、食欲がないなど、体や気持ちの変化
メモは、スマホのメモ帳でも、手帳でもかまいません。日付と時刻を入れて、その日のうちに書くのがコツです。
相談先(社内と社外)
まずは、信頼できる上司や先輩、人事の担当者に話してみましょう。会社にハラスメントの相談窓口があれば、そこが正式な相談先です。
会社には、相談窓口を設けることや、相談した人のプライバシーを守ることなどが、法律で求められています。相談したことを理由に、解雇などの不利益な扱いをすることも禁じられています。
社内では話しにくいときや、相談しても変わらないときは、国の窓口を使えます。各都道府県の労働局や労働基準監督署などにある「総合労働相談コーナー」です。職場のいじめや嫌がらせ、パワハラを含め、働くうえでのさまざまな相談を受け付けています。相談は無料で、電話でも相談できます。
| 相談先 | こんなときに | 特徴 |
|---|---|---|
| 信頼できる上司・先輩 | まず話を聞いてほしいとき | 職場の事情を分かってもらいやすい |
| 人事・社内の相談窓口 | 会社として対応してほしいとき | 会社には、対応することやプライバシーを守ることが求められている |
| 総合労働相談コーナー | 社内で話しにくい、相談しても変わらないとき | 国の窓口。無料で、電話でも相談できる |
| 産業医・医療機関 | 眠れないなど、体や心に不調が出たとき | 体調の面から相談できる |
総合労働相談コーナーの場所や電話番号は、厚生労働省の「総合労働相談コーナーのご案内」で調べられます。ハラスメントの考え方や相談先の一覧は、厚生労働省のサイト「あかるい職場応援団」にまとまっています。気持ちのつらさが続くときは、働く人の心の健康のためのサイト「こころの耳」で、相談できる窓口を探せます。
頼む側(先輩・幹事)が気をつけること
出し物は、頼み方しだいで、新人にとって楽しい思い出にも、つらい記憶にもなります。頼む側は、次の3つを守りましょう。
- 「出たい人だけ」と最初に伝え、断る道を残しておく
- 中身は本人たちと決め、脱ぐ・飲む・からかうものは入れない
- 勤務時間の外の練習を強制せず、費用を新人に負担させない
今度の歓迎会で、もしよかったら、同期のみんなで何かやってみない?
中身はみんなで決めていいし、ゲームの司会みたいな形でも大丈夫。
気が進まなければ、遠慮なく断ってね。断っても、何も変わらないから。
新人が自分たちで選びやすい出し物の例は、「新入社員の出し物」で紹介しています。
よくある質問
一度引き受けてしまいました。今から断ってもいいですか?
断ってかまいません。気づいた時点で、なるべく早く伝えましょう。「引き受けたのに申し訳ありません」と一言添えて、できる範囲の協力を伝えると、話がこじれにくくなります。
同期はやる気なので、自分だけ断ると浮きそうです。
前に出ない形で関わる方法があります。写真係や受付など、最小限の参加のしかたは「忘年会の出し物をやりたくないときの乗り切り方」で紹介しています。
出し物の中で、見た目をいじられるのがつらいです。
見た目や年齢をネタにされるのは、笑って受け流さなくてよいことです。その場を終わらせる返し方や、線を引く伝え方は「容姿いじりの返し方」にまとめています。
まとめ
- 出し物を頼むこと自体は、すぐにパワハラになるとは限らない
- 断りにくい立場の人に無理をさせる、断ったことで不利に扱う、といった場合はハラスメントにあたることがある
- 断るときは、その場で返事をせず、できることとできないことを分けて伝える
- 何があったかをメモに残し、社内の窓口や総合労働相談コーナーに相談できる






