新入社員の出し物はパワハラ?強要されたときの考え方と相談先

台本や衣装を広げた机で、役の分け方を相談する3人

新入社員に出し物を頼むこと自体が、すぐにパワハラになるとは限りません。ただ、断りにくい立場の新人に無理強いをしたり、断った人を不利に扱ったりすると、ハラスメントにあたる場合があります。迷ったときは1人で抱えずに、社内の相談窓口や、国の「総合労働相談コーナー」に相談できます。

この記事では、ハラスメントになりうる場面の一般的な考え方と、断り方の例文、相談先を紹介します。実際にあたるかどうかは、言動の中身や状況から個別に判断されるので、ここでは「考えるときの目安」として読んでください。

目次目次を閉じる目次を開く
  1. 職場のパワハラは「3つの要素」で考える
  2. ハラスメントになりうる出し物の場面
  3. 強要されたときの断り方
  4. 相談する前に残しておくメモ
  5. 相談先(社内と社外)
  6. 頼む側(先輩・幹事)が気をつけること
  7. よくある質問
  8. まとめ

職場のパワハラは「3つの要素」で考える

法律にもとづく国の指針では、職場のパワーハラスメントを、次の3つをすべて満たすものとしています。

  1. 立場の強さなど、断りにくい関係を背景にした言動であること
  2. 仕事に必要で、ふさわしい範囲を超えていること
  3. それによって、働く環境が害されること

1の「関係」は、上司と部下だけではありません。先輩や同僚が集団で迫る場合なども、含まれることがあります。反対に、仕事に必要な指示や指導は、厳しく感じても、それだけではパワハラにあたりません。

忘年会や歓迎会も「職場」にあたることがある

宴会は、勤務時間の外に開かれることが多いものです。それでも国の資料では、実質的に仕事の延長と考えられる場は「職場」にあたるとされています。仕事との関係、参加する人、参加が強制か自由かなどを見て、場面ごとに判断されます。会社の行事として開かれ、上司も出る会での出来事なら、職場の問題として相談してかまいません。

ハラスメントになりうる出し物の場面

国の指針では、パワハラの代表的な形を6つに分けています。身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害です。出し物にまつわる場面に当てはめると、次のようなものが問題になりうると考えられます。

場面の例近いと考えられる形
「新人なんだからやって当然」と、断っても何度も迫られる過大な要求、精神的な攻撃
「やらないなら評価に響くぞ」と言われる精神的な攻撃
出し物の出来を、大勢の前で人格まで否定される精神的な攻撃
練習のために、仕事のあとや休日に何度も集められる過大な要求
断った人だけ、会の連絡や仕事の話から外される人間関係からの切り離し
恋愛や家族のことを、ネタとして話すよう求められる個の侵害
罰ゲームとして、たたかれたり押されたりする身体的な攻撃

表のどれかに当てはまっても、それだけでパワハラと決まるわけではありません。ただ、「おかしいな」と感じたこと自体は、相談してよい理由になります。

パワハラとは別に、問題になりやすいもの

  • 服を脱ぐ、体にふれる、性的な冗談を言わせるといった出し物は、セクハラにあたる場合があります。
  • お酒の一気飲みをさせることは、急性アルコール中毒など、命にかかわる危険があります。
  • 衣装代などの費用を新人だけに払わせることも、トラブルのもとになります。

問題になりにくい頼み方と、注意したい頼み方

同じ「出し物をお願いする」でも、頼み方によって受け取られ方は大きく変わります。違いを並べると、次のようになります。

問題になりにくい頼み方の例注意したい頼み方の例
「やってみない? 無理なら断って大丈夫」と聞く「新人は全員やる決まりだから」と押しつける
何をするかを、本人たちと相談して決める脱ぐ・飲む・からかう中身を、一方的に決める
準備は短く、出たい人だけで集まる仕事のあとや休日の練習を、全員に求める
費用は会の予算から出すか、全員で分ける衣装代などを、新人だけに払わせる
断っても、態度が変わらない断った人を責めたり、無視したりする

左のような頼み方でも、本人がつらいと感じているなら、遠慮なく断ってかまいません。

強要されたときの断り方

強く迫られると、その場で「分かりました」と言ってしまいがちです。次の順番を覚えておくと、落ち着いて対応できます。

  1. その場で返事をせず、「少し考えさせてください」と時間をもらう
  2. 全部を断るのか、中身だけを断るのかを決めて伝える
  3. 断った内容と、相手の反応をメモしておく
  4. それでも迫られたら、別の上司や相談窓口に話す
例文中身だけを断るとき

声をかけていただき、ありがとうございます。
同期と一緒に何かをすることはできますが、服を脱ぐ芸はできません。
ほかの形でしたら、同期と相談して考えます。

例文「評価に響く」と言われたとき

出し物は、仕事の評価に関わるものなのでしょうか。
もしそうでしたら、どう関わるのか、〇〇課長にも確かめさせてください。
私としては、出し物は辞退して、会の準備でお手伝いしたいと考えています。

例文勤務時間の外の練習が続くとき

練習の件で、ご相談です。
平日の夜の練習が週に3回続いていて、仕事と体調の両立が難しくなっています。
練習は週に1回、30分までにしていただけないでしょうか。

断るときは、相手を責める言葉を入れず、「できないこと」と「できること」だけを伝えます。言った言わないにならないよう、大事なやりとりは、チャットやメールなど文字で残る形でも伝えておきましょう。

相談する前に残しておくメモ

相談するときは、何があったかを具体的に伝えられると、話が早く進みます。記憶が新しいうちに、次のことをメモに残しておきましょう。

残しておきたい記録

  • いつ、どこで、誰に、何を言われたか(言われた言葉は、できるだけそのまま)
  • そのとき、近くにいた人
  • 自分がどう答えたか、そのあと相手がどうしたか
  • チャットやメールのやりとり(画面を保存しておく)
  • 眠れない、食欲がないなど、体や気持ちの変化

メモは、スマホのメモ帳でも、手帳でもかまいません。日付と時刻を入れて、その日のうちに書くのがコツです。

相談先(社内と社外)

まずは、信頼できる上司や先輩、人事の担当者に話してみましょう。会社にハラスメントの相談窓口があれば、そこが正式な相談先です。

会社には、相談窓口を設けることや、相談した人のプライバシーを守ることなどが、法律で求められています。相談したことを理由に、解雇などの不利益な扱いをすることも禁じられています。

社内では話しにくいときや、相談しても変わらないときは、国の窓口を使えます。各都道府県の労働局や労働基準監督署などにある「総合労働相談コーナー」です。職場のいじめや嫌がらせ、パワハラを含め、働くうえでのさまざまな相談を受け付けています。相談は無料で、電話でも相談できます。

相談先こんなときに特徴
信頼できる上司・先輩まず話を聞いてほしいとき職場の事情を分かってもらいやすい
人事・社内の相談窓口会社として対応してほしいとき会社には、対応することやプライバシーを守ることが求められている
総合労働相談コーナー社内で話しにくい、相談しても変わらないとき国の窓口。無料で、電話でも相談できる
産業医・医療機関眠れないなど、体や心に不調が出たとき体調の面から相談できる

総合労働相談コーナーの場所や電話番号は、厚生労働省の「総合労働相談コーナーのご案内」で調べられます。ハラスメントの考え方や相談先の一覧は、厚生労働省のサイト「あかるい職場応援団」にまとまっています。気持ちのつらさが続くときは、働く人の心の健康のためのサイト「こころの耳」で、相談できる窓口を探せます。

頼む側(先輩・幹事)が気をつけること

出し物は、頼み方しだいで、新人にとって楽しい思い出にも、つらい記憶にもなります。頼む側は、次の3つを守りましょう。

  1. 「出たい人だけ」と最初に伝え、断る道を残しておく
  2. 中身は本人たちと決め、脱ぐ・飲む・からかうものは入れない
  3. 勤務時間の外の練習を強制せず、費用を新人に負担させない
例文新人に声をかけるときの言い方

今度の歓迎会で、もしよかったら、同期のみんなで何かやってみない?
中身はみんなで決めていいし、ゲームの司会みたいな形でも大丈夫。
気が進まなければ、遠慮なく断ってね。断っても、何も変わらないから。

新人が自分たちで選びやすい出し物の例は、「新入社員の出し物」で紹介しています。

よくある質問

一度引き受けてしまいました。今から断ってもいいですか?

断ってかまいません。気づいた時点で、なるべく早く伝えましょう。「引き受けたのに申し訳ありません」と一言添えて、できる範囲の協力を伝えると、話がこじれにくくなります。

同期はやる気なので、自分だけ断ると浮きそうです。

前に出ない形で関わる方法があります。写真係や受付など、最小限の参加のしかたは「忘年会の出し物をやりたくないときの乗り切り方」で紹介しています。

出し物の中で、見た目をいじられるのがつらいです。

見た目や年齢をネタにされるのは、笑って受け流さなくてよいことです。その場を終わらせる返し方や、線を引く伝え方は「容姿いじりの返し方」にまとめています。

まとめ

  • 出し物を頼むこと自体は、すぐにパワハラになるとは限らない
  • 断りにくい立場の人に無理をさせる、断ったことで不利に扱う、といった場合はハラスメントにあたることがある
  • 断るときは、その場で返事をせず、できることとできないことを分けて伝える
  • 何があったかをメモに残し、社内の窓口や総合労働相談コーナーに相談できる
「職場の出し物」の記事一覧へトップページへ戻る