お笑いの天丼とは、同じボケや同じ言葉を、間をあけて何度かくり返して笑いを取る方法です。1回目で形を見せ、2回目で「また来た」と気づかせ、3回目に少し変化をつけると、笑いがいちばん大きくなります。
この記事では、天丼の仕組みと、くり返す回数、3回目の変化のつけ方を例で説明します。後半には、天丼だけで組み立てた約1分半の台本を紹介します。
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天丼とは?笑いが大きくなる仕組み
天丼は、同じボケをくり返すことを指す、お笑いの言葉です。天ぷらが2本重なってのっている天丼に見立てて、こう呼ばれるようになったといわれています。
同じボケなのに笑いが大きくなるのは、くり返すたびに、お客さんの気持ちが変わっていくからです。
| 回 | お客さんの気持ち | 起きる笑い |
|---|---|---|
| 1回目 | 何も予想していない | 意外さの笑い |
| 2回目 | 「さっきと同じだ」と気づく | 気づいた笑い |
| 3回目 | 「また来るかも」と待っている | 待っていたものが来た、または外された笑い |
3回目は、お客さんが先を予想しているところがポイントです。予想どおりに来ても、予想を外されても笑いになるので、ネタの中でいちばん大きな山を作りやすくなります。
くり返せるものは言葉だけではない
天丼でくり返すのは、ボケの言葉に限りません。次のようなものもくり返せます。
| くり返すもの | 例 |
|---|---|
| 言葉 | 何を聞かれても、答えが「おにぎり」になる |
| 動き | 名前を呼ばれるたびに、一回転してから返事をする |
| ツッコミ | ボケのたびに同じ言葉でツッコみ、最後だけ別の言葉になる |
| 展開 | どの店に入っても、同じ店員が出てくる |
似た方法に、ボケを少しずつ大きくしていく「エスカレート」があります。天丼は同じものを重ね、エスカレートは大きさを変えていくのがちがいです。2つを組み合わせることもできます。エスカレートの作り方は「エスカレートするコントの作り方」で紹介しています。
くり返す回数と間隔の目安
天丼は、3回くり返すのが基本です。2回だとくり返しだと伝わっても山が小さく、4回以上同じ形が続くと、お客さんが飽きてきます。
| 回 | 2分のネタで置く場所 | ねらい |
|---|---|---|
| 1回目 | 前半(30秒前後) | 形を覚えてもらう |
| 2回目 | 中ほど(1分前後) | 「また来た」と気づかせる |
| 3回目 | 後半(1分半前後) | 変化をつけて、大きく笑わせる |
| 4回目(使うときだけ) | オチ | 最後の一言で全体を締める |
くり返しの間隔は、近すぎても遠すぎても笑いが弱くなります。すぐに2回目が来るとしつこく感じ、あけすぎると1回目を忘れられてしまいます。くり返しのあいだに、別のボケを2〜3個はさむくらいが目安です。
4回目を使うなら、ネタの最後に置き、オチにするのがおすすめです。オチの作り方は「漫才のオチの作り方」でくわしく説明しています。
3回目の変化のつけ方|4つのパターン
3回目をどう変えるかで、天丼の印象が決まります。ここでは、「何を聞かれても答えがおにぎりになるクイズ」を例に、3回目の4つのパターンをくらべます。1回目と2回目は、どのパターンでも同じです。
台本1回目と2回目(共通)
A問題。朝、目が覚めて、最初にすることは?
B顔を洗う。
Aブー。正解は、おにぎりをにぎる。
Bそんな人いないよ。
(あいだに、別のやりとりが入る)
A問題。雨の日に、出かけるときに持っていくものは?
B傘。
Aブー。正解は、おにぎり。
Bまたおにぎり。雨と関係ないでしょ。
3回目の問題を「遠足に持っていくものといえば?」として、答え方を4通りに変えてみます。
| パターン | 3回目のやりとり | 向いているとき |
|---|---|---|
| そのまま | B:(警戒して)……水筒。A:ブー。正解は、おにぎり。 | Bが避けようとしても、同じものが来る形を見せたいとき |
| 大きくする | A:ブー。正解は、おにぎり100個。 | 数や量で、目に浮かぶ大きさにできるとき |
| 外す | B:おにぎり。A:ブー。正解は、水筒。 | お客さんもBも「次もおにぎり」と思っているとき |
| 入れかえる | B:じゃあ、こっちから問題。……正解は、おにぎり。A:うつってるよ。 | ボケとツッコミの立場を、最後に入れかえたいとき |
初めて天丼を使うなら、「外す」がいちばん作りやすいパターンです。2回くり返したことで、お客さんはもう次を予想しているので、予想を外すだけで笑いが起きます。
天丼の作り方の手順
- くり返すもの(言葉・動き・ツッコミ・展開)を1つ決める
- 1回目は、それだけでも笑えるボケにする
- 2回目は、1回目と同じ言い方・同じ形にそろえる
- 3回目の変化を、4つのパターンから1つ選ぶ
- くり返しのあいだに、別のボケを2〜3個はさむ
- 4回目をオチに使うかどうかを決める
3の「形をそろえる」が、意外と大切です。2回目の言い方が1回目と少しでもちがうと、お客さんは同じボケだと気づきにくくなります。
約1分半の台本「なんでもおにぎりクイズ」
ここまでの例を、1本の漫才にまとめた台本です。3回目に「外す」、最後に4回目をオチとして使っています。
- 時間
- 約1分半
- 人数
- 2人
- 準備物
- なし
- 難しさ
- ★
台本なんでもおにぎりクイズ(約1分半)
(2人でマイクの前に出る)
A・Bどうも、よろしくお願いします。
A今日は、クイズを用意してきました。
Bいいね。何でも答えるよ。
A第1問。朝、目が覚めて、最初にすることは?
B顔を洗う。
Aブー。正解は、おにぎりをにぎる。
Bそんな人いないよ。
A第2問。夏の暑い日に、首に巻くと涼しいものは?
Bぬれたタオル。
A正解。
Bお、普通に合ってた。
A第3問。雨の日に、出かけるときに持っていくものは?
B傘。
Aブー。正解は、おにぎり。
Bまたおにぎり。雨と関係ないでしょ。
Aお腹がすいたら困るので。
B困るのは雨のほうだよ。
A第4問。運動会の玉入れで、かごに投げ入れるものは?
B……玉。
A正解。
B(ほっとして)よかった。普通の問題もあるんだ。
A第5問。遠足に持っていくものといえば?
Bこれはもう、おにぎりでしょ。
Aブー。正解は、水筒。
Bそこはおにぎりでいいでしょ。
A水分は大事なので。
B急にまともなことを言うな。
A最後の問題です。今、私がいちばん食べたいものは?
B……もう、おにぎりでしょ。
A正解。お昼を食べそびれまして。
Bだから全部おにぎりだったの? 先に食べてきてよ。もういいよ。
A・Bどうも、ありがとうございました。
この台本の天丼の置き方
第1問と第3問が、1回目と2回目のおにぎりです。あいだの第2問と第4問は、わざと普通の答えにして、間隔をあけています。第5問で「外す」を使い、最後の問題では、おにぎりばかりだった理由を明かして締めています。
第2問と第4問のような「普通のやりとり」は、天丼の効き目を上げるための休み時間です。ずっとおにぎりが続くより、ときどき普通に戻るほうが、次のおにぎりが際立ちます。
スピーチや会話で天丼を使うには
天丼は、漫才やコントだけでなく、スピーチや会話でも使えます。スピーチなら、同じ言葉を思い出話のたびに出し、最後にまじめな意味で使うと、笑いと感動の両方を作れます。
大学のころ、〇〇くんの口ぐせは「なんとかなる」でした。
試験の前の日も「なんとかなる」と言って、早めに寝ていました。結果は、なんとかなりませんでした。
旅行で道に迷ったときも「なんとかなる」。気づけば、となりの県にいました。
でも、私が仕事で落ちこんでいたとき、夜中に電話をくれて「なんとかなるよ」と言ってくれたのも、〇〇くんでした。
〇〇さんと2人なら、これからのことも、きっとなんとかなります。
口ぐせを紹介したあと、試験と旅行の2回で笑いを取り、3回目の電話の話でまじめな意味に変えています。最後の1回は、お祝いの言葉として使いました。スピーチに笑いを入れるコツは「スピーチで笑いを取るコツ」にまとめています。
会話なら、相手が少し前に言った言葉を、別の話題のときにもう一度使うだけでも、小さな天丼になります。ただし、相手が気にしている言葉は使わないようにしましょう。
天丼がしつこくならないための注意
天丼は、使い方をまちがえると「また同じことを言っている」と飽きられてしまいます。次の点に気をつけましょう。
- 1回目は、ゆっくり、はっきり言う。ツッコミも「おにぎり?」と言葉をくり返して、印象に残す
- 同じ形のまま4回以上続けない。続けるなら、3回目で形を変える
- くり返す言葉は、その場で初めて聞いた人にも分かるものにする(内輪の言葉にしない)
- 人の見た目や失敗を、くり返していじらない
最後の点は、とても大切です。誰かの容姿や失敗を何度もくり返すと、笑いではなく、いじめのように見えてしまいます。くり返すのは、物や言葉、自分の行動にしましょう。
天丼を入れたら確かめること
- 2回目は、1回目と同じ言い方になっているか
- くり返しのあいだに、別のボケが2〜3個入っているか
- 3回目に、そのまま・大きくする・外す・入れかえるのどれかの変化があるか
- くり返す言葉が、人をからかう内容になっていないか
よくある質問
1回目がウケなかったら、天丼はやめたほうがいいですか?
やめなくて大丈夫です。天丼は、2回目の「また来た」で初めて笑いが起きることもよくあります。2回目もウケなかったときは、3回目を飛ばして、次の展開に進みましょう。
コント漫才でも天丼は使えますか?
使えます。同じ場面を「もう一回やろう」とやり直すたびに、同じボケが出てくる形は、コント漫才でよく使われる天丼です。場面のやり直し方は「コント漫才の書き方」で説明しています。
天丼と伏線回収は、どうちがいますか?
天丼は、同じものを何度か見せて笑いを重ねる方法です。伏線回収は、前半で1回だけ見せたものを、最後に別の意味で使う方法です。天丼の最後の1回をオチにすると、伏線回収に近い締め方になります。
まとめ
- 天丼は、同じボケや言葉を、間をあけてくり返して笑いを取る方法
- 回数は3回が基本で、あいだに別のボケを2〜3個はさむ
- 3回目は、そのまま・大きくする・外す・入れかえるの4つから変化を選ぶ
- 初めてなら、予想を外す「外す」のパターンが作りやすい
- 人の見た目や失敗はくり返さず、物や言葉、自分の行動をくり返す






