スピーチは、原稿を丸暗記しなくても話せます。「流れ → キーワード → 最初の一言とオチの一文」の順に覚えましょう。一字一句そのまま言うのは、話し始めの一言と、笑いを取るオチの一文だけで十分です。オチはフリ(笑いの前置き)とセットで覚え、オチの前の間は声に出して体で覚えると、本番でも笑いどころを外しにくくなります。
この記事では、笑いを1つ入れた1分半の原稿を例に、3つのステップを順に説明します。フリとオチをセットで覚える練習、間を体で覚える方法、2週間の練習予定もまとめました。
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丸暗記しないほうが、笑いどころで止まらない
原稿を頭から丸暗記すると、言葉が一列につながって覚えられます。そのため、1か所でつまると、その先が出てこなくなりがちです。笑いどころの直前でつまると、フリとオチの間があきすぎて、笑いも消えてしまいます。
| くらべること | 丸暗記 | 3ステップで覚える |
|---|---|---|
| 1語忘れたとき | その先が出てこない | 言いかえて先へ進める |
| 話し方 | 読み上げているように聞こえる | 話しかけているように聞こえる |
| 笑いどころ | フリもオチも同じ調子になりやすい | オチの前で間を取り、顔を上げて言える |
| 本番で飛んだとき | どこに戻ればいいか分からない | 次の見出しから話し始められる |
一字一句同じに言う必要があるのは、最初の一言とオチの一文だけです。その間は、伝えたい場面と順番さえ合っていれば、毎回言い回しが少し変わってもかまいません。
例に使う原稿(笑いを1つ入れた1分半)
覚えにくいのは、記憶力のせいとはかぎりません。1文が長い、エピソードが多い、笑いどころが3つも4つもある、といった原稿は、誰にとっても覚えにくいものです。1文は40字ほど、エピソードは1つ、笑いは1〜2か所にしぼってから覚え始めましょう。
ここからは、次の友人代表スピーチを例に説明します。「(間)」は1拍ためる場所、「(笑いを待つ)」は笑いが小さくなるまで待つ場所です。
〇〇くん、〇〇さん、ご結婚おめでとうございます。
ご両家の皆さまにも、心よりお祝い申し上げます。
新婦の〇〇さんの大学時代の友人で、△△と申します。
〇〇さんとは、大学の写真部で4年間を一緒に過ごしました。
写真部では、行事のたびに集合写真を撮ります。
カメラを構えるのは、いつも〇〇さんでした。
「もう少し右に寄って」「はい、笑って」と、全員が写るまで声をかけてくれました。
あるとき、4年分の写真を整理していて、気づいたことがあります。
どの集合写真にも、〇〇さんが写っていないんです。
4年間で、〇〇さんが写っている写真は、たった1枚。(間)
部員名簿に貼った、証明写真でした。
(笑いを待つ)
〇〇さんは、いつも人の笑顔を撮る側にいた人でした。
今日の〇〇さんは、カメラの前で、とてもすてきな笑顔を見せてくれています。
〇〇くん、これからは〇〇さんと一緒に、たくさんの写真に写ってください。
撮る側のときも、写る側のときも、お二人の笑顔があふれる毎日になりますように。
本日は、本当におめでとうございます。
笑いどころは「証明写真」の1か所です。笑いのすぐあとに「人の笑顔を撮る側にいた人」と続けるので、笑いがそのまま新婦へのほめ言葉に変わります。笑いを入れた友人代表スピーチの組み立て方は「面白い友人代表スピーチの作り方」で紹介しています。
3ステップで覚える
ステップ1:流れを見出しにし、笑いの場所に★をつける
最初に、原稿を5つほどのまとまりに分け、それぞれに10字前後の見出しをつけます。笑いどころがあるまとまりには、★をつけておきます。
1 お祝いと名乗り
2 写真部、撮るのはいつも〇〇さん
3★写っている写真は1枚だけ
4 今日は写る側
5 結び
見出しメモができたら、紙を見ずに5つを順番に言えるまで声に出します。★がどこにあるかも一緒に覚えておくと、本番で「次は間を取る場所だ」と心の準備ができます。
ステップ2:キーワードを覚える(フリの言葉は正確に)
次に、見出しごとに、場面が浮かぶ言葉を2〜3個選びます。これをキーワードと呼びます。笑いどころのまとまりでは、オチが伝わるために欠かせない「フリの言葉」も選んでおきます。
| 見出し | キーワード | フリで必ず言う言葉 |
|---|---|---|
| 2 写真部 | 4年間、集合写真、「はい、笑って」 | 撮るのはいつも〇〇さん |
| 3★1枚だけ | 4年分の写真、どれにもいない | 4年間で、たった1枚 |
| 4 今日は写る側 | カメラの前の笑顔、たくさんの写真 | (なし) |
フリの言葉が1つ欠けると、オチは伝わりません。「撮るのはいつも〇〇さん」を言い忘れると、写っていない理由が分からず、「証明写真」で笑いが起きなくなります。フリの言葉は、キーワードの中でも特に正確に覚えましょう。
キーワードとキーワードの間のつなぎの言葉は、毎回少し変わってかまいません。キーワードだけを書いたカードを見ながら、通して話せるようになれば、ステップ2は終わりです。
ステップ3:最初の一言とオチの一文は、一字一句覚える
最後に、最初の一言とオチの一文だけを、一字一句そのまま覚えます。例の原稿なら、お祝いから名乗りまでの3文と、「4年間で」から「証明写真でした」までの2文です。
最初の一言を覚えるのは、出だしで止まらないためです。オチの一文を覚えるのは、言葉の順番が変わると笑いが弱くなるからです。
言いかえた例:
「〇〇さんが写っていたのは、部員名簿の証明写真くらいで、4年間でたった1枚でした」
覚えた形:
「4年間で、〇〇さんが写っている写真は、たった1枚。(間)
部員名簿に貼った、証明写真でした」
言いかえた例は、意外な答えの「証明写真」が先に出てしまい、笑いが弱くなります。覚えた形は、「たった1枚」で聞く人に「どの写真だろう」と思わせてから、最後に答えを言います。オチは、いちばん意外な言葉を文の最後に置き、その形のまま覚えましょう。
結びの一文も覚えておくと、途中で話がくずれても、いつでも締められます。余裕があれば、「撮る側のときも」から始まる結びも覚えておきましょう。
フリとオチをセットで覚える練習
オチは、フリの最後の一文から続けて言ったときに笑いになります。そのため、オチだけを何度も練習するより、フリとオチを1つのかたまりとして覚えるほうが本番に強くなります。カードを1枚使う、次の練習がおすすめです。
- カードの表にフリの最後の一文、裏にオチの一文を書く
- 表を声に出して読み、カードを裏返しながら1拍おく
- 裏を見ずにオチを言い、言えたら裏を見て確かめる
- 10回続けて言えたら、カードなしで「フリ→間→オチ」を通す
カードを裏返す動きが、そのままオチの前の間になります。本番でも、フリを言い終えたら同じ1拍をおけば、練習どおりの間でオチを言えます。
雑談で試すと、フリが足りているか分かる
原稿を見ずに、エピソードを家族や友人に雑談として話してみましょう。「大学の写真部でさ」と話し始め、オチのところで相手が笑えば、フリは足りています。笑わなかったら、フリの言葉が1つ欠けていないか見直します。
声に出して、間を体で覚える
1人で話すスピーチには、間を作ってくれる相方がいません。間の長さは、黙読では覚えられないので、立って声に出しながら、動きと一緒に体に入れていきます。
| 間 | 長さの目安 | 体で覚える方法 |
|---|---|---|
| オチの前 | 1〜2拍 | 原稿から顔を上げ、新郎新婦か会場を見る |
| 笑い待ち | 笑い声が下がり始めるまで(静かなら2秒) | 会場を見たまま、心の中で「いち、に」と数える |
| 笑いのあと | 1拍 | 息を吸ってから、次の文を少しゆっくり言い出す |
顔を上げる、数える、息を吸う、という動きを決めておくと、緊張していても間の長さが大きくくずれません。練習ではスマホで録音し、オチの前で本当に止まれているかを聞き直しましょう。思ったより間が短いことが多いので、少し長いと感じるくらいでちょうどよくなります。
家族に聞いてもらえるなら、本当に笑いが起きたときに待つ練習もできます。笑い声の中で次の文を言いそうになったら、心の中の「いち、に」を思い出しましょう。
本番までの2週間の練習予定
練習は、1日にまとめてやるより、毎日10分ほどを重ねるほうが覚えやすくなります。見るものを少しずつ減らし、後半はフリとオチ、間の練習を中心にします。
| 時期 | 見るもの | やること |
|---|---|---|
| 14〜12日前 | 原稿の全文 | 1日3回音読し、時間を測る。オチの前で止まる場所を決める |
| 11〜9日前 | 見出しメモ | 見出しだけを見て話す。最初の一言を覚える |
| 8〜6日前 | キーワードカード | カードを見て通す。フリとオチのカードを1日10回 |
| 5〜3日前 | なし(カードはポケットに) | 何も見ずに通し、録音して間の長さを聞き直す |
| 2日前〜前日 | なし | 本番の服で立って通す。家族に聞いてもらい、笑いを待つ練習をする |
| 当日 | 見出しメモ | 1回だけ目を通し、最初の一言とオチの一文を小声で言う |
原稿の長さは、スピーチ時間の計算ツールで目安を出しておくと、練習で測った時間と比べられます。本番は笑いを待つぶん、練習より少し長くなると考えておきましょう。
3日しかないときは
本番まで日がないときは、全部を覚えようとせず、カンペ(手元に持つ原稿)を使う前提で準備します。
- 1日目:原稿を5回音読し、見出しメモを作る
- 2日目:最初の一言とオチの一文を覚え、カードを見て通す
- 3日目:本番と同じカンペを持って、立って3回通す
カンペを見ながら話すのは失礼ではありません。オチの一文だけ顔を上げて言えれば、笑いも取れます。印のつけ方は「スピーチのカンペの作り方」で紹介しています。
本番で忘れたときの対処
覚えたつもりでも、本番の緊張で言葉が出てこないことはあります。そんなときは、次の順番で立て直します。
- あわてずに、ポケットのカードか見出しメモを見る
- 思い出せない見出しは飛ばして、次の見出しから話す
- フリを言い忘れたまま進んだら、その笑いはあきらめ、オチも言わない
- 何も出てこなければ、覚えている結びの一文に進む
フリのないオチは、聞く人には意味が分かりません。笑いを1つ飛ばしても、伝えたい気持ちは十分に届きます。
「すみません、ここからはメモに助けてもらいます」
「大事なことを一つ、言いそびれていました。〇〇さんは……」
言葉が出ないときに、緊張を笑いに変える一言は「スピーチの緊張を笑いに変えるには」で紹介しています。
よくある質問
3分のスピーチは、何日あれば覚えられますか?
毎日10分ほど練習できるなら、1週間から2週間が目安です。早めに覚え終えたら、残りの日はフリとオチの練習と、本番の服で立って話す練習にあてましょう。
覚えたオチが、棒読みになってしまいます。
オチは、少し淡々と言うくらいでちょうどよいものです。それでも気になるときは、オチの一文だけをくり返すのをやめ、エピソードを人に話す練習に切りかえましょう。相手の顔を見て話すと、自然な言い方になります。
余興の漫才やコントの台本も、同じ覚え方でいいですか?
基本は同じですが、相手がいるネタでは、相手のセリフを合図として覚えることも大切です。くわしくは「ネタの覚え方」を参考にしてください。
まとめ
- スピーチは丸暗記せず、「流れ→キーワード→最初の一言とオチの一文」の順に覚える
- フリで言う数字や事実は正確に覚え、つなぎの言葉は変わってもよいと考える
- オチは意外な言葉を文の最後に置き、その形のまま一字一句覚える
- フリとオチはカードの表と裏でセットにし、間は顔を上げる動きと一緒に声に出して覚える
- 忘れたら次の見出しへ進み、フリを飛ばしたときはオチも言わない






