スピーチの緊張を笑いに変えるには?緊張をネタにする一言と直前の準備

舞台の袖で原稿を持つ女性に、親指を立てて励ます男性

スピーチの緊張は、隠すより、最初の一言で笑いに変えてしまうほうが楽になります。「緊張しています」とそのまま言わずに、天気予報のように実況したり、身近な場面と比べたりして少しずらします。それだけで、会場から小さな笑いが起きます。笑いが1つ起きると、聞く人は味方になり、話す人の肩の力もぬけます。

この記事では、緊張をネタにする一言の型と、場面別の書き出し例を紹介します。緊張しても笑いを外さないための準備と、前日・直前・話している最中の対策も短くまとめました。

目次目次を閉じる目次を開く
  1. 緊張を笑いに変えると、話しやすくなるわけ
  2. 緊張をネタにする一言の5つの型
  3. 場面別:緊張の一言を入れた書き出し例
  4. 緊張しても笑いを外さない準備
  5. 前日・直前・話している最中の対策
  6. 頭が真っ白になったら、笑いでつなぐ
  7. 緊張ネタで気をつけたいこと
  8. よくある質問
  9. まとめ

緊張を笑いに変えると、話しやすくなるわけ

緊張した人がマイクの前に立つと、会場の人も「大丈夫かな」と少し身がまえます。そこで話す人が自分から緊張を明かし、明るくずらして言うと、張りつめた空気がふっとゆるみます。張った空気がゆるむときに笑いが起きることを、お笑いでは「緊張と緩和」と呼びます。

笑いが起きると、話す人にもよいことがあります。会場の反応が見えるので「聞いてもらえている」と分かり、声や手の力がぬけていきます。緊張をなくそうとするより、緊張を材料にしてしまうほうが、気持ちはずっと楽です。

ただし、ねらうのは大笑いではありません。くすっと笑ってもらえれば十分です。笑いが起きなくても、緊張を正直に伝えたことで、会場はあたたかく聞いてくれます。

緊張をネタにする一言の5つの型

「緊張しています」だけでは、正直な報告で終わってしまいます。今の自分の様子を何かに置きかえて、少しずらすと笑いになります。使いやすい型は次の5つです。

型一言の例向いている場
実況する「本日の私は、晴れのち緊張、ところにより手汗となっております」友人代表、送別会、歓迎会
比べる「歯医者さんの待合室で、名前を呼ばれる直前くらい緊張しています」どの場でも
準備を明かす「きのう家族の前で練習したら、途中で全員いなくなり、犬だけが聞いてくれました」職場、地域の集まり
聞き手に頼る「皆さんがうなずいてくださると、私の声のふるえが少しずつおさまる仕組みです」地域の集まり、保護者会、職場
例える「手がふるえて、原稿がうちわになっています。前の席の方、風が来たらすみません」飲み会など、くだけた場

迷ったら「実況する」か「比べる」から

実況する型は、ニュースや天気予報の言い回しを借りて、自分の様子を伝える型です。言い回しの形が決まっているので覚えやすく、緊張していても口から出やすいのが利点です。

比べる型は、聞く人の多くが知っている場面と比べます。たとえば、歯医者さんの待合室や、健康診断の結果の封筒を開ける前などです。「あの感じ」が浮かぶ場面を選ぶと、会場がうなずきながら笑ってくれます。

聞き手に頼る型は、会場を巻きこめるぶん、笑いのあとの空気がいちばんやわらかくなります。うなずいてもらえたら「ありがとうございます。だいぶおさまりました」と返すと、もう一度小さな笑いが起きます。

自分だけの一言を作る3つの手順

自分の言葉で作るときは、次の順で考えます。慣れれば5分ほどで1つできます。

  1. 今の自分の体に起きていることを1つ選ぶ(手汗、声のふるえ、ひざ、心臓の音など)
  2. それを、天気予報・身近な場面・物などに置きかえる
  3. 置きかえた一言のあとに、本題へ進む一文を足す
例文直す前と直したあと

直す前:
「緊張していますが、よろしくお願いします」

直したあと:
「さきほどから、心臓の音がマイクに入っていないか心配です」
「もし入っていたら、太鼓の演出だと思ってください」
(笑いを待つ)
「それでは、お話しさせていただきます」

直す前の言い方でも失礼ではありませんが、笑いは起きません。直したあとは「心臓の音」を「太鼓の演出」に置きかえたところで、聞く人の頭に絵が浮かびます。

言い方のコツ

緊張の一言は、明るい声で最後まで言い切り、半拍待ちます。笑いが起きても起きなくても、すぐに本題へ進みましょう。同じ話の中で緊張に触れるのは、1回だけにします。

場面別:緊張の一言を入れた書き出し例

〇〇には相手の名前、△△には自分の名前を入れてください。「(笑いを待つ)」のところで、2秒ほど間をあけます。

結婚式の友人代表スピーチ(冒頭約40秒)

例文結婚式の友人代表スピーチの書き出し(約40秒)

〇〇くん、〇〇さん、ご結婚おめでとうございます。
ご両家の皆さま、心よりお祝い申し上げます。
新郎の大学時代の友人の、△△と申します。

本日の私の様子を、天気予報ふうにお伝えします。
晴れのち緊張、ところにより手汗です。
(笑いを待つ)

ただ、緊張しているのは私だけではありません。
大学の4年間、一度もあわてた顔を見せなかった〇〇くんが、
今朝は控室で、ネクタイの結び目を5分も見つめていました。
(笑いを待つ)

あの〇〇くんが緊張するほど、大切な日です。
その日にお祝いの言葉を贈れることを、心からうれしく思います。

結婚式では、お祝いの言葉と名乗りを先に済ませてから、緊張の一言を入れます。自分の緊張から新郎の緊張へつなぐと、笑いのあとにお祝いの気持ちが自然に続きます。新郎の様子に触れるのは、本人が笑って聞ける小さなことだけにしましょう。

送別会で、送る側の代表として(冒頭約30秒)

例文送別会の挨拶の書き出し(約30秒)

〇〇さん、12年間、本当にお疲れさまでした。
送る側を代表してご挨拶します、営業部の△△です。

今日の私は、入社1年目の、初めての電話当番の日と同じくらい緊張しています。
あの日の私は、受話器を上下さかさまに持っていました。
(笑いを待つ)

そのとき、何も言わずに受話器の向きを直してくれたのが、〇〇さんでした。

比べる型の一言を、送る相手との思い出につないだ例です。緊張の笑いが、そのまま本題の入り口になっています。

自治会の総会で、新しい役員として(冒頭約20秒)

例文自治会の総会での挨拶の書き出し(約20秒)

皆さん、こんばんは。今年度、会計を務めます、2丁目の△△です。
ご覧のとおり、原稿を持つ手がふるえております。
皆さんがうなずいてくださると、少しずつおさまる仕組みになっています。
(うなずきと笑いを待つ)
ありがとうございます。だいぶおさまりました。
それでは、今年度の予算についてご説明します。

年齢の幅が広い集まりでは、聞き手に頼る型が向いています。会場の人に一度うなずいてもらうだけで、話す人と聞く人の距離が近くなります。笑いの入れ方の全体は「スピーチで笑いを取るコツ」で紹介しています。

緊張しても笑いを外さない準備

緊張すると、覚えたはずの言葉が飛んだり、早口になったりします。笑いの一言は、言い方や間が少しずれるだけで伝わりにくくなります。次の4つを準備しておくと、緊張していても笑いを外しにくくなります。

笑いの場所は1〜2か所に絞る

笑いを入れる場所が多いほど、緊張したときに言い忘れたり、間を取りそこねたりします。1分の話なら1か所、3分の話でも2か所までに絞りましょう。冒頭に緊張の一言を入れるなら、それを1つ目の笑いとして数えます。

最初の一言だけは、一字一句覚える

緊張がいちばん強いのは、話し始めの10秒です。お祝いやお礼、名乗り、緊張の一言までは、何も見ずに言えるまで覚えておきましょう。最初の一言で笑いが起きれば、そのあとは原稿を見ながらでも落ち着いて話せます。覚える範囲の決め方は「スピーチの覚え方」で紹介しています。

原稿に「待つ」の印を書いておく

緊張すると、笑いが起きている最中に次の文を言ってしまいがちです。原稿の笑いどころのあとに「(待つ)」と書いておくと、本番でも間をあけられます。印のつけ方は「スピーチのカンペの作り方」にまとめています。

ウケなかったときの一文を決めておく

緊張の一言で笑いが起きなかったときに続ける一文を、先に決めておきます。逃げ道があると思えるだけで、一言を言う勇気が出ます。

例文笑いが起きなかったときに続ける一文

「……緊張のほうは、本物です。それでは本題に入ります」
「今の一言で、私の緊張だけはほぐれました。ありがとうございます」

前日までに確かめること

  • 笑いの場所は2か所までに絞れているか
  • 最初の一言から緊張の一言までを、何も見ずに言えるか
  • 原稿の笑いどころのあとに「(待つ)」と書いたか
  • ウケなかったときの一文を決めたか
  • 声に出して時間を測り、持ち時間の8〜9割に収まっているか

時間を測るときは、スピーチ時間の計算ツールに原稿を貼ると、読み上げにかかる時間の目安が分かります。笑いを待つ間のぶん、本番は練習より少し長くなると考えておきましょう。

前日・直前・話している最中の対策

緊張そのものを小さくする対策も、時間の順に短くまとめておきます。

いつやること
前日まで立って本番の声で3回通す。1回はわざと途中で止まり、原稿を見て話に戻る練習をする
前日の夜新しい話や笑いを足さない。直すのは言い回しだけにする
会場に着いたら話す場所とマイクの形を確かめる。前の人の話に触れられそうな言葉があれば、メモしておく
名前を呼ばれる前口から細く長く息を吐き、鼻から自然に吸う。これを3回
マイクの前で会場を見渡し、もう一度息を吐いてから第一声を出す
話している最中1文を短く言い切る。笑いが起きたら、静かになるまで待つ

第一声は、息を吐ききってから、ふだんより少し低めの声でゆっくり言うと落ち着いて聞こえます。目線は、会場の左・真ん中・右に1人ずつ、うなずいてくれそうな人を決めて、順に移すと楽です。

前の人のスピーチで笑いが起きていたら、「前の方のお話がすばらしくて、緊張がもう一段上がりました」と添えるのも手です。会場が覚えている話に触れるので、笑いが起きやすくなります。話す前のお酒は控えましょう。声の大きさや話の長さの加減がきかなくなり、笑いの間も取りにくくなります。

頭が真っ白になったら、笑いでつなぐ

どれだけ準備しても、言葉が出なくなることはあります。そのときは、あわてて何か話そうとせず、次の順で立て直します。

  1. 3秒は黙っていい、と考える(話す人が思うほど、聞く人は長く感じません)
  2. 手元の原稿を見て、今いる段落を探す
  3. 直前に言った一文を、もう一度ゆっくり言う
  4. それでも出てこなければ、次の段落か結びに進む

原稿を探す間は、正直に一言添えると、会場は笑いながら待ってくれます。

例文言葉が出なくなったときにつなぐ一言

「緊張で、原稿の一行が見当たらなくなりました。……ありました」
「うれしくて、言葉が迷子になりました。原稿の中を探します」
「話が少し前後しますが、いちばんお伝えしたいことを先に申し上げます」

1つ目は、原稿を指でたどってから「……ありました」と言うのがコツです。探している間の沈黙がフリ(笑いの前置き)になり、見つけた一言で笑いが起きます。

緊張ネタで気をつけたいこと

緊張の一言は使いやすい反面、言い方をまちがえると、会場を心配させたり、気をつかわせたりします。次のような言い方は避けましょう。

避けたい言い方理由と言いかえ
何度も「緊張して……」と言う聞く人が心配になる。触れるのは冒頭の1回だけにする
「下手な話ですみません」「聞き流してください」自分を下げすぎると笑えない。「心をこめてお話しします」と前を向いて続ける
「倒れそうです」「気分が悪いです」体調の心配をさせる。手汗や声のふるえなど、軽い様子にとどめる
「一杯飲んで、落ち着いてきました」お酒の冗談は場によって笑えない。緊張をお酒でごまかす話はしない

結婚式では、緊張の一言にも忌み言葉(お祝いの席で縁起が悪いとされる言葉)が入らないようにします。「頭が真っ白で、話が切れてしまいそうです」の「切れる」のように、何気ない言い回しにも入りがちです。原稿を声に出して確かめましょう。言いかえ方は「結婚式スピーチのマナーと忌み言葉」にまとめています。

よくある質問

「緊張しています」と言うのは、失礼になりませんか?

1回だけなら失礼にはなりません。お祝いやお礼、名乗りを先に済ませ、そのあとに一言添えるのが順番です。謝辞や主賓挨拶のような改まった場では、「大役に、少し緊張しております」くらいの控えめな言い方にしましょう。

本当はあまり緊張していません。緊張ネタを使ってもいいですか?

使ってもかまいませんが、本当の様子に近い言い方を選びましょう。落ち着いて見える人が「手がふるえています」と言うと、会場は笑うより戸惑います。「前の方のお話を聞いて、急に緊張してきました」のように、きっかけを添えると自然です。

緊張して、笑顔が作れません。

無理に笑顔を作らなくても大丈夫です。緊張の一言は、まじめな顔で淡々と言うほうが、かえって笑いになりやすいくらいです。笑いが起きたところで少し口元をゆるめると、自然な笑顔になります。

まとめ

  • 緊張は隠すより、冒頭の一言で明かして少しずらすと笑いになる
  • 型は「実況する」「比べる」「準備を明かす」「聞き手に頼る」「例える」の5つ
  • 笑いの場所は1〜2か所に絞り、最初の一言から緊張の一言までは覚えておく
  • ウケなかったときの一文を決め、笑いが起きたら静かになるまで待つ
  • 緊張に触れるのは1回だけにし、自分を下げすぎる言い方や体調・お酒の冗談は避ける
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