ネタの覚え方|セリフが飛ばない3段階の覚え方と本番前の練習

台本を手に持ち、覚えたセリフを確かめる人

ネタのセリフは、頭から1行ずつ丸暗記しないほうが早く覚えられます。「流れ → キーワード → 相手のセリフ」の順に覚えると、本番でも飛びにくくなります。まず話の大きな順番、次に場面ごとの笑いどころの言葉、最後に自分が話し始める合図になる相方のセリフ、という3段階です。

この記事では、1分の漫才の台本を例にして、3段階の覚え方を順番に説明します。本番でセリフが飛ばないための練習や、覚える時間が足りないときの工夫もまとめました。

目次目次を閉じる目次を開く
  1. 丸暗記より「3段階」で覚えるほうが飛ばない
  2. 1段階目:流れを「場面の見出し」で覚える
  3. 2段階目:場面ごとのキーワードを覚える
  4. 3段階目:相手のセリフを「きっかけ」として覚える
  5. 1週間で覚える進め方
  6. 本番でセリフが飛ばないための練習
  7. 覚える時間が足りないときの工夫
  8. よくある質問
  9. まとめ

丸暗記より「3段階」で覚えるほうが飛ばない

台本を1行目から丸暗記すると、セリフが鎖のようにつながって覚えられます。そのため、1か所でつまると、その先が全部出てこなくなりがちです。本番でセリフが飛ぶ(頭が真っ白になって、次の言葉が出なくなる)ときは、この形になっていることがよくあります。

3段階で覚えると、言葉が1つ出てこなくても、「今どの場面か」「次は何の話か」は分かります。その場面の入り口に戻ったり、次の場面に進んだりして、話を続けられます。

段階覚えること何に効くか
1. 流れ場面の順番(4〜6個)話の途中で迷子にならない
2. キーワード場面ごとのボケとツッコミの決めの言葉笑いどころを落とさない
3. 相手のセリフ自分が話す直前の、相方の一言話し始めるタイミングがつかめる

例に使う1分の台本

ここからは、次の台本を例に説明します。料理教室の先生をやりたいAと、生徒役のBの漫才です。

台本料理教室(約1分)

(2人でマイクの前に出る)

A料理教室の先生を、一回やってみたいんだよね。

Bいいね。じゃあ、僕が生徒をやるよ。

Aはい、今日は卵焼きを作ります。

Bお願いします。

Aまず材料です。卵を3つ。それから、卵焼きの写真を1枚。

B写真? なんで?

Aうまくいかなかったときに、見て元気を出します。

B失敗する前提なの?

Aでは、卵を割ります。(割るしぐさ)……あっ。

Bどうしました?

A殻が入りました。

B先生でしょ。

Aこれはお手本です。殻が入ると、こうなります。

B失敗のお手本はいらないよ。

A次に焼きます。フライパンを温めて、くるっと巻いて……

Bおお、手つきは上手。

Aはい、スクランブルエッグの完成です。

B卵焼きじゃなかったの?

A……では、最初に用意した写真を見て、元気を出しましょう。

Bやっぱり失敗してるじゃないか。もういいよ。

A・Bどうも、ありがとうございました。

1段階目:流れを「場面の見出し」で覚える

最初に、台本を4〜6つの場面に区切り、それぞれに短い見出しをつけます。見出しは、その場面で起きることを10字くらいで書くのがコツです。上の台本なら、次の5つに分けられます。

例文流れメモ(「料理教室」の場合)

1 先生をやってみたい
2 材料は卵3つと、写真1枚
3 卵を割る → 殻が入る
4 焼く → スクランブルエッグ
5 写真を見て元気を出す → 締め

見出しだけを紙に書き、何も見ずに順番を言えるまで声に出します。料理の手順のように、話の中で物事が進む順番に沿っていると、流れは覚えやすくなります。流れがつかみにくいときは、場面の順番そのものを見直すきっかけにもなります。

2人で覚えるときは、相方と同じ流れメモを使いましょう。2人の頭の中で「場面の区切り」がそろっていると、どちらかが飛んだときにも、同じ場所に戻れます。

2段階目:場面ごとのキーワードを覚える

次に、場面ごとの笑いどころになる言葉を覚えます。これをここでは「キーワード」と呼びます。ボケの決めの言葉と、ツッコミの決めの言葉を、1つの場面に1〜2個ずつ選びましょう。

場面ボケのキーワードツッコミのキーワード
2 材料卵焼きの写真失敗する前提
3 卵を割る殻が入った・お手本先生でしょ・失敗のお手本
4 焼くスクランブルエッグ卵焼きじゃなかった
5 締め写真を見て元気を出すやっぱり失敗してる

キーワードは、一言一句そのまま言う言葉です。反対に、キーワードとキーワードのあいだのつなぎの言葉は、多少変わってもネタは崩れません。全部を正確に覚えようとすると量が増えますが、正確さが必要な言葉をしぼると、ぐっと楽になります。

覚え方は、キーワードだけを書いたカードを1枚作り、それを見ながら場面をつないで話す練習がおすすめです。カードを見なくても言えるようになったら、2段階目は終わりです。

3段階目:相手のセリフを「きっかけ」として覚える

最後に、自分のセリフの直前に相方が言う言葉を覚えます。この、自分が話し始める合図になる言葉を「きっかけ」と呼びます。自分のセリフだけを覚えていると、相方と合わせたときに「今、自分の番?」と迷ってしまいます。

AのきっかけBのセリフ
卵焼きの写真を1枚写真? なんで?
見て元気を出します失敗する前提なの?
殻が入りました先生でしょ
スクランブルエッグの完成です卵焼きじゃなかったの?
写真を見て、元気を出しましょうやっぱり失敗してるじゃないか。もういいよ

表は、ツッコミ役のBの立場で作った例です。きっかけは、相方のセリフの最後の部分だけで十分です。ツッコミ役は相方のボケの語尾を、ボケ役は相方の質問やツッコミの語尾を、きっかけにするとよいでしょう。

練習では、台本の自分のセリフを付箋で隠し、相方のセリフを読んだら自分のセリフを言う、をくり返します。言えたら付箋をめくって確かめ、言えなかった所に印をつけておきます。

1週間で覚える進め方

覚える作業は、1日にまとめてやるより、短い時間を何回も重ねたほうが頭に残ります。朝・昼・夜に5分ずつなど、生活の中に入れてしまいましょう。

日やること時間の目安
1日目台本を3回音読し、流れメモを作る15分
2日目流れメモを、何も見ずに言えるようにする5分×3回
3〜4日目キーワードカードを見ながら、場面をつないで話す5分×3回
5日目自分のセリフを付箋で隠し、きっかけで言う練習10分×2回
6日目台本を見ずに、相方のセリフも自分で言いながら通す10分×2回
7日目相方と合わせて通す30分

寝る前に流れメモを見て、朝起きたらまず何も見ずに言ってみるのもおすすめです。歩きながら、家事をしながら小声で言う練習もしておくと、本番で動きながらでも言葉が出やすくなります。

覚えたネタを2人で合わせる練習の進め方は、「漫才の練習方法」で段階ごとにまとめています。

本番でセリフが飛ばないための練習

1人で言えるようになっても、本番の緊張の中では言葉が出てこないことがあります。覚えたあとに、次のような「崩す練習」をしておくと、本番に強くなります。

途中の場面から始める

相方に場面の番号を言ってもらい、その場面の頭から始める練習です。「4」と言われたら、焼く場面から始めます。どこからでも始められるようになると、飛んだときに戻る場所がすぐに分かります。

気が散る中で通す

テレビをつけたまま、歩きながら、人に見られながら、と、わざと集中しにくい状態で通してみます。静かな部屋でしか言えないセリフは、ざわついた本番の会場で飛びやすいからです。

速さを変えて通す

いつもより速く、セリフの順番だけを確かめるように言う練習と、思い切りゆっくり言う練習を交互にします。速さが変わっても順番が崩れなければ、しっかり覚えられています。

「戻る場所」を決めておく

流れメモの場面ごとに、最初のセリフを「入り口」として決めておきましょう。セリフが飛んでも、次の場面の入り口から話し始めれば、ネタは続けられます。その場でつなぐ一言は「ネタ中にセリフが飛んだときの立て直し方」で紹介しています。

覚える時間が足りないときの工夫

本番まで日がないときは、覚える量そのものを減らします。言いにくいセリフを、ふだん自分が使う言葉に言いかえるだけでも、覚えやすさは大きく変わります。

セリフの多いほうの役を、覚えるのが得意な人に入れかえる方法もあります。結婚式の余興など、紙を持ってもおかしくない場なら、流れメモを小さなカードにして持つのも1つの手です。スピーチのように1人で話す場合は、「スピーチの覚え方」も参考になります。

よくある質問

何日前から覚え始めればいいですか?

2分前後のネタなら、本番の2週間前には覚え始めると安心です。1週間で覚え、残りの1週間を2人で合わせる練習に使えます。覚えるのが早い人でも、合わせる練習の時間は別に取っておきましょう。

1人では言えるのに、相方と合わせると出てきません。

相方のセリフを、きっかけとして覚えていないのかもしれません。1人の練習では自分の言いやすいテンポで進められますが、相方と合わせるとテンポが変わります。相方にセリフを録音してもらい、その声をきっかけにして、付箋の練習をしてみましょう。

台本と一言一句同じに言わないとだめですか?

キーワードとフリの言葉は、台本どおりに言いましょう。フリとは、ボケの前に、お客さんに「ふつうはこうなる」と思わせておく部分です。それ以外のつなぎの言葉は、言いやすい形に変わってもかまいません。

まとめ

  • ネタは「流れ → キーワード → 相手のセリフ」の順に覚えると、飛びにくい
  • 流れは場面ごとに短い見出しをつけ、何も見ずに順番を言えるまで声に出す
  • キーワードは一言一句そのまま、つなぎの言葉は多少変わってもよいと考える
  • 相方のセリフの語尾を、自分が話し始める「きっかけ」として覚える
  • 途中から始める、気が散る中で通すなど、崩す練習で本番に強くなる
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