ネタのセリフは、頭から1行ずつ丸暗記しないほうが早く覚えられます。「流れ → キーワード → 相手のセリフ」の順に覚えると、本番でも飛びにくくなります。まず話の大きな順番、次に場面ごとの笑いどころの言葉、最後に自分が話し始める合図になる相方のセリフ、という3段階です。
この記事では、1分の漫才の台本を例にして、3段階の覚え方を順番に説明します。本番でセリフが飛ばないための練習や、覚える時間が足りないときの工夫もまとめました。
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丸暗記より「3段階」で覚えるほうが飛ばない
台本を1行目から丸暗記すると、セリフが鎖のようにつながって覚えられます。そのため、1か所でつまると、その先が全部出てこなくなりがちです。本番でセリフが飛ぶ(頭が真っ白になって、次の言葉が出なくなる)ときは、この形になっていることがよくあります。
3段階で覚えると、言葉が1つ出てこなくても、「今どの場面か」「次は何の話か」は分かります。その場面の入り口に戻ったり、次の場面に進んだりして、話を続けられます。
| 段階 | 覚えること | 何に効くか |
|---|---|---|
| 1. 流れ | 場面の順番(4〜6個) | 話の途中で迷子にならない |
| 2. キーワード | 場面ごとのボケとツッコミの決めの言葉 | 笑いどころを落とさない |
| 3. 相手のセリフ | 自分が話す直前の、相方の一言 | 話し始めるタイミングがつかめる |
例に使う1分の台本
ここからは、次の台本を例に説明します。料理教室の先生をやりたいAと、生徒役のBの漫才です。
台本料理教室(約1分)
(2人でマイクの前に出る)
A料理教室の先生を、一回やってみたいんだよね。
Bいいね。じゃあ、僕が生徒をやるよ。
Aはい、今日は卵焼きを作ります。
Bお願いします。
Aまず材料です。卵を3つ。それから、卵焼きの写真を1枚。
B写真? なんで?
Aうまくいかなかったときに、見て元気を出します。
B失敗する前提なの?
Aでは、卵を割ります。(割るしぐさ)……あっ。
Bどうしました?
A殻が入りました。
B先生でしょ。
Aこれはお手本です。殻が入ると、こうなります。
B失敗のお手本はいらないよ。
A次に焼きます。フライパンを温めて、くるっと巻いて……
Bおお、手つきは上手。
Aはい、スクランブルエッグの完成です。
B卵焼きじゃなかったの?
A……では、最初に用意した写真を見て、元気を出しましょう。
Bやっぱり失敗してるじゃないか。もういいよ。
A・Bどうも、ありがとうございました。
1段階目:流れを「場面の見出し」で覚える
最初に、台本を4〜6つの場面に区切り、それぞれに短い見出しをつけます。見出しは、その場面で起きることを10字くらいで書くのがコツです。上の台本なら、次の5つに分けられます。
1 先生をやってみたい
2 材料は卵3つと、写真1枚
3 卵を割る → 殻が入る
4 焼く → スクランブルエッグ
5 写真を見て元気を出す → 締め
見出しだけを紙に書き、何も見ずに順番を言えるまで声に出します。料理の手順のように、話の中で物事が進む順番に沿っていると、流れは覚えやすくなります。流れがつかみにくいときは、場面の順番そのものを見直すきっかけにもなります。
2人で覚えるときは、相方と同じ流れメモを使いましょう。2人の頭の中で「場面の区切り」がそろっていると、どちらかが飛んだときにも、同じ場所に戻れます。
2段階目:場面ごとのキーワードを覚える
次に、場面ごとの笑いどころになる言葉を覚えます。これをここでは「キーワード」と呼びます。ボケの決めの言葉と、ツッコミの決めの言葉を、1つの場面に1〜2個ずつ選びましょう。
| 場面 | ボケのキーワード | ツッコミのキーワード |
|---|---|---|
| 2 材料 | 卵焼きの写真 | 失敗する前提 |
| 3 卵を割る | 殻が入った・お手本 | 先生でしょ・失敗のお手本 |
| 4 焼く | スクランブルエッグ | 卵焼きじゃなかった |
| 5 締め | 写真を見て元気を出す | やっぱり失敗してる |
キーワードは、一言一句そのまま言う言葉です。反対に、キーワードとキーワードのあいだのつなぎの言葉は、多少変わってもネタは崩れません。全部を正確に覚えようとすると量が増えますが、正確さが必要な言葉をしぼると、ぐっと楽になります。
覚え方は、キーワードだけを書いたカードを1枚作り、それを見ながら場面をつないで話す練習がおすすめです。カードを見なくても言えるようになったら、2段階目は終わりです。
3段階目:相手のセリフを「きっかけ」として覚える
最後に、自分のセリフの直前に相方が言う言葉を覚えます。この、自分が話し始める合図になる言葉を「きっかけ」と呼びます。自分のセリフだけを覚えていると、相方と合わせたときに「今、自分の番?」と迷ってしまいます。
| Aのきっかけ | Bのセリフ |
|---|---|
| 卵焼きの写真を1枚 | 写真? なんで? |
| 見て元気を出します | 失敗する前提なの? |
| 殻が入りました | 先生でしょ |
| スクランブルエッグの完成です | 卵焼きじゃなかったの? |
| 写真を見て、元気を出しましょう | やっぱり失敗してるじゃないか。もういいよ |
表は、ツッコミ役のBの立場で作った例です。きっかけは、相方のセリフの最後の部分だけで十分です。ツッコミ役は相方のボケの語尾を、ボケ役は相方の質問やツッコミの語尾を、きっかけにするとよいでしょう。
練習では、台本の自分のセリフを付箋で隠し、相方のセリフを読んだら自分のセリフを言う、をくり返します。言えたら付箋をめくって確かめ、言えなかった所に印をつけておきます。
1週間で覚える進め方
覚える作業は、1日にまとめてやるより、短い時間を何回も重ねたほうが頭に残ります。朝・昼・夜に5分ずつなど、生活の中に入れてしまいましょう。
| 日 | やること | 時間の目安 |
|---|---|---|
| 1日目 | 台本を3回音読し、流れメモを作る | 15分 |
| 2日目 | 流れメモを、何も見ずに言えるようにする | 5分×3回 |
| 3〜4日目 | キーワードカードを見ながら、場面をつないで話す | 5分×3回 |
| 5日目 | 自分のセリフを付箋で隠し、きっかけで言う練習 | 10分×2回 |
| 6日目 | 台本を見ずに、相方のセリフも自分で言いながら通す | 10分×2回 |
| 7日目 | 相方と合わせて通す | 30分 |
寝る前に流れメモを見て、朝起きたらまず何も見ずに言ってみるのもおすすめです。歩きながら、家事をしながら小声で言う練習もしておくと、本番で動きながらでも言葉が出やすくなります。
覚えたネタを2人で合わせる練習の進め方は、「漫才の練習方法」で段階ごとにまとめています。
本番でセリフが飛ばないための練習
1人で言えるようになっても、本番の緊張の中では言葉が出てこないことがあります。覚えたあとに、次のような「崩す練習」をしておくと、本番に強くなります。
途中の場面から始める
相方に場面の番号を言ってもらい、その場面の頭から始める練習です。「4」と言われたら、焼く場面から始めます。どこからでも始められるようになると、飛んだときに戻る場所がすぐに分かります。
気が散る中で通す
テレビをつけたまま、歩きながら、人に見られながら、と、わざと集中しにくい状態で通してみます。静かな部屋でしか言えないセリフは、ざわついた本番の会場で飛びやすいからです。
速さを変えて通す
いつもより速く、セリフの順番だけを確かめるように言う練習と、思い切りゆっくり言う練習を交互にします。速さが変わっても順番が崩れなければ、しっかり覚えられています。
「戻る場所」を決めておく
流れメモの場面ごとに、最初のセリフを「入り口」として決めておきましょう。セリフが飛んでも、次の場面の入り口から話し始めれば、ネタは続けられます。その場でつなぐ一言は「ネタ中にセリフが飛んだときの立て直し方」で紹介しています。
覚える時間が足りないときの工夫
本番まで日がないときは、覚える量そのものを減らします。言いにくいセリフを、ふだん自分が使う言葉に言いかえるだけでも、覚えやすさは大きく変わります。
セリフの多いほうの役を、覚えるのが得意な人に入れかえる方法もあります。結婚式の余興など、紙を持ってもおかしくない場なら、流れメモを小さなカードにして持つのも1つの手です。スピーチのように1人で話す場合は、「スピーチの覚え方」も参考になります。
よくある質問
何日前から覚え始めればいいですか?
2分前後のネタなら、本番の2週間前には覚え始めると安心です。1週間で覚え、残りの1週間を2人で合わせる練習に使えます。覚えるのが早い人でも、合わせる練習の時間は別に取っておきましょう。
1人では言えるのに、相方と合わせると出てきません。
相方のセリフを、きっかけとして覚えていないのかもしれません。1人の練習では自分の言いやすいテンポで進められますが、相方と合わせるとテンポが変わります。相方にセリフを録音してもらい、その声をきっかけにして、付箋の練習をしてみましょう。
台本と一言一句同じに言わないとだめですか?
キーワードとフリの言葉は、台本どおりに言いましょう。フリとは、ボケの前に、お客さんに「ふつうはこうなる」と思わせておく部分です。それ以外のつなぎの言葉は、言いやすい形に変わってもかまいません。
まとめ
- ネタは「流れ → キーワード → 相手のセリフ」の順に覚えると、飛びにくい
- 流れは場面ごとに短い見出しをつけ、何も見ずに順番を言えるまで声に出す
- キーワードは一言一句そのまま、つなぎの言葉は多少変わってもよいと考える
- 相方のセリフの語尾を、自分が話し始める「きっかけ」として覚える
- 途中から始める、気が散る中で通すなど、崩す練習で本番に強くなる






