エピソードトークは、「状況→ずれ→オチ」の3つの部品で作ると、まとまりやすくなります。いつ・どこで・誰がを短く伝え、いつもと違ったこと(ずれ)を具体的に話し、最後の一言(オチ)で締める形です。この順番を守るだけで、ただの出来事が笑える話に変わります。
エピソードトークとは、自分に起きた出来事を、聞く人が笑えるように短く語る話のことです。この記事では、話の組み立て方と出来事の選び方、そのまま読めるオリジナルの例2本、話す前の練習の手順を紹介します。
目次目次を閉じる目次を開く
エピソードトークの基本は「状況→ずれ→オチ」
どんなエピソードトークも、3つの部品に分けられます。それぞれの役目と、長さの目安を見てみましょう。
| 部品 | 役目 | 長さの目安 | 話し方のポイント |
|---|---|---|---|
| 状況 | 聞く人に場面を思い浮かべてもらう | 1〜2文 | いつ・どこで・誰が、だけを短く |
| ずれ | いつもと違うこと、予想外のことが起きる | 3〜6文 | 数字やセリフで具体的に |
| オチ | 話を締める | 1〜2文 | 言ったら、それ以上説明しない |
状況は、あとで笑いにつながる「フリ」の役目もします。フリとは、聞く人に「ふつうはこうなるはず」と思わせておく前置きのことです。その予想がずれたところで、笑いが生まれます。ずれが笑いになる仕組みは「笑いが起きる仕組み」で詳しく紹介しています。
オチは「一番意外なところ」
オチといっても、気のきいた決めゼリフは要りません。話の中で一番意外だった事実を、最後まで取っておけば、それがオチになります。
話に向く出来事の選び方
エピソードトークの材料は、大きな事件でなくてかまいません。むしろ、誰にでも起こりそうな小さな出来事のほうが、聞く人が自分のことのように想像できて、笑いやすくなります。
話に向く出来事
- 小さな思い込みや勘違いが、最後にひっくり返った
- 同じことが2回、3回と続いて、だんだん大きくなった
- その場で自分だけが浮いていた、取り残された
- 物や機械が、思ってもみない動きをした
- 家族や友人の、予想外の一言があった
話に向かない出来事
- 誰かを悪く言う話や、その場にいない人の失敗をばらす話
- 仲間内でしか分からない話
- 自慢に聞こえる話
- 病気やけが、事故など、聞く人が笑ってよいか迷う話
話にする前に確かめること
- 「〇〇したら△△だった」と1文で言えるか
- その場にいなかった人にも、場面が浮かぶか
- 話に出てくる人が聞いても、嫌な気持ちにならないか
- 自分が笑いながら話せる出来事か
1本の話を作る手順
材料が決まったら、次の順番で組み立てます。紙に台本を書かなくても、スマホのメモに3行あれば十分です。
- 出来事を「〇〇したら△△だった」の1文で書く
- 最後に言う一言(オチ)を先に決める
- 状況を2文以内に削る(いつ・どこで・誰が)
- ずれを、1回目、2回目、3回目と少しずつ大きくなる順に並べる
- 登場人物のセリフを1つか2つ入れる
- 声に出して話し、1分前後に収まるか測る
4の「だんだん大きくする」は、聞く人を話に引きこむ一番の方法です。同じ種類のことが3回続き、3回目で予想を少し超えると、笑いが起きやすくなります。時間を測るときは、スピーチ時間の計算ツールに話を書いて貼ると、読み上げにかかる時間の目安が分かります。
オリジナル例1「しゃべるコーヒーメーカー」
1つ目は、同じことがくり返されて、だんだん大きくなるタイプの話です。職場の雑談や、飲み会で「何か面白い話をして」と言われたときに使えます。
- 時間
- 約1分
- 人数
- 1人
- 準備物
- なし
- 難しさ
- ★★
【状況】
職場に、しゃべるコーヒーメーカーが来ました。ボタンを押すと「おいしいコーヒーを入れますね」と言うタイプです。
【ずれ】
初日、課長がボタンを押しました。「おいしいコーヒーを入れますね」。課長は小さい声で「お願いします」と返していました。
次の日は、隣の席の先輩も「お願いします」。
3日目には、私も気づいたら「すみません、お願いします」と頭を下げていました。
先週、そのコーヒーメーカーが故障して、修理の人が来ました。修理が終わって、試しにボタンを押すと「おいしいコーヒーを入れますね」。
【オチ】
その瞬間、部署の5人が声をそろえて「お願いします」。
修理の人が、こっちを見て固まっていました。
この話のポイント
- 状況は2文だけです。コーヒーメーカーが「しゃべる」ことだけを伝えています
- ずれは、課長、先輩、自分と、1人ずつ増えていきます
- オチで職場の外の人(修理の人)が出てきて、みんなのくせが一気に見えます
外から見た人の目線が入ると、それまで当たり前だったことが急におかしく見えます。最後の「固まっていました」は、修理の人の様子だけを言って終えるのがコツです。
オリジナル例2「道案内のお礼」
2つ目は、自分の思い込みが最後にひっくり返るタイプの話です。自分が少し恥ずかしい思いをする話は、誰も傷つかないので、聞く人が安心して笑えます。
- 時間
- 約1分
- 人数
- 1人
- 準備物
- なし
- 難しさ
- ★★
【状況】
駅前で、「すみません、図書館はどちらですか」と道を聞かれました。毎週通っている図書館なので、自信を持って答えました。
【ずれ】
「この道をまっすぐ行って、2つ目の信号を右です」。相手の方は丁寧にお礼を言って、歩いていきました。
5分後、私も同じ道を歩いていると、2つ目の信号の手前で、さっきの方が地図を見て立ち止まっていました。
のぞきこむと、図書館は左でした。
【オチ】
2人で顔を見合わせて、なぜか私が「すみません」と頭を下げました。そこから図書館まで一緒に歩いたら、最後に「ご親切にどうも」と言われました。
道を間違えて教えて、お礼を言われたのは初めてです。
この話のポイント
- 状況の「毎週通っている」「自信を持って」がフリです。自信が大きいほど、間違えたときの落差が大きくなります
- ずれは「5分後」「2つ目の信号の手前」と、時間と場所を具体的に言っています
- 最後の一文は「〜は初めてです」の形で、話全体をひと言でまとめています
「〜したのは初めてです」「それ以来、〜しています」は、オチに迷ったときに使いやすい締めの形です。
話す前の練習の手順
エピソードトークは、台本を丸暗記すると棒読みになりがちです。覚えるのは3つの部品の流れだけにして、言い回しは毎回少し変わってもかまいません。
- 状況・ずれ・オチを、それぞれ1行ずつメモに書く
- メモを見ながら、スマホで録音して1回話す
- 聞き返して、なくても伝わる前置きや言い訳を消す
- オチの直前で、1拍(心の中で「いち」)だまる場所を決める
- メモを見ないで3回話す。言い回しは毎回変わってもよい
- 家族や仲のよい人に話して、どこで笑ったかを覚えておく
丸暗記しないで話せるようになる練習は「スピーチの覚え方」も参考になります。
録音を聞き返すときのポイント
「えーと」「なんか」が多いところは、話の流れがあいまいなところです。その部分のメモだけ書き直すと、次の1回でぐっと話しやすくなります。
よくある失敗と直し方
うまくいかないときは、たいてい次のどれかに当てはまります。話したあとに、表で確かめてみてください。
| よくある失敗 | 直し方 |
|---|---|
| 「面白いか分からないんですけど」と前置きが長い | 前置きは言わずに、状況から話し始める |
| オチを先に言ってしまう | 最後の一言を決めてから話し始める |
| 話を盛りすぎて(大げさにしすぎて)うそっぽい | 大げさにするのは言い方だけで、事実は変えない |
| 登場人物が多くて分からない | 出てくる人は2〜3人までにしぼる |
| 話しながら自分が先に笑ってしまう | オチは真顔で言い、笑うのは聞く人に任せる |
話がだらだら長くなってしまう人は「オチのない話をしてしまう人へ」で、結論から話す型も試してみてください。
よくある質問
話すような面白い出来事が起きません。
大きな出来事は要りません。「いつもと少し違った」ことなら、何でも材料になります。その日に「あれ?」と思ったことを、スマホのメモに1行だけ書くようにすると、1か月で30個の材料がたまります。
話を少し盛ってもいいですか?
言い方を大げさにするのはかまいません。「大きな音」を「窓ガラスが少し震えるくらいの音」と言う程度なら、話が生き生きします。ただし、人を悪者にする作り話や、ありえない展開は避けましょう。聞く人が作り話だと感じると、笑いにくくなります。
何分くらいの話にすればいいですか?
雑談の中なら30秒〜1分、飲み会などで「何か面白い話をして」と頼まれたときは1分前後が目安です。2分を超えると、聞く人の集中が切れやすくなります。
声や表情も工夫したほうがいいですか?
まずは組み立てを整えるのが先です。慣れてきたら、セリフの部分だけ声を少し変えると、場面が伝わりやすくなります。声や間の使い方は「面白い話し方のコツ」で紹介しています。
まとめ
- エピソードトークは「状況→ずれ→オチ」の3つの部品で作る
- 材料は小さな出来事で十分。誰も傷つかない話を選ぶ
- ずれは3回くり返して、少しずつ大きくする
- オチは、一番意外な事実を最後まで取っておくだけでよい
- 丸暗記はせず、3行のメモで流れだけ覚えて話す






