コントの設定の作り方|勘違い・立場逆転・場違いの型と例

レジの中に座る客と、客側でおじぎをするエプロン姿の店員

コントの設定は、「どこで、誰が、何をしようとしたら、どんなずれが起きるか」を1行で書いたものです。思いつかないときは、勘違い・立場逆転・場違いの3つの型のどれかに当てはめると、設定がいくつも出てきます。

ここでは、設定を1行で決める方法と、3つの型それぞれの設定例、型ごとの短い台本を紹介します。設定を決めたあとの台本の組み立て方は「コントの台本の書き方」で説明しています。

目次目次を閉じる目次を開く
  1. 設定は「場所・人物・ずれ」の1行で決める
  2. 型1 勘違い|1人だけが違う思い込みをしている
  3. 型2 立場逆転|役割や上下が入れかわる
  4. 型3 場違い|その場にふさわしくないふるまい
  5. 場所と型を組み合わせて設定を増やす
  6. 設定がうまくいかないときの直し方
  7. よくある質問
  8. まとめ

設定は「場所・人物・ずれ」の1行で決める

設定は、台本を書く前に1行で書いておきます。1行で説明できない設定は、演じてもお客さんに伝わりにくいことが多いからです。

例文1行の設定の形

〔場所〕で、〔普通の人〕が〔目的〕をしようとしたら、〔変な人・変なこと〕だった。
例:図書館で、客が本を返そうとしたら、係員が本の感想を聞くまで受け取らない人だった。

1行に書けたら、次の表で伝わりやすい設定になっているかを確かめましょう。

伝わりやすい設定伝わりにくい設定
誰でも行ったことがある場所(コンビニ、駅、学校)一部の人しか知らない場所や仕事
ずれが1つにしぼられているずれがいくつも重なっている
普通の人の目的がはっきりしている何をしに来たのかが分からない
行動や考え方がずれている人の見た目や年齢、出身をからかっている

場所は普通に、ずれだけをめずらしくするのが基本です。場所までめずらしいと、説明だけで時間がなくなってしまいます。

型1 勘違い|1人だけが違う思い込みをしている

勘違いの設定は、登場人物の1人が、場所や相手、言葉の意味を思い違いしたまま話が進む型です。お客さんだけが両方の事情を知っているので、2人の話がかみ合わないほど笑いが大きくなります。

何を取り違えるかで、次の3つに分けると考えやすくなります。

  • 場所の勘違い:公民館の料理教室を、テレビの料理番組の収録だと思っている
  • 相手の勘違い:カラオケ店の店員を、歌のオーディションの審査員だと思っている
  • 言葉の勘違い:店員の「ご一緒にいかがですか」を、一緒に食べようという誘いだと思っている

勘違いしている人は、最後まで気づかないまま進めるのが基本です。途中で気づいてしまうと、そこでずれが終わってしまいます。

時間
約40秒
人数
2人
準備物
お盆(飲み物を運ぶ代わり)
難しさ
★★

台本審査員じゃない(約40秒)

(カラオケの部屋。客が1人でマイクを持っている。店員がお盆を持って入ってくる)

店員失礼します。ウーロン茶をお持ちしました。

客(あわてて背すじを伸ばす)エントリー番号5番です。よろしくお願いします。

店員……はい?

客では、聞いてください。(目を閉じて)ラララー、ラララー……

店員あの、こちらに置いておきますね。

客(歌うのをやめて)……どうでしたか。

店員え、ウーロン茶は、普通のウーロン茶です。

客いえ、私の歌です。

店員……ごゆっくりどうぞ。

(店員が出ていく)

客保留ってことか。

客の歌は、知っている曲ではなく、その場で作った短いメロディにしてください。店員が「どうでしたか」をウーロン茶のことだと受け取る所で、勘違いがもう1つ重なっています。このように、どちらの意味にも取れるセリフを使うと、勘違いを長く続けられます。

型2 立場逆転|役割や上下が入れかわる

立場逆転は、店員と客、先生と生徒のように、ふだんの役割や上下の関係が入れかわる型です。「本来はこちらがする側」という前提をお客さんが知っているので、入れかわった瞬間に笑いが起きます。

入れかわるものによって、次のように分けられます。

  • 役割の逆転:客が、店員の代わりにレジを打ちはじめる
  • 上下の逆転:習いごとの先生が、生徒にほめてもらおうと必死になる
  • 強さの逆転:文句を言いに来た客が、いつのまにか店員に謝っている

立場は、いきなり入れかえるより、少しずつ入れかわっていくほうが自然です。最初は小さな手伝いから始め、最後には完全に入れかわっている流れにすると、無理なく見られます。

時間
約50秒
人数
2人
準備物
机(レジの代わり)、商品の代わりの箱
難しさ
★★

台本レジの中の人(約50秒)

(コンビニのレジ。新人の店員が、ぎこちなく商品を受け取る)

店員い、いらっしゃいませ。お弁当、温めますか。

客お願いします。……あ、バーコード、裏にもう1つあるよ。

店員あ、ありがとうございます。

客袋は、重いものを下にね。

店員はい。

客おはしは1膳で大丈夫。……ほら、後ろに列ができてきた。ちょっと代わろうか。

(客がレジの内側に入り、店員がレジの外に出される)

客お待たせしました。次の方、どうぞ。

店員え、あの……

客ポイントカードはお持ちですか。

店員……持ってないです。

客お作りしましょうか。

店員じゃあ、お願いします。

(間)

店員いや、ぼくが店員です。

客では、列の最後に並び直してください。

型3 場違い|その場にふさわしくないふるまい

場違いの設定は、その場所の雰囲気や決まりに合わない人やふるまいが入りこむ型です。静かな場所でにぎやかにする、ふだんの場面に大げさな形式を持ちこむ、といった組み合わせで作ります。

「場所」と「持ちこむ形式」を組み合わせると、たくさん出てきます。

  • 静かな美術館の案内係が、遊園地の乗り物の係員のように案内する
  • 家族の夕食の席で、父が記者会見のように発表をする
  • 歯みがきのやり方を、料理番組のように教える

場違いは、持ちこむ形式がはっきりしているほど伝わります。遊園地なら「安全バーをお下げください」、記者会見なら「質問のある方は挙手を」のように、その形式の決まり文句を使いましょう。

時間
約40秒
人数
2人
準備物
なし
難しさ
★

台本名画の旅へ(約40秒)

(静かな美術館。客が絵を見ている。案内係が明るい声で近づいてくる)

案内係お待たせしました。それでは、名画の世界へ出発です。

客……出発?

案内係お手元の安全バーを、しっかりお下げください。

客立って見てるだけです。

案内係右手に見えますのが、湖のほとりの風景画です。

客はい。ゆっくり見たいので……

案内係続いて左手に見えますのが、果物の絵。……おっと、ここで急カーブです。

客曲がってないです。私、一歩も動いてません。

案内係おつかれさまでした。お忘れ物のないよう、お気をつけてお降りください。

客乗ってないです。

場所と型を組み合わせて設定を増やす

1つの場所で3つの型を試すと、その場所でいちばん広がりそうな設定が見つかります。次の表は、4つの場所で試した例です。

場所勘違い立場逆転場違い
美容院客が、美容師を占い師だと思っている客が、美容師の髪を整えはじめる美容師が、料理番組のように手順を説明しながら切る
駅の窓口駅員が、客を有名人だと思いこむ客が、駅員に乗りかえを教える駅員が、旅館のようにていねいにもてなす
学校の授業先生が、授業参観を研究発表会だと思っている生徒が、先生に宿題を出す理科の実験を、通販番組のように進める
料理教室生徒が、料理教室を試食会だと思っている生徒が、先生の味付けに点数をつける先生が、運動会の号令で手順を教える

自分で作るときは、場所を縦に並べ、型ごとに1マスずつ埋めていきます。全部埋まらなくてもかまいません。いちばん早く埋まったマスが、その場所に合った型です。場所の候補が出ないときは、「ネタの素材の集め方」の観察メモが役に立ちます。

慣れてきたら、型を2つ組み合わせることもできます。たとえば「客を新しい店長だと勘違いした店員が、客に仕事の相談を始める」は、勘違いから立場逆転につながる設定です。1つ目の型で始めて途中から2つ目の型に移ると、展開に変化が出ます。

設定がうまくいかないときの直し方

台本にしてみて、うまくいかないと感じたら、設定に戻って見直しましょう。よくある悩みと直し方をまとめました。

よくある悩み原因直し方
最初のボケまで説明が長くなる場所や仕事がめずらしすぎる誰でも知っている場所に移す
ずれが1回で終わってしまうずれ方のルールが決まっていない「この人はいつも〇〇する」とルールにする
途中から何の話か分からなくなるずれが2つ以上あるずれを1つにしぼり、ほかは削る
笑いより気まずさが出る人をからかうずれになっている行動や考え方のずれに変える

ずれを1回で終わらせず、少しずつ大きくしていく方法は「エスカレートするコントの作り方」で紹介しています。

よくある質問

3つの型のうち、初心者に向いているのはどれですか?

場違いの型がいちばん作りやすいです。持ちこむ形式の決まり文句を並べるだけで、ずれが伝わります。勘違いの型は、セリフが両方の意味に取れるように書く必要があるので、慣れてから挑戦するとよいでしょう。

本当にあった出来事を、設定にしてもいいですか?

かまいません。ただし、誰の話か分かる名前や特徴は変えておきましょう。本人が知られたくない失敗や、職場の人を悪く言う話は、設定にしないのが安心です。

思いついた設定が、ほかの人のネタと似ていました。

「コンビニの店員と客」のような設定は多くの人が使う場面なので、似ること自体はめずらしくありません。ずれの中身やセリフを自分で考えていれば、別のネタになります。どこからがまねになるかは「漫才のネタに著作権はある?」で紹介しています。

まとめ

  • 設定は「場所・人物・ずれ」を1行で書いて決める
  • 場所は誰でも知っている所にして、ずれだけをめずらしくする
  • 勘違いは最後まで気づかせず、立場逆転は少しずつ入れかえる
  • 場違いは、持ちこむ形式の決まり文句を使うと伝わりやすい
  • 場所と型の表を埋めると、設定をいくつも作れる
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