音声コントは、見えない場面を「セリフ」と「音」だけで伝えるコントです。台本では、最初の15秒で場所と人物を伝え、登場人物を2〜3人にしぼるのが基本です。誰が話しているか分かるように、セリフに呼び名も入れます。
録音は、布の多い静かな部屋で、口とマイクの距離をそろえて録ります。この記事では、台本の書き方、効果音の入れ方、録音のコツを順に紹介します。そのまま使える約2分30秒の台本も載せています。
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音声コントと、映像のコントの違い
音声コントでは、表情も衣装もセットも見えません。そのかわり、カメラも顔出しも要らず、効果音1つで宇宙にも海の底にも行けます。聞く人が頭の中で場面を思い浮かべるので、作り方しだいで映像より大きな世界を描けます。
映像なら目で見せられることを、音声コントでは何で伝えるかを、先に整理しておきましょう。
| 伝えたいこと | 映像のコントなら | 音声コントなら |
|---|---|---|
| 場所 | セットや背景で見せる | 最初のあいさつや、まわりの音で伝える |
| 人物 | 衣装や見た目で見せる | 呼び名、口ぐせ、声の高さや話す速さで分ける |
| 動作 | 動きで見せる | 効果音と、それに反応するセリフで伝える |
| 表情 | 顔で見せる | 息づかい、言いよどみ、短い間で伝える |
| 時間の流れ | テロップで見せる | 短い音楽や、「もう夕方か」などのセリフで伝える |
台本の書き方|見えないものを声で伝える
台本の基本の組み立ては、ふつうのコントと同じです。設定・人物・展開の決め方は「コントの台本の書き方」で紹介しているので、ここでは音声ならではのコツにしぼります。
最初の15秒で「どこで、誰が」を伝える
聞く人は、場所が分からないうちは笑う準備ができません。最初の一言で、場所と人物の立場が分かるようにしましょう。説明のためだけの不自然なセリフにならないよう、あいさつや呼びかけ、案内の放送を使うのがコツです。
「お電話ありがとうございます。こちら、再配達受付センターです」
「本日もご乗車ありがとうございます。この電車は、各駅に止まります」
「受付番号12番の方、3番の窓口へどうぞ」
「いらっしゃいませ。ご注文がお決まりでしたら、お呼びください」
人物は2〜3人にしぼり、声と口ぐせで分ける
声だけでは、人物が多いと誰が誰だか分からなくなります。2〜3人にしぼり、声の高さ、話す速さ、ていねいな言葉かくだけた言葉か、口ぐせで違いをはっきりさせましょう。
新しい人物が出てきたときや、話し手が入れかわるときは、「店長」「お客さん」のように呼び名をセリフに入れます。方言や話し方で、特定の地域や立場の人をからかう人物は作らないでください。
動作は「音」と「反応のセリフ」で伝える
お皿が割れたことを伝えるなら、割れる音を鳴らし、すぐに「あっ、店長のお気に入りのお皿……」と反応させます。音だけでは何の音か分かりにくくても、反応のセリフがあれば、何が起きたかがはっきり伝わります。
間は短めにし、黙るときは音で埋める
映像なら表情で持たせられる間(ま)も、音声だけだと「止まってしまったのかな」と思われがちです。わざと黙る場面は短めにし、時計の音やため息など、小さな音を入れて「黙っている時間」だと分かるようにします。
台本の書き方の形
効果音や音楽は、セリフとは別の行に、かっこで書きます。たとえば「(効果音:ドアのチャイム)」「(音楽:静かなピアノを小さく)」のように書きます。こうしておくと、録音や編集のときに、必要な音の一覧がすぐに作れます。
長さは、読み上げると1分あたり300字ほどが目安です。台本の長さから時間を出せる「ネタの時間チェック」で確かめると、録り直しが減ります。
そのまま使える台本「再配達受付センター」
電話の自動音声とのやりとりを描いた、約2分30秒の台本です。電話はもともと声だけのやりとりなので、音声コントの題材に向いています。名前や細かい言い回しは、演じる人に合わせて変えてください。
- 時間
- 約2分30秒
- 人数
- 3人(音声と担当を1人で演じ分けてもよい)
- 準備物
- 録音できるスマホなど、電話の呼び出し音とボタンの音(自分で録っても、素材でもよい)
- 難しさ
- ★★
台本再配達受付センター(約2分30秒)
(効果音:電話の呼び出し音が2回鳴って、つながる)
音声お電話ありがとうございます。こちらは、再配達受付センターです。
客あ、よかった。つながった。
音声ご用件を、番号でお選びください。再配達のご依頼は、1を。
(効果音:ボタンを押す「ピッ」という音)
音声……押すのが早いです。最後までお聞きください。
客え、聞こえてるの?
音声再配達のご依頼は、1を。お届けの時間を変えたい方は、2を。最近いいことがなかった方は、3を。
客3、ちょっと気になるな……。いや、1です。
(効果音:「ピッ」)
音声お荷物の問い合わせ番号を入力し、最後にシャープを押してください。
(効果音:「ピッピッピッ」と長く続き、最後にもう一度「ピッ」)
音声お疲れさまでした。
客ねぎらってくれた。
音声ご希望の日にちを、お話しください。
客明日で。
音声「あさって」ですね。
客明日です。
音声「あした」ですね。かしこまりました。ご希望の時間帯を、お話しください。
客午前中で。
音声「午前中」。……本当に起きられますか?
客心配された。
音声前回も「午前中」をご希望でしたが、チャイムが3回鳴っても、お出になりませんでした。
客記録が残ってる。
音声念のため、お持ちの目覚まし時計の数を、お話しください。
客……1個です。
音声3個をおすすめします。
客おすすめされた。
音声ここからは、担当者がおうかがいします。そのまま、お待ちください。
(効果音:保留の音楽。誰かが鼻歌で歌っているような、のんびりした短いメロディ)
客保留の音楽、鼻歌なの?
(鼻歌がとぎれて、小さなせきばらい)
担当お電話代わりました。担当の者です。
客今、鼻歌を歌ってましたよね。
担当……ご用件をどうぞ。
客ごまかした。明日の午前中に、再配達をお願いしたいんです。
担当かしこまりました。明日の午前中に、お届けにうかがいます。
客よかった。
担当ちなみに、お荷物の中身は「目覚まし時計」と書いてあります。
客……自分で頼んでた。
担当明日は、起きられるといいですね。
(効果音:電話が切れる「プツッ」という音)
演じるときのコツ
音声役は、最初は機械らしく平らな話し方で始め、少しずつ人間らしさを出していくと、ずれが大きくなります。客役のツッコミは、電話口らしく、声を張らずにぼそっと言うほうが合います。最後の「目覚まし時計」は、途中の会話を思い出してもらう一言なので、ゆっくり、はっきり言いましょう。
保留の鼻歌は、知っている曲ではなく、その場で作った短いメロディにしてください。知られた曲を使うと、鼻歌でも著作権にかかわることがあります。
効果音と音楽の入れ方
音声コントの効果音は、役目で3つに分けて考えると、入れすぎを防げます。台本「再配達受付センター」の例と合わせて見てみましょう。
| 音の種類 | 役目 | 再配達受付センターでの例 |
|---|---|---|
| まわりの音 | 場所の空気を伝える | 客のいる部屋の、時計の小さな音 |
| 動作の音 | 何が起きたかを伝える | ボタンの「ピッ」、電話が切れる音 |
| 区切りの音 | 場面の切りかわりを伝える | 担当者に代わる前の保留の音楽 |
まわりの音は、セリフのうしろで小さく流し続けます。動作の音は、起きた瞬間に鳴らし、反応のセリフの前に置きます。区切りの音は、場面と場面のあいだだけに使います。
声そのものを加工する方法もあります。編集アプリで低い音と高い音を少し削ると、電話を通したような声になります。この台本なら、音声役と担当役の声だけを加工すると、どちらが電話の向こうにいるのかが自然に伝わります。効果音の探し方や利用規約の確かめ方は、「動画の効果音の使い方」にまとめています。
家でできる録音のコツ
声だけで聞かせるので、録音のよしあしがそのまま聞きやすさに表れます。特別な部屋がなくても、次のことに気をつければ、家でも聞きやすく録れます。
部屋とマイクの準備
カーテンやソファのある、布の多い部屋で録ります。クローゼットを開けて、つるした服のほうを向いて録ると、声の響きが減ります。口からマイクまでは、こぶし1つか2つ分を目安にし、録っているあいだはその距離を変えないようにしましょう。
「パ」や「ポ」を言うと、息がマイクに当たって「ボフッ」という音が入ることがあります。マイクの前に付ける網(ポップガード)を使うか、マイクを口の正面から少しずらして防ぎます。マイクの選び方は「スマホの外付けマイクの選び方」で紹介しています。
一緒に録るか、別々に録るか
| 録り方 | よいところ | 気をつけること |
|---|---|---|
| 同じ部屋で一緒に録る | 掛け合いの間が自然になる | 声が重なると、あとで直しにくい |
| 別々に録って合わせる | 1人ずつ録り直せる。遠くの人とも作れる | 相手の声を聞きながら録らないと、間が不自然になる |
はじめての人は、一緒に録るほうが掛け合いのリズムをつかみやすいです。別々に録るときは、先に録った相手の声をイヤホンで聞きながら、自分のセリフを録りましょう。
録るときの工夫
顔が見えなくても、表情や身ぶりを付けて演じると、声に気持ちがのります。座るより立って録るほうが、声が出しやすい人も多いです。言い間違えたら、手を1回たたいてから少し前のセリフから言い直すと、編集のときに音の波の形で場所が見つけやすくなります。
録音を始める前に確かめること
- エアコン、換気扇を止め、スマホの通知を切ったか
- 台本は、めくる音がしないように台に置いたか
- 水を用意したか(口が乾くと、小さな雑音が入りやすい)
- 試し録りで、いちばん大きな声が割れないか確かめたか
- 何も話さない部屋の音を、10秒ほど録ったか(編集で、すき間を埋めるのに使う)
録ったあとの仕上げ
録音が終わったら、編集アプリで次の順番に仕上げます。音声コントは、編集で間を整えるだけでも、聞きやすさが大きく変わります。
- 言い間違いや、手をたたいた目印の部分を切る
- セリフとセリフのあいだの間を、詰めたり広げたりして整える
- 台本に書いた効果音と音楽を、決めた場所に置く
- 声、効果音、音楽の大きさをそろえる
- 少し時間をあけて、イヤホンで最初から最後まで通して聞く
最後に通して聞くときは、台本を見ないで聞きましょう。台本なしで場所や人物が分かれば、声だけで伝わるコントになっています。
録ったものを動画として投稿したいときは、1枚の絵と字幕を付けるだけでも形になります。絵を少し動かしてアニメにする方法は「コントアニメの作り方」で紹介しています。
よくある質問
1人でも音声コントは作れますか?
作れます。声の高さや話す速さを変えて、1人で2役を演じ分ける方法があります。また、電話の相手の声は聞かせず、こちらの返事だけで相手の言葉を想像させる形なら、1人の声だけで成り立ちます。
声を変えるのが苦手です。
声の高さを無理に変えなくても大丈夫です。話す速さ、ていねいな言葉かくだけた言葉か、口ぐせを変えるだけでも、人物は分かれて聞こえます。マイクとの距離を役ごとに少し変えるのも、聞こえ方を変える方法の1つです。
どのくらいの長さにすればいいですか?
はじめは2〜3分がおすすめです。声だけで長く聞くのは疲れやすいので、慣れるまでは短く作り、笑いどころを詰めておきましょう。SNS に載せるなら、1分ほどに縮めた版を作るのも手です。
まとめ
- 最初の15秒で「どこで、誰が」を、あいさつや呼びかけで伝える
- 人物は2〜3人にしぼり、呼び名・口ぐせ・話す速さで分ける
- 動作は効果音と、それに反応するセリフで伝える
- 効果音は「まわりの音・動作の音・区切りの音」の役目で選ぶ
- 録音は布の多い静かな部屋で、マイクとの距離をそろえて録る






