ツッコミが上手くなるいちばんの近道は、相手の話を最後まで聞いてから、短く、やわらかく返すことです。会話のツッコミは、相手をやりこめる言葉ではありません。「今の、面白かったよ」と相手に知らせる合図です。
この記事では、日常会話で使いやすいツッコミの5つの型と、きつく聞こえない言い方、毎日の会話でできる練習の手順を紹介します。型を1つずつ試していけば、言葉は少しずつ自然に出るようになります。
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会話のツッコミは「面白さに気づいた合図」
ツッコミとは、話の中のおかしなところを指摘して、笑いに変える一言のことです。漫才では、お客さんを笑わせるために、大きな声で強くツッコむことがあります。けれども、ふだんの会話で同じ強さを使うと、相手を責めているように聞こえてしまいます。
会話のツッコミの目的は、相手の話を面白くすることです。相手が少し大げさに言ったところや、とぼけたところを拾うと、話した人がうれしくなり、場が明るくなります。舞台のツッコミとのちがいを表にまとめました。
| くらべること | 舞台のツッコミ | 会話のツッコミ |
|---|---|---|
| 目的 | お客さんを笑わせる | 相手の話を面白くする |
| 声の大きさ | 大きく、はっきり | ふだんより少し明るい程度 |
| 長さ | 短く言い切る | 短く、語尾をやわらかく |
| 主役 | ボケとツッコミの2人 | 話している相手 |
| 気をつけること | テンポ(話の速さとリズム) | 相手の気持ちと、その場の空気 |
漫才やコントで使うツッコミの種類を知りたい人は、「ツッコミの種類一覧」を読んでみてください。この記事では、ふだんの会話での使い方にしぼって紹介します。
日常会話で使えるツッコミの5つの型
会話で使いやすい順に、5つの型を並べました。難しさは★の数で表しています(★1つがいちばん簡単です)。最初は★1つの型から試してみましょう。
| 型 | 言い方のひな形 | 難しさ |
|---|---|---|
| 1. くり返す | 「えっ、〇〇?」 | ★ |
| 2. 気持ちを言う | 「それは〇〇だね」「〇〇なの?」 | ★ |
| 3. 言い直す | 「それは〇〇じゃなくて、〇〇だね」 | ★★ |
| 4. 例える | 「〇〇みたいになってるよ」 | ★★ |
| 5. 乗ってから戻る | 「いいね、〇〇しよう。……いや、〇〇だよ」 | ★★★ |
1. くり返す
相手の言葉の中で、いちばんおかしなところを、そのままくり返します。言葉を考える必要がないので、いちばん手軽な型です。少し驚いた声で言うだけで、ツッコミになります。
「昨日、電車で寝過ごして、終点まで行っちゃった」
「終点まで?」
「しかも折り返しの電車で、また寝過ごした」
「また?」
くり返すのは、1つの話で2回くらいまでにしましょう。毎回くり返すと、ただのオウム返しに聞こえてしまいます。
2. 気持ちを言う
話を聞いて、自分が感じたことを短く口に出す型です。「恥ずかしい」「気になる」という気持ちを、そのまま言葉にします。相手を否定しないので、目上の人にも使いやすい型です。
「駅で、こっちに手を振ってくる人がいてね。笑顔で振り返したの」
「うん」
「うしろにいた人に振ってた」
「うわ、それは恥ずかしい。振った手、どうしたの?」
「頭をかくふりをした」
気持ちを言ったあとに、「どうしたの?」と続きを聞くと、相手がもう一度笑いを取れます。ツッコミで話を終わらせずに、相手に返すのがコツです。
3. 言い直す
相手が大げさに言ったところや、言葉の選び方がずれたところを、正しい言葉に言い直します。「〇〇じゃなくて、〇〇だね」の形に当てはめると作りやすくなります。
「今朝、軽くジョギングしてきたよ」
「どこまで?」
「駅まで。電車に乗り遅れそうで」
「それはジョギングじゃなくて、ダッシュだね」
言い直しは、正しい言葉のほうが短いほど笑いになりやすい型です。長い説明になりそうなら、くり返す型に切りかえましょう。
4. 例える
様子を、別の身近なものに置きかえて言う型です。休日に12時間寝たと聞いたら、「それはもう冬眠だね」と返します。聞いた人の頭に絵が浮かぶと、笑いが起きやすくなります。
例えは慣れるまで少し時間がかかるので、思いつかないときは無理に使わなくて大丈夫です。作り方は「例えツッコミのコツ」で、手順と例をくわしく紹介しています。
5. 乗ってから戻る
相手の冗談に一度乗ってから、「……いや」と戻ってツッコむ型です。ノリツッコミとも呼ばれます。会話では、乗る部分を一言だけにすると短く決まります。
「今日の会議は全部やめて、みんなで公園に行きませんか」
「いいですね、お弁当作ってきます。……いや、資料の締め切り、今日ですよ」
乗る部分が長くなると、相手が「本気にした?」と戸惑います。乗るのは一言、戻るのはすぐ、と覚えておきましょう。
きつく聞こえないツッコミの言い方
同じ内容でも、言い方ひとつで「面白いツッコミ」にも「冷たい一言」にもなります。きつく聞こえやすい言い方と、やわらかい言い方をくらべてみましょう。
| きつく聞こえる言い方 | やわらかい言い方 |
|---|---|
| 「は? 意味わかんない」 | 「どういうこと?」(笑いながら) |
| 「バカじゃないの」 | 「なんでそうなるの」 |
| 「つまんない」 | 言わずに、ほかの話に移る |
| 「おかしいでしょ」 | 「それは、さすがにおかしいね」 |
| 「ありえない」 | 「そんなこと、ある?」 |
やわらかく聞こえる言い方には、共通点が3つあります。
- 人ではなく、話や出来事にツッコむ(「あなたが変」ではなく「その話が変」)
- 語尾に「〜ね」「〜の?」をつけて、問いかけの形にする
- 声は大きくせず、口もとをゆるめて言う
体に触れるツッコミはしないことも大切です。肩や頭を叩くしぐさは、舞台の上の決まりごとです。ふだんの会話では、軽いつもりでも相手を驚かせたり、痛い思いをさせたりします。
目上の人にツッコむときは
上司や先輩には、敬語のまま「気持ちを言う」型を使うと安心です。「それは、さすがに盛っていませんか」「その続き、すごく気になります」のように、相手を立てる言い方にしましょう。
ツッコむタイミングと、拾わないほうがいい話
ツッコミは、相手が言い終わってから、ひと呼吸おいて入れます。話の途中でかぶせると、相手が用意していた笑いどころをつぶしてしまいます。語尾まで聞き、「言い終わった」と分かってから口を開きましょう。
ツッコむのが遅れても、気にしなくて大丈夫です。会話では、少しあとから「さっきの、終点まで行った話だけど」と拾い直すこともできます。話を覚えていてもらえると、話した人はかえってうれしいものです。
反対に、ツッコまないほうがいい話もあります。話している人が、笑ってほしいのか、聞いてほしいのかを見分けましょう。
ツッコむ前に一瞬確かめること
- 相手は笑ってほしくて話しているか(悩みや本気の相談ではないか)
- 相手の見た目や年齢、家族、出身の話になっていないか
- 失敗して落ち込んでいる最中ではないか
- まだ打ち解けていない相手ではないか
- 同じことに、すでにほかの人がツッコんでいないか
迷ったときは、ツッコミより相づちを選ぶと、失敗が少なくなります。聞き役のときに場を明るくする返し方は「相づちで笑いを生むには?」で紹介しています。
毎日の会話でできる練習の手順
ツッコミは、頭の中で言葉を探す練習と、口に出す練習の両方で上手くなります。次の順番で、1つの段階を1週間くらい続けてみてください。
- 心の中でツッコむ:テレビや動画、街の看板などに、声に出さずに一言ツッコむ
- ひとりで声に出す:家で1日3回、心の中のツッコミを小さな声で言ってみる
- くり返す型を使う:家族や仲のよい友人との会話で、1日1回だけ使う
- 気持ちを言う型を足す:「それは気になる」など、感想を一言そえる
- 言い直す型と例える型を足す:思いついたときだけ使い、無理には入れない
会話のあとは、うまくいったツッコミを1行だけメモに残しましょう。うまくいった言い回しは、別の場面でもまた使えます。
2人でできる練習「大げさ報告ゲーム」
家族や友人と2人でできる練習です。1人が、身の回りの小さな出来事を、わざと大げさに報告します。もう1人は、5つの型のどれかでツッコみます。役を交代しながら続けましょう。
- 時間
- 5分
- 人数
- 2人
- 準備物
- なし(報告するお題をメモしておくと楽)
- 難しさ
- ★
「大ニュースです。今朝、駅までの信号が全部青でした」
「全部? それはニュースだね」
「おかげで駅に3分早く着いて、ホームで3分待ちました」
「乗った電車は、いつもと同じだね」
練習用のお題10(相手のひと言と返しの例)
ひとりで練習するときは、相手のひと言を読んで、返しを考えてみましょう。真ん中の列は返しの一例です。先に自分で考えてから見ると、練習になります。
| 相手のひと言 | ツッコミの例 | 型 |
|---|---|---|
| 「打ち合わせ、すぐ終わるから」(2時間後) | 「すぐって、2時間のことだったの?」 | 気持ちを言う |
| 「道には自信があるから、ついてきて」(同じ角を3回曲がる) | 「この角、3回目だよ」 | くり返す |
| 「スタンプカード、10個たまったら期限が切れてた」 | 「10個もためたのに?」 | くり返す |
| 「部屋の片づけ、ほぼ終わった。あとは床だけ」 | 「床がいちばん広いよ」 | 言い直す |
| 「家を出てから、鍵を確かめに3回戻った」 | 「3回も? もう家にいたほうが早いよ」 | くり返す |
| 「新しい傘、買った日に電車に置いてきた」 | 「傘、デビューの日に引退?」 | 例える |
| 「ちょっとだけのつもりが、漫画を全巻読んでた」 | 「ちょっとの単位が全巻なんだ」 | 気持ちを言う |
| 「節約のために、いちばん安いお茶を3本買った」 | 「3本買ったら、節約にならないよ」 | 言い直す |
| 「明日から早起きする。目覚ましも新しく買った」 | 「いいね、私も買う。……いや、まず今のを使おう」 | 乗ってから戻る |
| 「段ボール、開けないまま玄関に5個ある」 | 「玄関が、倉庫の入り口になってるよ」 | 例える |
返しは1つの正解があるわけではありません。同じひと言に、型を変えて2つ3つ返しを作ってみると、言葉の引き出しが増えていきます。
よくある質問
ツッコミのつもりが、相手を怒らせてしまいました。
まずは短く謝りましょう。「さっきの言い方、きつかったね。ごめん」で十分です。次からは「気持ちを言う」型を中心にすると、相手を否定する言い方になりにくくなります。
ツッコミを考えているうちに、話が先に進んでしまいます。
最初は「くり返す」型だけを使いましょう。相手の言葉をそのまま言うので、考える時間がいりません。慣れてくると、くり返しながら次の言葉が浮かぶようになります。
まわりにボケる人がいないので、ツッコむ場面がありません。
会話のツッコミは、ちょっとした大げさな言い方や、言いまちがいにも使えます。自分から話を広げる返しも覚えたい人は、「返しが上手い人になるには?」も参考にしてください。
まとめ
- 会話のツッコミは、相手の話を面白くするための合図
- 最初は「くり返す」「気持ちを言う」の2つの型から使う
- 人ではなく話にツッコみ、語尾をやわらかくする
- 相手が言い終わってからひと呼吸おき、悩みや見た目の話には入れない
- 心の中、ひとりで声に出す、会話で1日1回、の順に練習する






