返しが上手い人は、言われた言葉を否定せずに受けて、「乗る」「ずらす」「褒め返す」のどれかで返しています。とっさのセンスに見えますが、この3つの型を知っていれば、言われた一言から返しを組み立てられます。
この記事では、3つの型を例文で紹介します。場面別の切り返しの例と、毎日の会話でできる練習法もまとめました。
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返しが上手い人がやっていること
切り返しとは、相手に言われた言葉を受けて、会話を一歩先に進める返事のことです。返しが上手い人の会話には、共通する習慣があります。
- 最後まで聞いてから返す(話の途中で返事を考えない)
- 「いや」「でも」と、否定から入らない
- 返したあとに、相手が話しやすいすき間を残す
そのうえで、返しの中身は次の3つの型に分けられます。
| 型 | やること | 言い方のひな形 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 乗る | 相手の言葉を受け入れて、話を足す | 「はい。しかも〜」 | 冗談を言われたとき |
| ずらす | 言葉の意味や見方を少しずらす | 「〇〇なら、〜です」 | あいさつや、決まった質問 |
| 褒め返す | 相手のよいところを見つけて返す | 「〇〇さんのおかげです」 | 褒められたとき、お礼を言われたとき |
ツッコミとの違いも押さえておきましょう。ツッコミは、話の中のおかしなところを指摘して笑いに変える一言です。切り返しは、言われたことを受けて会話を先に進める返事なので、指摘する必要がありません。ツッコミの入れ方は「ツッコミが上手くなる方法」で紹介しています。
こんな返しは避ける
説教で返す、相手を下げて返す、自分を下げすぎて返す、の3つは会話を止めてしまいます。返しは短く、相手も自分も気持ちよく終われるものにしましょう。
型1:乗る(相手の言葉に乗って広げる)
乗る型は、相手の言葉を「はい」と受け入れて、さらに一言足す返し方です。即興劇でよく使われる「受け入れて、足す」という考え方と同じです。相手の話を否定しないので、会話がどんどん広がります。
「その荷物、旅行にでも行くの?」
「はい。会議室まで、1泊2日で」
「今日、なんだか気合い入ってるね」
「分かります? 朝ごはんを2回食べてきました」
「〇〇さんって、いつも準備がいいよね」
「はい。遠足の前の日は、眠れないタイプです」
乗るときは、相手が使った言葉をそのまま使うのがコツです。「旅行」と言われたら旅行の話で、「気合い」と言われたら気合いの話で返します。足す一言は、相手の予想より少しだけ大げさにすると笑いになります。
型2:ずらす(意味や見方を少しずらす)
ずらす型は、言葉の意味や、ものを見る立場を少しだけ変えて返す方法です。決まりきったあいさつや質問ほど、ずらしたときの意外さが大きくなります。ずらし方は、主に3つあります。
| ずらし方 | 言われたこと | 返しの例 |
|---|---|---|
| 言葉どおりに受け取る | 「手が空いてたら、手伝ってくれない?」 | 「右手が空いてます。左手はコーヒーです。すぐ置きますね」 |
| 大きさを変える | 「何か変わったことあった?」 | 「靴ひもの結び方を変えました。今年いちばんの大改革です」 |
| 立場を変える | 「パソコン、動きが重いね」 | 「パソコンも、月曜日はつらいみたいです」 |
ずらしたあとは、本来の返事もきちんと添えましょう。「すぐ置きますね」のように最後は相手の言葉に応えると、ふざけているだけに聞こえません。
また、相手が真剣に聞いているときは、ずらさずに答えます。たとえば上司に「進み具合はどう?」と聞かれたときにずらすと、はぐらかしたように受け取られます。ずらす型は、雑談やあいさつのときに使いましょう。
型3:褒め返す(相手を立てて返す)
褒め返す型は、褒められたときやお礼を言われたときに、相手のよいところを見つけて返す方法です。「いえいえ、全然です」と打ち消すと、会話がそこで止まってしまいます。いったん受け取ってから、相手を立てるのがコツです。
| 言われたこと | 打ち消してしまう返し | 褒め返し |
|---|---|---|
| 「その資料、見やすいね」 | 「いえ、全然です」 | 「ありがとうございます。〇〇さんの資料をお手本にしました」 |
| 「助かったよ、ありがとう」 | 「大したことしてないです」 | 「〇〇さんの説明が分かりやすかったからです」 |
| 「仕事、早いね」 | 「そんなことないです」 | 「〇〇さんの指示が分かりやすいからです。……と言っておくと、次も分かりやすくしてもらえるので」 |
| 「その色、似合うね」 | 「安物ですよ」 | 「ありがとうございます。今日いちばん言われたかった言葉です」 |
3つ目の例のように、褒め返したあとに本音を少しだけ足すと、笑いも生まれます。ただし、お世辞が続くと気持ちが伝わりにくくなります。褒めるところは、本当にそう思ったところにしましょう。
3つの型を使った会話例
休憩時間の会話で、3つの型がどう使われているかを見てみましょう。
台本休憩時間の会話(約1分)
先輩お、今日はお弁当? 自分で作ったの?
自分はい。と言っても、昨日のおかずの再放送です。
先輩再放送って。でも、彩りがきれいじゃない。
自分ありがとうございます。先輩に褒められたので、明日は新作にします。
先輩じゃあ明日、ひと口ちょうだい。
自分いいですね。では、審査員席を用意しておきます。
先輩そこまでしなくていいよ。
自分先輩のお弁当も、いつもおいしそうですよね。何かコツがあるんですか?
「再放送」は残り物を言いかえた、ずらす型です。「明日は新作」は褒め言葉を受けて広げる乗る型、「審査員席」はさらに乗った返しです。最後は先輩のお弁当を褒めて質問し、相手が話す番を作っています。
場面別・切り返しの例文
よくある一言への返しをまとめました。自分の言いやすい言葉に直して使ってください。
| 言われたこと | 返しの例 | 型 |
|---|---|---|
| 「今日、来るの早いね」 | 「はい。昨日の自分との約束を、珍しく守りました」 | 乗る |
| 「今日も暑いね」 | 「はい。駅まで歩いただけで、ひと仕事終えた気分です」 | ずらす |
| 「〇〇さんって、何でも知ってるね」 | 「知っているのは、近所のパン屋さんの焼き上がり時間くらいです」 | ずらす |
| 「無理しないでね」 | 「ありがとうございます。無理しない練習、がんばります」 | ずらす |
| 「緊張してる?」 | 「はい。今、心臓が早口になってます」 | ずらす |
| 「また会議?」 | 「はい。会議と会議のすき間に、少しだけ仕事があります」 | ずらす |
| 「週末、晴れるといいね」 | 「はい。てるてる坊主を、3体つるしておきます」 | 乗る |
| 「手伝おうか?」 | 「ありがとうございます。〇〇さんがいると、百人力です」 | 褒め返す |
| 「お疲れさま。今日は大変だったね」 | 「はい。でも、〇〇さんの差し入れで半分回復しました」 | 褒め返す |
| 「その企画、いいね」 | 「ありがとうございます。〇〇さんに言われると、自信がわきます」 | 褒め返す |
「好きなタイプは?」「休日は何してるの?」のような、よく聞かれる質問への答え方は「「好きなタイプは?」への上手い返し」にまとめています。
切り返しが上手くなる練習
返しは、あらかじめ考えておいた分だけ、とっさに出やすくなります。ひとりでできる練習と、2人でできる練習を紹介します。
ひとりでできる練習「3つの型で返す」
- ふだんよく言われる一言を、5つ書き出す
- それぞれに、乗る・ずらす・褒め返すの3つの型で返しを書く
- いちばん言いやすい返しに丸をつけ、声に出して言ってみる
乗る:「よくぞ聞いてくれました。……特に何もないです」
ずらす:「おかげさまで、毎朝ちゃんと朝が来ています」
褒め返す:「〇〇さんに聞かれると、何か話したくなりますね。実は……」
2人でできる練習「乗るだけ会話」
1人が「週末の計画」などのテーマを言い、2人で交互に「いいね、しかも〜」と話を足していきます。否定したり、話を止めたりしたら交代です。乗る型が、自然に口から出るようになります。
- 時間
- 3分
- 人数
- 2人
- 準備物
- なし
- 難しさ
- ★
「週末、2人で山に登ろう」
「いいね。しかも、お弁当を持っていこう」
「いいね。しかも、おにぎりは10個にしよう」
「いいね。しかも、1個は山頂でお供えしよう」
よくある質問
とっさに返せず、あとから思いつきます。
最初はそれで大丈夫です。あとから思いついた返しをメモしておくと、似た場面でそのまま使えます。会話がまだ続いていれば、「さっきの話ですけど」と少しあとから返しても、十分に喜ばれます。
返しが寒いと言われるのが怖いです。
切り返しの目的は、笑いを取ることより、会話を先に進めることです。笑いが起きなくても、相手が話しやすくなっていれば成功です。ウケなかったときの立て直し方は「滑ったときの返し方」で紹介しています。
仕事の場でも使えますか?
褒め返す型は、仕事の場でも使いやすい返し方です。乗る型とずらす型は、相手が冗談を言ったときや、休憩中の雑談で使いましょう。取引先との打ち合わせなど、改まった場では控えめにするのが安心です。
まとめ
- 返しが上手い人は、否定せずに受けて、乗る・ずらす・褒め返すのどれかで返している
- 乗るときは、相手の言葉をそのまま使って少し大げさに足す
- ずらしたあとは、本来の返事も添える
- 褒められたら打ち消さずに受け取り、相手を立てて返す
- 3つの型で返しを書く練習と、乗るだけ会話で、とっさの一言が出やすくなる






