あがり症でも人を笑わせられる?克服したい人が少しずつ慣れる練習と考え方

舞台袖で台本を持つ女性に、親指を立てて励ます男性

あがり症でも、人を笑わせることはできます。緊張していることを先に認める一言や、前もって準備した短い一言は、その場の思いつきに頼らないので、あがり症の人ほど使いやすい笑いです。克服を目指すなら、緊張をなくそうとせず、「緊張したままでも最後まで話せた」という経験を、小さな場から少しずつ積み重ねるのが近道です。

この記事では、気持ちが楽になる考え方と、あがり症の人でも取りやすい笑いの入れ方、小さな場から慣れる練習の段階表、体の緊張をゆるめる方法を紹介します。つらさが強いときの相談先についても書いています。

目次目次を閉じる目次を開く
  1. あがり症の「克服」は、緊張したままでも話せること
  2. 気持ちが楽になる4つの考え方
  3. あがり症の人でも取りやすい笑い
  4. 小さな場から少しずつ慣れる練習
  5. 体の緊張をゆるめる方法
  6. 本番で頭が真っ白になったときの一言
  7. つらさが強いときは、一人で抱えこまない
  8. よくある質問
  9. まとめ

あがり症の「克服」は、緊張したままでも話せること

あがり症とは、人前に出ると強く緊張して、声が震えたり頭が真っ白になったりしやすい状態のことです。心臓がどきどきする、手に汗をかく、声が上ずる。こうした反応は、大事な場面に体が備えようとして起きるものです。

そのため、「緊張しない自分」を目標にすると、少しでも緊張したときに「やっぱりだめだ」と感じてしまいます。目標は、緊張していても、伝えたいことを最後まで話せることにしましょう。

苦しくなりやすい目標楽になる目標
緊張しないで話す緊張しても、最後まで話す
一度もつかえずに話すつかえたら言い直して続ける
全員を笑わせる準備した一言で、1人がくすっと笑えば十分
堂々として見せる伝えたいことを1つ伝える

目標を右の列に変えるだけで、「できた」と感じられる回数が増えます。小さな「できた」が積み重なることが、人前に慣れていくいちばんの力になります。

気持ちが楽になる4つの考え方

1. 緊張は、外からは思ったほど見えない

自分では大きく感じる声や手の震えも、聞いている人からは分かりにくいことがよくあります。聞き手は、話し手の様子より、話の中身に耳を傾けています。「ばれている」と思いこまず、話の内容に気持ちを向けましょう。

2. 聞き手は、うまくいってほしいと思っている

自分が聞く側だったときを思い出してみてください。話す人が言葉につかえても、「がんばれ」と思いながら聞いていたのではないでしょうか。会場にいる人の多くは味方なので、小さな冗談にも笑ってくれやすいものです。

3. 自分ではなく、相手と内容に目を向ける

緊張しているときは、「どう見られているか」に気持ちが集中しがちです。会場の中でうなずいてくれる人を1人見つけて、その人に話しかけるつもりで話しましょう。「この話を、あの人に伝える」と考えると、自分の緊張を気にする時間が減ります。

4. 1回ごとに「できたこと」を数える

練習や本番のあとは、できなかったことより、できたことを先に書き出します。「最後まで話せた」「準備した一言を言えた」のような小さなことで十分です。反省は、そのあとに1つだけにしましょう。

あがり症の人でも取りやすい笑い

あがり症の人が苦手なのは、その場で面白いことを考える笑いです。反対に、前もって決めておける笑いなら、緊張していても使えます。会場が一度笑うと、話している自分の緊張もふっとゆるみます。

1. 緊張を認める一言で、先に笑ってもらう

緊張を隠そうとすると、かえって体に力が入ります。最初に自分から緊張を明かすと、聞き手は「分かる」と共感して、小さな笑いが起きやすくなります。

例文緊張を認める一言の例

声が震えているのは、マイクのせいではなく、私のせいです。
人前が苦手なので、話す順番を全部この紙に書いてきました。今日は、紙のほうが私より落ち着いています。

緊張を一言で笑いに変える型は、「スピーチの緊張を笑いに変えるには?」で詳しく紹介しています。

2. 準備したひとことを、決めた場所で言う

その場で思いつかなくて済むように、笑いの一言はメモに書いておきます。作り方は次の3つの手順です。

  1. 本当にあった、小さな出来事を1つ選ぶ
  2. 数字か、少し大げさな言い方を1つ入れる
  3. 言う場所を決めて、メモに書いておく(話し始めの2〜3文目がおすすめ)
例文準備したひとことの例(直す前・直したあと)

直す前:最近、ランニングを始めました。
直したあと:最近、ランニングを始めました。今のところ、いちばん長く続いているのは、ウェアを選ぶ時間です。

直す前:通勤電車で本を読んでいます。
直したあと:通勤電車で本を読んでいます。今の本は、1か月かけて5ページ目まで来ました。

自分のことを軽く笑いにする話し方は、自虐(じぎゃく)と呼ばれます。好かれる自虐と、聞き手が困る自虐の違いは「自虐ネタの例と使い方」にまとめています。

3. 笑いが起きなくても、話が続く言い方にする

あがり症の人がいちばん怖いのは、笑いが起きずにしんとすることです。準備したひとことは、笑いがなくても話が普通に続く内容にしておきます。上の例なら、笑いが起きなくても「ランニングを始めた人の話」として、そのまま次の文へ進めます。

笑いを待つのは1秒だけと決めておくと、しんとしても気になりません。笑いが起きたら、それはおまけだと考えましょう。

小さな場から少しずつ慣れる練習

人前で話すことに慣れるには、緊張の小さい場面から順に経験していくのがおすすめです。いきなり大勢の前に立つのではなく、階段を1段ずつ上るように進めます。右の列は、目標に慣れてきたら足す、笑いの練習です。

段階場面の例目標笑いの練習
1家族や友人に、今日あったことを1分話す1分間、止まらずに話す話の中に、数字を1つ入れる
2お店や窓口で、質問を1つする相手の目を見て、最後まで言うなし
3会議で、一言だけ発言する「賛成です。理由は〜」と一文言うなし
4朝礼や定例会で、30秒の報告をするメモを見ながらでも最後まで言う緊張を認める一言から始める
53〜5人の前で、1分話す1人ずつ顔を見ながら話す準備したひとことを1つ入れる
610人ほどの前で、1分のスピーチをする最初の一言を落ち着いて言う笑いを1秒待ってから次へ進む
7歓送迎会などで、乾杯や締めの挨拶をする決めた言葉を、大きめの声で言う準備したひとことのあとに乾杯する
8結婚式のスピーチや余興など、大きな場で話す準備したことを最後まで伝える笑いは1〜2か所にしぼる

練習の進め方

  1. 表の中から、「少し緊張するけれど、できそう」な段階を選ぶ
  2. その段階の場面を、1〜2週間のうちに何回か経験する
  3. 毎回、話す前と話したあとの緊張を、0〜10の数字で記録する
  4. 話す前の緊張が、最初のころより下がってきたら次の段階へ進む
  5. つらすぎると感じたら、1つ前の段階に戻ってかまわない
例文練習の記録の例

場面:朝の定例会で、30秒の報告
話す前の緊張:8
話したあとの緊張:4
できたこと:メモを見ながら、最後まで言えた。準備したひとことも言えた
次にやること:最初の一文だけ、メモを見ずに言う

笑いの練習は、笑いが起きたかどうかではなく、「決めた一言を言えたか」で記録します。記録を続けると、「話したあとは、思っていたより緊張が下がっている」ことにも気づけます。

段階5・6で使える「1分の話」の型

話す内容が決まっていると、それだけで緊張は軽くなります。1分の話は、次の4つで組み立てると、覚えることが少なくて済みます。覚えるのは、最初のあいさつと最後の締めだけです。

  1. あいさつと名前(覚えておく)
  2. 今日の話のテーマを一言で
  3. 具体的な出来事を1つ
  4. 締めの一言(覚えておく)
例文1分の話の例(職場の朝礼)

おはようございます。総務の〇〇です。
少し緊張していますが、よろしくお願いします。
今日は、最近始めた「5分だけ片づけ」の話をします。
毎晩、寝る前に5分だけ、机の上を片づけることにしました。
最初の日は、机の上からペンが9本出てきました。そのうち3本は、インクが出ませんでした。
5分だけなら続けられて、朝の探し物が減りました。
皆さんも、よかったら5分だけ試してみてください。
以上です。ありがとうございました。

「ペンが9本」のような具体的な数字が1つあると、小さな笑いが生まれ、会場の空気がやわらぎます。「そのうち3本はインクが出ない」と、もう一歩だけ足すと、笑いが少し大きくなります。話す内容に困ったら、「1分間スピーチのネタ一覧」から1つ選んで、まず家族に話してみるのもいいでしょう。

体の緊張をゆるめる方法

緊張すると、呼吸が浅くなり、肩や手に力が入ります。次の方法は、席に座ったままでもできるので、出番の前に試してみてください。

  1. 息を長く吐く:4つ数えながら鼻から吸い、8つ数えながら口から細く吐く。これを3回くり返す
  2. 肩をすとんと落とす:肩を耳に近づけるように上げて3秒止め、力を抜いて一気に落とす
  3. 手を握って開く:5秒ほど両手をぎゅっと握り、ぱっと開く。手の震えが気になるときに
  4. 足の裏を感じる:立ったまま、足の裏全体に体重がかかっていることを感じる

特に大事なのは、吸うことより吐くことです。緊張すると、つい大きく吸おうとしがちですが、先に長く吐くと、次の息は自然に入ってきます。

出番の前に確かめること

  • 最初に言う一言を、声に出して1回言ってみたか
  • 話す順番と、準備したひとことを書いたメモを持っているか
  • 長く吐く呼吸を、3回したか
  • うなずいてくれそうな人を、1人見つけたか

本番で頭が真っ白になったときの一言

どれだけ準備しても、本番で言葉が出なくなることはあります。そんなときに言う一言を決めておくと、「止まっても大丈夫」と思えて、それだけで気持ちに余裕が生まれます。

こんなとき使える一言余裕があれば、笑いに変える一言
話し始めに声が震える「少し緊張していますが、どうぞよろしくお願いします」「声は震えていますが、中身は震えないように話します」
次に言うことを忘れた「失礼しました。メモを確認します」「大事なことを言おうとしたら、大事すぎて忘れました。メモを見ます」
言いまちがえた「失礼しました。言い直します」「今のは、緊張している人の見本でした。言い直します」
頭が真っ白で続かない「まとめると、今日お伝えしたいのは〇〇です」「頭が真っ白なので、結論だけお伝えします。〇〇です」
声がかすれた「水を一口いただきます」「水を一口いただきます。のどだけ、準備が足りませんでした」

真ん中の列の一言だけでも十分です。余裕があるときに右の列を使うと、止まったこと自体が小さな笑いに変わり、会場も自分もほっとできます。メモの作り方は「スピーチのカンペの作り方」で紹介しています。

つらさが強いときは、一人で抱えこまない

この記事で紹介した練習は、日常の緊張に慣れていくためのものです。次のような状態が続くときは、練習だけでなんとかしようとしないでください。

医療機関に相談したほうがいいとき

  • 人前に出る予定の何日も前から、眠れない、食べられない日が続く
  • どきどきや息苦しさ、吐き気などが強く出る
  • 人前に出る場面を避けるために、仕事や学校を休むようになった
  • 人前に出ることを考えるだけで、つらい気持ちが続く

こうしたときは、心療内科などの医療機関に相談しましょう。職場の産業医や、学校の相談室に話してみるのも一つの方法です。つらさを人に話すことは、弱さではなく、自分を守るための大切な行動です。

よくある質問

あがり症は、性格だから変わらないのでしょうか?

人前で緊張しやすいかどうかには、人それぞれの差があります。それでも、話す場に慣れることや、準備のしかたを変えることで、楽に話せる場面を増やしていくことはできます。緊張しやすい人は、準備を丁寧にできる人でもあります。

笑いを取ろうとすると、よけいに緊張しませんか?

「面白いことを言わなければ」と考えると、緊張は強くなります。笑いの一言は1つだけにして、準備したものを決めた場所で言う、と決めておきましょう。すると、その一言が「ここまで来れば一息つける」目印になります。

原稿を全部覚えたほうが安心ですか?

全部を覚えようとすると、1か所忘れただけで頭が真っ白になりやすくなります。最初の3文と最後の一言だけを覚え、真ん中は話す順番をメモに書いておく方法がおすすめです。

人前で話す機会が、ほとんどありません。

段階1〜3のように、家族との会話やお店での質問も立派な練習です。スマホで自分が1分話す姿を録画して見返すだけでも、「人に見られながら話す」ことに少しずつ慣れていけます。

まとめ

  • あがり症の克服は、緊張をゼロにすることではなく、緊張したままでも話せるようになること
  • 緊張を認める一言や、準備したひとことなら、あがり症でも笑いが取れる
  • 笑いの一言は、笑いが起きなくても話が続く内容にし、待つのは1秒だけ
  • 小さな場から順に経験し、緊張を数字で記録しながら1段ずつ進む
  • 眠れない日が続くなど、つらさが強いときは医療機関に相談する
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