グリーンバックで笑える合成動画を撮るなら、まず「ありえない場所で、本人は大まじめ」というずれを1つ決めます。撮影では、しわのない緑の布をピンと張り、人物は布から1メートル以上離れて立ちます。布と人物を別々に照らし、緑の入っていない服で撮れば、編集で緑の部分だけがきれいに抜けます。
この記事では、合成で笑いを取るアイデアと、その笑いを生かす撮り方を紹介します。家でできる準備、照明、服の色、合成の流れも順にまとめ、すぐ撮れる30秒の台本を2本付けました。
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合成で笑いを取るアイデア
緑など1つの色だけを透明にして、うしろに別の画像を重ねる方法を、クロマキー合成といいます。グリーンバックは、そのために人物のうしろに置く緑の背景のことです。人の肌や髪には緑がほとんど含まれないので、緑だけを消しやすいのです。
合成の笑いは、たいてい「場所や大きさ」と「演技」のずれから生まれます。冷蔵庫の中なのに、リポーターのように落ち着いて話す。机の上で小さくなったのに、山登りのように本気で進む。背景がありえないほど、演技はまじめにするのが基本です。
| 案 | 用意する背景 | 笑いどころ | 難しさ |
|---|---|---|---|
| 冷蔵庫の中から生中継 | 自分の家の冷蔵庫の中を撮った写真 | 寒そうにしながら、食材の様子を真剣に伝える | ★★ |
| 散らかった部屋の緊急ニュース | 自分の部屋の写真 | 脱ぎっぱなしの靴下を、大事件のように伝える | ★ |
| 宇宙からのお知らせ | 使ってよいとされている宇宙の画像 | 宇宙飛行士からの連絡が「洗濯物を取り込んで」 | ★ |
| 南の島からこんにちは | 海辺の写真と、自分の部屋の写真 | 背景がずれ落ちて、本当は家にいたことがばれる | ★★ |
| あと5分だけ | 同じ窓の外を朝・昼・夕方・夜に撮った写真 | 「あと5分」と言うたびに、窓の外だけ日が暮れていく | ★★ |
| 机の上の大冒険 | 自分の机を低い位置から撮った写真 | 小さくなった自分が、消しゴムを岩のように乗りこえる | ★★★ |
| もう1人の自分と相談 | 自分の部屋の写真 | 同じ人が2人並び、片方が都合のいいことばかり言う | ★★★ |
場所と演技のずれで笑わせる考え方は、「コントの設定の作り方」で紹介している「場違い」の型と同じです。まずは★1つの案で、合成そのものに慣れてから、大きさや人数で遊ぶ案に進みましょう。
背景には、自分で撮った写真か、利用規約で使ってよいとされている素材を使います。ネットで見つけた画像や、実在の番組のセットやロゴをまねた背景は使いません。家族の顔や近所の家、車のナンバーが写った写真も避けましょう。番組風にするときの注意は「余興ムービーを番組風にするには?」にまとめています。
家でできる準備|布をしわなく張る
グリーンバック用の緑の布は、手ごろなものが多く売られています。無地でつやのない、明るい緑の布なら、ほかのものでも代わりになります。上半身を映すなら幅1.5〜2メートルほど、全身を映すなら床まで垂らして足元にも敷くのが目安です。「机の上の大冒険」のように全身を小さく合成する案では、足元まで緑にしておきます。
いちばん大事なのは、しわをなくすことです。しわの部分は影になって色がむらになり、きれいに抜けません。
- 布にアイロンをかけるか、しわを伸ばしておく
- 突っ張り棒やカーテンレールに、布の上の端をクリップで留める
- 下の端も引っぱって留め、布をピンと張る
- 人物が立つ位置を、布から1〜2メートル離れたところに決め、床に目印を貼る
- スマホを固定し、人物のまわりが画面の端まで緑で埋まっているか確かめる
人物が布の近くに立つと、布に影が落ちたり、緑の光が肌や髪の縁に映りこんだりします。この映りこみを「色かぶり」といいます。布から離れて立つだけで、影と色かぶりの両方が減ります。
照明|布と人物を別々に照らす
グリーンバックの照明は、布を照らす光と、人物を照らす光を分けて考えます。布の明るさにむらがあると、暗い部分だけ緑が残ってしまうからです。
| 照らすもの | 置き場所 | 家にある物での代わり |
|---|---|---|
| 布(背景) | 布の左右の斜め前から、同じ明るさで | デスクライト2台、クリップ式のライト |
| 人物の顔 | スマホのうしろの、少し上から | 窓の光、白い紙ごしのデスクライト |
| 人物の髪の縁 | 人物の斜めうしろの上から、弱く | 小さなライト(なくてもよい) |
光はやわらかいほうが、むらが出にくくなります。ライトの前に白い紙や薄い白い布をかざすか、白い壁に当ててはね返すと、光が広がります。紙や布をかざすときは、ライトに触れないよう離し、熱くならないLEDのライトを使ってください。
人物の斜めうしろから弱い光を当てると、髪の縁が明るくなり、背景と分かれて抜けやすくなります。窓の光は時間で変わるので、カーテンを閉め、部屋のライトだけで撮るほうが安定します。
照明を当てたら、試し撮りで確かめること
- 布の明るさがそろっているか(真ん中だけ明るく、端が暗くなっていないか)
- 布に人物の影が落ちていないか
- 顔が布より暗くなっていないか
- 人物の縁が、緑っぽく光っていないか
服と小道具は「緑を避ける」
グリーンバックでは、緑の部分がすべて透明になります。緑の服を着ると、体が透けて背景が見えてしまいます。服や小道具は、次の表を見て選びましょう。
| 避けたいもの | 理由 | 代わりに |
|---|---|---|
| 緑・黄緑・青緑の服 | 服の部分まで透けてしまう | 赤、オレンジ、紺、茶色など |
| 光る素材(スパンコール、エナメル) | 緑の光を映して、縁が透ける | 綿など、つやのない生地 |
| 細かいしま模様やチェック | 細い線がちらついて見える | 無地か、大きめの柄 |
| 透けるもの(ペットボトル、レース) | うしろの緑が見えて透ける | 中が見えない小道具 |
| 眼鏡 | レンズに緑が映りこむ | 少しあごを引くか、ライトの角度を変える |
どうしても緑の衣装を使いたいときは、青い布で撮る「ブルーバック」にする方法もあります。その場合は、ジーンズなど青い服が抜けやすくなるので気をつけましょう。髪は、細かい毛先がばらけると縁がちらつくので、まとめるか整えておきます。
緑が透けることを、わざと笑いに使う
先にスマホを固定して、誰もいない机を撮っておきます。そのあと、緑の手袋をはめ、腕も緑の布で覆ってペンを持ち、同じ位置から撮ります。緑を抜いて先ほどの机の写真を重ねると、手が消えて、ペンがひとりでに字を書いているように見えます。
笑いを生かす撮り方|背景に合わせて演じる
合成の笑いは、背景と演技がぴたりと合ったときに起きます。演じる人には背景が見えていないので、撮る前に「どこに何があるか」をそろえておくことが大切です。
カメラを固定し、背景と高さ・光の向きをそろえる
撮るときは、スマホを三脚などで固定し、最後まで動かさないのが基本です。背景は止まった写真なので、カメラだけが動くと、人物と背景のずれがすぐに分かってしまいます。明るさやピントも、試し撮りで決めたら固定しておきます。
背景の写真は、撮影の前に用意しておきます。目の高さで撮った背景なら、カメラも人物の目の高さに置きます。背景の写真で光が左から差しているなら、人物にも左から光を当てると、自然になじみます。部屋で撮るときの明るさや音の基本は、「スマホでコント動画を撮影するコツ」で紹介しています。
視線の先に目印を貼る
冷蔵庫の中のジャムの瓶を見つめる場面でも、演じる人には瓶が見えていません。視線や指先がずれると、背景と演技がかみ合わず、笑いどころがぼやけます。背景の写真をスマホで見せて「瓶は右下」のように位置を決めてから演じましょう。画面に入らない横の壁などに小さな目印を貼っておくと、何度撮っても視線がそろいます。
小さくなる合成は、全身を撮って縮める
「小さくなった自分」を見せるときは、布の前で全身を撮り、編集で小さく縮めて背景に置きます。背景の写真は、机すれすれの低い位置から撮ると、消しゴムや鉛筆が大きく見え、大きさの差がはっきりします。人物を撮るカメラも少し低めに置くと、見上げる角度がそろいます。
足元が浮いて見えるときは、足元を画面の下の端で切るか、座っている場面にすると目立ちません。手を速く振るとぶれて縁がにじむので、動きは大きく、ゆっくりにしましょう。
もう1人の自分は、同じ場所で2回撮る
同じ人が2人並ぶ合成は、カメラと照明を動かさずに、立ち位置を左右に変えて2回撮ります。それぞれ緑を抜いて同じ背景に並べれば、2人が同じ部屋にいるように見えます。帽子をかぶる・かぶらないなど、役ごとに見た目を1つ変えると、どちらが話しているか分かりやすくなります。
相手の役のセリフの間は、黙って聞いている演技をします。1回目の録音をイヤホンで聞きながら2回目を演じると、会話の間がそろいます。
背景が変わる笑いは、気づく瞬間を数えて演じる
背景がずれ落ちる、急に変わるといった笑いは、編集で背景を動かして作ります。演じる人は、背景が動く瞬間を見られません。「言い終わったら2つ数えて振り返る」のように、気づく瞬間を決めて演じると、編集で背景の動きを合わせやすくなります。
背景が変わる瞬間に効果音を1つ合わせると、笑いどころがはっきりします。音を入れるタイミングと、素材の利用規約の確かめ方は、「動画の効果音の使い方」で紹介しています。
きれいに合わせるか、わざと雑にするか
合成の笑いには、2つの方向があります。きれいになじませて「本当にそこにいる」ように見せるか、わざと切り抜きのように雑にして、手作り感で笑わせるかです。どちらにするかを先に決めておきましょう。中途半端な仕上がりは、見る人には失敗に見えてしまいます。
合成の流れ
多くの動画編集アプリには、緑を消す「クロマキー」の機能があります。名前は「グリーンスクリーン」「背景を消す」など、アプリによって違います。おおまかな流れは次のとおりです。
- 背景にする画像や動画を用意する
- 編集アプリで、背景を下の段、グリーンバックで撮った映像を上の段に並べる(この段をトラックといいます)
- 上の映像にクロマキーの機能を使い、消す色として緑を選ぶ
- 抜け具合を少しずつ調整する。強すぎると服や髪まで透け、弱すぎると緑が残る
- 人物の縁に緑が残ったら、縁をなじませる機能や、緑を消す機能で整える
- 布が届いていない画面の端は、切り取る機能で消す
- 人物と背景の明るさと色味をそろえる
- 大きな画面で通して見て、縁がちらついていないか確かめる
背景を途中で動かすときは、背景の写真を2枚重ね、上の1枚の位置を時間に合わせて動かします。多くのアプリでは、動き始めと止まる位置に印を付けると、そのあいだを自動で動かしてくれます。
本番の前に、10秒だけ試し撮りして、その場で合成してみるのがおすすめです。緑が残る、体が透けるといった問題は、撮影の日のうちなら照明や服を変えて直せます。
すぐ撮れる30秒の台本2本
どちらも1人で撮れる台本です。背景は自分で撮った写真を使います。
冷蔵庫の中から生中継
背景は、自分の家の冷蔵庫の中を撮った写真です。笑いどころは、まじめな口調のまま、冷蔵庫の中の小さな出来事を大事件のように伝えるところです。
- 時間
- 30秒
- 人数
- 1人
- 準備物
- 緑の布、冷蔵庫の中を撮った写真、厚手の上着、マイク代わりのペン
- 難しさ
- ★★
台本冷蔵庫の中から生中継(約30秒)
(背景は冷蔵庫の中の写真。リポーターは厚手の上着を着て、寒そうに立っている)
リポーターこちら、冷蔵庫の中です。中はとても冷えています。
リポーター右手をご覧ください。いつからあるのか分からない、ジャムの瓶です。
リポーターふたが固く閉まったまま、誰にも開けてもらえず、季節が過ぎています。
(背景がぱっと明るくなる。リポーターがうしろを振り返る)
リポーターあっ、扉が開きました。大きな手が伸びてきます。
リポーター……麦茶を持っていきました。今日も麦茶です。
リポーター以上、冷蔵庫の中からお伝えしました。早く閉めてください。
扉が開く場面は、編集で背景の写真を少し明るくすると、光が差し込んだように見えます。扉が開く音を足すと、さらに場面が伝わります。
南の島からこんにちは
背景は、海辺の写真と、部屋干しのタオルが並んだ自分の部屋の写真の2枚です。部屋の写真を下の段に置き、その上に海の写真を重ねておきます。
- 時間
- 30秒
- 人数
- 1人
- 準備物
- 緑の布、海辺の写真、自分の部屋の写真、つばの広い帽子、うちわ、扇風機
- 難しさ
- ★★
台本南の島からこんにちは(約30秒)
(背景は海辺の写真。つばの広い帽子をかぶり、うちわであおぎながら立っている)
話し手みなさん、こんにちは。今日は南の島に来ています。
話し手聞こえますか、この波の音。(波の音が流れる)
話し手潮風が気持ちいいですね。(扇風機の風で、シャツのすそがゆれる)
(海の写真が、ゆっくり下にずれ始める。話し手は気づかない)
話し手空も海も、どこまでも青くて……
(海の写真がすっかり落ち、部屋干しのタオルが並んだ部屋が見える)
(話し手がうしろを振り返り、無言で前に向き直る)
話し手……こちらの島は、タオルがよく乾きそうです。
(前を向いたまま、うしろに手を伸ばして写真を引き上げるしぐさ。海の写真が元に戻る)
話し手以上、南の島からお伝えしました。
演じる人は、「どこまでも青くて」と言い終わったら2つ数えてから振り返ります。引き上げるしぐさは大きく、ゆっくり行い、その手の動きに合わせて海の写真を元の位置に戻しましょう。
よくある質問
緑の布がないときは、何で代わりになりますか?
無地でつやのない、明るい緑のものなら代わりになることがあります。緑の模造紙を何枚かつないで壁に貼る方法もあります。暗い緑や、柄の入ったものは抜けにくいので、試し撮りで確かめてから使いましょう。
スマホの編集アプリでも合成できますか?
スマホの編集アプリにも、クロマキーの機能を持つものが多くあります。ただ、無料の範囲では使えないこともあります。撮影の前に、試し撮りの映像で合成できるかを確かめておくと安心です。
部屋が狭くて、布から離れて立てません。
布から離れられないときは、布を照らすライトを少し強くして、人物の影を薄くしましょう。上半身だけを映し、腕を体の前で動かすようにすると、影が布に落ちにくくなります。
縁が少しちらつきます。笑いの動画なら気にしなくていいですか?
短い動画なら、少しのちらつきは気にならないことも多いです。ただ、ちらつきが目立つと見る人の目がそちらに向き、ボケのひと言が届きにくくなります。直しきれないときは、人物に白い縁取りを付けるなどして、わざと切り抜きらしく見せるのも1つの方法です。
まとめ
- 合成の笑いは「ありえない背景」と「まじめな演技」のずれで作る
- 布はしわなく張り、人物は布から1メートル以上離れて、布と人物を別々に照らす
- 緑の服、光る素材、透けるもの、細かいしま模様は避ける
- カメラは固定し、背景の写真と高さ・光の向き・視線の先をそろえる
- 本番の前に、試し撮りを1本合成して確かめる






