昔話をコメディにするには、みんなが知っている話の筋はそのままにして、登場人物の性格や話の見方を1か所だけずらすのが近道です。筋を知っているお客さんは「ここはこうなるはず」と思って見ているので、小さなずれでも笑いが起きます。この記事では、コメディに変える手順と、学芸会で使える「ももたろう」のオリジナル台本、配役の工夫を紹介します。
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昔話がコメディに向いている理由
昔話は、子どもから大人まで、話の筋を知っている人がほとんどです。お笑いでは、笑いの前に「ふつうはこうなる」と見せておく部分をフリといいます。昔話は、そのフリが最初からできあがっている話なのです。
登場人物の役割がはっきりしているのも、昔話のよいところです。やさしいおじいさん、強い桃太郎のように、お客さんが思いうかべる人物像があるので、性格を少し変えるだけで笑いになります。
絵本や映像の文章は写さない
昔話そのものは、昔から語りつがれてきた話なので、筋を使って自由に台本を作れます。ただし、今の作家が書いた絵本の文章や絵、アニメのセリフは、その人たちの作品です。文章は写さずに、筋だけを借りて自分たちの言葉で書きましょう。
昔話をコメディに変える4つの手順
台本は、次の4つの手順で作ります。いきなりセリフを書き始めるより、場面を先に決めておくほうが、話がぶれません。
- 昔話を1つ選び、話を4〜6つの場面に分けて書き出す
- 下の表から、「ずらし方」を1つだけ決める
- 場面ごとに、ずらし方に合ったボケを1〜2個入れる
- 終わり方を決める(元の結末に戻すか、ひとひねりする)
| ずらし方 | やり方 | 例 |
|---|---|---|
| 性格を変える | 登場人物の性格を、元の話と逆にする | 怖がりな鬼、のんびりした桃太郎 |
| 今の物を持ちこむ | 昔の世界に、今の道具やしくみを入れる | 玉手箱に、分厚い説明書が入っている |
| 立場を逆にする | 助ける側と、助けられる側を入れかえる | 鬼のほうが、桃太郎たちに助けを求める |
| わき役の目で語る | 主役ではない人物や物の目線で話を進める | 転がるおむすびの目線で、おむすびころりんを語る |
| 一瞬の場面を大きくする | 元の話では短い場面を、長く大げさに演じる | 玉手箱を開けるかどうか、浦島太郎がずっと迷う |
ずらし方は1つにしぼるのがコツです。いくつも混ぜると、何が面白いのかが伝わりにくくなります。ずらし方の型は「コントの設定の作り方」でも詳しく紹介しています。
台本「ももたろう おとものオーディション」
桃太郎が、おともを選ぶオーディションを開く台本です。おともたちの「とくいなこと」が少しずつずれていて、最後は鬼が仲間になりたがります。たたかう場面がないので、低学年から高学年まで演じられます。
- 時間
- 約5分
- 人数
- 8人から(役を分ければ、何人でも)
- 準備物
- 「おとも募集中」の看板、画用紙で作った大きなきびだんご、かご、動物と鬼のお面
- 難しさ
- ★★
台本ももたろう おとものオーディション(約5分)
(舞台の右に、段ボールの木と岩。ナレーター1・2が左のはしに立つ)
ナレーター1むかしむかし、桃から生まれた桃太郎は、鬼ヶ島へ行くことになりました。
ナレーター2でも、ひとりでは心細い。そこで、おともを募集することにしました。
(桃太郎が「おとも募集中」の看板を持って、中央に出てくる。おばあさんが、大きなきびだんごを持って追いかけてくる)
おばあさん桃太郎や、きびだんごを持っておいき。
桃太郎ありがとう、おばあさん。……大きくない?
おばあさんはりきって、大きく作りすぎてしもうた。
桃太郎(両手で受け取って、よろける)重い。
(おばあさんが手をふって下がる)
桃太郎では、オーディションを始めます。おともになりたい人は、どうぞ。
(犬が、かごを持って元気よく出てくる)
犬はい。犬です。よろしくお願いします。
桃太郎とくいなことは何ですか。
犬ほえることです。ワン。
桃太郎ほかには?
犬ほえることです。ワンワン。
桃太郎……ほえることしかないの?
犬大きくほえることも、できます。ワオーン。
桃太郎合格です。きびだんごを1つどうぞ。(大きなきびだんごを差し出す)
犬大きい。……おべんとうは自分で持ってきたので、だいじょうぶです。(かごを見せる)
桃太郎しっかりしてる。
(さるが、手をくるくる回しながら出てくる)
さるはい。さるです。
桃太郎とくいなことは何ですか。
さる木のぼりです。
桃太郎ここには、木がないけど。
さるでは、のぼったつもりで。(その場で、木にのぼるまねをする)……てっぺんにつきました。
桃太郎見えないけど、すごそう。合格です。
(きじが、両手を広げて出てくる)
きじはい。きじです。
桃太郎とくいなことは何ですか。
きじ空を飛ぶことです。
桃太郎見せてください。
きじ(両手をばたばたさせる)……今日は、風がないので。
桃太郎……合格です。
ナレーター1こうして、おともが3びき、そろいました。
ナレーター2ところが、そこへ、もう1人。
(鬼が、もじもじしながら出てくる)
鬼あの……ぼくも、受けていいですか。
桃太郎たち鬼だ。
(桃太郎と動物たちが、びっくりして後ろに下がる)
桃太郎……とくいなことは、何ですか。
鬼鬼ヶ島までの、道あんないです。
さるそれは助かる。
きじ飛ばなくてすむ。
犬ワン。
桃太郎でも、どうして鬼が、ぼくたちと行きたいの?
鬼ぼくたちは、村の宝物を持っていってしまいました。返そうって仲間に言いたいけど、1人では言えなくて。
(少し静かになる)
桃太郎……そうだったんだ。合格です。みんなで一緒に行こう。
犬・さる・きじおー。
桃太郎はい、鬼さんにも、きびだんご。(大きなきびだんごを差し出す)
鬼(両手で受け取って、よろける)重い。
(全員で顔を見合わせて笑う)
ナレーター1こうして桃太郎たちは、鬼の道あんないで、鬼ヶ島へ向かいました。
ナレーター2鬼ヶ島では、みんなで大きなきびだんごを分けて食べ、宝物は村に返されました。
ナレーター1・2めでたし、めでたし。
(全員で舞台の前に並び、一礼)
この台本では、おともが合格する理由をずらし、最後に鬼の立場を逆にしています。おばあさんの場面の「重い」を、鬼の場面でもう一度使っているので、終わりの近くで笑いが起きやすくなります。
全員に見せ場を作る配役の工夫
学芸会では、クラスの全員が舞台に立つことも多く、役の数と人数が合わないことがあります。次のような工夫で、全員に見せ場を作りましょう。
| 工夫 | やり方 |
|---|---|
| 1つの役を交代で演じる | 場面ごとに桃太郎役を交代する。同じはちまきを付けて、同じ役だと分かるようにする |
| グループで1つの役 | 犬チーム3人のように、セリフを声をそろえて言う |
| ナレーターを分ける | 1人1〜2文ずつにして、4〜6人で読む |
| 体で背景を作る | 木や岩、川を、体やお面で表す。風にゆれる木の動きで笑いも取れる |
| 受けに来る動物を増やす | ねこ、うさぎなど、オーディションを受ける動物を足す |
鬼の役をいやがる子がいたら、この台本のように、やさしい鬼にすると引き受けてもらいやすくなります。役は、セリフの多さを本人と相談して決めましょう。
動物を増やすときのセリフの型
「とくいなことは何ですか」「〇〇です」「見せてください」「(少しずれた技)」の4行で1組になります。人数が多いクラスでは、この4行を足すだけで、出番を増やせます。
ほかの昔話で作るときのヒント
ももたろう以外の昔話でも、同じ手順で台本が作れます。ずらし方の例を、昔話ごとにまとめました。
| 昔話 | ずらし方の例 |
|---|---|
| 浦島太郎 | 玉手箱を開けるかどうか、浦島太郎がずっと迷う |
| 鶴の恩返し | 「のぞかないでください」と言った鶴が、何度ものぞいてほしそうに戻ってくる |
| おむすびころりん | 転がるおむすびの目線で、穴に落ちるまでを語る |
| ねずみのよめいり | いちばん強いお婿さん探しを、対戦番組のように進める |
| 金太郎 | クマとのすもうに、行司と実況がついて大会になる |
昔話の中には、こわい場面や乱暴な場面があるものもあります。学芸会では、そうした場面を話し合いや仲直りに変えると、見る人も演じる子も安心です。もっと短いコントから始めたいときは「小学生が演じるコント台本」も参考にしてください。
よくある質問
学芸会の劇は、何分くらいにすればいいですか?
学校が決めた持ち時間に合わせます。子どもは話すのがゆっくりなので、セリフは1分200字ほどで見積もると余裕があります。この台本は約5分なので、長くしたいときは、動物を増やしたり、鬼ヶ島の場面を足したりしましょう。
元の話と結末を変えてもいいですか?
大丈夫です。昔話は、語る人によって少しずつ形を変えながら伝わってきました。「桃から生まれる」「鬼ヶ島へ行く」のような大事な所を残せば、ももたろうの話だと伝わります。
体育館の舞台で、後ろの席まで伝わるか心配です。
お面や看板を大きく作り、動きを大げさにすると、遠くからでも分かりやすくなります。舞台での見え方は「文化祭のコントネタ」で紹介しているコツも使えます。
まとめ
- 昔話をコメディにするには、筋はそのままに、ずらし方を1つだけ決める
- 絵本の文章は写さず、筋だけを借りて自分たちの言葉で書く
- 場面ごとにボケを1〜2個入れ、くり返しのセリフで笑いを重ねる
- 交代制やグループ役、受けに来る動物を増やす工夫で、全員に見せ場を作る






