公明新聞リレー連載「授業に笑いを!お笑い教師同盟の挑戦」
第15回「子どもの聞く力を育てる」
〜ツッコミのあるクラスに〜
福岡亮治(京都府)
(『公明新聞』2007年8月11日掲載)


 小学校教師になる前にいた芸人の世界での上下関係は厳しいものがありました。ある先輩との関係は,日常的に会話することすら大変でした。なぜかというとこの先輩,会話の途中で常にボケるのです。芸人にとって,ボケた人を無視し,ツッコミを入れないとこれは“罪”になります。ましてや相手が先輩だと,ツッコマなかったことを真剣に怒られてしまいます。だから,その先輩との会話は,常に聞き逃さないように真剣に話を聞いていました。
 いつも緊張感を持らなければならず,安らぐことのできない先輩ではありましたが,私に,常に“聞く耳”をもたせたことはさすがだったと思っています。思い返すとたくさんのことを教えていただいた一番信頼のおける先輩でした。
子ども達に,いかに“聞く耳”を持たせるかということが,私の教育現場での課題でもあります。そこでこの先輩との間柄を,教育現場にも応用しようと思っています。それは「ツッコミのあるクラス」をつくることです。教師が常にボケ,子どもがツッコム図式をつくるのです。
 “ベタな笑い”の世界では,ボケに対して,ツッコミがあって初めて笑いにつながります。たとえば,教師がボケただけでは,笑いは起こりませんが,子どもがツッコムと笑いが起こります。例えば算数の問題を黒板に提示する時に「りんごが二つあります。さて何でしょう?」と問題を言いきる前に問いかけをする程度のボケでよいのです。子ども達からは「いや分からんし!」「最後まで・・・」などのツッコミがきます。そして,そのことで黒板に注目するようになります。たった20秒程度のロスで効果は抜群です。その笑いの手柄は,ボケた教師では無く,的確につっこんだ子どもです。ツッコミが成功した子どもは快感を得,周囲の子どもはそれがうらやましくなり,われ先にとツッコミを競い合い笑いの手柄を取りに来るようになります。
 もし,そんな理想的な教室が出来上がれば・・・子ども達は常にツッコムタイミングを狙って,集中して話を聞くことになるでしょう。ツッコムという事は,実は相手の話をしっかりと聞き,会話の文脈を的確に判断する力が必要でありとても難しいのです。もちろん,ツッコマない周りの子も笑いたいので一連の流れを聞き逃さないように集中して聞きます。
 私のクラスではこうして,子ども達がすごい集中力で聞くようになりました。いつの間にか授業もスムーズになり,クラス全体が「話を聞きたい」という積極的な雰囲気になったのです。ただ,この取り組みはただ単に「学級の中で笑いを取る」のではなく,あくまで「聞く耳を持たせる」のであることを留意しておかなければ,ただの面白いだけの先生になってしまいますが・・・。


この文章は、2007年に公明新聞の教育欄に掲載されたものです。掲載にあたっては、公明新聞の許諾を得ております。