土作 彰「脱線トークの技術」

『授業づくりネットワーク』(学事出版)2009年1月号特集
「お笑いの世界に学ぶ4つの教育技術」
脱線トークの技術
土作 彰(奈良県・小学校)


1 脱線トークの効果

 大きく2つのタイプがある。
一つ目。ある実践をする際に、少々本筋から離れて「ボケ」てみて、結果的に本筋の実践を強化する効果である。(実践に付随するタイプ)
 二つ目。「本筋」から一見外れているかのように見える他の実践を示し、実はその関連性を示して子どもに「なるほど!」と感じさせる効果である。(実践に並列するタイプ)
本稿ではこれら2つについて典型を示し、そのポイントと効果について述べる。

2 実践に付随するタイプ

【典型実践 1】 
 典型的な実践としては、理科実験「コーラが真水に?」がある。やり方の概略は次の通りである。

1 市販のうがい薬「イソジン」を水で薄めたものをコカコーラのペットボトルに満たす。一見いかにもコカコーラに見える。

2 「このコーラが一瞬にして他の飲み物に変わったらびっくりするよね?」と言って、ペプシコーラの空ペットボトルに移し替える。「はい!コカコーラがペプシコーラに変わったあ!」と拍手を強要する。ここで教室中大失笑となる。

3 「不満だよね?じゃあ、今度はこれを元のコカコーラに戻すからね。」といって再びコカコーラのボトルに戻す。二回目の大失笑となる。

4 最後に、アスコルビン酸(ビタミンC)を底に仕込んだ南アルプス天然水のペットボトルに「コーラ」を注ぐ。還元されたイソジン(ヨウ素液)はヨウ化水素となり一瞬で透明になる。今度は大失笑ではない。教室は大感動に包まれる。

 お分かりの通り、4が子どもたちに示したい本筋の「根幹部分」である。2、3が「脱線トーク」である。授業では本筋の部分だけを示すべきだというクソ真面目な考えを持った教師からは決して出てこない「実践」である。実はこの「おふざけ」的「脱線」が4の本筋を強化する役目を果たしている。つまり次のような構造になっている。「2 なんだ、おふざけか!コーラが一瞬に他ものに変わるはずないや。(既成概念の強化その1)」→「3 しつこいなあ。そんなことないって!(既成概念の強化その2)」→「ええっ、まさか!(既成概念と矛盾する現象の提示)」。
 これは手品師マギー司郎のネタ披露の構造に学んだ。「なあんだ。このネタ、素人にも分かるわ。インチキじゃん。」→「ええっ、ネタが分からない!すごいマジックだ!」という構造である。

【典型実践 2】
 ルミノール反応を見せるという実験がある。警察の鑑識が血液反応を確かめるために使うルミノール試薬である。(血液に反応すると青白く発光する。詳しくは『やる気と集中力を持続させる 理科の授業ミニネタ&コツ 101』学事出版 またはDVD『実践 ミニネタ&アイデア集』ジャパンライム社を参照頂きたい。)
 この試薬を子どもたちの目の前で作る。この時も「このルミノール試薬、1本4500円もするの。先生の小遣いもうないわ。」とか「こんなんばっかり買うから先生奥さんに叱られるのよ。」などと「ジャブ的脱線トーク」を散りばめていく。
 試薬が完成したら、「さて、血液で光らせてみよう。血液が欲しいなあ。」といって注射器を取り出す。子どもたちは半笑いしながら大きく「引く」はずである。信頼関係ができていれば一人の子を指名して、実際に病院の採シーンよろしく腕にゴム管を巻いたりしてもおもしろい(これは追試しないほうが良い。下手をするとマスコミに訴えられるかも。「ドラキュラ教師、授業中に子どもの血抜く」などという見出しが踊らないようにしましょう。)。
 そんな「脱線」の後に「はい、血液をまさか今採ることはできないよね。そこで、牛さんの血液の成分ヘモグロビンを用意しました。みなさんの血液にも含まれているんですよ。」とヘモグロビンを紹介する。ここでも少々「生々しいおふざけ」が、ヘモグロビンを紹介する際の伏線となっている。いきなり「ヘモグロビンです。」と紹介する場合と比べて、「血液」と「ヘモグロビン」がより印象的に結びつくはずである。

3 実践に並列するタイプ

【典型実践 3】
 5年生の社会科で「経度と緯度」の説明が出てくる。教科書の説明は一ページにも満たない。おそらく多くの子どもたちは経度と緯度の概念を正しく理解はしていないと思われる。
 またしばらくすると水産業の単元で「二〇〇カイリ水域」の話が出てくる。そのページには「一カイリは約1.85キロメートル」という端的な説明があるだけである。教科書だけでは子どもたちは、二〇〇カイリの距離感を掴めないばかりか、そもそもなぜメートル法でない、半端なややこしい数字を使う必要があるのかも知らないまま「スルー」してしまう。何とももったいない話である。そこで次のようにいくつかの実践を並列するのである。

1 教科書の説明を音読する。次に「私たちの住む町を緯度、経度を使って表してみよう。」と指示し、地図を使って正答を出す。ここまでは普通行われているだろう実践である。

2 次に、(たとえば)「北緯三五度」と板書する。「北緯」という意味は分かるよね。でも「三五度」の「度」とは角度の単ですが、一体どの角度を言うのだろう?」となげかける。分かる子を指名し、黒板に地球の断面図などを描かせて説明させる。教師が補足説明、修正を行い、他の子どもたちにはしっかりノートに取らせる。

3  大きな発泡スチロール球を購入して作った「緯度説明モデル」を紹介し、2でノートさせた平面的な概念を立体的に理解させる。

4 次に「地球1周は約何キロメートルだろう?」と聞く。約4万キロメートルであることを伝え、「この数字は何かと役立つ常識だからしっかり覚えておこう。」と押さえる。

5 先ほどの断面図を示し、「地球1周4万キロメートルだよね。では1周360度とだから、1度分はこの長さになるよね。」と言って色チョークで1度分の長さをなぞる。「ところで『度』より小さな単位があるんだけど知ってる?」と聞く。「分」であることと「1度は60分」であることを押さえる。そして先ほどとは違う色チョークで「1分」分の長さをなぞる。

6 ではこの長さを求めましょう。4万キロメートルを360度の60倍で割る、つまり40000÷360×60になる。答えは・・・「1.85185185・・・」となる。
ここで、「1カイリとは、緯度1分分の長さなんだよ。」と押さえる。その後、200カイリなら約370キロメートルであること、1時間に1カイリ進む速さが1ノットであることなどを押さえる。戦艦大和は最高速力約27ノットだから時速50キロメートルくらいの速さであったことなども話すとよい。

 このタイプの「脱線」には、一見無関係に見える2つ以上の事象を結びつける働きがある。また子どもたちが断片的に持っている情報を結びつける働きもある。この「脱線」のおかげで子どもたちは学習内容をより深く理解することができる。これは私かねてから主張してきたミニネタの持つ効用に他ならない。
 子どもたちを本気になる「脱線」をガンガン授業に取り入れよう。

(この文章の掲載に当たっては、執筆者および『授業づくりネットワーク』編集部の許可を得ています)

Published: 9月 27th, 2010 at 23:55
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