お笑い教育EXPO レポート(2004.7.10)

お笑い教育EXPO レポート
2004.7.10 藤野賢治


1. イベントの概要
 7月10日、早稲田大学の大隈小講堂に、早稲田大学第一文学部教育学専修による「ワタリガラス」とお笑い教師同盟(仮)と新潟のお笑い集団NAMARAが集まった。
ワタリガラスは今回のイベントの主催で、教育内容におけるお笑い教育とその効果を考えてきた。お笑い教師同盟(仮)は現場の先生がお笑いを授業に導入する立場として上條晴夫氏に参加していただいた。NAMARAはお笑い芸人による出張お笑い授業を行っている実績があり、新潟から自家用車2台(NEW マーチ!)に乗ってきていただいた。
普段の各団体の活動内容は違っているものの、今回の共通目的は「教育にお笑いを!」
3団体の活動からお笑いの教育における可能性を探ることが全体のテーマである。

イベント全体の流れは
① NAMARAと早稲田の学生によるお笑いライブ
② 各団体によるワークショップ
③ 全体での意見交換  

来場したお客さんには会場で使ったワークシートを活用していただけるよう冊子にしたものを持ち帰ってもらった。

2. 本番
① NAMARAと早稲田の学生によるお笑いライブ
客入りは上々で会場は約200名の熱気に包まれた。(ただクーラーがなかっただけだったのかもしれない・・・)
「キーンコーンカーンコーン」
のチャイムが鳴るとコントが次々に始まる。人が選挙カー代わりになったり、チャップリンがお菓子のうだつをのべたり、おかしなアンパンマンが紙芝居で登場したり、漫才があったりとバラエティーに富んだ内容にお客さんのヒートもあがっていった。
② 各団体によるワークショップ
休憩をはさんだので、会場は120名ほどの人数になった。はじめはNAMARAのヤングキャベツときぬがさが、今までに新潟の学校や福祉施設においてやっているお笑い授業やジェスチャーゲームなどを実際に会場にいるお客さんと行った。お笑い授業では、笑顔を作る体操や、ヤングキャベツのなんぐさん扮する金髪先生のヴォイスレッスンなど。さすが多々の営業を経験しているだけあり、お客さんは一気に温まった。突然、新潟弁講座も始まり愛着のあるワークショップになった。ワークショップ後には、学校でお笑い授業をやった時に、舞台にあげた生徒が実はいじめられっ子で、その後周りの生徒にお笑いを評価されていじめられなくなった話などをしてくれた。
次はいよいよお笑い教師同盟(仮)から上條晴夫氏が、舞台上において、NAMARAと学生を使って「あいうえおリレー作文」(上條晴夫著『お笑いに学ぶ教育技術 教室をなごませるアイデア集』の中に紹介されています。)を行った。
テーマは「が・く・せ・い」
NAMARAのヤングキャベツときぬがさがプロの意地でお客さんを即興でいじりだした。(実はここで指名されたのがお笑い教師同盟の岡崎さん!)
○が っこういちの美人で
○く るおしいほど美しい
○せ かいの中心で愛してると叫びたいあなた
○い まの嘘ですよ!

とうまくまとめた。(岡崎さんすみません・・・)
かたや、学生お笑いサークルのほうは・・・
○が 、しかし
○く ラスにはだれもいなくて
○せ すなに乗った僕は
○い っつハプニング!

という意味のわからない回答に上條氏もつっこみきれず!
お客さんの拍手の大小(ここは工夫されていて、面白かったほうの拍手を大きく叩いてもらい、負けたほうもしっかりと拍手がもらえるという方式)によって、勝者はNAMARAとなった。
最後はワタリガラスのワークショップ。
まず、お客さんに学生が作った漫才の台本を読んでもらい、お笑いの肩ならしをしてもらう。ペアで演じてもらったあとに、実際に作り手が演じたビデオを見てもらい漫才のしゃべり方やテンポを実感してもらう。そして、本題のゲームは、ももたろうのあらすじを新しい面白いストーリーにかえてもらうもの。4人のグループで創作してもらった。使ってもらったのは次のような言葉替えシート

むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさん(人)が住んでいたそうな。
ある日、おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川(場所)へ洗濯(その場所ですること)に行った。
おばあさんが川で洗濯をしていると、向こうから大きな桃(何でも)がどんぶらこ~どんぶらこ~(ぎおん語)と流れてきた。
おばあさんはその大きな桃を持ち帰り、おじいさんと二人で割ると、中から元気(形容動詞)な男の子(人)が産まれた。
おじいさんおばあさんはその男の子を「ももたろう」と名付けた。

四角の中の言葉をかっこの中の種類の言葉に替えてもらった。
新しいストーリーができたら、近くのグループ間での発表、そして全体での発表をした。
次は一つの発表例・・・

むかしむかし、あるところにおじいさんといなばさんが住んでいたそうな。
ある日、おじいさんは山へしばかりに、いなばさんは病院へ投石をしに行った。
いなばさんが病院で投石をしていると、向こうから稲川淳二がニャーッと流れてきた。
いなばさんはその稲川淳二を持ち帰り、おじいさんと二人で割ると、中からよさそうな稲川淳二が産まれた。
おじいさんいなばさんはその稲川淳二を「ももたろう」と名付けた。

会場からも、とくに「稲川淳二」の響きに爆笑が起こった。

③ 全体での意見交換
あらためて、ワタリガラスの代表中垣とNAMARAのヤングキャベツ・きぬがさと、お笑い教師同盟(仮)の上條氏に出てきてもらい、会場からの意見に答えてもらった。

「お笑いを始めて内面が変わったことは何ですか?」
という質問にはNAMARAが
「人と目を合わせるのが苦手だったが、舞台を通して自信が持てるようになり性格が変わっていった。」
と過去の自分の克服体験を語ってもらった。

「世代によって笑いの質の違いは感じられるか?」
という質問には、上條さんが、
「大学生のもつ知的な笑いを教室にもちこむと違いは感じられる。」
と答え、ワタリガラスからとして藤野から
「子どもの中での笑いは人を傷つけるものが時々みられ、それを笑いの質として教育したい」
と意見し、NAMARAは、
「お年寄りから子どもまで幅広い客層を前にするときは、テーマを共通項にしぼることが重要。その一つとして、「方言」をテーマにしたものはみんなに理解されやすいので笑いを起こしやすい。」
と答えた。

上條さんが講師を務めている大学の生徒からは、
「先生のオーバーなリアクションに対して生徒が引きぎみな時はどうするんですか?」
という質問がでた。
上條さんは「そういうことは大学で聞いてくれたらいいのに」と照れながら、
「様子を見ながらやってるんです」
と冷静に回答した。
NAMARAは、
「お笑いはやりきることが大切。やったことに対して引かない心が役に立っている」
というさすが芸人らしい言葉で返していた。

会場との意見交換も終わり、無事イベントは終了し拍手に包まれた。
みなさん、ほんとうにお疲れ様でした。

3. 感想
今回のイベントは私が卒業論文を書いた際に、上條さんに読んでいただき、実際にワークショップをやってみようという流れになり始まった。私がどうしても呼びたかったNAMARAさんのアポとりを終えて、会場と時間も上條さんと相談しながら決めていった。
今回最もよかったのは、学生で主催できたことだ。学生はお金はないが時間はある!とことんお笑いと教育について話し合う機会を設けることができた。実際に準備時期に教育実習に行く機会のあった者も何人かいたので、現場を感じながら今回のイベントへの助言をしながら徐々に形になっていった。
本番では、お笑いライブの効果が大きかった。実際にワークショップだけやるよりも、お笑いを見て笑った後の空気の中でワークショップをやるほうが、お客さんもお笑いの力を実感しながら参加しているようだった。
さて、お笑いの教育的効果は、その場でどのくらいのお客さんが感じ取ってもらったかどうかはアンケートからもはっきりとはわからない。理想は来てくれたお客さんがお笑いのワークショップの実践者になってもらうことである。それでも、「ワークショップが楽しかった」という感想が多く見られ、ワークショップが教育現場に持ち込めるのに適していることが分かっただけでも大きな前進だと感じている。

上條晴夫(2004.7.11)
   昨日は、早稲田大学で「お笑い教育エキスポ」というイベントに参加をしま
  した。早稲田大学教育学部有志「ワタリガラス」、新潟芸人集団「NAMARA」、
  わたしが代表を務める「お笑い教師同盟(仮)」の共催によるイベントです。早
  稲田の大隈講堂小会議室で実施しました。学生が中心でしたが、150名ほど
  集まりました。わたしが非常勤をしている埼玉大学の学生や聖心女子大の学
  生もきていて、ちょっとうれしかったです。プロの芸人さんがまじると、やっぱり
  盛り上がり方が違います。(*「NAMARA」は、新潟を中心に、芸能活動以外
  に保育所~高校などに呼ばれて、「コミュニケーションの活性化」などの目的の
  「お笑い授業」をしています。すでに120回を超える講座を担当しています。ヤ
  ングキャベツの高橋なんぐさんという芸人さんは、新潟大学で非常勤講師とし
  て「新潟で働く仕事論」という講座なども担当したそうです。拙編著「さんま大先
  生に学ぶ・子どもは笑わせるに限る」(フジテレビ出版)を読んで下さっていて、
  サインまで求められました。芸人さんからサインを求められてちょっとうれしか
  ったです。なんぐさんは「わら金」にもちょこっと出ています)芸人さんといっしょ
  に舞台に上がる緊張感はサイコウでした。暑い中、2時間半があっという間に
  過ぎました。

Published: 9月 26th, 2010 at 17:58
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