お笑い勝ち抜きあるあるネタ合戦(田村一秋)

『授業づくりネットワーク』(学事出版)1999年12月号特集「教師のための「お笑い」入門セミナー」

お笑い勝ち抜きあるあるネタ合戦
田村一秋(東京・聖学院小学校)


 今回、西条昇氏の提案する「お笑い勝ち抜きあるあるネタ合戦」というゲームを知ったとき、日常の小さなネタを掘り起こし共感するという視点が大変新鮮に思えた。そして直感的に、これならうちのクラスでウケるぞ!と思った。
 6年生(男子16人、女子26人)での実践である。

1 西条氏の実践と修正点

 西条氏によるルールは以下の通りである。

・なるほど、あるあると言いたくなるようなひとことネタを考えさせる。
・一対一の勝ち抜き形式で発表させる。
・発表の際「あるあるネタを言ってみて!」と全員で掛け声を書ける。
・どっちが「あるある」と思ったか、多数決で勝敗を決める。
・先生は進行役になり、時には勝ち抜き戦に参加する。

 以上のルールと西条氏のビデオによる実際例から、以下の三点を教室の実情に合わせて修正した。
1、実際は全員で勝ち抜きをするのは時間的にも難しいので、小グループで全員が体験し、そこから代表が出て、場を盛り上げるという方法をとった。
2、ネタ探しについては、その場ですぐに書くのもむずかしいと判断し、前日にそれぞれ考えてくるように予告しておく方法をとった。
3、「つっこみ」は、全体でのゲームの場面では教師ができるが、実際の小グループ内ではそれが難しい。そこで、モデルゲームや最後の決勝戦を通して「つっこみ」の感覚を伝える程度にとどめることにした。

2 ゲームの実際

(1)ネタ集めの課題
 前時、授業終了十分前に以下のような課題を出した。
『「先生は今年の夏遊園地に行ってね、あまりにも暑いんでソフトクリームを食べたんだ。そうするとさ、食べるよりも早くとけてくるわけよ。あわててぺろぺろなめていると最後にどうなったと思う?今度は一番下のところに穴が開いて、そこからたれてきたの。上と下から。もう最悪!』
 するとこちらから聞くわけでもないのに「あーぼくもある!」という声が起きた。

 私たちの生活の中でちょっとおもしろい、誰にでもありそうなできごとってありますよね。今日家でそれをさがしてきてもらいたいのです。

 質問が出たので、条件として、自分が体験したこと、周囲の人が体験したこと、小さい頃のことでもよいことを付け加えた。
「あしたの国語の授業ではそれを使ってゲームをします。傑作を期待していますよ!」
と予告して授業を終わった。
(2)ゲームの開始
 次の日の国語の授業が始まった。子どもたちはそれぞれにメモ帳や国語ノートにいくつかのメモを書いてきている。
「今日はこういうゲームをやります」と言って黒板に、「勝ち抜きあるあるネタ合戦」と書いた。
 そして、ルールの概要を説明した。

 みなさんが昨日集めたネタを二人交代に言ってもらいます。時間は一人30秒以内で済ませるつもりで短くしてください。
 そしてどっちがいいか手を上げて決めるゲームです

とルールの概要を説明した。
(3)評価基準の説明
 板書した文字の冒頭に、あらためて「お笑い」の三文字を書き加えた。ここで教室は騒然となった。
「え~!」「お笑い?」
『このゲームにどうしてお笑いの三文字がつくのか説明しますね』
そして以下の二点を板書しながら説明した。

1.そういうのあるあるー
2.おもしろい!ウケたー
 このどちらでもいいとします。そう、相手に受ければ大成功というゲームなのです。

 教室はさらに騒然となった。
(4)モデルゲーム
 まずは様子を理解してもらうためにモデルゲームを行う。希望者を募るとすぐに二人が手を上げた。
『せっかくのお笑いゲームですからまずは掛け声で盛り上げましょう』と言って「あるあるネタを言ってみて!」と板書する。
『さあ、みんなで言ってみようーあるあるネタを言ってみて!』
 そして一人目の女の子が話し始める。
「家族で出かけていたんです。急にトイレに行きたくなって、トイレに駆け込んだんです。そしてホッとしてドアを開けると………男がしていたんです」
『え~と、もしかして、していたというのは…トイレでする、あれ?』
「そうです」
『駆け込んだとき、そういう便器があるということにも気がつかないほど緊急事態だったんだ。う~ん、わかるなぁ』
『はい、それでは次いきますよ~!あるあるネタを言ってみて!』とみんなで言って今度は男の子が話し始めた。
「朝起きて、とても急いでいたんです。シャツを着ようと思ったら、ぴちぴちなんですよぉ。よく見たらりさのだった」
 二年生の小さくてかわいらしい妹のりさちゃんのことはクラスのみんなが知っていたので、大爆笑になった。これは、あえてフォローする必要もないと判断した。
 そして、全員にどちらがよかったか、もう一度黒板に書いてある二つのポイントを確認して、挙手をさせた。圧倒的に後者に多くの手が上がった。
(5)ゲームの進め方の説明
 実際のゲームのルールを以下のように説明した。
・教師が決めたグループで向かい合わせに座り、向かいの人と対決をする。
 (実際は42人を窓側に6・6・8人のグループ、廊下側を6・8・8・人のグループに分けた)
・話す二人は立ち上がり、聴き手が掛け声をかける。
・一人が話し終わったら、先生がしたように確かめたいことや、思ったことなどを自由に言ってもよい。
・次の人が「せーのドン!」と声をかけて、どちらかに手を上げて勝ち負けを決める。
・判定が終わったら次の二人が立ち、続きをする。
 ルールが単純なので、ゲームは混乱なく進められていった。すべてのグループに顔を出したが、次々に出てくるとっておき話にうれしそうにうなずきながら聞いている様子が印象的であった。
(6)決勝戦
 終わったところには『特にウケたイチオシを一人選んでおいて』と言っておいた。やがて、すべてのグループが終わると、代表者に出てきてもらった。窓側を西軍、廊下側を東軍として三人対三人でネタ合戦を行った。順番は自軍同士の三人で決めてもらい、その結果を対戦表として板書した。
 教師が『それじゃ、いくぞ!』と言うといつの間にか「せーの!」という掛け声が入り、リズムよく「あるあるネタを言ってみて!」となった。そして、その後「はい!」という拍子も自然と入っているのにはびっくりした。もう子ども文化に加工されているのである。
 結果は一勝一敗になり、注目の中で迎えた三回戦は東軍の勝ちとなった。そして自然と拍手が起こってゲームは終わった。

3 ふり返りとまとめ

 ゲームの興奮さめやらぬ中で、以下のことを子どもたちに聞き、それぞれにコメントをしてふり返り、まとめをした。
『ゲームで勝ち負けで悔しかった人は?』
『やってみたらこのネタではなく他のネタでやればよかったと思った人は?』
『傑作と思ったネタはあった?』
『ウケないネタもあった?』
『そんな時はどう思った?』
『こんな授業はどう?』

4 授業作文

 最後に子どもたちに感想を書いてもらった。授業に対する評価を五段階で書いてもらい、その理由を箇条書きに書くという上條晴夫氏の「授業作文」の形をとった。
 42名中、5が26名、4が16名、3~1はいなかった。
 以下、なるほどという視点を持っていた、5をつけた男子、4をつけた女子の感想文をあげる。

 今日の授業は5だ。
その理由は2つある。
1.みんなが楽しく聞けたから。
2.話すときに真剣に聞いてくれたから。

 特に2点目であるが、わくわくしながら聞いているという場面には確かに遭遇した。日常ではなかなか得られない体験である。

 今日の授業は4だ。その理由は3つある。
1.いつもは友だち以外の人からはおもしろい話など聞かないから。
2.ふつうに話さず、ゲーム感かくでやったから。

 この中で1点目については、普段の友だち以外の友だちを知る機会になったということは、日常ではなかなかない場面である。
 その他
・友だちのおもしろい話をたくさん聞けた。
・思いっきり心から笑えた。
・自分のネタをみんなに聞いてもらえた。
・自分のネタで人を笑わせられたから。
・久しぶりに思いっきり笑えた。
・グループでやったので緊張せず楽しめた。
・クラスのみんなが参加できて楽しめた。
・まわりの雰囲気が明るかったから。
・ストレスがすっときえたから。
・決勝では特におもしろい話が出た。
・共感できることがたくさんあった。
など、笑いを通して子どもたちが共鳴しあうことができたさまざまな感想が寄せられた。

■出典
 このゲームはビデオ『西条昇の教室にもっとお笑いを!!おもしろい先生になるためには上巻/下巻』(岩波映像)をもとにしている。

(この文章の転載にあたっては、執筆者・編集者の許諾を得ております)

Published: 9月 26th, 2010 at 15:52
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