永盛文香「わたしのお笑い教師道子どもたちと笑おう」

『授業づくりネットワーク』(学事出版)1999年12月号特集「教師のための「お笑い」入門セミナー」

わたしのお笑い教師道 子どもたちと笑おう
永盛文香(茨城・新利根町立柴崎小学校)

1 笑いが楽しい授業を作るんだね

授業は楽しくなきゃ!

 これまでネタ探しに燃えていた私は、いつの頃か「笑い」という楽しさにひかれはじめていた。きっかけは忘れてしまったが、「笑いがある授業」も楽しいうちの一つなのだと思うようになったのである。笑いがあると開放的になり、活動が活発になる。気分が良ければ、思わぬ発展につながることもある。そこで一時間に一笑をめざして取り組むことにした。
 ところが、はて困ったと思った。笑わせ方を全然知らないのである。もちろん子どもたちが笑う場面はあったが、自分で意識していない分、「あの時、何で笑ったんだろう……」という感じである。
 そうして私のお笑い教師道は始まった。

2 お笑いの「心」がけ

いつもニコニコ 明るい雰囲気

 これが大事である。教師の姿を子どもたちは映し出す。心の中まで見られているようである。だから、教室に入る一歩前は少し緊張感がはしるのだ。
・今日はどうやって教室に入ろうか考える。みんながシーンと席に着いている時、逆向きに入っていった。(笑)
・子どもたちに話をしていた時、一人ニコニコして聞いていた子がいた。その子の顔を見ながら話すと、こちらも自然に笑顔になる。そして、話の最後に「○○くん。とてもニコニコして聞いていたね。よかったよ」と言うと、さらに顔がニッコニッコ。その顔を見て、みんながウフフと笑う。そんな子がクラスに一人はいるでしょう。
・図工の時間。かいた絵は全員にいつも見せている。そして、全部ほめている。「次の絵はすごいんですよ。ジャーン」。その絵は本人が失敗したと言っていた絵であったり、絵が苦手だと思っている子のものである。子どもたちは、わっはっはと笑う。そこで、「この絵すごくいいよ。ここ見て。クラスの中でここをかいたのはたった一人……」などとほめると、「へーぇ、すげえ」「ぼくのも言って」と雰囲気が変わる。絵を見てくすくす笑うより、わっはっはと笑えるのは楽しい。全ての絵を一言ずつほめることにコツがある。
・明けましてお年玉なんてあいさつもあったが、それに関しておもしろいあいさつを考えてみたらどうか。帰りの会で、子どもたちが何となくつかれたかなと感じる時、このまま帰してはいけないと思う。「みんなでおもしろいあいさつをして帰ります。まねして下さい」と言って深呼吸する。「わーっはっはっはさようなら」。子どもたちも笑いながら、「わーはっはっはさようなら」となる。みんなで笑ってさようならをし、明日への活力にしたい。

3 お笑いの「技」は?

 子どもたちを楽しませようと考えるようになってから、トーク番組の見方が変わった。よく見るのは、「踊る!さんま御殿」(日本テレビ、火曜8時)である。15人のゲストを相手に、あれだけのトークができるのは、さんまさんならではである。ゲストのそれぞれの持ち味を上手に引き出しているところに感心してしまう。また、ボケ方がうまい。番組のネタも一般の人から募集し、共感できる内容である。思わず「そういうこと、あるねェ」と笑ってしまうのである。
 みんなが知っててわかりやすい笑いというのがポイントである。

さがして、まねする

 そうは言っても、お笑い芸人さんのようにすんなりいかないものである。そこで、おもしろい話やネタを探し、まずは真似をして自分の言葉で話すようにした。
・ネタは、なぞなぞクイズが楽しい。答えがシャレになっているものも多く、誰でも考えやすい。慣れてくると、子どもたちが考えるようになる。

 こわい話もシャレになると笑ってしまう。これは教えてもらった話。
 ~イトーヨーカドー悪の十字架の話~
(こわごわと始める)イトーヨーカドーに、ある人が買い物に行きました。ところが、まだシャッターは閉まったままです。おかしいなあと思って見ると何か書いてあります。「あっ、開くの十時かー」

 これに肉付けをしてもっともらしく話すと、子どもたちは「なぁーんだ」と言いながら大笑い。こういった話をストックしておいて笑わせるのは、教師自身も楽しくなる。

・切り返し方
 授業中子どもが言ったことに対して、すばやく切り返すと笑いが起こる。教師は子どもの反応をたくさん予想し、この時にはこう言うなどを考えておく。
 先日、避難訓練であまりにも緊張している子どもたち。これでは考えて行動できない。
「あなたのこわいものは何ですか」
「かみなりです」と言った子へ返す。
「お母さんのですか」と聞くと、全体がふふっと笑い、ほどよい緊張になった。こういう場合、緊張がとけてはいけないけど。

・ピッタリと意外性
 ダウンタウンの松本さんはゲストの服装や髪型などでネーミングすることが上手である。学校でもよく「名前をつけたりすることがある。ピッタリの名前が思いつかない時は、子どもたちが考えもしない方向に話をもっていく。

「チームを言います。右側はウサギさんチーム」
「イエーイ」
「左側は…ゴリラさんチーム!!」
「エーッ、なんでえ」(笑)

「それではこの問題……わからない人っ!」
つられて手をあげる子どもがいるとよけいおかしくて、その子も笑ってしまう。

キャラクターを生かす

 あとは教師のキャラクターや子どものキャラクターを生かして笑わせる。ジェスチャーが得意な人、話が三倍おかしくなる人、いろいろいるが私の場合はとぼけることである。
 子どもたちが笑っている中「それはすごいですね」と流したり、一瞬固まって驚いてみる。子どもの中にも同じようにおもしろい反応をする子がいる。

4 お笑いは「体」を使う

おおげさに! なりきって!

・表情やジェスチャーは大げさにやる
 驚きや悲しみの表情は大げさに顔を作ると子どもたちも笑ってしまう。時々そんなに笑わなくてもいいのに…と思うこともあり複雑な気持ちになる事もある。
・役になりきる
 国語の登場人物になる。お母さんの役をやる。動物になる。校長先生になる。悪者になる……などいろいろパフォーマンスをする事がある。ここぞという時には、照れずになりきることが大事である。
・擬態語を使って効果音を出す
 話をする時に、ジェスチャーとともに音を入れるとリアル感が増す。怪談の時に、「その時、スーーーっと……」などと使うように、普段の話の中でも使うと効果がある。五味太郎さんの『言葉図鑑』にはたくさんのおもしろい言葉がのっている。

小物を用意する

・魔法のつえ
 アイデア次第で何にでも使える。例えば教師が魔法使いになり、子どもたちに呪文を唱える。「みんな今からうさぎになあれ!」と。体育や音楽の表現などで使うと、低学年の子どもたちは笑いながらのってくる。高学年には、「みんなちょっとずつ足が速くなあれ!」など、願いを込めて言う。一瞬みんな幸せになったところへ子どもが一言。「みんなちょっとずつ速くなると、順位は変わんないよねェ」(笑)
・キャラクターの存在
 算数では、よくキャラクターを作る。「くりあがり君」は、栗の形をしている。「わりマース君」は、わり算を子どもたちと一緒に悩んで解いていく。

5 これからの挑戦

 教師だけが子どもを笑わせるのではつまらない。大人も笑ってしまう子どもを育てていきたい。そこで、こんなことに挑戦してみたいと考える。
・「はてな」さがし
 生活の中で「どうして~なんだろう」と疑問を持つこと。これは観る目が鍛えられる。子どもだから気づくことも多く、ユニークな発想を求めたい。(有田和正著『「はてな?」で育つ子どもたち』明治図書、参照)
・「なんだなんだ会議」
 2グループ3~4人のチームを作る。会議の問題は何でもよい。例えば「先生の朝ごはんは何でしょう」。答えを三択にする。1 目玉やき、2 なっとう、 3 カレーライス。
 子どもたちは、グループで答えを相談する。そして、その答えを選んだ理由を話す。選んだ理由がもっともらしいグループが優勝となる。(本当の答えは勝敗に関係ない)

 今、我がクラスの子どもたちは、なぞなぞとダジャレに夢中である。だんだん高度になってきた。「はてな?」さがしも上手になる予感がする。明日はどうやって笑わせようかと毎日考えている。おかげで早く子どもたちに会いたいと思う“幸せな教師”なのである。
 さらにお笑い教師道は続く。

(この文章の転載にあたっては、執筆者・編集者の許諾を得ております)

Published: 9月 25th, 2010 at 20:58
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