杉村依香「ユーモア・スピーチ「○○に似ている」」

『授業づくりネットワーク』(学事出版)1999年12月号特集「教師のための「お笑い」入門セミナー」

ユーモア・スピーチ「○○に似ている」
杉村依香(東京・武蔵野東小学校)


1 原稿づくり

 ユーモア・スピーチとは、一言でいうと教師があるテーマを決めて、そのテーマにあったスピーチを、子どもたちがユーモアたっぷり行うものである。
 ビデオ『西条昇の教室にもっと笑いを!!-面白い先生になるには-』の中の「お笑いゲーム」を参考に、追試実践した。
 ここに出てくるユーモア・スピーチの特徴は、次のようなことである。

・先生が与えたテーマにそって、ユーモアを交えたスピーチを生徒にさせる。
・スピーチの内容は、1人30秒、または1分以内とする。
・スピーチの内容を考える時間を与える。発表日までの宿題にしても可。
・先生は生徒のスピーチに感想を述べ話し方についてもアドバイスしてあげる。
テーマ例1 最近あせったこと
テーマ例2 自分で自分をほめてあげたいと思ったこと

 5年生で実践してみた。
 テーマは、上條晴夫著『ファックス資料 だれでも書ける作文ワークシート 小学校高学年』(学事出版)の中の「○○に似ている」という作文課題を参考にさせていただいた。
 その作文課題とは、次のようなものである。

 誰かに似ているという話は雑談などで好まれる話材の1つです。
 しかしこのウソ作文はそれとはちょっと違います。次のようなおよそ考えられないものに似ていると断言してしまう作文を書きます。「ゾウ・冷蔵庫、・木村拓哉・太陽・キャベツ・レンゲソウ・クレオパトラ・ゴジラ」…。

 ここに出てきた作文例を、スピーチの形にかえて子どもたちに紹介した。
『みんな、誰かに似ていると言われることってないですか。今日はそのことについてスピーチをしてもらいます。例えばこういうのです』
『こんにちは。私は冷蔵庫に似ているとよく言われます』
「えー」
 子どもたちは、にやにやしながら聞いている。
『ときどき、街を歩いていると、まちがわれることがあります。この間も、信号待ちをしていると、後ろから「おやっ?どうしてこんなところに冷蔵庫がおいてあるんだろう?」と言われました。「わたしは冷蔵庫ではありません。人間です」と言うと、その人はすごくビックリしていました。というのは真っ赤なウソです。ありがとうございました』
 拍手がわく。
『このような、ウソのスピーチでいいですよ。ユーモアたっぷりのスピーチを考えてみましょう。時間は10分です』
 スピーチ用のワークシートをつくり配布した。原稿を書かせる前に、面白く書くコツを3つ伝える。これも、上條氏の先ほどの著書を参考にした。

1 似ているものは奇想天外なものにすると面白い。
2 街のどこで間違われたのか、その場所を書こう。
3 ありそうにない面白会話を入れよう。

「先生、似ているものって、何でもいいんですか?」
『いいですよ。どんなものが出てくるか楽しみだな』
 原稿作りが得意な子は、あっという間に書き上げた。その児童には、時間まで暗記するくらい読む練習をするように指示をした。
 また、時間内に書き終わらなかった子が3名いたので、発表中に聞きながら書いておくように言って、スピーチ発表を始めた。

2 スピーチ発表

 いよいよ発表。ひとりずつ前に出てスピーチをさせた。
 スピーチするときの注意を2つ指示した。

1 原稿は机の上に置き、アナウンサーのようになるべく原稿を見ないでスピーチをする。
2 似ているものを強調するように話し抑揚をつけてスピーチをする。

 スピーチ発表が終わったら、先生のところに原稿を持ってくるように指示をした。
 そして、スピーチについて簡単にコメントをして、次の児童へと進めることにした。

 子どもたちのスピーチ作品とそのときの教師側のコメントを紹介する。

 こんにちは。ぼくはさるに似ているとよく言われます。
 ときどき、街を歩いていると、まちがわれることがあります。
 この間も、あざぶの街を歩いていると、「あ、あざぶのさるだ」と言われてしまいました。あみでつかまってしまって、高尾山のさる園のおりの中に入れられてしまいました。ぼくは「さるじゃない、人間だ」と言ったら、飼育係に「おまえ、日本語うまいな」と言われて、次は、サーカスにスカウトされました。そして、日本語をしゃべるさるとなって大かつやくしました。
 というのは真っ赤なウソです。ありがとうございました。

 まず、「さるに似ている」というところから大爆笑。そして、サーカスにスカウトされるという続きもうけていた。
『新聞をよく読んでるねぇ。サーカスで大活躍っていうところが面白いよ』
 さるの話は実際にあった。9月10日付けの毎日新聞によると、東京都心に出没したさるが、8月14日正午、港区麻布台の東京アメリカンクラブ内のプール事務所にいたところを保護された、そして現在、高尾自然動植物園で生活している。
「アザミだ」
「日本語がうまいに決まってるよ、ねぇ」
と、聞いていた男の子もにこにこしながらコメントをした。
『はい、次の人、お願いします』
と、このように進んでいく。

 こんにちは。ぼくはジャッキー・チェーンに似ているとよく言われます。
 ときどき、街を歩いていると、まちがわれることがあります。
 この間も、ホンコンのレストランで食事をしていたら、「ジャッキーだあ」と言われたので、ぼくはついお酒を飲んで、すいけんをひろうしてしまった。
 というのは真っ赤なウソです。ありがとうございました。

「お酒を飲んで…」
というところで「ワー」と声があがった。
『ジャッキーの得意技のすいけん?お酒を飲んでよっぱらっちゃったすいけんかな』
 子どもたちには、漢字をひっかけた洒落はわからなかったようでシーンとしている。もちろん本人もそのつもりはなかったらしい。きょとんとしている。単純に「お酒を飲んで酔っぱらった」と思って、面白がっているだけだった。
 教師の一言でシーンとしてしまったので、その雰囲気を壊すかのように明るい声で
『はい、次いってみよう』
と先に進めた。

 こんにちは。ぼくは古びたつぼに似ているとよく言われます。
 ときどき、街を歩いていると、まちがわれることがあります。
 この間も、寝ていて起きたら、「お宝鑑定団」のスタジオにいて、いきなり、「いい仕事してますなぁ~」と言われたので「ぼくは小学生だぞ」と言ったら「しゃべるつぼとはめずらしい」と言われたので「ぼくは岩崎T巳。しゅみは読書で好きな食べ物がスイカの小学5年生11才だ!」と言ったら、今度はかんていしが「な~んだ、じゃあ希少価値は1円もありませんな」と言ったのでとてもはらが立ちました。
 というのは真っ赤なウソです。ありがとうございました。

 この児童は、会話の読み方が抜群だった。叫びながら怒りながらと、ひとり芝居のように語って、ノリノリだった。その読み方にもうけていた。
「希少価値は1円もない」というところで、大爆笑。机をたたいて笑う男子もいて、盛り上がった。
『壺じゃないと言った後に、やっぱり鑑定されちゃったオチがなかなかいいね。面白い』
とコメントを入れた。

 以上の3つは、教室中が特に盛り上がってうけたスピーチである。

3 発表を終えて

 面白いスピーチは、もちろん子どもたちも笑いながら聞いているが、可笑しいと思うところは先生が思いっきり爆笑してあげることが、このユーモア・スピーチを盛り上げるポイントである。
 教師が大げさに笑うと、それ以上に子どもたちは、手をたたいたり机をたたいたりと大喜びをする。さらに、スピーチしている児童ものってくる。
 そして、コメントに困ってしまうスピーチにも、間を上手にとって盛り上げていくとよい。
『みんな、なかなかユーモアのセンスあるね』
という一言で授業を終えた。

(この文章の転載にあたっては、執筆者・編集者の許諾を得ております)

Published: 9月 25th, 2010 at 20:56
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