お笑いディベート合戦(池内 清)

『授業づくりネットワーク』1999年12月号特集「教師のための「お笑い」入門セミナー」
池内 清
お笑いディベート合戦

1.お笑いディベート合戦の原実践

 今年の夏、実践レポート研究会(上條晴夫代表)の合宿で西条昇氏(お笑い評論家)の企画・構成・監修するビデオ「西条昇の教室にお笑いを!!」を見た。
 今回はそのビデオの中の、「お笑いディベート合戦」という実践を修正追試した。
 お笑いディベート合戦(原実践)

(1)生徒を5~7人のグループに分け、発言の面白さを競うディベートをさせる。
(2)テーマは事前に生徒たちに出させてもよい。
(3)それぞれの主張を二分間ずつで行い、 後半は、立場を逆転させて、一分ずつで主張させる。
(4)先生は進行役になり、ツッコミを入れていく。
(5)勝敗は、クラス全員の多数決で決める。
(6)テーマ例 野球とサッカー、どっちが面白い?
(7)効果 ユーモアを交えて自分の意見を言える。

 この実践はディベートの「自分の意見に関わらず、双方の立場に立つ」、「意見を言う時間が決まっている」「ゲームの途中で自分の意見を変えてはならない」等のルールは踏襲しているが、例えば、「質疑」「反駁」等のパートはない。ただ、グループとなった子どもたちが思いついた意見を両方の立場に立って主張するのである。また、一番この実践の大切なことであるが、勝敗は「楽しい意見が言えた方、どれだけみんなを笑わせてくれたか」で決めるである。

2.クラスに合わせて修正追試をする

 私の今担任するクラスは三年生、四〇人学級である。自分のクラスの子どもたちを見ると、自分から進んで意見を言う子どもも少なからずいるが、多くの子どもは、相手を気にしてか、恥ずかしそうにして自分を表現するの苦手そうである。そこで、この「お笑いディベート合戦」で、「発言を気軽に、楽しくする」ことを目標に修正追試をした。
 やり方は以下の通りである。

 テーマは「男と女、どちらが得か」
(1)クラスを四つ(A、B、C、D)に分ける。(機械的に机の列を二列ごとに分けた。)
(2)はじめにAグループ対Bグループが対決し、残りのC、Dグループは審判になる。
一試合終えたのち、交代をし、今度はCグループ対Dグループが試合をする。
(3)立論はそれぞれ二分ごととした。
(4)試合判定のやり方は「どちらのグループの意見が楽しかったか」である。

 原実践と大きく変えたのは以下の二点である。一つ目は、テーマが原実践では「野球とサッカー、どっちが面白い?」であったのに対し、修正追試では「男と女、どちらが得か」とした。スポーツネタではなく男女とも共通に考えられそうなテーマだからである。
 二つ目は、立論は立場ごとに二分間とした。原実践では、「それぞれの主張を二分間ずつで行い、後半は、立場を逆転させて、一分ずつで主張させる」となっているがここを立場を逆転したときも二分ずつ主張させることにした。これは、違う立場としたときも、同様に同じ時間を与え双方が公平になって考えさせたかったからである。ただ、二分間と言っても、ぎりぎりのところで発言をした子に対しては時間切れとはせずに、発言が終わるのを待ってそこで終了とさせた。

3.ゲームの実際

 朝の会で、

 今日の六時間目に「男と女どっちがとくか」で話し合いをします。どっちが得かそれまでに簡単な理由を考えておいてください。

とテーマを黒板に書き、みんなに告げる。
 子どもたちは「えー」という表情をするが、隣同士で「男の方がとくじゃん」とか「女の子の方がいいわよね」などと声が聞こえる。
 ここではテーマを予告するだけで、深入りはしない。『では、六時間目を楽しみにしています。おもしろい意見を考えておいてね。』と言って朝の会を終えた。
 六時間目である。
 『では、朝言ったように「男と女どっちがとくか」で話し合いをします。』と言い黒板に次のように書く。

 お笑いディベート合戦
 「男と女どっちがとくか」

 みんな朝の声以上に声を上げる。
 このクラスではディベートはまだやったことはないが、ディベートという言葉は折りにふれて話したりしているので、立場を変えて話し合う程度のイメージは持っている。
 そして、次のように説明をした。

(1)クラス全員で四つのグループを作ります。窓側二列、廊下側二列、残った真ん中の列は前から半分と後ろから半分でそれぞれ一グループずつとします。
(2)はじめに廊下側のグループと窓側の グループが行います。真ん中の二グループは審判です。
(3)はじめに廊下側のグループは「男が 得」という立場で意見を言います。時間は二分間です。次に窓側のグループが今度は「女が得」という立場で意見を言います。これも二分で行います。
(4)お互いが言い終えた後、今度は同じ時間で立場を変えて意見を言います。
(5)審判のグループは両方のグループの意見を聞いて、「どちらのグループが楽しい、笑える意見を言えたか」で判定をします。

 説明後、質問を聞く。
「同じ意見を言ってもいいですか。」との質問には『いいです。でもなるべく違う意見を考えて言いましょう』と答えた。
 また、「グループで相談をしてもいいですか」の質問には、『もちろんいいです。みんなで協力をして楽しい意見を発表してください』と答えた。

 では、始めます。廊下側が先攻で「男が得」の立場です。二分間でどれだけ楽しい意見が言えるでしょうか。がんばってください。

 ストップウォッチを押して『ヨーイドン!』
 まず、女の子が立った。
 「男の子の方がとくです。だって男の子の方がプールにすぐに入れるからです。男の子はすぐにズボンをさげてきがえられるけど、女の子はそうはいきません」男の子のズボンをスッ、と脱ぐまねをしてみんなから笑いをとる。
 『うまい!いいねー。女の子はこうして・・・たいへんだー』と女の子の着替えをするところをまねる。またまた、笑いがおきる。
 続く「男は料理をしなくてもいいからとくだ」との意見は、「えー、そんなことはないよー。うちのパパよくするよ」と少しブーイングがおきる。『そうだね、先生だってなにをかくそう料理は得意なのだ』「へー」とみんな感心している。
「男の子の方がとくです。だって立ちションができる。女の子はわざわざすわってやるから大変です」女の子が「イヤー」っという顔をする。『へー、ということはそうか、君は女の子がオシッコしているところを見たことあるんだ。エッチー』とつっこみを入れた。
 時間がたち、今度は窓側のグループ「女が得」の番である。
「女の子の方が得です。女の子の方がきれい好きだからです。だってロッカーを見てください。ね、男の子のロッカー、だらしないでしょ」と指を指しながら説明をする。ロッカーをさされた男の子はあわててそれをかくす。その場を見てみんなの笑い声がおきる。『うまいねー。具体的な例をあげると、うーん説得力ある』
「女の子方がとくです。だって女の子はかみのけをのばしていろいろ遊べるからです。男の子にはできません。やったら気持ち悪いです」
『お、いいぞ。確かにできないよね』といいながら髪の毛の短い子の頭をなでる。そして『結んであげようか』といって髪の毛を上げる「やだー」また教室内に笑いがおきた。
 しばらく、意見が出ない。『お、もうおしまいか。ふーん、女の子が得なのはこれだけなんだ』と挑発する。そこで、グループでこそこそ相談を始めた。そして、「言いなよ、言いなよ」とせかされ恥ずかしそうに立つ。
「女の子はフラダンスが上手だからいい」言ったとたん、教室大爆笑。『うまい、最高。涙が出ちゃう。』教室中しばらくの間笑いがとまらない。
 こうして、反対の立場も行い一試合が終わる。

 判定をします。
 どちらがおもしろかったかで決めます。

『「廊下側のグループがおもしろかった」と思う人はグー、窓側のグループがおもしろかったと思う人はパーを出してください。』
『では、行きます。せーのー、ドン!』
 窓側のグループの圧倒的勝利であった。理由を聞いてみると、「S君のフラダンスが最高おもしろかった」という理由であった。

4.授業を振り返る

 授業終了五分前に二百字詰めの作文用紙に授業感想を書いてもらった。
 『今日の授業がおもしろかった、もう、チョーサイコー!と思った人は五。モーサイテー!かんべんしてよ、と思ったら一です。その後にその理由を書いてください。』
 少し大げさに楽しそうに言う。
 結果は、「五・・・三十人 四・・・八人 三・・・二人」であった。
 以下は、代表的な授業感想文である。

 今日のお笑いは五です。どうしてかというと、理由は三つです。
 一つ目は意見を言うときはずかしかったけど、あとからいい気持ちになれたからです。
 二つ目はS君の意見の「女の子は、フラダンスがおどれる。」がおもしろかったからです。
 三つ目はいろいろな意見を聞いていると、「あっ、そうか」と思ったり、笑えるからです。だから今日のお笑いは五です。

 意見を言う楽しさ、意見を聞く楽しさが書かれているのがいいと思う。
 クラスのみんなが楽しめる授業であった。

Published: 9月 25th, 2010 at 20:52
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