永盛文香「これからの生きる力は「お笑いの“心”」で!」

『授業づくりネットワーク』(学事出版)2001年2月号特集「実践・わたしのお笑い教師道」

これからの生きる力は「お笑いの“心”」で!
永盛文香(茨城・牛久市立神谷小学校)

 昨年、お笑い評論家の西条昇さんのセミナーに行き、それ以来私はトーク番組をけっこうまじめに見ている。特に、「踊る!さんま御殿」(日本テレビ、火曜8時)が好きで、司会のさんまさんが鮮やかにトークを引き出すのを見ていると、本当に楽しくなってしまう。私にもできないだろうか。楽しい教室っていいなぁ…。いいものは即実践!そんな感じで私は“お笑い”を意識してみようと思ったのである。

1 さんま御殿は、まるで教室!?

 「踊る!さんま御殿」を見ていると、改めてさんまさんはすごいと思う。司会は一人で、ゲストが十人以上。しかも、ゲストはいろいろな顔ぶれである。それを一つの話題に集中させ、うまくまとめてしまうのだ。
 何回か見ていると、ゲストの構成パターンがあることに気づく。そして、このいろいろな顔ぶれが、実は教室の子どもたちにもあてはまるように思われる。

 ◇さんま御殿 ゲスト構成◇
1 これから売り出す(?)若いアイドル系
 かわいい。ちょっと的外れなことを言うと、さんまさんのつっこみが入る。また、見かけによらないことを言って、みんなに驚かれる。
2 お笑いコンビ系
 若手のコンビが必ず一組でる。場を盛り上げようとする。
3 お笑い芸人系
 話に落ちがあり(おもしろい話をして)みんなを笑わせる。
4 芸能界の先輩系
 知らないうちにみんなの中心になって話をしている。先輩強し!何でも言える。
5 つっこまれ役
 何を話してもおもしろい反応が返ってくるので、何かとふいに聞かれることが多い。トークに慣れていなくて、話があっちこっちへ行ったり、おどおどしたりしてしまうと、内容以外でさんまさんにつっこまれてしまう。
6 トークの激しい女優系
 言いたいことや自分の思ったことはズバッと言ってしまう。他の人のトークにツッコミを入れることもあり、場を活気づける。

 これをクラスの子どもたちに当てはめてみると、どうなるか。

1 おとなしめの子
 みんなの前に出ることも少なく、発言回数も少ない子。で、おとなしい子は以外に観察していたり、何気ないことによく気づいたりする。
2 いつも元気でわさわさしている子
 わさわさというのは、好奇心があり、常に動きを感じるという意味である。この子たちが休むと、何か物足りなさを感じるのである。
3 いわゆるクラスの人気者
 みんなを楽しませるサービス精神もあり、目立ちたがりでもある。たまに調子にのってしまうことも……。
4 みんなのまとめ役。リーダー
 落ち着いた行動と言動はみんなの信頼も厚い。しかし、みんなの知らないところでドジなことをしたり、意外な面が必ずある。
5 ユニークな考えをする子、自分の世界を持っている子。
 ちょっと変わっているよね…と先生の間で話題になることがある。個性的と言われることもある。また、あそびがきかない優等生タイプもあてはまる。
6 活発な女の子
 いけないことをしようものなら、「ちょっと、あんた!」と正義のために立ち上がる。はきはきして物おじしない。このごろこういう女の子が減ってきたように思う。

2 さんまさんの技術って!?

 このように、個性あるゲストたちのトークをさんまさんはどうやって盛り上げていくのか。私なりに気づいたことを次にまとめてみたい。

(1)よく話を聞いている
 どの人の話も「うんうん」と相づちを打って聞く。細かい所も聞き逃さない。自分が分からないことや?と思ったことをそのままにせず「どういうことですか」と聞き返す。そこから思わぬ展開になることがある。

(2)つなぎが上手
 ゲストはいつもおもしろい話をするわけではない。“なるほどね”の一言で終わってしまいそうな話の時、さんまさんは「私なんかもありますよ…」と自分の失敗談を取り上げる。すると、他のゲストもちがう話を持ち出し、トークが広がっていくのである。失敗談で大笑いした後、次の話題へ。ネタがすぐ出てくるさんまさんは、やっぱりすごい!

(3)うけたネタは再び使う
 トークの中で一回強烈にうけたネタは再び使われる。その場にいたみんなが知っていて、共有のものとなるからだ。「さぁ、みなさんご一緒に!」と言うと、ゲストみんなで「ダメダメ」(さんまさんのギャグ)と盛り上がってしまう。

(4)表情が豊か!リアクション激しく!
 さんまさんの表情をアニメーションで作ったら、ものすごい枚数になる位、よく変わる。笑うときはヒャーッヒャーッと大きな声で笑っている。ゲストに対して怒ることもある。そして驚く。とびはねる。固まる。照れる。落ち込む…。とにかく表情とリアクションが豊かである。いつも小道具を持っていて(さんまの顔がデビルの支持棒)、これも一役買っている。

(5)テンポが速い
 人は雑談をしている時、次々に話題が変わるそうである。3分も同じ話題をすれば長い、と聞いたことがある。さんまさんのテンポはとても速く、あまり考えたり、ちがうことを考えている間はない。どんどん次の話にうつっていく。速いのはテンポだけではない。さんまさんは反応がものすごく速い。相手の話に対して、すぐ返す。ダウンタウンの松本さんや爆笑問題の太田さんも反応が速くおもしろい。

3 それでは、実践編

 9月。今度新しく出会った子どもたちは、2年生・32名だった。明るくむじゃきに騒ぐ子どもたちには、こんな特徴があった。

 ・静かに話を聞くことに慣れていない。
 ・自分の意見をしっかり持たず、友だちに合わせてしまう。友だちが何を言っているか興味が薄い。

 さんまさんの技術を生かして、楽しく学級作りをしたいと思った。そこで私はこんな実践をしてきた。

 ・子どもたちの発表を聞く。言っていることを理解しようと聞く。~という意味なのかな、と確認する時もある。
 ・雰囲気はやはり大切。楽しそうに笑うだけで子どもたちの笑顔が増える。体調にも気を遣う。体調がいいと気分もいい。
 ・おこる時も一工夫。「こらっ!」(大迫力で)振り返ったところに、「と、いうふうに言われないようにね。○○くん」。
 言われた子は、笑顔で「あーびびったぁ」。
 ・朝の会の途中、窓の外を見ていた子が「カーカー」と言う。外にはカラスがやって来ていた。
 「はい、教室にはカラス何匹?」と言ったら、みんなが「アハハ」と笑い、すんなりと朝の会に集中していた。
 ・「今日は二十日ですね。はっかじゃないよ。あれjはスーッとするやつ」。
 低学年の子には解説を加えると笑える子が多くなる。
 先生が言うと、子どもたちも言っていいんだと思うようになる。「エッ?はっぱ?」とすかさず言い返してきた。
 ・先生の失敗談は、なぜか興味を持って聞く。
 「もうすぐマラソン大会ですね。先生はビリになったことがあるのです。」身近な人の話は、よく聞くのである。
 ・話が分かりにくく聞き返す時、「えっ」と言いながら、まゆを上げる。みけんにしわを寄せるのはNG。
 「スパスパ人間学」(TBS、木曜夜7時)という番組でやっていた。

4 初めての挑戦「なんだなんだ会議」「あるあるネタ合戦」

 クラスの子どもたちがシャレやなぞなぞを言うようになり、いよいよみんなでゲームに挑戦してみることにした。果たして2年生でできるのか。
「なんだなんだ会議」(ルールは99年12月号24頁で紹介)は、グループ対抗である。グループだと活発に意見が交わされる。各班ごとに発表していくと、一つうっかりしていたことが出てきた。話を聞くのが苦手な子どもたちだったのだ。ゲームという雰囲気が興奮させ、他のグループの意見を聞けないのである。子どもたちはみんな楽しかったと感想を書いていたが、これでは人の話の良さが分からない。おもしろさも分からない。日を改めて、第2弾。
「あるあるネタ合戦」(99年12月16頁で紹介、田村一秋さん)は、生活の中でよくあることを考え、みんなに発表する。今度はどうか。一番印象的だったのは、子どもたちがネタを考えている時の顔である。思わずニヤッとしたり、真剣に考えているのに楽しそうなのである。ネタはなかなかおもしろいものが出て来た。これは、学級通信で紹介しようと思う。子どもたちの感想をいくつか挙げてみる。

 ・バトルして負けちゃったけど、みんないい意見だった。もう一回やってみたいです。楽しかったよ。
 ・今日はみんなの知らないことを聞かせてもらって楽しかった。
 ・考えるのに苦労したけど、おもしろいネタが書けてよかったです。
 ・いっぱいおもしろいのがあった。(勝ったぞ)うれしかった。みんなおもしろいネタを作っていた。

 2つのゲームを通して、聞く態度の徹底が大切であると思った。そこで、朝の会の話を工夫したり、メモを取って話を聞かせたりする訓練を始めた。(さんま御殿もしっかり聞く体勢ができている中でのトークなのだ。)
 この子たちが3年生になるまで、また続けていきたい。最近のうれしい言葉。「このごろかぜで休みの人が続きました。でも、先生がおもしろいからさびしさもふっとびます。」ヤッタ。

(この文章の転載にあたっては、執筆者・編集者の許諾を得ております)

Published: 9月 25th, 2010 at 20:14
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