鈴木啓司「お笑い山手線キャッチボール」

『授業づくりネットワーク』(学事出版)1999年12月号特集「教師のための「お笑い」入門セミナー」

お笑い山手線キャッチボール
鈴木啓司(千葉・市川市立市川小学校)


 お笑い評論家の西条昇氏が企画・構成・監修したビデオ『西条昇の教室にもっとお笑いを!!-面白い先生になるためには-』(岩波映像)の中に、「お笑い山手線キャッチボール」というゲームが紹介されている。
 ルールは、以下の通りである。

1 一対一でボールなしのキャッチボールをしながら「山手線ゲーム」をする。
 ※山手線ゲーム………テーマに合った言葉を次々に言い合うゲーム
2 与えられたテーマに制限時間(5秒以内)で答えられなかったり、テーマから外れた答えをするとアウト。
3 答えがテーマから外れても、ボケがおもしろければ、先生の判定でセーフになる。
4 勝ち抜き形式にしてもよい。
〈テーマ例〉「水の中の生き物」「学校にあるもの」など。 

 ビデオを一見して、「我がクラスでもやってみたい」という気持ちになった。なぜなら、このゲームには思いついただけで、次の五つの優れた点があるからである。
1 ルールが簡単なので、説明に時間がかからず、すぐにゲームを楽しむことができる。
2 テーマや相手を代えれば、何回でも楽しむことができる。
3 準備物が必要ないので、いつでもできる。
4 短時間に次々と答えなければならないので、反射神経が鍛えられる。
5 「ボケ」を入れることができるので、ユーモアのセンスが身につく。

 ただし、原実践では一回に二人しかゲームを楽しむことができないため、クラス全員がゲームに参加するまでに相当な時間がかかってしまう。したがって、短時間に、しかも全員が一斉にゲームに参加できるように、前述したルールを若干変更してゲームを行うことにした。
 4年生(38人)の学級活動での実践である。

1 ルールの説明

 授業時間が始まると、いきなりこう言った。
『今日は、「お笑い山の手線キャッチボール」というゲームをします』
「ゲーム」と聞いただけで、子どもたちは大喜び。教室の至る所で歓声があがった。またゲームのネーミングにも興味を持ったようだ。
「先生、お笑いだから人を笑わせるゲームでしょう?」
「山の手線に関係あるの?」
などと次々に質問が飛ぶ。
 しかし、教師は質問には答えずに、『どんなゲームなんだろうね。楽しみだね』とだけ言い、ルールの説明を始める。
 この時に行った説明をまとめると、次のようになる。

1 3人一組を作り、ジャンケンで先攻、後攻、審判の役割を決める。3人一組が作れない場合は4人一組となり、審判を2人にする。
2 テーマは教師が発表する。そのテーマに合った答えを、先攻の人から順番に5秒以内で言う。たとえば、テーマが『野菜の種類』なら、「はくさい」「にんじん」「大根」………などと順番に言っていく。
3 ボールを投げたり、受け取ったりするまねをしながらゲームを行う。
4 5秒以内で答えられなかったり、テーマから外れた答えを言ったら負け。
5 テーマから外れた答えであっても、審判が笑ってしまうようなおもしろい答えを言った場合は、審判の判断でセーフになる。
6 一試合終わったら、役割を交代する。
7 全3試合で終了する。
8 5分間で3試合を行う。早く終わってしまった場合には、同じテーマでもう一試合行う。

 説明終了後、子どもたちから次の質問が出た。
「3人(4人)組は、どうやってつくるんですか?」
『先生が適当(機械的)につくります』
「前に言ったのと同じ答えを言ってもいいんですか?」
『同じ答えを言ったら「アウト」です』
「全3試合だと、4人組の場合には、全員が3つの役割をすることができないのではないですか?」
『鋭い指摘です。4人組の場合には、3試合で全員が「審判」と「それ以外」の2つの役割ができるようにしましょう』
「審判は、時計の針を見ながら5秒間を計るのですか?」
『だいたいでいいです。審判に任せます』

2 ゲーム開始

 3人組(4人組)を作った後、テーマを発表する。
『テーマは「水の中の生き物」です。始め!』
 教室中が突然騒がしくなる。12グループが一斉にゲームを始めたのだから無理もない。至る所で「エビ!」「タコ!」「カエル!」などと言う声がする。審判の「セーフ!」という大声も聞こえる。
 教師は、ストップウォッチ片手に各グループを回る。友だちの「ボケ」に大笑いしている子、アウトにしようかセーフにしようか悩んでいる子、負けて悔しがっている子など、子どもたちは様々な表情でゲームに興じていた。中には、一回も答えを言うことができずに、負けてしまったり、「ボケ」ばかりを連発したりしている子もいった。
『ピピピー、ゲーム終了です』
 こう言うや否や、子どもたちから矢の催促。
「先生、もう一回やるんでしょう」
「次のテーマは何?」
 教師は、じらして次のように言う。
『どうしてもやりたい?』
「やりたーい!」
『わかりました。もう一回やりましょう。今度のテーマは「学校にある物」です。では、ゲーム始め!』
 再び教室内が騒然となった。5分後、「まだやりたい」という子どもたちの声を押し切って、ゲームを終わりにした。

3 感想

 ゲーム終了後、1枚の神(B5版)を子どもたち全員に配り、以下の2つについて記述してもらった。
1 ゲームの感想
2 自分たちの考えた新テーマ
 感想文は、「授業感想文」(上條晴夫著『子どものやる気をひきだすノート指導』学事出版、32ページ)の形式を追試した。つまり、まず今日のゲームを5段階評価させ、次にそのように評価した理由を書かせたのである。
 なお、5は「とてもおもしろかった」。4は「まあまあおもしろかった」。3は「どちらとも言えない」。2は「あまりおもしろくない」。1は「全然おもしろくない」である。
 子どもたちの評価は、次の通りである。
5……21人   4……9人   3……6人   2……2人
 このゲームの楽しさやおもしろさがよく表れている感想を2つ紹介する。

 今日の「お笑い山手線キャッチボール」は5である。理由は2つある。
 1つ目は、わたしが言った言葉にしんぱんが「セーフ」と言ってくれるかきんちょうし、わくわくして楽しかったからです。
 2つ目は、相手からユーモアのある言葉が出てきたら、「こっちも負けないぞ!」とユーモアの言葉が続いていき、
だんだんおもしろくなっていくところが楽しかったからです。
 今日の「お笑い山手線キャッチボール」は5である。理由は3つある。
 1つ目は、せいげん時間があって、少しドキドキしたことが楽しかったからです。
 2つ目は、バカ笑いすることが楽しかったからです。ふつうは、しんぱんが笑って判だんするけど、相手も自分も笑ってしまいました。
 3つ目は、自分が言ったギャグがうけたからです。うれしかったです。

 ほかにも楽しかった理由として、次のことを挙げている。
・テーマと関係ないことでも言えるから
・相手に言い返すことができるから
・5回試合をやって4回勝ったから
・キャッチボールをするまねがおもしろいから
・女の子でも遠慮なく下品な言葉を言えるから
・いろいろなことを言いながら、いろいろな言葉を覚えられるから
・次々に答えが言えたから
 逆に、「2」や「3」と評価した子どもは、その理由として次のように言っている。
・答えがなかなか思いつかなかったから
・すぐに勝負がついてしまったから
・相手が2度同じ言葉を言ったのに、審判が「セーフ」にしたから
・5秒以内に言わなければならないのであせってしまうから
・ざわざわしているところでゲームをやったので、大声を出してのどが痛くなったから
 子どもたちが考えた新テーマは、以下の通りである。
「花の種類」「有名人(タレント)の名前」「町にあるもの」「昆虫の種類」「プロ野球選手の名前」「陸の生き物」「果物の種類」「おかしの名前」「ゴミ箱に捨ててありそうな物」「校庭にありそうな木」「スポーツの種類」「国の名前」「都道府県名」「キャラクターの名前」「映画の題名」「乗り物の名前」など

4 ウケたボケ

 最後に、「今日ウケたボケ」を子どもたちから聞いてみた。初めて行ったゲームということもあって、下品な言葉でウケているケースが多かったことがわかった。しかし、中には気のきいた「ボケ」もあったので、以下に紹介する。
〈テーマ「水の中の生き物」〉
「いか墨スパゲッティ」「メダカの学校」「ガメラ」「イルカはいるか?」
〈テーマ「学校にあるもの」〉
「ゴキブリホイホイ」「ありんこ(先生のすね毛)」「大五郎(先生のあだ名)」「くさったくつ下」

 翌日、数名の子どもたちからゲームのリクエストがあった。
「先生、今度は『歌の題名』でやろうよ」
「今日の帰りの会でやろう」
 教師は、近いうちに再び行うことを約束した。

(この文章の転載にあたっては、執筆者・編集者の許諾を得ております)

Published: 9月 23rd, 2010 at 17:51
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